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処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第12話

1 :名無しさん@初回限定:2007/02/17(土) 18:03:20 ID:10GX4S9K0
ここは「処女はお姉さまに恋してる」のSSスレです。
優雅に礼節をもって進行していきましょう。
sage進行で。

「処女はお姉さまに恋してる」まとめサイト−「おとボク」SS作品リスト
ttp://takayan.s41.xrea.com/otoboku/ss_index.shtml

SS投稿掲示板@おとボクまとめ
ttp://takayan.otbk.root-node.net/ss/bbs_view.cgi?

おとボクSS投稿掲示板
ttp://cute.to/~hokuto/caramelkeijiban/story_bbs.php

処女(おとめ)はお姉さま(ぼく)に恋してる SSの書庫
(処女はお姉さまに恋してるSS保管庫(仮)の跡です)
ttp://th2ss.hp.infoseek.co.jp/otoboku/


メーカー公式
ttp://www.caramel-box.com/


Q&Aテンプレは>>3-4

2 :名無しさん@初回限定:2007/02/17(土) 18:05:30 ID:10GX4S9K0
・前スレ
処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第11話 http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1164204810/

・過去スレ
【女装】処女はお姉さまに恋してる【百合】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1108774069/
【女装】処女はお姉さまに恋してる 第2話【百合】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1110222716/
【女装】処女はお姉さまに恋してる 第3話【百合】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1110659167/
【女装】処女はお姉さまに恋してる 第4話【百合】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1111234071/
【女装】処女はお姉さまに恋してる 第5話【百合】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1111757700/
【女装】処女はお姉さまに恋してる 第6話【百合】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1112791250/
【女装】処女はお姉さまに恋してる 第7話【百合】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1115118638/
処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第8話
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1117971026/
処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第9話
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1143304515/
処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第10話
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1156178671/

・関連スレ
処女はお姉さまに恋してる 第56話
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1170500032/
キャラメルBOX Part 31
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1168451971/
キャラメルBOX やるきばこ
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1139827676/

3 :名無しさん@初回限定:2007/02/17(土) 18:07:45 ID:10GX4S9K0
Q&A その1

(;´Д`)<オリキャラ出したいんだけど……
(・∀・)<オリジナルキャラが原作キャラよりも目立つ物、また、同程度の立場である場合、受け入れられない
     事の方が多いようです。そんな作品の場合は投稿所の方が無難ですが、最終的な判断は作者さんに
     委ねられます。
     もし、これは大丈夫だ、と思ってスレに投下して、投稿した作品にケチをつけられたとしても、
     それはそれで一つの事実ですので素直に受け止めましょう。
     次の投稿時にその経験を活かしてください。

(;´Д`)<そんな固い事言ってたらオリキャラ使えないじゃん
(・∀・)<そんなことはありません。原作に登場してはいないものの、その世界に間違いなく存在しているキャラ
     (一般生徒・店員・通行人)等のいわゆるMobは、登場させても問題ありません。
     但し、それでもし投稿した作品にケチをつけられてとしても、それはそれで一つの事実ですので素直に
     受け止めましょう。次の投稿の時に(ry

(;´Д`)<原作キャラの性格を弄りたいんだけど、どの程度なら大丈夫なの?
(・∀・)<極端に変わっていなければ大丈夫です。が、だからといってスレに投稿してケチをつけられてとしても、
     それはそれで(ry
     例外的に、笑いを取りに行った場合には受け入れられる事もあるようです。  

4 :名無しさん@初回限定:2007/02/17(土) 18:09:33 ID:10GX4S9K0
Q&A その2

(;´Д`)<瑞穂ちゃんがあまりにも可愛いので、おかま掘りたいんだけど……
(・∀・)<どうぞ掘ってください。但し、作品が出来上がったときはスレの方ではなく、投稿所へお願いします。
     逆に瑞穂ちゃんが掘っちゃった場合も投稿所を利用してください。

(;´Д`)<マリみてとか、極上生徒会なんかとクロスオーバーさせたいんだけど……
(・∀・)<クロスオーバー物は、混合物の元ネタを知らない人もいますので、投稿所の方へお願いします。

(;´Д`)<瑞穂ちゃんを襲った○○が許せません! お仕置きしてもいいですか?
(・∀・)<構いませんが、必要以上の暴力・陵辱・強姦・輪姦・監禁・調教・SM・スカトロ・グロ・強制妊娠・
     達磨プレイ・死姦・人体改造・触手・食人等、読み手を限定してしまうような表現がある場合は、
     投稿所の方へお願いします。
     また、直接的な表現が無くても鬱な展開になった時は受け入れられない場合もあります。

(;´Д`)<携帯だから投稿所使えないyo!使えるけど投稿所ヤダ!
(・∀・)<仕方ないので事前に1レス使って傾向報告、あぼーんできるようにコテ、ケチつけられても
     文句言うのはやめましょう。でも可能な限り投稿所利用してください。



(・∀・)<おとぼくの雰囲気に合わないと思われる作品は投稿所へ、どうすればいいか分からないときは
     皆に聞いてみて下さい。

5 :名無しさん@初回限定:2007/02/17(土) 22:13:43 ID:d8N4ZiWP0
5なら木村あやかとセックスできる

6 :名無しさん@初回限定:2007/02/18(日) 01:28:37 ID:vHHwjzlG0
*** ギャルゲー板最萌トーナメント開催中 ***

ギャルゲー板最萌トーナメント、決勝トーナメント2日目。
本日は十条紫苑さまが出場されています。
今回の相手は「ラムネ」の近衛七海です。
是非ジーク紫苑さまに頑張ってもらいたいですね。

公式
ttp://www.geocities.jp/galgemoe/
コード発行所
ttp://tcode.sakura.ne.jp/gal/

<<十条紫苑@乙女はお姉さまに恋してる>>
を↓に貼り付けるだけです

第二回ギャルゲー板最萌トーナメント 投票スレ13
http://etc6.2ch.net/test/read.cgi/vote/1171367690/
(スレが1000になり次第urlが変更になります)

多くの人達におとボクという作品を知ってもらういい機会ですので、気軽に投票していただければ幸いです。

それではみなさま、ごきげんよう。

7 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/02/18(日) 12:47:30 ID:Mo2FOlB80
東の扉です。
11話スレが無事500KBを超えたようですので、由佳里ちゃん聖誕祭記念SSの続きを投下させていただきます。

8 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/02/18(日) 12:49:40 ID:Mo2FOlB80
由佳里は、泣きじゃくりながら瑞穂ちゃんを責める。
「誕生日!? ひょっとして、今日が由佳里の?」
「そっ……由佳里だって楽しみにしてたけど、瑞穂ちゃんが大事な用があるっていうから
ガマンしてたのに……ほかの女に会いに行ってたなんて……」
あたしも、由佳里の気持ちを考えて、抗議する。すでにあたしの声は怒りではなく、悲しみに満たされていた。

〜エルダーがユダに堕ちる日? 後編〜

「ごめん。知らなかったから」
「知らなかったで済まされることじゃないわよ」
「うん、わかってる。でもこれだけは言わせて。今日女の子に会いに行ってたのは事実だけど、由佳里が考えてるような女の子じゃないよ?」
「え? どういうこと?」
じゃあ瑞穂ちゃんは、いったいどういう人に会ってたの?
「まりや、忘れたの? 小学校に入って間もない頃、まりやのいたずらにつきあった時、見つかって逃げようとして、
僕が大怪我して鏑木総合病院に入院したでしょ?」
瑞穂ちゃんに言われて、あたしは昔の記憶を探ってみる。
「ああ……そういえばそんなことがあったような」
「そのとき、一緒の病室にいた寝たきりの女の子と僕が友達になったことは?」
「ああ……結局その娘、病気が治らず、しばらくしてそのまま……」
そこまで言って、あたしはハッと気づいた。
「じゃ、じゃあ、今日瑞穂ちゃんが会ってた女の子って……」
「そう。その娘のこと。今日はあの娘がいなくなってからちょうど十年だし、
あの娘、他に友達もいなかったから、どうしても会いに行ってあげたくて……」
そっか、そうだったんだ。瑞穂ちゃんらしいわね。
「でも、じゃあ、由佳里が瑞穂ちゃんが女の子とデートしてるのを見たってのは……?」
それはいったいどういうことなんだろう? あたしは、疑問を口にしてみた。
「え? 僕はデートなんか……」
瑞穂ちゃんは、まったく身に覚えがないって感じで戸惑った。

9 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/02/18(日) 12:51:55 ID:Mo2FOlB80
「でも、由佳里が見たって……」
「そうです。確かに見ましたよ」
「もしかして、人違いじゃないの?」
「いいえ、確かに瑞穂さんでした! それに、デートとしか思えないセリフも言ってましたし……」
「2人とも落ち着いて……そうだ由佳里、瑞穂ちゃんを見たのは、何時ごろ、どこで?」
進展のない争いを始めそうな2人を見て、あたしは検証をしてみることにした。
「えっと……確か午前11時ごろ、駅前のデパートの近くで……」
そう言われて、瑞穂ちゃんはしばらく考え込んでいたけど……。
「ああ、思い出した! あのこと……」
「何があったの?」
「うん。ちょっと合間に頼まれて買出しに出かけてたら、女の子が強引にナンパされて困ってたみたいだから、助けてあげてたの。
そういう時は、彼氏のフリをするのが一番だと思ったし、まさか由佳里に見られるなんて思ってなかったから……」
「そう……だったんですか」
どうやら、完全に勘違いだったみたい。
「ごめんね。今日が由佳里の誕生日だっていうのに、泣かせるまで傷つけちゃって……」
瑞穂ちゃんは、心底申し訳なさそうに、由佳里に謝った。
「い、いえ、私こそ、そんな理由だなんて思わなかったから……瑞穂さんのこと、疑ってしまって……」
もう大丈夫だろう。だけど由佳里ってば、立ち直り早っ……。
「でも、祝ってあげたいけど、もう夕食もとっくに終わってるし、誕生パーティーも……」
確かに“みんなで祝う”誕生パーティーはもう終わってるけど……。
「いんや瑞穂ちゃん、あきらめるのは早い! 2月18日は、まだ終わってない!」
あたしは、もしものときを考えて用意していた切り札を出すときが来たと感じた。

10 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/02/18(日) 12:57:37 ID:Mo2FOlB80
「ふふふ……じゃーん!」
そう言って、あたしは冷蔵庫から1つの箱を取り出した。
「な、何これ?」
「バースデーケーキ。2人前の大きさのね。もしもの時を考えて、あたしが頼んでおいたの」
「まりや……」
「お姉さま……」
2人は、あたしに感謝の気持ちでいっぱいの目を向けてきた。
「ほらほら、言いたいことはわかった。片付けはあたしがやっとくから、これ持ってどっちかの部屋へ行きなよ。
2月18日が、終わっちゃう前にね」
「うん……!」
「はいっ……!」
そう言って、2人はケーキを持って由佳里の部屋に行った。

「じゃ、由佳里、誕生日おめでとう」
「ありがとうございます、瑞穂さん」
由佳里の部屋のドア越しに、そんな声が聞こえてくる。
よかった。せっかくの日曜だってのに、由佳里の誕生日が、涙一色になるんじゃないかって心配してたから。

ケーキを食べているらしい時間の後、また会話が聞こえてきた。
「でも嬉しいです。あきらめてましたのに、瑞穂さんと2人っきりのパーティーが開けるなんて……」
「うん。今日は本当にごめん。せっかくの誕生日に由佳里を傷つけた上に、プレゼントも用意してなくて……」
「いえ、2人っきりの誕生パーティーを開いてくれたことは、みんなのプレゼントより嬉しいですから」
そんな甘い会話が聞こえてくる。すっかりいつもの自分を取り戻したあたしは、
何かからかってやるネタを見つけてやろう……と考え始めていた。
「でも……」
「じゃあ、瑞穂さんはプレゼント代わりに、朝までつきあってくださいね!」
「え? つきあうって何に?」
「バカねえ瑞穂ちゃん。エロボケな由佳里が言うんだから、答えは1つしかないでしょ?」
「まりや!?」
「お姉さま!?」
途端にドアが開かれる……。

11 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/02/18(日) 13:00:07 ID:Mo2FOlB80
「あ……」
しまった……ついいつもの調子で言ってしまった。
「まりや! 盗み聞きなんて悪趣味だよ!」
「そうですよ! それにお姉さま、エロボケってなんですか! 私はエロボケなんかじゃありません!」
……由佳里は十分エロボケだと思うけどね。
2人の怒った声を聞き流して、あたしはそう思った。
「ま、まあ、それじゃ、この後はゆっくりじっくり“いろんな意味で”楽しみなよ。じゃあね」
あたしはそう言って全速力で逃げ出した。
「あ、こら! 逃げるな!」
後ろから、瑞穂ちゃんの怒鳴り声が聞こえてくる。

「ふう……危なかった。ま、けど、また2人ともパーティーに戻るわね」
部屋に帰ったあたしは、そう言って一息ついた。
「きっとこの後、あーんなこととか、こーんなこととか……」
そしてあたしはその夜、おそらく朝まで由佳里の部屋で開かれているだろう“大人の誕生パーティー”の行方について考えていた。

Fin


12 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/02/18(日) 13:03:46 ID:Mo2FOlB80
以上です。
由佳里ちゃん聖誕祭記念なのにまりや目線、しかも過去を捏造して……
こんな内容でいいのかなと疑問に思いながらも、とりあえず書かせていただきました。
最後に、由佳里ちゃん、誕生日おめでとう!

13 :くぎバット:2007/02/18(日) 17:27:17 ID:BGCGemN60
放課後の教室、瑞穂ちゃんが紫苑さまたちを呼び止める
「ねえ、これからみんなでどこかに遊びに行かない?」
「いいですねぇ、それではウィンドウショッピングでも…」
美智子さんがにこやかに答える、でも圭さんは少し表情を曇らせて
「あ…私、これからアルバイトが…」
「アルバイトですか?」
紫苑さまが問い返す
「アルバイトって、お嬢様学校なのに認められてるんですか?」
瑞穂ちゃんも問い返す
「ええ、社会勉強の一環ということで認められていますよ」
美智子さんが瑞穂ちゃんの疑問に答える
「じゃ、悪いけどそういうことで…」
圭さんは手を振りながら教室から出て行ってしまった、そこにいた気配すら残さずに
「で、ではまりやさんでも誘って遊びにいきましょうか」
なんとなく不気味なオーラを放ち気味の美智子さんだった



14 :くぎバット:2007/02/18(日) 17:28:06 ID:BGCGemN60
圭さんのバイト先、それは
『葛葉探偵事務所』
「じゃ、今日は矢来区の下水道の調査、お願いね」
白いスーツを纏った男が圭さんに仕事を与える
「了解…」
圭さんは無表情にそれを受ける
下水道の入り口まで移動し懐から何かを取り出す
それはGUN型のCOMPUTER、通称GUMP
ルーン文字のキーボードを操作し何かを打ち込む
「SUMMMON!ICHIKO!」
魔方陣が現れ人形が顕現する
「ここどこですか、何であたし連れてこられたんですか!?
なんで魔法とか使えるんですか?、種族天使Lv.1ってなんですか?」
「いざ!冒険の扉をくぐりLv.Upの旅へ、大丈夫、最近は悪魔もLv.Upするようになったから」
「い〜や〜久しぶりの出番で〜〜〜た〜す〜け〜て〜」
「あんまり騒ぐと合体材料にするわよ」



15 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/02/18(日) 21:14:45 ID:FOZN6Bhc0
前スレL鍋さん、東の扉さんGJです。
くぎバットさんはこれで終わりでしょうか?拙作の後編投下します、途中ならすみません。

16 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/02/18(日) 21:21:28 ID:FOZN6Bhc0
『 忘れじの君 後編 その1 』

「危ないっ!いけませんわっ!!」
とっさに伸びる貴子さんの腕、間近に迫る大型トラックの轟音――
貴子さんの華奢な手が由佳里ちゃんの腕を捉えます!
辛うじて歩道に踏みとどまる二人、遠ざかる大型トラックのテールランプ。
「くっ…どういうつもりですか!危うく命に関わる所ですわっ!」
肩で荒い息をつく貴子さんを、我に返った由佳里ちゃんが見上げます。
「あ…会長…さん」
「そもそもこんな時間に一人で何…を…?」
「会長…さん…わたし…わたし…うわぁーん!!」
人目もはばからず、貴子さんにすがって泣き出す由佳里ちゃん。
「あああの、そんなに泣かなくても…これは…困りましたわ…」
周囲の人々の好奇の視線に晒され、困惑する貴子さん。
「とにかく、どこかに座って落ち着きましょう。よろしいですわね?」
「…ぐすっ…はい。ご迷惑おかけして…すみません」
冷え切った由佳里ちゃんの手を取って貴子さんは歩き出します。

その頃、商店街では―
「瑞穂ちゃん、ケーキあった?」
「うん。店員さんに無理言って飾り付けもお願いしたよ」
「用意できたんだね、良かったー!」
「贈り物は見つかった?」
「スポーツタオルのセット。いくつあっても困らないだろうと思ってね」
「そう…これだけあればパーティーになるかな?」
「間に合わせにしては上出来だよ。んじゃ、急いで寮に戻らないと!」
「まりや…由佳里ちゃんのことになると一生懸命だね」
「ぐっ!い、いきなり何を言い出すかな瑞穂ちゃんはー!とにかく早く帰るよ!!」
「そうだね…急ぎすぎて転ばないようにね」
後ろも見ずに走り出すまりやの後に、瑞穂ちゃんが続きます。

―続く―

17 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/02/18(日) 21:26:25 ID:FOZN6Bhc0
『 忘れじの君 後編 その2 』

「ココアでよろしいですか?冷えた体が温まりますよ」
「…はい」
手近な喫茶店に飛び込み、体に付いた雪を払う貴子さんと由佳里ちゃん。
「大丈夫ですか?…いきなり泣き出したので私も驚きましたが…少々言葉が過ぎましたか?」
貴子さんが努めて優しい口調で尋ねます。
「す、すみません…会長さんが怖くて泣いたわけじゃないんです」
「では、なぜ?私で良ければお話を伺いますわ」
「実は…今日はわたしの誕生日なんです。でも、お姉さま方は朝からお忙しそうで…」
貴子さんに促されて、少しずつ話し始める由佳里ちゃん。
「おめでとうの一言も掛けてもらえなくて…わたしのことお忘れなのかなーって」
「それは…たまたま時間に余裕が無かっただけなのではありませんか?」
「だから…わたしは要らない娘なんだって…そう思ったらすごく悲しくなって…」
「お待ちなさい!」
それまでの温和な貴子さんの声が一転し、周囲の空気が張り詰めます。
「要らない娘ですって?そんな人物がこの世に存在すると本気で思っているのですか?!」

暖かいココアが運ばれて来ても、由佳里ちゃんは俯いたままです。
「要らない娘…そんな風に自分を卑下したところで、誰も同情したりはしませんわ」
声のトーンを戻し、諭すような口調の貴子さん。
「わたし…何の取り柄も無いし、誰もわたしを気に留めてくれないです…」
「あなたは…もっと自分に自信を持って良いと思います」
ココアを一口含み、由佳里ちゃんにも勧めながら話を続けます。
「少し前向きに考えてみませんか?『自分は相手から信頼され、それに応えている』と」
「でも…わたしは会長さんのようには…」
「どんなに些細なことでも構いません。心当りがありませんか?」
無言で首を横に振る由佳里ちゃん。小さなため息交じりに貴子さんが口を開きます。
「仕方ないですね…私が知る限り、間違いなくあなたを信頼している方がいます。すぐ身近に」
「えっ…身近に…?」

―続く―

18 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/02/18(日) 21:31:42 ID:FOZN6Bhc0
『 忘れじの君 後編 その3 』

「まりやさんはどうですか?本当にあなたを邪魔にしていますか?」
「まりやお姉さまは…お世話をすれば必ず『さんきゅー由佳里』って…その後過剰サービスが…」
いつものやりとりを思い出して、赤面してしまう由佳里ちゃん。
「まりやさんが悪意だけでそんなことをする人かどうか…あなたが一番ご存知ではありませんか?」
「会長さん…わたし、戻っても良いんでしょうか?」
「心配しなくても大丈夫です。きっとあなたの帰りを待っているはずですわ…」
不安そうな由佳里ちゃんに、貴子さんが優しく微笑みかけます…。

「ただいまー!奏ちゃん、由佳里は戻ってる?」
「お姉さま方、お帰りなさいなのですよー!あの…由佳里ちゃんは…」
言いよどむ奏ちゃんを見て、瑞穂ちゃんとまりやは顔を見合わせます。
「瑞穂ちゃん、由佳里の部屋に行ってみようよ」
「わかったわ」
由佳里ちゃんの部屋に入り、明かりを点けて様子を窺います。
「別に…普段と変わりないみたいだけど」
「瑞穂ちゃん…これ」
まりやが床に落ちていた物を拾い上げ、瑞穂ちゃんの前で広げます。
「これは…カレンダー?」
「今日の日付を見てよ…2月18日」
「あっ…」
大きな赤丸を見て、二人は言葉を失います…。

「どうやら雪も止んだようですね…時間も時間ですから寮までご一緒します」
「会長さん、そんなことまでしていただかなくても!」
「いいえ、これは生徒会長としての務めです。もし何かあったら私が困りますわ」
「ありがとうございます…でも、会長さんがこんなにお優しい方だったなんて…感激です」
「私は優しくはありませんわ。冷血女とか、堅物とか…その通りですから」
自嘲気味に貴子さんがつぶやきます。

―続く―

19 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/02/18(日) 21:36:49 ID:FOZN6Bhc0
『 忘れじの君 後編 その4 』

「そんなことありません!確かにまりやお姉さまから聞かされる話は…アレですけど…」
「…それが私の真実の姿かもしれませんよ?」
「でも悪い話ばかりじゃないです!例えば学院祭のときも…」
楽しげに言葉を交わしながら、雪晴れの道を二人で歩きます。

一方、こちらは重苦しい雰囲気の寮。
「由佳里ちゃん…どこに行っちゃったんだろう…」
「もぉ〜!由佳里のヤツ、たかが誕生日忘れたくらいで拗ねやがって!」
「まりや、誕生日って特別な日なのよ。忘れていたわたし達の方が悪いわ」
「そりゃあそうだけど…だからってみんなに心配かけて良いってことにはならないよ!」
「お二人とも落ち着いて下さいなのですよ…奏、お茶をご用意するのですよ〜」
「ごめんなさい、奏ちゃんにまで気を遣わせちゃって…」
奏ちゃんが席を立ったその時です。
「こんばんは。どなたかいらっしゃいますか?」

聞き慣れない声に訝りながら、瑞穂ちゃんを先頭に全員で玄関に出ます。
「はい?どなたですか…って、貴子さん?!」
「お姉さま、夜分に申し訳ありません。実は…」
すっと体を横に引く貴子さん。後ろで小さくなっているのは…
「由佳里っ!あんたこんな時間までどこほっつき歩いて…わたたっ?!」
貴子さんが掌を突き出して、噛み付くまりやを制します。
「まりやさん、お話は伺いました。由佳里さんを責めないと約束していただけますわね?」
「…わ、わかったわよ。全部あたしが悪うございましたよ〜だ!」
「あの…ご心配おかけしてすみませんでした!奏ちゃんもごめんなさい!!」
「お帰り、由佳里ちゃん。寒かったでしょう。奏ちゃん、お風呂の用意お願いね?」
「はいなのですよー!」
「では…私はこれで。お姉さま、ごきげんよう」
優雅に一礼して、貴子さんは玄関のドアを押し開けます。

―続く―

20 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/02/18(日) 21:44:02 ID:FOZN6Bhc0
『 忘れじの君 後編 その5 』

「貴子さん…ありがとうございました!」
「あっ、貴子!ごめん瑞穂ちゃん、あとお願い!」
貴子さんの後を追って、まりやが外に飛び出します。

「貴子っ!ちょっと待って!」
「まりやさん?まだ何かご用ですか?」
雪明りに映える並木道の途中で、貴子さんが振り返ります。
「経緯はともかく、由佳里のことありがとう。その…ちゃんとお礼が言いたくてさ」
「あなたにしては殊勝な心がけですわね…と、憎まれ口を叩くつもりはありません」
「は?」
「私は…歩き疲れていた新入生のお世話をしただけですわ、生徒会長として」
「貴子…」
「でも一言だけ…弄ってばかりいないで、由佳里さんの心の声も聞いてあげて下さい…それだけです」
「また痛い所を…あ、いや…わかった。貴子って、時々ムダにカッコ良いよね」
「ふふっ…相変わらず口の減らない方ですわね。では、ごきげんよう」
「へへっ…こんな時間だから、あんたも気を付けてね」

(貴子…ありがとう、ホントに感謝してるよ)
(まりやさん…なぜか憎めない方ですわね)
踵を返した二人は、新雪を踏みしめて歩き出します。お互いに振り返ることもなく…。

「ハッピーバースデーゆかり〜ん!ほれほれ、プレゼントだよー!」
「遅くなってごめんなさい。ケーキにろうそくを立ててっと…さあ、一気に消してね!」
「お好み焼きは温め直したのですよー!」
「わたしのために…こんなにしていただいて…ありがとうございます!」
遅れて来た主賓を迎えて、誕生パーティーの始まりです…。
 
―わたしは要らない娘なんかじゃない、わたしを待っていてくれる人がこんなにいるから―

―完―

21 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/02/18(日) 21:47:30 ID:FOZN6Bhc0
長々と書いてきましたが、これでおしまいです。
ゆかりん誕生日おめでとー!

22 :名無しさん@初回限定:2007/02/18(日) 22:24:30 ID:gFYkziFH0
>>21
GJ!!貴子さん( ゚Д゚)ウマー

23 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/18(日) 23:26:14 ID:inMi38wP0
東の扉さん、くぎバットさん、451さん、皆さんGJです。
良作ぞろいの後に私のバカ話を投下するのは気が引けてきたのですが、
一応、誕生日に合わせて書いたので投下します。
実際には、あまり誕生日と内容は合ってませんが・・・。

24 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/18(日) 23:26:56 ID:inMi38wP0
『最終兵器 瑞穂』

2月17日。
寮のキッチンでまりやに麦茶の入った瓶を渡された由佳里。
グラスに少し注いで飲んでみる。
「ん?これ…麦茶かと思ったら…ジュース、いやお酒ですね」
「ピンポーン!正解。梅酒。これ、お酒のニオイが控えめにできてるの」
そう云って床の箱から3本の瓶を取り出した。
「お姉さま、こんなものを一体どうするんですか?」
「明日はゆかりんの誕生日でしょ。寮でみんなでパーッとやりましょ」
「まりやお姉さまが大騒ぎしたいだけじゃないんですか」
「あ〜そんなことを云うかね、この子は」
「ふふ、それでも、あたしの為ということならとても嬉しいです。まりやお姉さま有難うございます」
「うむ。分かってくれたようね、にははは。明日は気心知れた連中も呼んでパーッとやりましょ」
由佳里はボトルを3本とも冷蔵庫に入れた。
「梅酒は冷やしておきますね」
「うん。あ、それから瑞穂ちゃんには内緒ね。結構堅物で口煩いから」
「でも、そんなこと云っても明日、飲めば分かっちゃいますよ」
「大丈夫。瑞穂ちゃんはお酒弱いから、気付く前に酔い潰しちゃえばいいのよ」

次の日の朝。
奏が瑞穂の為にお弁当を作っていた。
「受験の息抜きに今日は奏とお弁当を食べるのですよ〜」
水筒を用意して冷蔵庫を開けた。
麦茶が大量に入っていた。
「あやや、寮母さん作りすぎなのです」
その内の一本を水筒に入れ直して栓を閉めた。


25 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/18(日) 23:29:49 ID:inMi38wP0
昼休み、学食
「お姉さま、どうしたのですか〜」
「うぃぃ〜」
急にぐてんぐてんになって、テーブルに突っ伏した瑞穂。
「お、お姉さま、一体どうしたのですか」
奏が瑞穂の体を揺するが、あまり反応がない。
「どうしたらいいのでしょう〜」
「お姉さま、奏さん、一体どうしました?」
そこへふたりを見かけた貴子が声をかけて来た。
「あ、会長さん。お姉さまが急におかしくなってしまわれたのですよ〜」
「えっ、お姉さまが?」
慌てて瑞穂に駆け寄る貴子。
ぐてんとなっている瑞穂の額に手を当て、顔を覗き込む。
「うへへへ…へへ…」
「……もしかして酔っている?…」
貴子が奏に小声でたずねる。
「お姉さまは何かお飲みになりましたか?」
「それが奏が持ってきた麦茶を飲んでからおかしくなってしまわれたのです」
そういってテーブルの上においてある水筒を指差した。
「麦茶…これですか……奏さん、これはどこからもってきましたか?」
コップに残っていた分を一口飲んで、貴子はお酒だと気がついた。
「寮の冷蔵庫なのですよ〜」
「…なんで寮の冷蔵庫に…」
貴子の脳裏にまりやの顔の浮かんだ。
「…どちらにしてもお姉さまをここに置いていてはいけません。先生方にばれるとお咎めを受けてしまいます。
保健室に連れて行きましょう。奏さん手伝って…」
瑞穂の腕を持って立たせようとした貴子に、瑞穂がいきなり抱きついた。

26 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/18(日) 23:32:47 ID:inMi38wP0
「ななな、お姉さま!?ちょっと!」
「貴子しゃん…」
貴子の足がぶるぶる震えだし、腰が砕けそうになる。
「いいけません。ここここんなとこで倒れては…。早く保健室に…」
ぎゅううう…
貴子をきつく抱きしめた瑞穂が、そのまま背中を優しく撫でた。
「……っ!!」
ぶほっ!
鼻血を噴出させて幸せそうな顔で倒れこむ貴子。
「あああ、会長さん!!」
瑞穂は再び椅子に座り込み、テーブルに突っ伏してしまった。
奏はおろおろするが、自分ではとても瑞穂を抱えあげて保健室に連れて行くことができない。
「だ、誰か呼んできますのですよ〜」
慌てて奏は学食を飛び出していった。
テーブルに突っ伏している瑞穂の周りには、先ほどからの様子を見ていた生徒が集まりだしていた。
「あ、あのお姉さま?大丈夫ですか」
ひとりが勇気を出して瑞穂に近づいてきた。
「み、水…」
「え、はい。ちょっとお待ちください」
テーブルに目をやると水筒が、そしてコップには『麦茶』が入っていた。
女生徒はコップに水筒の中の『麦茶』を継ぎ足して瑞穂に差し出した。
「お姉さま、麦茶です」
瑞穂がコップを受け取って一気に飲みほした。



27 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/18(日) 23:35:52 ID:inMi38wP0
「あら、奏ちゃんどうしたの」
奏は学食を飛び出してすぐに、食堂へ向かう途中だったまりやと由佳里に出会った。
「まりやお姉さま、良かったです〜。お姉さまが変になってしまわれたのですよ」
奏に事情を聞いて学食に飛び込んだまりやが見たのは、死屍累々の屍だった。
「なんじゃこりゃぁぁぁ」
食堂の中央に瑞穂が立っている。その足元には10人以上の生徒が皆、幸せそうに倒れ伏している。
まさに大惨事。
「うわっ、どうなってるんですか、これ」
由佳里もビックリしている。
酔っ払った瑞穂がフラフラと歩き出すと遠巻きに見ている女生徒たちの内の一人が瑞穂に駆け寄る。
ぎゅっ、強く抱きしめる。
それから首筋にぶちゅ…
そして失神…
この一連の流れが10秒ほどで完了している。まさにオートメーション状態になっていた。
「ちょっと、なにやってんのよ!?」
わけもなく殺意をおぼえるまりや。
しかもこの惨状をみて周りの生徒は逃げるでもなく、瑞穂を抑えるでもなく、それどころか御丁寧に、
次に瑞穂に駆け寄る順番待ちをしているらしかった。
「ああ〜っ、あたしも〜!……ぐえっ!?」
駆け寄ろうとした由佳里の襟首をつかんで引き戻すまりや。
「あんたまで何やろうとしてんのよ、おばか!…あの水筒ね」
テーブルに駆け寄り奏からきいた水筒の中身を確かめる。
「うわっ、やっぱり。由佳里」
「………」
「由佳里ってば」

28 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/18(日) 23:38:51 ID:inMi38wP0
ぎゅっ、ぶちゅ、バタン!ぎゅ、ぶちゅ、バタン!……
「………」
「……おいこら!」
「…ふえ?何です?」
ぼーっと羨ましそうに瑞穂オートメーションを眺めていた由佳里にまりやが云う。
「やっぱ、酔っ払ってるわ、瑞穂ちゃん。あんたのお酒で」
「あああたしのお酒って云わないでください。これはまりやお姉さまのお酒です」
「細かいことはいいっこなしよ。あんた、冷水機でお冷汲んできて!少しでも酔いを醒まさせるのよ」
「これ、まりやお姉さまのお酒なのですか〜」
奏が驚いている。
「うん。由佳里の誕生日用のね。なんでここに持ってきたの?」
「奏、麦茶と勘違いしてたのですよ」
「あ〜そうね。香りがないから。しかし、ほとんど空っぽになるくらい飲ませたのね」
「いいえ、奏はコップ一杯しかお姉さまにお注ぎしていないのですよ。一気にお飲みになりましたが」
「んん、ということは…」
まりやは周りの生徒をちらっと見た。
「…ボルテージ上げるためにこの子ら、さらに飲ませたわね…」
瑞穂のステータス異常に介抱するどころか嬉々として参加する下級生たち。
「まるで猫にマタタビね。考えるとコワイわ。…って由佳里!水まだ〜?」

由佳里は瑞穂の足元で伸びていた。傍にコップが転がっている。

「って!!このスカポンタン!参加するなって云ったでしょうが!」
慌てて、由佳里のもとへ駆け寄るまりや。
幸せそうに失神している由佳里の襟首をつかんで軽くビンタする。
ぺちぺち
「おーい、起きろ〜。この大バカモノ〜」
ぺちぺち

29 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/18(日) 23:41:48 ID:inMi38wP0
そのまりやの後から瑞穂が抱きついてきた。
「ん〜ふっふっふ。ま〜り〜や〜」
「わっうわ。瑞穂ちゃん!」
「御門先輩、ずるいです〜。順番は守らないと」
「うるさい!ずるくない!……ほら、瑞穂ちゃん、離れて…」
瑞穂は離れるどころかますますきつく抱きしめてくる。
「まりや〜ふふふ」
間近で見る瑞穂の顔は、紅く上気して物凄く色っぽい。凄艶と言ってもよい。
「こんなのに耳元で囁かれたら、たまんないわね」
ぎゅう〜
ガクガクガク…
まりやの体が震える。
「くっ、仕方ない。このまま、保健室に引っ張っていくしか…」
首に巻きついている瑞穂の腕をつかむと、そのままぐいと立ち上がって、食堂入り口に歩き始めた。
「まりやお姉さま、凄いのです〜」
奏が感嘆の声を上げるが、当のまりやは必死である。
(ここであたしが倒れたら、事態が収集できなくなっちゃう)
と、ここで倒れていた由佳里が復活した。
「あれ、えと、まりやお姉さま?一体?」
「ちょうど良かったわ。由佳里!お冷を汲んできて瑞穂ちゃんにぶっかけなさい!奏ちゃんは紫苑さま呼んできて!」
「わかりました〜」
奏が食堂を飛び出していって、由佳里がまりやと瑞穂の所へ駆け寄ってきた。
そしてまりやが抱えている方と反対側の瑞穂の腕を掴んだ。
「ばか、違うって!水を汲んでこいって云ってるのよ!」
由佳里は嬉々として
「いいいいいいただきま〜す」

ぎゅ、ぶちゅ、バタン…

「くくぉの、どバカ!役立たず!!」

30 :名無しさん@初回限定:2007/02/18(日) 23:43:28 ID:gMBOI+Sm0
キター(゜▽、゜

31 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/18(日) 23:44:58 ID:inMi38wP0
ちなみに周りの下級生たちは事態の成り行きを見守っているだけ。
もしかすると、瑞穂に近づく為にまりや陥落を期待しているものもいるかも知れない。
「ふふ…まりや〜…」
瑞穂が両腕をまりやの首にまわして顔を近づけてくる。
ぞくぞく!と震えがまりやの背筋を走って、思わず顔を背ける。
「ほ、ホント、た、たまんないわね。ほとんど人間兵器よ。瑞穂ちゃん」
瑞穂は腕を後に回して、まりやの背筋をつつっと撫でる。
ガクン
たちまち腰が砕けるまりや。
「こりゃアカン。猫にまたたびどころか、スー○−マンにクリプトナイトだわ。力が抜ける抜ける」
それでも何とか這いずって、瑞穂を引っ張っていこうとするが、ここで瑞穂がダメだし。
まりやの首筋に、ぶちゅううう…
「はやや、もうだめ〜」
まりやは最後の力を振り絞って、瑞穂の唇めがけて

「…い、いただきま〜す」

「ななななにをしてるんですか!まりやさん」
突如、まりやの目の前に手のひらが現れた。
復活した貴子だった。
「ああん、いいところで……じゃなかったわ。ほんと、いいところで!貴子あのね…」
「分かってます!どうせ原因はあなたでしょう。とにかく今はお姉さまを何とかしなくては。
ほら、まりやさん、お姉さまから離れなさい」
貴子が瑞穂の腕を掴んだ。

ぎゅ、ぶちゅ、バタン!…

「………つかえね〜!このあんぽんたんっ!!」
ずる、ずる、ずる
にじり寄ってくる瑞穂。

32 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/18(日) 23:47:50 ID:inMi38wP0
まりや陥落に高まる下級生たちの期待。
「ああ〜ん、もう。これまで!」
そのとき、倒れているまりやの両脇に背後から手が差し込まれ、ぐいっと後に引きずられた。
「大丈夫ですか、まりやさん」
華道部の部長、香原茅乃だった。
「茅乃さん!どうして…」
「大変な有様ですね。まりやさん」
そう云って現れたのは紫苑だった。
「し、紫苑さま〜。助かったあ」
思わず安堵のため息をつくまりや。
「むにゅむにゅ…」
暴れ疲れてうつらうつらし始めた瑞穂。
「あらあら、可愛らしいですわね」
紫苑は瑞穂をぎゅっと抱きしめた。
「あ、ちょっと、ダメです!紫苑さま!」
しかし、なんともない紫苑。
「……あれ?そう云えば紫苑さまも失神させる側だったっけ…」

「ん〜〜、すき〜〜」
チュッチュッ!
「うふふふっ」

安心したら同時に嫉妬の感情がムラムラと沸いてきてしまう。
「……ま、いいか…」
まだ、足腰に力が入らず、よたよたと貴子のところへ云ってほっぺたを叩く。
パン!パン!パンッ!
嫉妬と怒りが混じって、ちょっと強めに叩いてしまう。

33 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/18(日) 23:50:53 ID:inMi38wP0
「ほら、おきなさいっ!貴子!」
「ううん、痛っ!なにをするんです、まりやさん。…ま、鼻血が!叩きすぎですわよ、まりやさん!」
「その鼻血はあたしのせいじゃないわよ。ほら、終わったわよ」
その言葉に貴子が辺りを見回すと、瑞穂とにこにこと抱き合ってる紫苑。
「何故?」
「おんなじ属性同士は反応しないみたいね」
そして、辺りを囲んでいた下級生たちは、数人の3年、2年生たちに注意されてあちこちに散らばり始めていた。
「あら、あの方たちは…」
「うん。紫苑さま、使ったみたい。ほら、由佳里も起きなさい!この役立たず」
まりやが由佳里の肩を掴んでガクガク揺さぶると、由佳里がパッチリと目を覚ました。
「あ…あれ?まりやお姉さま?」
上半身を起こして周りをきょろきょろと見回す。そして瑞穂の姿を見つけた。
「お姉さま!お姉さま〜!………ぐえっ!?」
そう叫んで駆け出そうとした由佳里の襟首を掴んで引き戻すまりや。
「おのれは底なしかっ!!」
「あれあれあれ?紫苑お姉さまがなんで?あの方たちは?」
「たぶん、紫苑さまの裏方じゃないかしら」
「そんなのあるんですか!?」
「あるんじゃないかと云われてたわよ。主に文系クラブ2、3年生で構成されてるらしいわ。
あたしだって見るの初めてだし」

34 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/18(日) 23:54:02 ID:inMi38wP0
「紫苑さまは控えめな方ですから、今までそういうものの活動を禁止していらっしゃったのですわ。
だから活動は裏方。表立っては今回が初めてですわね」
貴子が補足する。
「君臨すれど統治せず。英国王室だって持ってるのに恵泉に2年君臨してる紫苑さまにあっても不思議じゃないでしょ」
「…でも、こんなことで…今まで使わなかった裏方さんたちを使ってもいいんですかあ…」
まりやたちは紫苑の顔を見た。

抱きかかえた瑞穂にキスをされ、緩みきった至福の表情を浮かべている紫苑。
「…本望みたいね」

その後、午後の授業は早退して瑞穂は紫苑が寮につれて帰った。
瑞穂にキスマークをつけられた生徒達は、そのキスマークを写真に取り宝物にした。
もちろん、そのキスマークが消えるまでその部分は洗わなかった。
そして、由佳里は…
「せっかくのあたしの誕生日なのに〜」
瑞穂が寝てしまって、盛り上がらないままの誕生日になってしまった。
「全部、まりやお姉さまのせいです。うわああん」
「ああ、泣かない。泣かない。瑞穂ちゃんのキスマークっていうプレゼントがあったじゃない」
「羨ましいのですよ〜。奏も抱きつけば良かったのですよ〜」
「でも…でも…まりやお姉さまのほうがキスマーク多いし…」
「ええい!それでも足りんかったら、あたしがキスマークつけちゃる」
そう云って由佳里に襲い掛かるまりや。
「わわ!いや、止めてください!いやーっ!!」


35 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/18(日) 23:57:15 ID:inMi38wP0
〜えぴろーぐ〜

翌日、教室にて。
「瑞穂さん、昨日のこと覚えていらして?」
紫苑が瑞穂に尋ねた。
「いえ、よく覚えていないんです。お酒には滅法弱くて。でも事のあらましはまりやから聞きました。
どうも申し訳ありませんでした。紫苑さん」
「そうですか…。いいえ、瑞穂さんが悪いんじゃないんですから気になさらずに。
…そうですわ!詫びの代わりといってはなんですが、3月のひな祭り…」
「はい?」
「私と一緒にお祝いしませんか?飲食はすべて私が用意しますから」
怪しげに微笑む紫苑だった。

 Fin


>
前の酔っ払いお姉さまでもう1本作ってみました。
へたくそですいません。誕生日なのにゆかりんを全然活躍させられませんでした。
頭ひねりましたが私ではもう、これが限界で・・・orz

お粗末さまでした。

もう疲れたよ…パトラッシュ…


36 :名無しさん@初回限定:2007/02/19(月) 00:14:14 ID:RaS+FC6c0
GJ!

こういう肩肘張らない位の方が、私には楽しいです。
いや、シリアスのも良いんですけれど、こういうのをまとめて
読める週末って大概お酒が入っているこの身としては(^^;;

つかファンブックとかで出版されないですかねぇ?


37 :名無しさん@初回限定:2007/02/19(月) 10:50:18 ID:kThozjMD0
>>35
ひな祭りwktk


38 :名無しさん@初回限定:2007/02/19(月) 12:49:29 ID:1zbau7v90
GJ!
ひな祭りの件よろしくお願いします

その前にホワイトデーもあるでよぉ

39 :名無しさん@初回限定:2007/02/19(月) 13:17:11 ID:m0N3dRT/0



★過去スレのミラーです★

処女はお姉さまに恋してるSSスレ
第1話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1108774069.html
第2話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1110222716.html
第3話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1110659167.html
第4話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1111234071.html
第5話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1111757700.html
第6話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1112791250.html
第7話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1115118638.html
第8話 http://2ch.pop.tc/log/06/03/26/1755/1117971026.html
第9話 http://2ch.pop.tc/log/06/08/21/2319/1143304515.html
第10話 http://2ch.pop.tc/log/06/11/23/1758/1156178671.html
第11話 http://p2.chbox.jp/read.php?host=pie.bbspink.com&bbs=erog&key=1164204810&ls=all





40 :名無しさん@初回限定:2007/02/19(月) 21:19:29 ID:6/dyPp4a0
>>38
…ひな祭りはホワイトデーの前だよ?w

それはともかく、「二人きりの」ひな祭りってことで、
久々に板らしい年齢制限な展開にwktk

41 :名無しさん@初回限定:2007/02/19(月) 22:04:26 ID:6LuCG3TR0
>>13-14
圭「ずいぶんレベルあがったわね」
一子「つかれました〜」
圭「じゃ、合体」
一子「へ?」
圭「天使一子とドリーカドモンを合体」
???「私は大天使幸穂…今後ともよろしく」


42 :名無しさん@初回限定:2007/02/19(月) 23:16:08 ID:PGclVGr10
やばい・・・
酔っ払った瑞穂ちゃんがかわいすぎる…

43 :名無しさん@初回限定:2007/02/20(火) 02:32:56 ID:BykNXKHt0
>>41
その流れだとデビルサマナーよりペルソナっぽい気が

44 :名無しさん@初回限定:2007/02/20(火) 17:16:49 ID:NxPNQAd+0
じゃあ今度はキス魔になった瑞穂ちゃんを書いてくれ。

45 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/20(火) 20:47:32 ID:17ZbFWCV0
何ででしょうか?
仕事から帰ってきて疲れているはずなのに、ここ最近、SS書いてますよ。
病気かも・・・。
仕事のイライラがこれしなきゃ晴れないんすよ

46 :名無しさん@初回限定:2007/02/20(火) 22:27:29 ID:ZYH2a0Rf0
>>45
仕事のストレス解消
こっちはSSが見れる
(´・ω・`)悪いこと何もないよ

47 :名無しさん@初回限定:2007/02/20(火) 22:28:48 ID:nmfrxdqY0
>>45
SSを読んで仕事のイライラを晴らしています。
待ってるよ!でも無理はしないで…

48 :名無しさん@初回限定:2007/02/21(水) 20:19:23 ID:I9WgKdfE0
>「むにゅむにゅ…」
>暴れ疲れてうつらうつらし始めた瑞穂。

ちょっと想像してみた…

…にやけて、悶えまくった!



49 :皆さん意外と忘れがちですが:2007/02/21(水) 22:27:27 ID:ohUbUrc00
投下すべきか悩むネタだけど、出来てしまったので投下。
--------
うっかりすると忘れがちですが……瑞穂ちゃんは、実は男の子です。

「ええ。うっかりするとつい、忘れてしまいますねぇ……」
「し、紫苑さん……」
「大丈夫です! お姉さまはお綺麗でお美しくて、立派にお姉さまとして生きていけますから!」
「……一子ちゃんまで……うっ、ううっ……」

うっかりすると忘れがちですが……まりやさんは、実はお嬢様です。

「そう、そうなのですよね……しかも家柄だけは相当な」
「ま、家柄がどーだとしても。あたしはあたし。それはどうやったって変わらないんだもの、そうやって生きていくしかないでしょ? だから、あたしはあたしらしく生きていく。それがあたしの生き方よ!」
「……僕にも僕らしい生き方をさせて欲しいんだけど」
「にゃは〜。それは無理ってものね☆」

うっかりすると忘れがちですが……紫苑さまは、実は病弱です。

「大丈夫です! 瞬着でくっつけておきましたから!」
「予告ネタはいいから……でも、お身体には気をつけてくださいね? 紫苑さん?」
「ええ、でもご心配要りませんわ? 最近、とても体の調子がいいんです。これも瑞穂さんのおかげかしら……」
「あらあら。妬けますわねぇ……。っていうか、紫苑さま、肌がつやつやして、瑞穂ちゃんはなんだかやつれて……。
 瑞穂ちゃん、ちょーっと詳しい話聞かせてもらおうか?」

うっかりすると忘れがちですが……一子ちゃんも、実は(元)病弱です。

「ええ。生前はひ弱な病弱少女だったのですよ。聞くも涙、語るも涙の物語なのです。ああお姉さま、最後に一目会いたかった……」
「一子ちゃん……」
「……本当なら湿っぽい話になるところなんだろうけど、幽霊になってからはほんっとに元気そのものだもんねぇ……。ま、そこが一子ちゃんのいいところなんだけどね」
「そりゃあもう、22年分の想いが幾星霜、積もりに積もってエネルギー充填120%!ですから! デスラー総統にだって負けませんよ!」

50 :名無しさん@初回限定:2007/02/21(水) 22:29:04 ID:ohUbUrc00
うっかりすると忘れがちですが……貴子さんは、実は人気者です。

「……わたくし以上に人気なお姉さまに言われても、今ひとつ説得力に欠けるのですが……」
「人気は数で決まるものではありませんよ? 貴子さんを想ってくれる人がいる。そのことが、一番大切なんですから」
「まあ、生徒会の後輩には大人気(だいにんき)でも、大人気(おとなげ)ないのが貴子だけどね〜?」
「その台詞、そっくりそのまままりやさんにお返ししますわ!!」

うっかりすると忘れがちですが……奏ちゃんは、実はドジっ娘です。

「そうですわ。こんなに可愛くて、こんなにしっかりしてるのに、さらにその上ドジっ娘なんて……、もう、わたくし奏ちゃんを手放せませんわ……」
「はややっ、く、くるしいなのですよ〜〜? ……はうぅ」
「紫苑さん、ストップストップ!!」
「……奏、お姉さまのお母さまが一瞬見えたのですよ……」



そして、うっかりすると忘れがちですが……



由佳里ちゃんのこと、たまには思い出してあげてください。



「わたし、またオチ担当なんですかー!?」


おわり。
--------

……ゆかりんはかわいいとおもいますよ?

51 :名無しさん@初回限定:2007/02/22(木) 13:38:08 ID:PZvj3Y560
>>50
GJ(o^-')bb

52 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/22(木) 19:47:38 ID:QJvnCM5r0
貴子さんものを投下します。

53 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/22(木) 19:48:08 ID:QJvnCM5r0
『あきらめの悪い女』
〜瑞穂と貴子〜

設定は貴子エンド後

恵泉女学院を卒業して2年。
大学に進学して一人暮らしを始めた瑞穂のマンション。
ここに昨年、厳島家を飛び出してきた貴子が同居している。
「そろそろ5時ですわ」
ピンポ〜ン
玄関ベルの音に貴子が嬉しげに立ち上がった。
「紫苑様、来られたようですね」
本日は紫苑が泊りがけで遊びに来ることになっていた。
前回会ったのは正月以来なので、紫苑好きの貴子も数日前から心が浮きだっていた。
「貴子さんは僕よりも紫苑さんが好きみたいですね」
「ふふふ、そうかも知れませんね」
喜び勇んで玄関に向かう。そしてドアを開けるとそこには、貴子の待ち望んでいたものとは正反対の光景。
「やっほー♪」
「………」
貴子が無言で冷たくみつめる。
「まりや!?なんで?」
「瑞穂ちゃん…来ちゃった♪」
巨大なボストンバッグを担いだまりやがそこにいた。
「ききき、来ちゃった♪じゃありません!何故あなたが来るのですか?」
「ごめんなさい貴子さん。私がまりやさんをお誘いしたのですわ」
そう云いながらまりやの背後から紫苑、続いて由佳里と奏もあらわれた。
「こんにちは、お姉さま」
「こんにちはなのです。貴子お姉さま、お久しぶりなのですよ〜」
「へっへっへ。聞けば紫苑様が瑞穂ちゃんの寝込みを襲いにいくって聞いたもんで。
なら、あたしもって手下1号と2号を連れてきたわけよ」

54 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/22(木) 19:51:03 ID:QJvnCM5r0
「襲うって……ふふふ不純な云い方をなさらないで。紫苑様は泊りがけでいらっしゃっただけです!」
「あら、襲えないのですか。残念ですわ」
「…紫苑さま……ととにかく、奏さんや由佳里さんはともかく、まりやさんはしょっちゅういらしてるではありませんかっ」
「いいじゃない。あんたも来てるんだし」
「私は住んでるんです!」
「おうおう、自分のマンションみたいに云っちゃって」
「ここは私と瑞穂さんの部屋です」
「居候でしょ」
「!!!」
貴子とまりやが玄関先で不毛な言い争いをしている間に紫苑たち3名はさっさと上がりこんでいた。
「おじゃまします」
「いらっしゃい。奏ちゃんも由佳里ちゃんも初めてだったかな」
「はいなのです。お姉さまの部屋に来させていただいたのは初めてなのですよ」
「はは。僕はもうお姉さまじゃないよ」
「あやや、失礼しましたなのです」
真っ赤になって謝る奏。
「でも瑞穂さんが男性とは今でも信じられないです。とっても美人のまんまで」
由佳里が云った。
「そうですわね。美しさは損なわれていませんわね」
「……ううっ、僕は、僕は…」
がっくりとへたり込む瑞穂。
「あら、落ち込ませてしまいましたわ」
「瑞穂ちゃん、なにやってんの」
まりやと貴子がやってきた。
よっこいしょとまりやが担いできたボストンバッグをおろす。
「まりやさん、えらく大荷物ですわね」
「夕食の材料をはこんできたのよ」
「…カレーを既に用意してますが?」
「いいじゃん、品数増えたって。財閥の総領息子の食卓がカレーだなんて侘しいもんじゃない」
「侘しくて悪うございましたね!!」

55 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/22(木) 19:54:07 ID:QJvnCM5r0
「へい!1号、2号準備しな!」
「はい、まりやお姉さま」
由佳里と奏がごそごそとバッグから材料を取り出し、台所の方へ運んでいく。
ひき肉・たまご・たまねぎ・牛乳…
「…ってハンバーグですか。しかも由佳里さんたちにやらせてるしっ!」
「スノッブな貴子に合わせてあげたのよ」
「……あなた、本当に人を怒らせる天才ですね…」
貴子の体が小刻みに震えている。もう少しで爆発しそうだ。
「で、でも貴子お姉さま。由佳里ちゃんのハンバーグは本当においしいのですよ〜」
「そ、そういえば僕も由佳里ちゃんの料理を食べるのは久しぶり」
貴子の雰囲気を感じ取って、奏と瑞穂が慌ててフォローにはいる。
「それにほら、貴子さん。カレーとハンバーグは古来より相性の良い組み合わせのひとつだと云われてるし…」
「…そんな言い伝えきいたことがありませんわ」
「まあまあ、そう興奮しないで。貴子」
まりやはポンポンと軽く貴子の肩を叩いた。
「料理が出来るまでのあいだ、あたし達はこっちで一杯やってましょ」
そう云ってソファーに座り込むとバッグから缶ビールやチューハイをゾロゾロと取り出す。
「手伝おうって気が全くありませんのね、あなたは。結構です。私は由佳里さんたちのお手伝いをします」
「料理はゆかりんたちに任せておけばいいのよ。カレーしか作れないあんたが手伝っても邪魔」
「っきいいいいぃぃぃ」

   貴 子 が 切 れ た

「やれやれ、飲む前からこんなに暴れちゃって」
「どなたのせいだと思ってらっしゃるのかしら」
「まるであたしのせいみたいにおっしゃられても」
「!!!そうです!あなたです!全てあなたです!その責任感のない発言、見事としかいいようありませんわ!!」
「いやあ、照れちゃうわね」
「褒めてなどおりません!!」
「貴子さん、もうやめて…。まりやには何を云ってもこんにゃく問答にしかならないよ」
瑞穂があきれたように割ってはいる。

56 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/22(木) 19:57:03 ID:QJvnCM5r0
食卓にはカレーとハンバーグが並び、みんなで食事する段になってもふたりの云い合いは続いていたのだった。
「まりやもいいかげんにして」
「そうね。料理を待ってる時間も退屈しなかったし」
貴子の怒りもまりやには待ち時間の退屈しのぎでしかなかったようだ。
「さあ、みなさん召し上がってください♪」
由佳里自慢の手作りハンバーグに全員、感嘆の声をあげた。
「ゆかりん、あんた腕をあげたわね」
「本当に。まるで専門のレストランの味のようですわ」
「さすが由佳里ちゃん」
みんなに口々に褒められてテレまくる由佳里。
「え、そんな。へへ」
「由佳里さん、あとで宜しかったら作り方を教えていただけませんか?」
「はい、喜んで!貴子お姉さま。これは合いびきの割合とミルクの混ぜ具合がポイントなんですよ」
「カレーはふつうね」
「ふつうで悪かったですわね」
まりやの言葉に即反応する貴子。
「た、貴子お姉さま。カレーもミルクを加えるとまろやかになりますよ。あとでレシピをお渡ししますね」
「ほら、由佳里もふつうだって云ってる」
「ああああたしは、そんなつもりじゃ…」
「いいんですよ。由佳里さん。この人とは違ってあなたが親切で云ってくださったのはわかってますよ」
「…ホントにやめて…」
「ふふふ、それにしても卒業して1年経ってもおふたりは本当に仲がおよろしいのですね」
紫苑が云い合いをつづけるふたりを見てわらった。
「紫苑様、残念ですがそれは勘違いというものですわ。私とまりやさんが仲が良かった形跡などどこにもありませんわ」
貴子が首をふって答えた。
「ええそうね。紫苑様、貴子さんでは到底あたしの相手にはなりませんわ」
わなわな震える貴子をなだめる瑞穂。
「貴子さん落ち着いて。なんだかまりや、今日はやけに貴子さんにからむね?」
「……べつに」
ふん、と横をむくまりや。

57 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/22(木) 20:00:11 ID:QJvnCM5r0
「昔からケンカするほど仲がいいというじゃありませんか」
「そういえば、由佳里ちゃんと奏ちゃんは仲がいいのにケンカしてるの見たことが無かったよね」
「はい、あたしと奏ちゃんはケンカなんてしたことないです。奏ちゃんかわいいし」
「由佳里ちゃんはお料理上手だし、運動神経もいいのでみんなの人気抜群なのですよ〜」
「そうそう!瑞穂ちゃん、由佳里ってば今年度の生徒会長になったのよ」
「えっ、そうなの。由佳里ちゃん」

由佳里の会長就任のことや陸上部部長のこと、奏の演劇部部長や今度のコンクールの出し物のこと
その他の恵泉の近況などを聞いていくうちに食事の時間は楽しく過ぎていった。

9時をまわり、寮生ふたり組は門限の為帰らなくてはいけない。
由佳里は本当は外泊届けを出したかったのだが、まりやが「模範の会長が外泊なんてダメ!」といって許さなかった。
「それじゃ、送っていくね」
「あや〜。瑞穂さま、奏たち大丈夫なのですよ〜」
「そうです。あたしたちなら大丈夫ですから。そんなことしていただいたら申し訳ないです」
「ダメダメ。夜中にかわいい女の子ふたりだけで帰らせたら、逆に僕が心配で気を揉んでしまうから」
「そうですよ。おいしい夕食のお礼だと思っていただいたら結構ですわ」
貴子も言い添える。
「由佳里、奏ちゃん。瑞穂ちゃんに送ってもらいなさい。今日の働きにそれ位の役得がなくっちゃね」
まりやはそういうと、立ち上がろうとする貴子の袖をつかんで、
「それじゃ瑞穂ちゃん。ふたりをお願いね。あたしたちは三人で留守番してるから」
「ちょ、まりやさん…」
「うん、それじゃいってくるね」

瑞穂たちが出て行くのを見届けた後、
「短時間しかいてもらえなくて由佳里さん達には何だか悪いことをしたみたいですわ。
こんなことになるのがわかってましたらもっと早い時間にきていただきましたのに」
「にゃはは、気にしなくて良いわよ。本人達も喜んでたし」
「そういうまりやさんは泊っていく気のようですわね」
「トーゼン!夜はまだまだこれからですし〜子供達は帰ったし〜これからは大人の時間ですものね〜」

58 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/22(木) 20:03:05 ID:QJvnCM5r0
そう云ってごそごそとバッグから、色々と取り出し始めた。
缶ビール、缶チューハイ、ウイスキー、焼酎、珍味……。
「…あなたの定番ですわね」
「あら、これはなんですの」
紫苑がプラスチック製の容器に入った珍味の容器を珍しそうに手に取った。
「ああそれはいか太郎くんですね。20串入って600円。なかなかいけますよ〜」
「こちらはピリカラ蛸べえと書いてありますわね」
「それも20串入って600円。ビールがすすむ、すすむ!」
「ちょっとまりやさん。完全に酒盛りするつもりで準備万端ですわね」
焦る貴子。
「もちろん」
「もしかしてその為に由佳里さんたちの外泊届けを止めましたの?」
「それもある。だけどそれだけじゃないんだな。ねー紫苑様」
「ええ、そうですわね」
にっこり微笑む紫苑。
「紫苑様まで…。一体なんですの?」
「まあ、それは酒盛りを始めてから!さあさあ、ビール持って…。かんぱーい」
まりやは貴子に缶ビールを押し付けると強引に酒盛りを開始した。
しぶしぶビールを口にする貴子。
貴子がビールを1本飲み干した頃合を見計らってまりやが声をかける。
「ねえ、貴子…」
「…なんですか、まりやさん。何だか気味が悪いですわね」
「あんたに云いたい事があってね」
「………」
「あんたと瑞穂ちゃん、来週婚約なんだって?」
ごほごほっ
「どどこからそれを?」
「あたしんちと鏑木家は親戚なんだよ?知ってて当然じゃん」
「…そう云われればそうですわね」
「いくら勘当してるからといっても厳島はきっとなんか云ってくるわよ?」

59 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/22(木) 20:06:04 ID:QJvnCM5r0
「…そうかもしれませんね。利用できるものは何でも利用する人たちですから」
「で、そのときあんた、どうする訳?」
「は?どうするとは?」
「例えばあんたの親父さんが厳島家として結納してやるから戻ってこいなんて云ったら
あんた家に戻るのかってことよ」
「………」
「そうなったら瑞穂ちゃん、しんどいことになるわよねえ」
「仮にそう云ってきたとしても私は戻る気などさらさらありません。
なにより勘当されたのではなくて私から縁を切ってきたのですから!
大体まりやさん、なんであなたにそんなことを云わなくてはならないのですか?」
「あたしは純粋に好奇心から聞いてみただけよ」
「と云ってますが、本当は嫉妬なさってるんですわ」
それまでひとり黙々といか太郎君をかじりながらチューハイを飲んでいた紫苑が割り込んできた。
「ちちょっと、紫苑様!なに云ってるんですか!?」
「判ってたことですが瑞穂さんがいよいよ自分の手を離れると聞いて、一言云いに来た…と」
「嫉妬、ですか?」
「まりやさん、今日はやけにあなたに突っかかってたでしょう?」
「ええ、そう云えば」
じーーー
ふたりの視線を受けて少したじろぐまりや。
「…まりやさん」
「な、なによ」
貴子が軽く、フッと笑った。
「あなた…結構あきらめの悪いひとだったんですね」
「なっなっ、貴子のくせにぃぃ!!」


   ま り や が 切 れ た


60 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/22(木) 20:09:02 ID:QJvnCM5r0
「ええ、ええ、どうせあたしはあきらめが悪い女ですわよ」
まりやが、持ってきた芋焼酎『森伊藤』をロックでがぽがぽ飲んでいる。
「仕方ありませんわ。とうに頭では納得してたつもりでも感情までは…ね。
私も『あの』瑞穂さんがいよいよ婚約だなんてショックがありましたわ」
紫苑がしみじみとした口調で云う。
「『あの』というのが引っかかりますわね」
「た〜か〜こ〜」
「な、なんですか」
「飲みが足りないわよ〜。もっと飲め〜」
強引に芋焼酎を押し付けるまりや。
「これはなかなかですわよ」
ピリカラ蛸べえを突き出す紫苑。
「あ、あ、私はあなた方ほどお酒に強くないんですから…、はあ、わかりました…
飲みますから…そんな注がないで…」
強引に勧められるまま飲む貴子。
「………」
「………」
「………」
「それで、ナニが云いたくて酒盛りになってるんですの〜?うぃ〜」
アルコールがかなり回ってきた貴子。すでに顔がまっかっか。
「婚約祝いの酒盛りということでしょうか」
顔色も口調も全く変わらない紫苑。
「ちが〜う!違います〜、紫苑様!いいこと〜?貴子」
トラ状態のまりや。
「今まではあたしが瑞穂ちゃんを引っ張り回してきたけど〜、これからはあんたが瑞穂ちゃんを護るのよ!」
「瑞穂さんは男性ですわよ」
チューハイ飲みながら答える貴子にサラミをかじりつつまりやが唸る。
「ちっが〜う。あたしがいってんのは、貴子、あんたが瑞穂ちゃんの旦那様になれって云ってんのよ」
「云ってる意味がわかりませんわね」

61 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/22(木) 20:12:39 ID:QJvnCM5r0
「瑞穂ちゃんは身体的にも能力的にも充分に男だけど、感情に流される脆いところがまだまだあるのよ。
いうなりゃ、精神的にはまだまだ甘ちゃんの乙女同然なのよ!それをあんたが護ってやれ!
出来るだけ身の回りのゴタゴタなんかでいらん負担をかけさせるな、といっとるわけだよ、あたしゃ!
それが出来ないっちゅうならばあたしは後見人としてあんたたちの婚約を認めん!!どうなんだ、あ〜ん?」
「あらあら、まりやさん。ハイテンションですわね」
紫苑が愉快そうに笑う。
「あなたに認めてもらわなければいけない理由はありませんわ」
「あたしの瑞穂ちゃんに苦労させるな〜」
「でも云わんとすることはなんとなくわかりますわね。ねえ、貴子さん…」
「……はい」
「私もあなたが将来、『鏑木貴子』となることに少しでも躊躇いを感じるなら、早急な婚約は少し待ったほうが
よいのではないかしら?とそうおもいますわ」
「お姫様な瑞穂ちゃんを野良犬の貴子が護れるのかと…」
「!っ誰が野良犬ですか、黙って聞いていればまりやさんだけでなく紫苑さままで!」
「そりゃ云いたくもなるわよ。あたしや紫苑さまでなく、なんでなんでなんで貴子なの!!」
「つつつ、つまりあなた方は私達の婚約に異議を唱えにきたと!?……いいでしょう!!」
ぷしゅっ
貴子は缶チューハイのプルトップをあけると、一口に飲み干した!そして一気に酔いがまわる!
「断言しましょう!わたくしが瑞穂さんを護りましょお!うぃ〜
だから〜あきらめの悪いあなた方は黙ってみていればよいのですわぁ!!」
紫苑がパチパチと拍手する。
「その言葉が聞きたかったのですわ」
「云ったね〜!貴子オ!」
まりやがサラミを口から撒き散らしながら叫ぶ。
「恥ずかしげも無くよく云ったぁ!その言葉に偽りがあったら、あたしはいつでも瑞穂ちゃんを攫いにくるよ!」
「そんな必要まったくなしですわ!大体あなた来年からデザイナーになる為、海外留学でしょ!」
ドンドン上がるボルテージ。もうみんな大声で叫びっぱなし。
「あら私がいますわ。私も当然、瑞穂さんをあきらめておりませんわよ」
「外国だろうがカンケイネー!あたしが瑞穂ちゃんの一番なんだからあ!」
「ワケわからない事を云わないでくださいな!婚約するのは私ですわ!」


62 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/22(木) 20:15:53 ID:QJvnCM5r0
「ただいま〜。遅くなってごめん。寮でお茶をごちそうになってて……。うっ、なに?酒臭い…」
瑞穂が奏と由佳里を送り届けて部屋に帰ってきた時、そこにいたのは3匹の大トラだった。
「うわあ、三人ともできあがっちゃてるの?すごいハイペース…」
「おやおや〜お姫様の御帰宅ですわね〜」
「だけど現物見るとやっぱりあきらめられませんわね」
「だめですっ!わたしのですっ!許しませんっ!さわるなっ!」
何のはなしだか判らないながらも、嫌な予感を覚える瑞穂。
「ちょっと、なんだか判らないけど落ち着いて。みんなテンぱり過ぎだよ」
「よっしゃ、じゃあ人数も揃ったことだし勝負して決めよう!」
「なに勝手なことを!勝負も何も…」
「それでナニで決めましょうか?」
貴子の反対を無視して勝手に話をすすめるまりやと紫苑。
「にっひっひ、それは…コレだああ!」
そういってバッグからまりやが取り出したのはボードゲームだった。
「ウ〜勝負なんかしませんっ…て、またコレですか!まりやさんの定番ですわね」
「おやあ、逃げるのかね?貴子くん。いいとも、さっさとしっぽを巻いて逃げたまえ、負け犬君」
「…いいでしょう、受けて立ちましょう!私は逃げなどいたしませんわっ!」
「お見事な釣られっぷりですわ〜」
「ちょっと、三人とも!さっきからナニいってるのかわかんないよ。勝負ってなんの勝負?」
紫苑が瑞穂を振り返って楽しそうに笑って云った。

「王子役の取り合いですの」


  Fin

63 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/22(木) 20:18:58 ID:QJvnCM5r0
お粗末さまでした。

パワーなくてすいません…。

64 :名無しさん@初回限定:2007/02/22(木) 22:58:56 ID:PZvj3Y560
>>63
このあと瑞穂ちゃんどうなったのか気になる
乙です

65 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/24(土) 00:44:35 ID:ZjVs6qkD0
2日連続の投下をさせてもらいます。
今回はバカ話で。

66 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/24(土) 00:45:14 ID:ZjVs6qkD0
『なに?このゲーム』
〜瑞穂と貴子2〜

設定は貴子エンド後

恵泉女学院を卒業して2年後。
大学生となった瑞穂と貴子が一緒に住んでいるマンションに、今日はまりやと紫苑が泊りにきていた。
深夜、用事で出かけていた瑞穂が部屋に戻ってみると、そこは酒盛りの真っ最中となっていた。
「なに、コレ。凄いお酒のニオイ」
部屋に散らばるビンや空き缶。とても10本や20本ではきかない。
「おやおやお姫様の登場ね〜」
タンクトップのまりやが瑞穂に抱きついた。
「瑞穂ちゃ〜ん、チューして〜」
「うわ、やめて、まりや!」
「この酔っ払い、離れなさい。勝手に人の恋人に抱きつかないでいただきたいですわ」
そういう貴子も既にそうとう酔っているようだ。
「ふふーん。瑞穂ちゃんについてはあたしが先約だもん。○△をああしたこともあるし、○×をこうしたことも…」
「わわ、まりや!そんな誤解するような事を云わないで」
「え〜、そんな照れなくてもいいじゃん。XXXやXXXも知ってるしぃ〜」
「何だかわけがわかりませんが取りあえず腹だけは立ちますわっ!」

瑞穂の登場でさらにヒートアップする酒盛り会場。

「あら、これはまりやさんが持っていらしたの?」
まりやのボストンバッグから顔を覗かせていた箱に気がついた紫苑が、声をかけた。
「ええ、紫苑さま。せっかく四人集まるんだし、ゲームするのもいいかと思いまして」
引っ張りだしたそれはボードゲームだった。
「まりやは好きだね、この手のゲーム」
箱に書かれているゲーム名を読む。
「『ドカっとポン!人生波乱劇場!』……なに?このタイトル。なんかいろんな意味でギリギリだね」

67 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/24(土) 00:48:18 ID:ZjVs6qkD0
「ふっふっふ。恵泉屈指のボーゲーマニアを自負するあたしが選んだ一品よ。そりゃ凄いんだから!」
「まりやさんにそこまで云わせるゲームもなんだか怖いですわね」
「面白そうではありませんか。さっきの勝負の続きはこれで決めることにいたしませんか?」
紫苑が嬉しげに提案する。
「紫苑さま、それはいいですわね。どう、貴子、これで勝負つけましょう」
「なにが勝負ですか!もとよりあたしのものだと云ってるでしょう!」
瑞穂にはなんだかさっぱりわからないが、どうも瑞穂がいない間にひと悶着あったようだ。
「ね、まりやも貴子さんも落ち着いて!ゲームなら普通に楽しめばいいじゃない」
「ほ〜ら、瑞穂ちゃんもゲームしたいって云ってるじゃん。貴子はどうかな〜、ゲームが怖いのでちゅか〜
そうでちゅか〜、負け犬ちゃんは銀行係でいいでちゅよ〜」
まりやの相手をムカつかせずにはいられない絶品の煽りを珍味蛸べえをかじりながら、楽しげに見守る紫苑。
「…いいでしょう。グウの音もでないくらい叩きつぶして差し上げますわ」
その挑発にいとも簡単にのってしまう貴子。
「まりやさん、いつもながら大したものです」
「……紫苑さん……楽しんでますね…」
さっそくボードを広げるまりや。
「それじゃ、景品を決めておきましょ。トップの人間は瑞穂ちゃんをすきに出来るということで」
「ええええっ、なに、それ!僕がかかってるの?」
「はい、そういう話になってましたの」
「大丈夫ですわ、瑞穂さん。私が勝ちますから」
根拠ない自信にみちた貴子の言葉。
「うう、勘弁して…。まりや、もし僕が勝ったらどうなるの?」
「瑞穂ちゃんは景品だから勝負に関係なし…と云いたいところだけど、それじゃゲームを楽しめないでしょうから
サイコロふってあたし達三人の中のひとりと一日デートでいいわ」
「なにそれ!?結局、同じことなんじゃ…」
「ぐだぐだ云わない。はいはい、それじゃ始めるわよ」


68 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/24(土) 00:51:13 ID:ZjVs6qkD0
ルーレットを回して順番を決める。
まりや・瑞穂・貴子・紫苑の順番になった。
全員100万ドルを持ってスタート。
「それじゃ、いくわよ」
カラララッ
「2ね。…生命保険加入のチャンス、1万ドルか。もちろん入るわ」
「続いて僕だね。…6と…あっ職業決めだね」
 
<職業決定 宗教を開いて信者を集める。他のプレイヤーから20万ドルづつ貰う。もしくは熱く抱擁してもらう>

「……まりや、ナニこれ」
「あらあ、瑞穂ちゃん。教祖になっちゃったの?こりゃ信者集まりそうだわ。じゃ、抱擁しましょうか」
そう云って抱きついてくるまりや。
「なに抱きついてるんですか!瑞穂さんから離れなさい!」
「なにって、指示に従ってるんじゃない」
「…まりやが選び抜いた一品だけあってまともなゲームじゃないよね…。それじゃ20万ドルもらうよ」
「え〜、熱い抱擁にしようよ〜」
「20万ドル」
3人から20万ドルずつもらう瑞穂。
「次は私ですわね」
カラララッ
「5ですわね。……私も職業決めです」

<職業決定 フリーター 野良犬のように自由に生きる>

「・・・・・・」
ぶるぶると震える貴子。
「さすが貴子。自由業ね」
「・・・なんですの、このゲーム・・・」

69 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/24(土) 00:54:10 ID:ZjVs6qkD0
続いて紫苑がルーレットを回す。
カラララッ
「8ですわ。……」

<職業決定 マハラジャの第一夫人ルーレット回すごとに20万ドル収入 指定した人に10万ドルを払って膝枕をしてもらえる>

「マハラジャの夫人って…」
「では、はいコレを」
「何ですか、紫苑さん」
「ですから10万ドルですわ」
「………」
「………」

瑞穂の膝枕状態の紫苑を見て羨ましそうなまりや。
「いいなあ、紫苑様。じゃ、あたしもそれ狙いで…」
カラララッ………

<職業決定 詐欺師 保険に入っていれば保険喪失と引き換えに100万ドル騙し取る>

「あらあらまりやさん。詐欺師ですか。とってもお似合いですわね」
「うるさい。こうなったら稼げるだけ稼ぎまくってやるわ」
瑞穂の番。カラララッ……

<貧しい者への施し 誰かに10万ドル施す>

「誰でもいいんだよね、じゃあ貴子さん」
「有難うございます。瑞穂さん」
「貴子も瑞穂ちゃんにたかってばかりじゃだめだよ、ちゃんと自活しないと」
「ほっといてください」

70 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/24(土) 00:57:09 ID:ZjVs6qkD0
貴子の番。カラララッ……

<友人に晩御飯をおごってもらう 誰かから1000ドルもらう>

「………やっと収入だと思ったらたった1000ドルですか。まあいいです。まりやさん、くださいな」
手をだした貴子の顔に1000ドルが投げつけられる。
「ほら、恵んであげるわ、こんなゴミ」
わなわなと震える貴子。
紫苑の番。カラララッ……「4」

<若いつばめを囲う 指定した人に50万ドル払えば体に好きに触ることができる>

「はい、瑞穂さん」
速攻で50万ドル差し出す紫苑。
「早っ!紫苑さん、別にムリに50万払わなくてもいいんですよ。どっちでもいいって書いてあるんですから」
「どうぞ」
聞いてないのか、にこやかに50万ドルつきつける紫苑。
「紫苑さ〜ん」
「どうぞ」
微動だにしない笑顔。
仕方無しに50万ドル受け取る瑞穂。
「全く、お金貯めるゲームでお金使って……ひゃっ!?」
紫苑が瑞穂に膝枕をしてもらいながら、ひざから太ももを撫で回している。
「うふふ、かわいらしい声ですわ。本当にマハラジャになったよう…」
「………」
さらにわなわなと震えている貴子。
しかし、紫苑相手に文句も云い辛い。

71 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/24(土) 01:00:20 ID:ZjVs6qkD0
まりやは横で一生懸命ルーレットを回す練習をしている。
「いいなあ、紫苑さまばっか。3マス目ね。あたしも次は3出て!」
カラララッ……
手加減して軽く回す。3が出そう…。
ボタッ!
ルーレットの上にいか太郎くんが落ちてきた。
見上げると缶ビールを片手にもった貴子が
「あら御免なさい、手が滑っちゃった。いか太郎くんってクセになりそうですわね」
ルーレットは「5」
「こんなのナシ!もっぺんやり直しよ!」
「あらあら見苦しい。ボーゲーマニアとか云ってらしたけどその程度ですか。いいですわ、
あなたがプライドないのはよっく判っておりますからもう一度チャンスを差し上げてもよろしくってよ?」
「………いるかああ!!これでいいわい!!」

<大儲け!!指定した人から100万ドル奪う。もしくは電気あんま>

「………」
「………」
「…貴子、100万ドル」
「ありませんわ」
「じゃあ、こっちきなさい」
まりやが貴子の首根っこをむんずとつかんで隣の寝室へと引っ張っていく。
「えっ、まさか、ちょ、いやああ!!」
「ええい、じたばたするなあ」
貴子を引っ張り込むと寝室のドアがばたんと閉められた。
そのあと何かどたばたと暴れる物音…

ヒイイイイイイィ!!

悲鳴、そしてしばらくの静寂。
ふたりが出てきた。
満足げな表情のまりやと悲壮な顔でしゃくりあげている貴子。

72 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/24(土) 01:03:26 ID:ZjVs6qkD0
それまで恐ろしい経過に声も出せずに硬直していた瑞穂に貴子が、
「ひっ、ひっく、み、瑞穂さん…わ、私、ひっく…け、汚されて…」
まりやに非難の視線を向ける瑞穂と紫苑。
「ええい、うるさい。大袈裟なこと云うな。つぎ、瑞穂ちゃんさっさとする!」
「う、うん」
カラララッ……

<聖者の労わり 誰かに10万ドル与える>

「それじゃ、貴子さん。はい、元気をだして」
「あ、有難うございます。瑞穂さん」
「瑞穂ちゃんてば、なんかすごい女たらしになりそう」
「瑞穂さんと邪なあなたを一緒にしないでください!」
貴子の番。カラララッ……

<復讐するは我に有り 指定した人の全財産を取り上げて更に8コマうしろに飛ばすことができる>

「………」
「………」
「…まさか、貴子…」
「ふっふっふ、やりましたわ!ついに!」
「ちょっと、それをあたしにするんじゃないでしょうね!?」
「なに、お間抜けなことを!あなた以外にいるわけありませんわ」
「無理矢理することないでしょ」
「全然ムリではありません」


73 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/24(土) 01:06:23 ID:ZjVs6qkD0
……まりやは一文無しになった。
「貴子のくせに…貴子のくせに…」
ぶつぶつと呪詛の言葉を吐いているまりやと上機嫌の貴子。それをみて引いている瑞穂。
唯ひとり、紫苑だけが瑞穂の膝枕で御満悦状態。
「つぎは私ですね」
カラララッ……

<使用人を雇う 指定した人に30万ドルを払えば何かひとつしてもらうことができる>

「はい、瑞穂さん。30万」
「ま、また。紫苑さ〜ん」
「飲みすぎでちょっと火照ってまいりましたの。扇いでください」
瑞穂の膝枕で寝転びながら片手にいか太郎くんもう片手は太ももをお触り、そんな紫苑に団扇でそよそよと風を送る。
いまや瑞穂は完全に紫苑のつばめだった。
泥沼の争いを続ける二人とは雲泥の差。
「…はあ〜、紫苑さまってばさっきから瑞穂ちゃんに貢ぎ続けちゃってるわね」
「ししし紫苑さま!いくらなんでもやりすぎではありませんか!?何度も云ってますように瑞穂さんは私の…」
「あら、これもルールですわ。貴子さん」
涼しい顔で極楽モードの紫苑。
「ぐっ…それもこれもこんなゲームもってきたあなたが悪いのですわ、まりやさん!」
「あら、八つ当たりですか?見苦しいですなあ」
「だって、紫苑さまがほら!瑞穂さんに密着してほらっ!あれっ!私の瑞穂さんに!」
「だってあたしのせいじゃないしー」

74 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/24(土) 01:09:22 ID:ZjVs6qkD0
「ないしーじゃありません。はあ、口先ばっかりのドンケツのあなたに云ってもなんですけど…」
「……なんですってえ!」
「ゲーマーだとかなんとかビッグマウスだけはいっちょまえのベベタのあなたに云っても…」
「………!!」
カラララッ……




「8」




<大儲け!!指定した人から100万ドル奪う。もしくは電気あんま>





「………」
「………」
「…あああの、ままりやさん?こここれ、100万ドル…」
「いらん!ちょっとコッチきなさい!」
まりやは貴子の首根っこをむんずとつかんで寝室の方へ引っ張っていく。
「えっ、いや、やめて、やめてえええぇぇ!」
悲鳴をあげる貴子を引きずりこんで、ばたんとドアが閉じられる………。




75 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/24(土) 01:13:06 ID:ZjVs6qkD0
「ひっ、ひっく、み、瑞穂さん…わ、私、ひっく…け、汚されて…」
「いやあ、満喫したわ」
満足そうな表情で缶ビールを飲むまりや。じつによく似合っている。
「おふたりは本当に仲良しなんですね」
紫苑が羨ましそうに云った。
「…それはどうかと思いますが…」

一時間後、ゲーム終了。
トップは瑞穂でそのほとんどは紫苑からの貢がれたお金。
2位はまりやであのあと、テキ屋に転職。地道に稼いでいた。
3位は紫苑。紫苑は女の子座りした瑞穂の太もものうえに乗っかり、瑞穂の首に手を回して、缶ビールを飲んでいる。
最下位は貴子で、ドコにも定職につかないまま株で大損、すってんてんになってしまっている。
「……すごい波乱のゲームだったね」
「貴子、あんたってほんとに運がない女ね」
「…ほっといてください」

76 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/02/24(土) 01:16:04 ID:ZjVs6qkD0

瑞穂がトップだったので、デートの相手をサイコロ振って決めた結果、紫苑になった。
「まあ、うれしいですわ」
「なに、実質紫苑さまの一人勝ちじゃない」
「うええ、うえええん。こんなゲーム…こんなゲーム…」
このゲームで散々な目にあった貴子が大泣きしていた。
「あらあら、貴子さん泣きやんで頂戴」
「うえええ、うええええ」
「困りましたわね。そうですわね、貴子さん。瑞穂さんとデートするのを代わってあげても宜しいですわよ」
「うえ!?本当ですか?紫苑さま」
「ええ。ただし、貸しひとつということで」
「…紫苑さまの貸しはちょっと怖いですが…。わかりました、有難うございます。紫苑さま」
「ええい、あたしは納得いか〜ん」
ひとり憤慨するまりや。
「今度はこれで勝負よ!!」
と云ってバッグから今度はカードを取り出したまりやに
『もう勘弁して頂戴!!』
声をそろえて抗議する瑞穂と貴子だった。

  Fin



お粗末さまでした

77 :名無しさん@初回限定:2007/02/24(土) 08:00:42 ID:qJ2lHCaC0
>>76
お疲れさんです(´・ω・`)ノ
紫苑様( ゚Д゚)ウマー瑞穂ちゃんなにやってんのさwww

78 :名無しさん@初回限定:2007/02/24(土) 10:04:41 ID:mVGN1pOj0
>>76
いや面白かったわ
またお願いします

79 :名無しさん@初回限定:2007/02/24(土) 16:28:25 ID:1N2JWFbq0
>>76
2話連続で読ませていただきました。GJです。

80 :名無しさん@初回限定:2007/02/24(土) 18:20:10 ID:bnSwKMbc0
GJ!

わらた!
とっても恐い紫苑さまの貸しキボ

81 :名無しさん@初回限定:2007/02/25(日) 02:33:28 ID:xC4vJ+WE0
GJ
電気あんまwww

>まりやに非難の視線を向ける瑞穂と紫苑。
紫苑さまは電気あんまを知っていたのだろうか?

>「おふたりは本当に仲良しなんですね」
>紫苑が羨ましそうに云った。

「貸しの件ですが、瑞穂さんに、電気あんまを1回、ということではいかがですか?とっても楽しそうですし」

82 :名無しさん@初回限定:2007/02/25(日) 11:08:52 ID:+DMANgOV0
とりあえず>>81が電気あんまスレ住人ってことはわかった

83 :名無しさん@初回限定:2007/02/25(日) 15:32:55 ID:rn7uSPE30
>>76
これはいいモテ瑞穂ですね。
何故だろう、貴子さんがへっぽこであればあるほど、笑えてならない。
瑞穂ちゃんに拾ってもらえて良かったなぁとしみじみ感じる、昼下がり。

84 :名無しさん@初回限定:2007/02/27(火) 22:30:13 ID:bAAtoWgt0
授業終了のチャイムが鳴り、起立、礼、の声
瑞穂ちゃんが席を立ち紫苑さまが声をかける
「瑞穂さん、どちらへ?」
「あの…お手洗いに…」
少し顔を赤らめながら瑞穂ちゃんが答える
「お手洗いといえば…知ってる?」
圭さんと美智子さんがが会話に加わってくる
「なんでも最近、出るんだそうですよ」
「出るって何がですか?」
なんとなしに瑞穂ちゃんが聞き返し、圭さんが無表情に一つの固有名詞を答える
「…怪人赤マント」
「あら、なつかしいですね、確か人間の血を吸うアレですか」
「紫苑さん…一体何歳なんですか…で、どういうことなんですか?美智子さん」
瑞穂ちゃんが一番情報を持っていそうな美智子さんに聞く
「私も実際に見たわけではなく又聞きなんですが…
「お手洗いの窓から赤いマントが翻って外に出て行くのを目撃した生徒がいるそうです」
「見間違いではなくて?カーテンと見間違えたとか…」
今度は紫苑さまが聞き返す
「ええ、何人もの生徒が目撃しているので、見間違いではなさそうです」
「恐ろしいことに十数人いるはずの目撃者は、黙して何も語らず…」
圭さんが瑞穂ちゃんを怖がらせるような発言をする
「でも…ええと…今の私は生理現象が抑えがたいので…失礼しますっ!」
パタパタと足音を残して瑞穂ちゃんは教室から走り去っていった



85 :名無しさん@初回限定:2007/02/27(火) 22:31:20 ID:bAAtoWgt0
そしてトイレのドアを開けると、一人の生徒が立ち尽くしているのが視界に入ってきた
ふいに視線をそらすと、今まさに窓から外に出ようとしている赤いマント
反射的に瑞穂ちゃんはそれを追い、無造作に腕らしき部分をつかみひねり上げる
うめき声を上げたのは男の声、学院にはいないはずの男
瑞穂ちゃんは赤マントを床に引きずり倒し後頭部に痛打を加え赤マントを昏倒させる
翻ったマントの下から現れたのは何も纏わぬ男の裸体だった
数分後、サイレンの音と共に怪人赤マント事件は終息した

「怪人の、正体見たり変質者…というところですか…」
「幽霊の正体見たり枯尾花、ですよ紫苑さま」
「幽霊の私の正体はやっぱり幽霊なんですけどね〜」
どこかで一子ちゃんがそうつぶやいた

86 :名無しさん@初回限定:2007/02/28(水) 19:14:27 ID:5XrGMUJY0
放課後の教室に…
「圭さん、いる?」
見知らぬ子供が入ってきて、瑞穂ちゃんにそう言った
「君…誰?」
当然、瑞穂ちゃんはその子が誰なのか尋ねる
ふいに、瑞穂ちゃんの肩に手が置かれる、それは圭さんの手だった
子供は圭さんに一枚の紙を差し出すと消えてしまった
子供のいた場所には人の形をした紙切れが落ちていた
「あの…圭さん?…これは、一体…」
「これ?母の式神よ、帰りに買い物をしてきて欲しいみたい」
子供から渡された紙にはお買い物リストが記されていた


87 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/02(金) 19:09:35 ID:RNV+Hh5U0
投下します。

88 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/02(金) 19:10:28 ID:RNV+Hh5U0
『ひな祭りの悲劇〜3月2日編〜』


設定は瑞穂ニュートラル


「というわけで、寮でみんなで祝いたいんですけど、紫苑さん、来てもらえますか?」
以前、瑞穂は紫苑からふたりでひな祭りをしたいと誘われて、承諾していたのだが、
まりやたちからも誘われてやはりみんなでするほうが良いのではないかと思い始めていた。
「……そうですか」
なにやら考える様子の紫苑。
「ほら、貴子さんも呼んで大勢で騒いだ方が…ね?」
なんとなく紫苑の機嫌をとるように伺う瑞穂。
「そうですわね。皆さんで楽しくする方がきっと良い思い出になりますわ」
その言葉を聞いて瑞穂がほっとした表情になる。
「ええ、皆で騒げる最後の機会なんですから」
あと一週間で卒業式。その後皆は内外にバラバラになる。
瑞穂は外部の大学へ、紫苑はエスカレータで上に進学する。
「でも、私は最後の機会にするつもりはありませんけど」
「えっ、それはどういう…」
紫苑はその問いに答えず、ふふと笑っているだけ。
「ところで瑞穂さん。来月からは一人暮らしをなさるそうですわね」
瑞穂が一人暮らしをして大学へ通う予定なのは、まだ、誰にも云っていない。
なのになぜか、紫苑がそのことを知っていることに瑞穂が驚いた。
「ええ。そうですが、何故知っているんですか?」
「うふふ、それは内緒です」

89 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/02(金) 19:13:15 ID:RNV+Hh5U0

なぜか紫苑に自分の一人暮らし用のマンションに連れてこられた瑞穂。
居間には三段のお雛様が飾られて、テーブルには料理と飲み物が並んでいた。
「えーと、紫苑さん。これは一体…」
午前中に今日の午後、大事な用があるから付き合って欲しいといわれて、タクシーで連れてこられたのが
ここだった。
「何で紫苑さんがこの部屋の鍵を持ってるんですか?というか、これは何ですか?」
瑞穂には全く訳がわからない。
「黙ってお部屋を使わせていただいて御免なさい。実は私、明日は大事な用が出来てしまって
寮にお伺いできなくなってしまいましたの。それで、瑞穂さんと一日早くお祝いしようと楓さんにお願いして
この部屋を使わせていただきました」
「楓さんかあ」
紫苑と楓が仲が良いことは瑞穂も知っていた。
「ということはこの部屋のことも、楓さんから聞いたんですね」
「はい♪」
「……仕方ありませんね。でも、そうなら云ってもらえれば寮で一日早くすることも出来たのに」
「まあ、それは気がつきませんでしたわ。申し訳ありません」
まるっきり棒読み口調。
「じゃ、早速始めましょうか。どうぞそちらにお座りください」
そう云ってクッションを出す紫苑。
自分の部屋なのに何だか、客みたいな変な感じになっている瑞穂。
「先ずは乾杯しましょうか、白酒で」
「いや、あの紫苑さん。僕はお酒に弱いんです。出来ればジュースの方が」
「最初の一杯だけです。はい、お猪口を持ってください」
強引にお猪口を押し付けた。
「ちょ、ちょっと紫苑さん。コレお猪口じゃなくて湯のみですよ」
「あら、そうですか。ま、いいじゃないですか」
「ダメです。お酒はほんとに弱いんです」
湯飲みをお猪口と交換してもらう。

90 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/02(金) 19:19:21 ID:RNV+Hh5U0
「まったく、って、紫苑さん!?」
「はい?」
「このお猪口、穴が開いてますよ」
「あら、そうですか。すいません。それしかありませんので穴を指で塞いで使ってください」
「ええっ…な、なんでこんなお猪口を…」
「きっと不良品ですわね」(※べく杯といって注がれた酒を飲み干さないと杯を手から離せないように出来ている杯)
そう云って瑞穂のお猪口に白酒を注ぐ。
「思ったよりいっぱい入りますね。…っと入れすぎですよ。もういいですから!」
なみなみと注いだあと、紫苑は自分のお猪口にも注いで乾杯する。
「一口だけですよ。ホントに…あっ!この杯、飲み干さないと下に置けないじゃないですか?」
「あら、そうみたいですね」
「…紫苑さん。わざとですね」
何故だか紫苑が自分に酒を飲ませようしていることに気がつき始めた瑞穂。
「さ、もう一杯」
「いえ、結構です」
警戒して瑞穂は一気にお猪口を飲み干すと、サッと杯をテーブルに置いた。
その杯をチラと見て、紫苑は料理を勧めた。
「それでは料理の方もどうぞ。すべて私が用意いたしましたの」

から揚げ、焼き鳥、田楽、ほっけの塩焼き・・・

「………」
「どうしました?」
「…紫苑さん、普通はあられだとか桜餅だとかこんぺいとうみたいな女の子らしい食べ物だとおもうんですが?」
「瑞穂さんは女の子ではありませんでしょ♪」
「…でもなぜつまみ系ばかりなんですか。僕、本当にこれ以上は飲みませんから」
「大丈夫です。ちゃんとジュースも用意してありますから」
そう云って湯飲みにジンジャエールを注いだ。
「湯飲みにジンジャエールですか」
「気分だけでもお酒らしく」

91 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/02(金) 19:22:14 ID:RNV+Hh5U0

30分後
「この料理、どれも濃いですね」
「私が濃い味付けが好きなもので」

45分後
「な、なんか…喉が渇くんですが…」
「はい、どうぞ飲んでください」

1時間後
「あ…あれえ、なんかおかしいです。紫苑さん。ぐるぐる回ってますよ〜」
「あらあら」
紫苑は微笑みの表情で姿勢を崩さず白酒を飲んでいる。
「ししし紫苑さん……まままさか…ジンジャエールにお酒を混ぜたりしてませんよ…ね」
「はい。混ぜていませんよ」
にっこり笑って
「だって、ジンジャエールでなくてチューハイなんですから」
「ええ〜…じゃ、さっき飲んだ炭酸オレンジは…」
「甘〜い単なるチューハイオレンジです」
謀られたことに気がついても後の祭り。足腰に力が入らない。
「瑞穂さん、用心深くて苦労しましたわ。これでも知恵を絞ったんです」
にこやかな笑みを絶やさず喋る紫苑。
(こ、こわい…)
何だかわからないが、取りあえず少しでも離れようと這いずって逃げ出す瑞穂。
紫苑はそのズルズルと逃げ出す瑞穂に近寄って、肩に手をかけた。
「ふふふ、逃がしませんよ。これからが本番なんですから」
「わっ!!」
肩をグイと引っ張って、紫苑は瑞穂を胸にやさしく抱きかかえる。
「強いお酒だと瑞穂さん、寝てしまわれるから…」

92 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/02(金) 19:25:13 ID:RNV+Hh5U0
そう云いながら顔をゆっくりと瑞穂の顔に近づける。
「寝顔の瑞穂さんも可愛らしいですが、それではおもしろくありません」
軽いキスをする。
「な…なんで……んぐっ」
瑞穂の言葉を今度は深いキスで塞ぐ。
窒息するほどの長い時間の後、ようやくプハッと唇を離した。
「瑞穂さんが悪いのですよ。だって瑞穂さんは自分からは行動してくださらないでしょう?
私、瑞穂さんとお別れしたくないんですもの」
ばたばたともがいて逃れようとするが、紫苑は強く抱きかかえそれを許さない。
「私も殿方とこういうことをするのは初めてなもので。キスの最中は息継ぎって出来ないのでしょうか」
そういうと再び顔を寄せる。
反射的に顔を背ける瑞穂だが、紫苑が強引にこちらに向かせると再び強く唇を重ねる。
強く閉じた瑞穂の唇が、今度は紫苑の舌によってこじ開けられ、口中深く紫苑のそれが差し込まれた。
「んっんっ………っはぁ…」
ねっとりと激しく絡み合う唾液の水音と苦しげな息遣い。しばらく後、互いの唇から糸を引かせて顔が離れた。
ぐったりしている瑞穂。息が出来ないくらい強く、一方的に舌を絡ませられて意識朦朧となっている。
酔った上に窒息させられて、完全にグロッキー状態。ぼぉっとなっている瑞穂の表情に紫苑がますますうっとりする。
「まあ、可愛らしい。ほんと、瑞穂さんは手放せませんわね」
「あ…あ…紫苑さ…やめて…酔ってる…ですか…」
「鈍い人ですね、瑞穂さん。女性からのアプローチを無にするものではありませんよ」

瑞穂の体を優しく床に仰向けに寝かせると、紫苑はその上に覆いかぶさった。
逃げられないように右手はしっかりと瑞穂の肩をつかんだまま、優しく首筋に唇を這わせて、
左手で瑞穂のブラウスのボタンをはずしていく。
そして、あらわになった瑞穂の引き締まりながらも薄い胸に舌を移動させる。
紫苑を押しのけようとするが、まるで力が入らない。
「……いや……いや、紫苑…さん…」
悶えて体をよじって逃れようとする瑞穂だが、紫苑がしっかりと押さえつけている為、逃れることができない。
「…抵抗する瑞穂さんもそそりますわ」
紫苑は左手をそのまま、下にずらしていき、瑞穂のスカートの中に手を入れる。
「ふふ、さあ覚悟なさってください。瑞穂さん」

93 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/02(金) 19:28:12 ID:RNV+Hh5U0
「ダメです。ダ、ダメ…」
紫苑の左手がスカートの中をまさぐる様に動き、瑞穂の中心、屹立したものをショーツごしに優しくしごき始める。
瑞穂の意識はこの状態を拒んでいても、男性としての機能が関係なく反応してしまう。
紫苑の指はゆっくりと丁寧にショーツ越しにソレの裏側を擦り始め、徐々にピッチを上げていく。
「そそんな…コトしたら…あっ」
ぞくぞくとした感覚が瑞穂を襲い、反射的に背筋をのけぞらした。
「いや…ああああっ…」
「まあまあ、瑞穂さん…女の子みたいな声で」
上気した顔であられもない声をあげる瑞穂の姿が紫苑の情欲をもますます高めた。
仰け反らした白い喉を甘咬みしてから、声をあげ続ける瑞穂の首筋を舐めあげる。
そして左手はそのまま、瑞穂のショーツを剥ぎ取ろうとした時。

ピンポーンピンポーン

玄関ベルの音がした。
突然の音にビクッと体を硬直させ、紫苑の動きが一瞬止まる。
虚ろな目を玄関の方に向ける瑞穂。
「きっとセールスです。玄関の鍵はかかってますから気にしなくて結構ですわ」
ガチャガチャガチャ
続いてガキを開ける音
「と、思いましたけど、どうやら違うようですわね」
唇をかんで残念そうな表情をした紫苑が瑞穂から体を離した。

ガチャン
ドアが開いてまりやが飛び込んできた。
「瑞穂ちゃああん!」
部屋に飛び込んできて、その光景に硬直する。
衣服が乱れ、湯気を立てて虚ろな表情でヒクヒクと床に横たわる瑞穂。
なにがあったか一目瞭然。
その傍らで姿勢を正し、何にもなかったような態度で白酒を飲んでいる紫苑。

94 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/02(金) 19:31:14 ID:RNV+Hh5U0

・・・約1分間の硬直後、
「ししし紫苑さま……やった?」
ぶるぶる震えているまりや。
「残念ですが…。まりやさん達が来られるのが少し早すぎでしたわ」
まりやはその言葉で、へたへたと床に座り込む。
「あ、危なかったあ〜」
「あら、もう少し遅れたほうが良かったのでしょうか」
そういいながら楓が部屋に入ってきた。
「…楓さんもグルだったんですか?」
まりやが楓を振り返りながら訊く。
「いいえ。十条様が一日早いひな祭りをしたいから部屋を貸して欲しいと云われたので、てっきりみなさんご一緒かと」
うそ臭い匂いを感じるまりや。
「そんなこと云ってもし、紫苑さまがひとりだったとわかっていても、鍵を貸したんじゃないんですか」
「それはモチロン。瑞穂さまの男らしさを期待させていただきます。でも逆に襲われるのも瑞穂さまらしいのですが…」
にっこり笑う楓。
「瑞穂さま。殿方がそんなことではダメですよ。手を出すくらいでないと」
楓が悲惨な有様で床に横たわっている瑞穂に声をかける。
「…うっ…うっ……」
瑞穂の返事はない。
「誰か来るだろうとは思ってましたが、よくお解かりになりましたね」
紫苑がまりやに訊いた。
「だって、瑞穂ちゃん校舎にいないし寮にもいないし。外出の予定なんて聞いてないし。それで
楓さんに電話して訊いたら、紫苑さまが瑞穂ちゃんのマンションに大量にお酒を持ち込んだって聞いたから」
「そうですか。残念でしたわ」
「って云うか、紫苑さま!瑞穂ちゃんを手篭めにしようなんてやりすぎですよ」
「あら、目的のためには手段を選ばずのまりやさんからそのように云われるのは心外ですわ。
まりやさんも私と同じ立場だったらきっと…」
「いいえ。襲いません!見てください、瑞穂ちゃんを。信じていた紫苑さまに襲われて、深く傷ついてますよ」
そう云われて、瑞穂をじっと見る紫苑。

95 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/02(金) 19:34:14 ID:RNV+Hh5U0
瑞穂は弱気な瞳で紫苑を見つめ返す。
「……ふふふ、かわいい…」
「ひっ!」
「ああ、もう!いいです。紫苑さま。瑞穂ちゃんはあたしが寮に送りますから」
紫苑と瑞穂の間にまりやが割って入った。
「あら、もうお開きですか。せっかくですから、これから皆さんでお祝いを…」
「いたしません!」
「残念ですわ」
「では十条様は私がお送りさせていただきますね。まりやさま、瑞穂様をお願いしますね」
「それでは瑞穂さん、また今度」

楓と紫苑が部屋を出て行き、まりやと瑞穂が残っている。
「ほら、瑞穂ちゃん。服装を直して。あたしたちも帰るわよ」
ブルブルと肩を震わせる瑞穂。
「…ぼ、僕…男…だよね……男だよね…」
崩壊しかかっている己の何かと必死に戦っているように見える。
「なに、今更のように…。美少女に見えるけど男よ、瑞穂ちゃん」
「…なのに…なのに…なんで…」
「ええい、助かったんだからウジウジしない!男だったら逆にやれなくてガックリくらい思いなさい!」
まりやは、いつまでもグズグズとしている瑞穂の前に回り込んで、ボタンに手をやる。
「ほらほら、手伝ったげるから」
「うん。ありがと」
ボタンを留め始めるまりや。
まだ微かに震えている瑞穂の体。
ふと、瑞穂の首筋に目をやると紫苑がつけたキスマークや噛みあと。
すっかり青ざめて、静脈が見えるほど白くなった胸元。
「お思ったより激しかったみたいね…み瑞穂ちゃん…ほんとに大丈夫だったの?」
まりやの声がわずかに震えている。
「う、うん。もう少しまりやたちが遅かったら…僕…」

96 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/02(金) 19:37:13 ID:RNV+Hh5U0
「へ…へ〜」
震える手でボタンを留めるまりや。

「・・・・・・」
ボタンを留めているまりやの手がピタッと止まった。

「……まりや?」
「…す」
「す?」
「好きじゃああー」
まりやがガバッと瑞穂に抱きつくと、そのまま後ろに押し倒した。
「わわっ!」
手荒くブラウスの前をボタンごと引きちぎると、露になった瑞穂の胸にむしゃぶりつく。
「なな何するの!やめてええ、まりや!」
「間近にこんなもん見せられて我慢できるかああ!もうやったるわああ!!」
「いやああ!やめてよおおお!!」
「もう助けはこないわよ!うへへ色っぽい声をたてやがって!」
「いや、いや!こんなのいやあ!」
手荒に瑞穂の胸をまさぐり、吸い付くまりや。
もう完全にケダモノ状態に突入。

「ほら、やっぱり」
いきなり背後から声が聞こえてきて、ピタッとまりやの動きが止まった。
ギギギと後ろを振り返ると先ほど帰っていったはずの紫苑と楓がそこにいた。
「やっぱり、まりやさんも襲いましたでしょう?」
微笑みの表情の紫苑。
「…いや、あの、違います。ふざけて…そう、ふざけてたんです!」
「ふざけて?」
「ええ。ね〜瑞穂ちゃん!」

97 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/02(金) 19:40:13 ID:RNV+Hh5U0
まりやが瑞穂に同意を求める。
まりやと紫苑が、視線を向けるとそこには陵辱された美少女が。
「…うっ…やめて……お願い…うっ…します……ううっ」
脅えきった表情で、肩をぶるぶる震わせて涙声で哀願する小動物…
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「…瑞穂ちゃん…あんた…」
それまでのやり取りを見ていた楓がやれやれという風に、口にする。
「桃の節句に女の子に襲われるのもやっぱり瑞穂さまらしいですわね」
「…うっ……うううっ…ううっ」

こうして3月2日の事件は、加害者たちが謝罪の言葉を一切口にすることなく、逆に被害者の不甲斐なさをなじり
瑞穂の傷口にさらに塩をすりこんで終了した。
まさに悲劇だった。


  Fin


98 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/02(金) 19:43:10 ID:RNV+Hh5U0
紫苑さま大暴走

お粗末さまでした。

99 :名無しさん@初回限定:2007/03/02(金) 20:40:30 ID:2e1z+S/a0
。・゚・(ノД`)・゚・。ウワアアァァン

黒いよみんな黒いよ〜

100 :名無しさん@初回限定:2007/03/02(金) 21:03:00 ID:puCOGNGb0
お、お姉さま・・・ハァハァ(;´Д`)
紫苑さまとの濡れ場を激しく期待してしまった・・・

ご馳走様です・・・・GJ!!!!

101 :名無しさん@初回限定:2007/03/02(金) 21:09:54 ID:3Ix0r/DK0
GJGJGJ!!!!
大いにワラかしていただきました。

102 :名無しさん@初回限定:2007/03/02(金) 21:13:03 ID:3Ix0r/DK0
やはり瑞穂ちゃんは受けですな。

103 :名無しさん@初回限定:2007/03/02(金) 22:19:20 ID:EXupFm7D0
とつぜん SSしょくにんが あらわれた!
SSしょくにんは ようすをみている。

乙女はお姉さまに恋してる 3学期目
http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gal/1160364205/839

104 :名無しさん@初回限定:2007/03/02(金) 22:36:49 ID:X14nO1fV0
>103
続きヨロ。

105 :名無しさん@初回限定:2007/03/02(金) 23:02:42 ID:IRXwSSwL0
瑞穂ちゃんが寮の食堂にお内裏様とお雛様の人形をTVの上に飾った
「お雛さまなのですよ〜」
奏ちゃんがうれしそうにはしゃぐ
「これどうしたの?瑞穂ちゃん」
まりやが人形の出所を聞く
「あのね、圭さんがくれたの」
「それじゃ、私、お夕食にちらし寿司つくっちゃいます!」
ゆかりんもうれしそうにはしゃぐ
「ゆかり〜ん、ひなあられとお酒もよろしく〜」
「まりやっ!ひなあられはともかくお酒はダメよっ!…てゆーか、あられをおつまみにしてお酒飲む気?」

3月3日、その日の聖應学院の寮の夕食はいつになく和風だった
和食好きの瑞穂ちゃんも本来なら喜んでいるはずだった
しかし…瑞穂ちゃんの顔色は青ざめていた…瑞穂ちゃんだけではない
食堂にいる全員の顔が青ざめていた
ようやく、まりやが幾ばくかの勇気を振り絞って言葉を紡ぐ
「誰か…人形…ずらした…?」
瑞穂ちゃんが持ってきたお雛さまがいつの間にかTVの上からテーブルの上に移動していた
「気がついたら……」
瑞穂ちゃんの言葉は聞き取れないほど小さかった
「「ふううう…」」
ゆかりんと奏ちゃんは現実世界からの逃避を選択した

その夜、寮に住む4人のうち二人は恐るべき悪夢の世界で過ごした
残る二人は眠ることもできず、恐怖に打ち震えて過ごしたという

106 :名無しさん@初回限定:2007/03/03(土) 16:56:39 ID:aFQNO1H/0
>>105
日本の人形って怖いよね

107 :名無しさん@初回限定:2007/03/03(土) 17:21:38 ID:oSYTRyAM0
紫苑の誕生日まで約17日と6時間と40分

108 :名無しさん@初回限定:2007/03/03(土) 17:30:05 ID:sIXq0uqz0
>>107
様をつけやがれなのですよ、このトンチキものなのですよ。

109 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:02:06 ID:NA94WsQ20
バカ話、投下します

110 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:04:05 ID:NA94WsQ20
『ひな祭りの悲劇〜3月3日編〜』

3月2日
明日のひな祭りは学院生活最後のお祭りということで、出来るだけ盛大に盛り上げたいとまりやは考えていた。
その為には会場を何処にするかもまだ決めていなかった。
瑞穂に相談しようと思ったが、何処にもいない。
そこで学食にでも行ったのかと、食堂にやってきたまりやだった。
食堂に入ってきて見渡したが、瑞穂の姿はなかった。
顔なじみの栄養士のおばさんがいたので声をかける。
「おばさん、こんにちは。宮小路さんを見かけませんでしたか?」
「こんにちは、まりやちゃん。宮小路さんは今日は見かけなかったわよ。……はあ〜」
「どうしたんですか?ため息ついて」
「あら御免なさい。ちょっと食材の仕入れ量間違えちゃって悩んでたの」
「へえ〜。もしかして余らしちゃたとか」
「そうなの。3年生はもう授業ないし、在校生は春休みに入るしどうしようかしら」
まりやはちょっと考えた様子で、すぐににやりと笑った。
「ね、おばさん。その余った食材全部私が買いましょうか?」
「えっ」
「その代わり、タイアップということで…」

3月3日、ひな祭り。
今年は週末のお休みで、午前中から寮ではひな祭りの準備に入っていた。
「あら、紫苑さま。今日は用事があるとかおっしゃってませんでしたか?」
1階のダイニングルームで紫苑に声をかけるまりや。
「ええ、キャンセルになりましたの」
ぬけぬけと答える紫苑。
「ごきげんよう、紫苑さま。まりやさん」
貴子が荷物を持ってやってきた。
「私も呼んでいただいて有難うございます」

111 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:06:58 ID:NA94WsQ20
「いいのよ。あんたも大事な手駒だから」
「はあ!?」
意味不明な言葉に訝しげに問い返す貴子。しかし、まりやはその問いかけに答えず。
「貴子、あんたその荷物は一体、何もってきたの」
「一応、飲み物などを」
「昨日、あたしが飲食物はすべてこっちで用意するって云ったじゃない」
「ですが甘酒くらいはせめて…」
「あら、甘酒を持っていらしたのですか」
紫苑が尋ねた。
「はい。いけませんでしたか?アルコールはもちろんいけませんが、寮内でのことですし、
ひな祭りですから特別にと思いまして」
「いいえ、私達は良いのですが瑞穂さんが多分…」
「お姉さまが?どうかしましたか」
「もう、そんなことはどうでもいいわよ。貴子、会場は寮じゃなくて学食だからどっちにしろ持ち込めないわよ」
まりやが割って入った。
「学食!?校舎内の施設を使うなんて私は聞いておりませんわよ!申請も出ておりません!」
「そりゃそうよ。だって、あたしが昨日、食堂のおばちゃんと決めてきたんだから」
「ちょっとまりやさん!そんなこと勝手に」
「いいじゃない。あんたももう生徒会長引退してるんだし。堅いこと云いっこナシ」
「ところで瑞穂さんは?」
紫苑が辺りを見回した。来てから一度も姿を見ていない。
「あ〜。昨日から部屋に閉じこもったまんまなんです」
まりやがポリポリ頭を掻いた。
「まあ…。仕方ありませんわね」
「取りあえず引きずり出してきますね。紫苑さまたちは学食に行っててもらえますか。準備は出来てますから」
そう云ってまりやは二階に上っていった。
「では参りましょうか。貴子さん」

112 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:12:06 ID:NA94WsQ20
「はい。でもお姉さまは一体、どうなさったんですか?」
おらー!みずほちゃーん、出てこーい!
ダン!ダン!ダン!
デリカシーのかけらもないまりやの声が2階から聞こえてきた……。

紫苑と貴子が学食に着くと、食堂の片隅にテーブルを二つくっつけて大きい島をつくっている場所があった。
その横のテーブルにはお内裏様とお雛様がちょこんと飾られている。
「お姉さま方、こちらなのですよ〜」
準備をしていた奏と由佳里が呼びかけてきた。
奏がふたりのために椅子を引いた。
「ありがとう奏ちゃん。今日も食堂は開いてましたのね」
紫苑が貴子に訊いた。
「はい。授業は休みですが部活などで出てきている生徒が大勢いますので。それにしても、まりやさん。
学食の一隅を借りるなんて、個人でどういう話をしたんでしょうか」
「さあ?まりやさんの常識外れの行動力は今に始まったことではありませんから」
そんな話をしていると、当のまりやが瑞穂の腕を引っ張りながら食堂へやってきた。
「おまたせ〜」
顔色悪い瑞穂に紫苑が近づいた。
「瑞穂さん、顔色が悪いですわよ。体調がお悪いのですか」
「……いいえ。大丈夫です」
昨日の自分がしたことを全く気にした様子もない紫苑。
「まったく、いつまでもウジウジしてても仕方ないわよ。瑞穂ちゃん」
まりやがパンパンと瑞穂の背中を叩いた。
「昨日、お姉さまがどうかなさったんですか」
「信じていたまりやさんに襲われて深く傷ついたんですわ」
「おお襲われ……まりやさんっ!!」
「なによ。乙女の暴走ってやつよ」
「乙女は暴走なんかいたしません」
まりやと貴子がそんな云い合いをしているうちに、時間は正午をまわり部活の昼休みに入った生徒達が
食堂に集まり始めていた。

113 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:16:07 ID:NA94WsQ20
「まりやお姉さま〜。準備ができましたあ」
由佳里の声にまりやが皆を着席させた。
「これで全員そろったわね。じゃ、始めるわよ〜」
一般生徒たちが食事を始めている中、恵泉三大美人を交えたひな祭りが学食の片隅で始まった。
「えーと先ず、今日の飲食はすべて学食から提供していただいてます。なんとロハです。
みなさん、感謝していただきましょう」
まりやの説明に、首をかしげる一同。
「まりやお姉さま。ロハってなんですか」
「由佳里ちゃん。突っ込むところはそこじゃないわよ」
瑞穂が云う。
「ちょっと、まりやさん。食堂の隅を借りるのもどうかと思いましたけど、タダってなんですの?」
貴子がまりやに訊ねた。
「但し、出された食べ物は全て笑顔で食べること。感謝の言葉も忘れずに!では最初は飲み物で乾杯から」
まりやの言葉にますますわからなくなる。まりやは気にせずさっさと皆に紙コップの飲み物を配った。
瑞穂がちょっとビクつきながら中身を見ている。
「大丈夫よ。これはしょうが湯だから」
「しょうが湯ですか〜。なんか年寄りくさい…せめて甘酒とか」
由佳里の酒という言葉にビクッと体を振るわせる瑞穂。
「馬鹿ね。校舎内にアルコール類を持ち込めるわけないでしょ」
「だったらせめてジュースでも。炭酸ジュースとか飲みたいですう」
由佳里の炭酸ジュースという言葉にまたもビクッと体を振るわせる瑞穂。
そんな瑞穂を嬉しそうに紫苑が見つめている。
「ぐだぐだ云わない。タダなんだから。はい、かんぱーい」
「かんぱ〜い!んぐんぐ、まりやお姉さま結構おいしいです。これ」
「とっても甘いのですよ〜」
味のほうは概ね好評のようだ。
「美味しいですわ、まりやさん」
紫苑も気に入った様子。
「ええ。しょうがの味を消す為に多目のレモンと蜂蜜を入れてありますから。それ以外にも色々入ってるんです。
結構、手間をかけてるんですよ」

114 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:19:02 ID:NA94WsQ20
「なんでまりやさん、そんなことを知ってるんです?」
貴子が尋ねた。
「いや、これをつくる時、色々と考えたから」
「えっ、これ、まりやさんが考えたんですか!?」
「そうよ。ふふん、見直した?」
ちょっと、得意げなまりや。
「どう、瑞穂ちゃん?」
「うん。とっても美味しいよ。ひな祭りにしょうが湯なんて変わってるけど、いいよね」
「そうでしょ。今日だけの特別メニューだしね!」
まりやが大きな声でしゃべる。
食券の自動販売機に複数の生徒が並び始めた。
「一杯100円だしね!」
「ちょっと、まりや。なに大きな声を出してるの?」
「ごめんごめん」
「まりやさん、お菓子とかはないのですか?アラレとか」
貴子が云うと、由佳里も
「そうですね〜。お菓子もいいですけどフライドチキンなんかもいいですよね。
学食だと、から揚げくらいしかないですけど」
由佳里のから揚げという言葉にビクッとする瑞穂。
「……あ〜あ、瑞穂ちゃん、壊れちゃってますよ。紫苑さま」
「あああぁ、私が瑞穂さんの心に拭いきれないほどの深いキズを刻みつけたのだと思うと……」
紫苑がうっとりとした表情になる。
「…ドSですね。紫苑さま」
まりやは皆に小ぶりのおはぎを配った。
「おはぎ…ですか」
赤みがかった色をしている。
「これは桜餅ではないのですか」
「ふっふ〜。まあ、食べてみてよ」
まりやの言葉に全員、おはぎを口に入れる。

115 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:22:01 ID:NA94WsQ20
「もぐもぐ、なにかしら。食べたことがありませんわ」
貴子が首をひねる。
「変わった味なのですよ〜」
「まずいかしら、奏ちゃん」
「いいえ〜。さっぱりとしていて美味しいのですよ〜」
「これもまりやさんが考えたのですか?」
「そうよ〜」
「もしかしてこれは人参ではないのですか」
紫苑が気付いた。
「さすがは紫苑さま。正解です」
「あっ、そうか。まりやお姉さま、甘く煮た人参を使ってるんですね」
「お、ゆかりんも気付いたか。さすがね〜。ちなみに甘く煮る際にいろんな果物を使ってるから、
使用した砂糖はそんなに多くはないのよ」
瑞穂が感心して、
「凄いわね。まりや。さっきのといい、これといい、ほんとに見直したわ」
「そうでしょ、そうでしょ!今日だけの特別メニューだしね!」
まりやが大きな声でしゃべる。
自動販売機に生徒が並び始めた。
「一皿250円だしねっ!」
「ちょっとまりや、なんでまた大声を出してるの」
「ごめんごめん」
まりやは謝りながら席を立つと、
「ちょっと待ってて。次の料理の確認をしてくるから」
そう云って、調理上のほうに歩いていった。

116 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:25:05 ID:NA94WsQ20
「おばさ〜ん。どんな按配?」
奥から栄養士のおばさんがやってきた。
「まりやちゃん、いい感じよ。土曜なのに生徒さんが多くて平日並みに売れてるわ」
まりやが昨日の内にネットで三大美人ひな祭りの噂を流していたせいだった。
「だけどまだカット野菜が大量に余っちゃってて。特に人参がね」



「おまたせ。次は手巻き寿司よ」
「ねえ、なんでコース料理みたいに順番に出してくるの?まとめて一緒に出した方が…」
「うるさい。こっちにも都合があるのよ!タダなんだから文句云わない」
「…都合って、一体何の…」
瑞穂が周りを見回すと、最初の頃より随分と多い人数が瑞穂たちを見ていた。
まるで平日の学食並みの人数。
「みなさん、同じモノを召し上がってますわね」
紫苑に云われて瑞穂も気がついた。
皆、手に紙コップ、人参おはぎを食べていた。

「海苔に酢飯と好きな具材をのせて食べてね」
テーブルの上に並べられた手巻きセット。
「………」
「………」
「どうしたの、みんな。遠慮しないで」
「ちょっといいですか、まりやさん」
「なによ、貴子」
「具材がやけに野菜に偏ってませんか?」

きゅうり・人参・白菜・ごぼう・もやし・冷凍みかん・・・

「………」

117 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:28:05 ID:NA94WsQ20
「きゅうりはまだ良いでしょう。人参ってなんですの。また人参ですか」
「…それは、まだ余ってたから」
「余ってたって何のことですか。白菜ってなに?」
「………」
「ごぼう?もやし?これを寿司の具材と言い張るのですか、あなたは」
「………」
「それに…み、み、みかん?冷凍ミカン!?」
「…!?うるさーい!!黙れ!シャラップ!具材なの!余ってんの!」
「逆切れ!?だから、余ってるって一体…」
「いいこと、貴子。お嬢様のあんたは知らないでしょうが、これは食べ物なの。食材なの。栄養なの。
世界のどこかでは食べられない人たちもいるの。食べ物にケチつけようってのかああ!あんたはああ!」
「……イイエ」
静まり返った食堂。貴子はただ首をぷるぷると振るだけ。
「だったら食べなさい。そして感想を述べなさい」
「………」
全員、黙々と手巻き寿司に手を伸ばして食べ始めた。
「ううっ、まりやお姉さま」
「なんだか怖いのですよ〜」
モグモグモグ・・・
「なんだか白菜は味がないわね」
「マヨネーズをたっぷりつけては如何でしょうか、お姉さま」
「にんじんはまだマシですわね」
「ごぼうはおなかくだしそうだわ」
「みかんはそのままのほうが美味しいわね」
ひな祭りが一転、ゲテ喰い大会になってしまったが、恵泉三大美女が揃っているおかげで、傍から見ている分には
不思議と優雅な手巻き寿司パーティーに見えてしまう。
「どうかしら皆さん」
まりやが尋ねた。雰囲気はすっかり、何かの試食会といった感じになっていて、とてもひな祭りではない。
「まあ、食べられないということはないですわ」
貴子が答える。

118 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:31:05 ID:NA94WsQ20
「それは肯定と受け取っておくわ。紫苑さまは如何でしたか」
「酢飯との相性が新鮮でしたわ」
うんうんと頷くまりや。
「瑞穂ちゃんは?」
「なんていうか、ごぼうはとても食べられないわ。せめて…」
まりやがギロリと凄まじい目で瑞穂を睨む。
「ひっ!」
瑞穂だけでなくテーブルの皆がびくついた。
「ネガティブな感想は聞きたくないわ。美味しかったのはドレ?」
「ききゅうり…なんかはマヨネーズつければ結構…」
まりやが大きな声で、
「そう、評判良くてよかったわ。このヘルシー手巻き寿司(まりや命名)!お姉さまにも喜んでいただけるなんて」
瑞穂の顔を強く睨みながら同意を求めてきた。
「ね!!」
「え、ええ」
ガタッ!ガタガタッ!
周りの生徒達が一斉に自動販売機のほうに向かっていく。なんだか最初の頃よりも人数が大分と増えている。
「まりやさん。あなた、私達が食べたメニューを他の生徒達に買わせる商売をしていたんじゃなくて?」
「そうよ。貴子、やっと気付いたの?だから私達の分はタダなんじゃないの」
「またなの、まりや…でも、こんなに不味いのに」
瑞穂がぼそりと云うと、まりやがチッチと指を振った。
「大量の食材を消費する為には味に構ってられないのよ。
瑞穂ちゃんたちが食べてさえくれれば売れるんだし。げに恐ろしきはエルダーの影響力ってね」
「そんなにしてまでタダで食べたいとは思わないわよ。…まりや、もしかしてバックがあるの?」
こっくり頷くまりや。
「売れ残ったら大損なのよ」
「呆れましたわ。もう、私たちは食べませんわよ。いいかげんお腹も膨れましたし」
貴子がそういうと、まりやもにははと笑いながら頷いた。
「ええ。結構よ。もう、あらかた片付いたと思うから。悪かったわね、お礼は必ずするからさ」
そう云って調理場のほうへ歩いていった。

119 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:34:07 ID:NA94WsQ20
「おばさ〜ん。もう全部終わった?」
奥から、また栄養士のおばさんがやってきた。
「まりやちゃん。平日以上に売れてるわよ。ただ、まだ冷蔵庫の奥にカット野菜が大量に残ってるわね。
特に人参が。このままじゃ売れ残っちゃうわね」



瑞穂たちがテーブルを片付けようとしているところにまりやが戻ってきた。
「あいや待たれい。皆の衆」
「どうしたの」
「はい、席に座って。これから最後の料理がくるから」
「ええっ!もう終わりと云ったじゃありませんか」
「ごめんね。貴子。あれは嘘だったの。今度こそホントの最後」
「いやです。もうお腹一杯ですわ」
そういう貴子の肩をぽんと叩くと、まりやは耳に口をよせて、
「食べてくれたら瑞穂ちゃんの写真あげるから。でももし断ったら、一生瑞穂ちゃんに近づけないように
じゃまするわよ」
貴子は沈黙した。
「まりや、いい加減にしてしてちょうだい。せっかくのひな祭りをこんなことばっかりして」
尚も瑞穂が云い続けるのを、胸倉つかんでグイッと顔を引き寄せた。
「シャラアァップ!!グダグダ云ってると…犯すわよ」
「ヒィッ」
瑞穂が沈黙した。
「やると決めたら徹底的にやる。それがあたしのポリシー」
奏と由佳里はその様子をガタガタ震えながら黙って見守るだけだった。
「あら、紫苑さまは?」

120 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:37:06 ID:NA94WsQ20
「まりやさんが戻ってくる直前に、お手洗いに行かれましたわ」
「むぅ、逃げられたか。その分、あんたたちに頑張ってもらうわよ。最後は汁物よ」

「「「「汁物!」」」」

全員、同時に声をあげた。
「ちょっと待って。汁物は確かなかったんじゃ…」
「そうですよ。制服に飛ぶからって」
「大丈夫。シチューだから」
「シチューっていっても……なにこれ?」
テーブルに置かれた不思議な液体。皿の中には薄墨色のスープ。形が崩れた数々の具。
「健康に気を使って様々な野菜が入ってわよ。人参、もやし、ごぼう、アスパラ、こんにゃく……冷凍みかん…」
「また人参ですか」
「貴子さん、突っ込むところちがう」
「さあ、紫苑さまの分まで頑張って食べてちょうだい。皇国の興廃この一戦にアリよ」
そのとき、瑞穂は食堂の入り口のドアからこちらを伺っている紫苑をみつけた。
「あっ、紫苑さ…」
サッとそのまま紫苑は姿を消してしまった。
「・・・・・・」
「これ、本当に食べられるのですか?」

121 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:40:04 ID:NA94WsQ20
シチューから漂う異様なにおい。まるでどぶ川のような。
「失礼ね、貴子。豪華に残りすべての食材を溶かし込んであるわ。
味を調えるために醤油もソース(賞味期限間近)も使っているわ。
ここまで贅沢に使ったシチューはあたしも初めて!ジャイアンシチューとでも呼んでちょうだい」

「「「「ジャイアンシチュー!?」」」」

(なんでしょうか?食べ物ですか!?)
(ジャイアンシチュー!?)
(食べられるのでしょうか!まさかお姉さま…)
(例えどのようなものでもお姉さまがお食べになられたものであれば私は…)
(そうです。私も…食さないわけには参りません)
周りのギャラリーたちの間で巻き起こる不安げな会話。

「なに?その豪快な名前」
「さあ、とにかく食べなさい。そして感想を述べなさい、あたしが望む一言を!大きな声で!」
食堂中の生徒が固唾を呑んで見守っている最初の一口。
貴子がぶるぶると震える手で、ひとさじ掬って口に入れた。ぱく…
「うっ」
吐き出しそうになる口元をまりやが強引に押さえつけた。
「飲み込むのよ。みんなが見てるわよ」
大勢のギャラリーがこのシチューの味見を眺めていた。
「いつの間にこんな大勢!平日よりも多いじゃない。なんで…学校休みなのに…」
瑞穂が愕然とした様子でつぶやく。もちろん、まりやの宣伝が効いているからだが。
ちなみにその煽り文句は<恵泉三大美人と過ごすひな祭り!同じ空間で共有するひと時>である。

122 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:43:08 ID:NA94WsQ20
「ん〜ん〜〜っ」
苦しみながら何とか飲み込んだ貴子。気が遠くなり倒れそうになる。
「まだよ、倒れてはダメ。感想を、感想を云うのよ!」
「・・・・・・」
「云えなければ、せめて手を高く上げて親指を突き立てなさい。そうすれば休んでいいわ」
・・・グッ!バタン!!
親指を突きたてたままテーブルに突っ伏した貴子。ヒクヒクと痙攣している。
「よくやったわ。ゆっくり休みなさい」
奏と由佳里はお互い抱き合って、半泣きで震えている。
「さあ、次はあなたたちの番よ」
「ちちちちょっと待って!ほら、その、あんまり食べ過ぎるとお腹壊しちゃうから…もう少ししてから」
「大丈夫。正○丸も入ってるから」
「○露丸!?」
ガクガクブルブル…
奏ちゃんたちが青い顔でシチューを掬った。
(いけない!この子たちは僕が守らないと!)
「待って!奏ちゃん、由佳里ちゃん」
「ふえっ?」
手を止める奏と由佳里。
「まりや、あなたが食べなさい」
「ええっ」
「まず、あなたが食べて感想を云いなさい。この子たちが食べるのはその後よ。それとも他人には強制しておいて
自分では食べられないような料理なのかしら」
「……ふっふっふ。あたしを挑発するとはいい度胸ね」
カチャリとまりやがスプーンを持ち上げた。
「いいわ。まずあたしが見本を見せてあげる。その代わり、あとで瑞穂ちゃんがあたしと同じ量だけ食べて
笑顔で大きな声で『おいしい♪』っていってもらうわよ」
「お、お姉さま…」
奏が不安げな顔で瑞穂を見る。

123 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:46:08 ID:NA94WsQ20
「大丈夫よ。奏ちゃん。神様はきっといらっしゃるわ」
瑞穂が笑顔で美味しいと云えば、ここにいる大勢がレミングスの大行進のようにこの死のシチューに
向かっていくことは目に見えている。
(そんなことはこの学院の姉としてさせられない)
「大体みんな大袈裟なのよ。たかがシチューじゃない。少々不味くたって…もぐもぐ……ぐほっ!」
まりやの手が止まった。顔色が見る見る紫色に変わっていく。
「ば馬鹿な…、あたしが直撃を受けているだとっ……」
「どうしたの、まりや。さあ、その口の中の物を飲み込んでおいしいって云ってみせて」
祈るような気持ちでまりやを見続ける瑞穂たちと食堂中の女生徒達。
「ぐっ…ううっ…まだ…この程度で…堪えてみせる!もぐもぐ、ゴクン」
まりやは紫の顔のまま、一気に飲み込むとむりやり笑顔をつくった。
「…あ、ああ美味しい!」
大きな声で云いきったまりやに、がっくりと肩をおとす瑞穂。
瑞穂が負けた今、まりやを止められる者はもういない。
(こうなったらせめて奏ちゃんや由佳里ちゃんたちの分だけでも全部僕が…)
「そんなに美味しいのでしたらもう一口いけますわよね」
いつの間にか紫苑が帰ってきていた。
紫苑はスプーンでシチューを山盛りに掬うとまりやの口元に持っていった。
「はい、あ〜ん」
「・・・・・・」
にこにこと微笑んでいる紫苑。
「はい、あ〜ん」
「・・・・・・」
恐る恐る開いた口に紫苑がスプーンを突っ込んだ。
「ぐふっ」
思わず吐き出そうとしたまりやの口を瑞穂が手で塞いだ。
「ダメ。みんなが見てるわよ」
まりやの顔からあぶら汗が噴き出す。
ガチャン…
白目をむいてまりやがテーブルに突っ伏した。

124 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:49:05 ID:NA94WsQ20
キャアアァ〜
歓声に包まれる食堂。
涙を流して瑞穂に抱きつく奏と由佳里。
「助かったあ。もしかして紫苑さん、狙ってました?」
「はい」
大きく安堵の息を吐き出す瑞穂。

それにしても…と改めて見ると、お雛様の飾られたテーブル。
そしてその横のテーブルには、突っ伏している死体がふたり。それとジャイアンシチュー。

「今日、ひな祭りだよね。女の子のお祭りだよね。なのに何故?この地獄絵図…」


〜えぴろーぐ〜
その日の夜、寮の食堂で瑞穂、まりや、奏、由香里の四人が貴子の置いていった甘酒を飲んでいた。
ただし、瑞穂だけはコーヒー。
「あ〜あ、最後の最後に負けちゃったわね〜」
最終的にまりやの収支は若干、儲けが上回っていた。
なんだかんだいっても結局、大部分の在庫をさばくことに成功していた。
意図的なのかどうか瑞穂たちがひどい目にあったのは確かだが、結果としては大勢の生徒を巻き込んでひな祭り(?)は
盛大に盛り上がったし(?)在学中世話になってきた食堂は損失を出さずにすんだ。
「じゃあ、これ。由佳里と奏ちゃんにあげるわ。あたしからの置き土産よ」
そういって利益はすべて食券に変えて由香里と奏に渡した。
「ええっ、いいんですか!?」
由香里たちふたりの昼食代一か月分はゆうにある。
「この程度のはした金、べつに未練ないわよ。あたしはスケールがでかい女なんだから」
まりやがにゃははと笑った。


  Fin

125 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/03(土) 20:52:06 ID:NA94WsQ20
まりや大暴走

お粗末さまでした

126 :名無しさん@初回限定:2007/03/03(土) 21:16:07 ID:nWttk6oZ0
>>125
紫苑様、( ゚Д゚)ウマー。貴子さん( ゚Д゚)マズー
GJでした〜

127 :名無しさん@初回限定:2007/03/03(土) 23:02:43 ID:n+5qWCS00
今回も面白かったわー
次は奏ちゃんが活躍してほしいなぁ

128 :名無しさん@初回限定:2007/03/04(日) 04:55:25 ID:XR3yJH7U0
>>125
おお、いつのまにか二本も…
楽しく読ましていただきました。GJです!

129 :名無しさん@初回限定:2007/03/04(日) 10:17:33 ID:mRASsDRw0
なんつーかL氏のまりやはオリジナルよりまりやらしいww
いつもGJです

130 :名無しさん@初回限定:2007/03/04(日) 20:48:50 ID:/3KApMip0
紫苑様の誕生日まで約16日と3時間と10分

131 :名無しさん@初回限定:2007/03/04(日) 21:21:12 ID:vfj0SBnf0
>>130
卒業生代表として答辞を読むどころか、出席も叶わず、
見舞いに来てくれていた同じクラスの子達も、巣立ってしまった。
このままでは、紫苑さまが寂しい誕生日を迎えることに……

そんな紫苑さまを元気付けてくれるようなSSキボン。
(貴子さんでは、この時期だと残念ながら逆効果か?)

132 :名無しさん@初回限定:2007/03/04(日) 22:15:18 ID:cSg/gsOT0
>>131
誰か書いてくれるかねぇ?常駐の作家が少ないんだけど

133 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 02:59:41 ID:Umr28GRG0
以前から考えていた作品が出来上がったので書かせていただきます。
よろしくお願いします。

134 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 03:04:11 ID:Umr28GRG0
「はーっ……今日は疲れたな」
今日は学院でエルダーの役目やら色々といつもの倍は忙しくて疲れた瑞穂は、寮に帰ってくるなりお風呂を沸かし、真っ先に入っていた。
「いっつも仕舞い湯だけど、一番風呂も気持ちいいもんだね……」
そう口に出しながら、瑞穂はその日の疲れを落としていた。

「あれ? 由佳里ちゃん」
「お姉さま……今日は一番風呂ですか?」
お風呂から出た瑞穂は、パジャマに着替えて更衣室から出たところでばったり由佳里と鉢合わせした。
「ええ、そうよ。今日は疲れてたから、先にいただいたわ。由佳里ちゃんはこれから?」
「はい、陸上の疲れを落とそうと思いまして」
「そう。ごゆっくり」
瑞穂はそう言って部屋に戻っていった。

〜史上最狂のせんとう〜

「ちょっと早いけど、別にいいよね」
由佳里が浴槽に入ろうとすると、
「わあっ!!」
ザブーン!
瑞穂の使ったシャンプーの液状石鹸でバランスを崩し、由佳里は頭から浴槽のお湯の中に首を突っ込んでしまった。
「ぶはあっ、けほ、こほ、けほ……」
由佳里は慌てて頭をお湯から上げたが、転んだ拍子に浴槽のお湯を飲んでしまい、咳き込んでしまう。
「あーびっくりした。すべるとは思わなかったもん……」
そこで、由佳里はふと気がつく。
「これ、お姉さまの入った後……なんだよね?」
そう考えると、由佳里はぞくっとした。無論心地よい感じのほうで。
「私、飲んじゃったんだ……お姉さまの入った後のお湯を……私の身体の中に、お姉さまのお湯がいっぱい……」
そうつぶやいた由佳里の顔は赤く染まり、胸や下半身も敏感に反応していた。

135 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 03:07:33 ID:Umr28GRG0
「あ、まりやお姉さま」
「由佳里、お疲れ」
自分の後処理を終えた由佳里がお風呂から上がると、今度はまりやと鉢合わせした。
「あ、はい、お姉さま、お先です」
「どう? お風呂は気持ちよかった?」
「はい! やっぱり思いっきりいい汗かいた後のお風呂は格別です!」
由佳里が満面の笑顔で言うと、まりやは後ろ暗い笑みを浮かべて言う。
「だから、そうじゃなくって、エロエロ気分は満足させられたかってこ・と・よ」
それに由佳里は顔色を変えて大慌て。
「えええ、エロエロ気分ってなんですか! 証拠もないのに適当なこと言わないでくだ……!」
由佳里が言い終わる前に、まりやはウォークマンのスイッチを入れる。
「あっ……やあ……もう我慢できない……」
そこで由佳里の口と動きが止まった。
「だ、ダメ……こんなことしちゃ……ダメなのお……」
テープから、今風呂場で由佳里が言っていたことが忠実に再現される。それを聞く由佳里の顔がみるみる赤くなっていく。
「あああ……ダメだってわかってるのに……手が、身体が勝手に……はふぁああああああん!!」
「どうかな上岡代議士。この動かぬ物的証拠を前にして、まだ記憶にございませんで逃げおおす所存か!?」
まりやが芝居がかった声で由佳里に言う。
「き、聞いてたんですか!? っていうか、聞こえてたんですか!?」
「そりゃもう、バッチリとね」
「………!!」
由佳里は、ショックのあまり身体を支えられず、壁にもたれかかった。
「にしても、瑞穂ちゃん、今日のスケジュールはハードかなとは思ってたけど、真っ先に風呂に入るなんて、よっぽど疲れてたのね」
「な、なんでそんなことまでわかるんですか!?」
「だって、いくら由佳里でも、こんな聞こえるどころか見られるリスクの高いとこでやろうとするとは思えないし、
てことは、ここで欲情したってことでしょ?」
由佳里は返事を返せずにいると、まりやは肯定と受け取って続ける。
「つまり、先にお風呂に由佳里にとっての欲情の対象……瑞穂ちゃんが入ってたってことだ」
「ううう……」
「ま、由佳里の気持ちもわからなくはないけど、後に入る人のことも考えてほしいわね」
「だ、だから、後でちゃんと洗って、お湯も入れ替えたじゃないですかあ……」
由佳里は真っ赤になりながらも反論する。

136 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 03:10:56 ID:Umr28GRG0
「でも、瑞穂ちゃんがこのこと知ったら、思いっきりひいちゃうでしょうね」
「お、お姉さま……瑞穂お姉さまにだけは……」
「安心しなさいな。由佳里のおかげでいいこと思いついたから、協力してくれるなら黙っててあげる」
「協力って……何をすればいいんですか?」
由佳里が聞くと、まりやが計画の説明を始める。

「えーっ!? そ、そんなこと、瑞穂お姉さまにバレたら大変じゃないですか!!」
計画を聞いた由佳里は、驚いて抗議する。
「大丈夫。ちゃんとバレないように手は打つから。由佳里は安心してあたしについてくればいいの」
「で、でも……私降ります……いくらなんでも瑞穂お姉さまに悪いですから……」
「瑞穂ちゃーん! さっき由佳里がお風呂でねえ……」
由佳里が拒否の返事をするや否や、まりやは2回の部屋にいる瑞穂に聞こえるよう大声で呼ぶ。
「わわわ、わかりましたお姉さま! 協力します、させていただきますから!」
それを聞いてまりやは優越感に浸った笑みを浮かべる。
「どうしたのまりや、由佳里ちゃんが何?」
と、そこへ瑞穂が降りてきた。
(ま、まりやお姉さま!)
由佳里は泣きそうな顔で耳打ちする。
「ああ、さっきお風呂で瑞穂ちゃんのシャンプーで滑って転んだって」
まりやはとっさにごまかす。
「大丈夫なの?」
「ええ……ちょっと背中を打ったぐらいですから」
「そう、よかった。でも気をつけなきゃダメよ? あとで湿布でも張っておいた方がいいと思うわ」
そう言って瑞穂は部屋に戻った。
「由佳里、明日から早速開始よ!」
「ううう……」
「タダとは言わん。由佳里にも現物1杯、無料で分けたげるから」
それを聞いた由佳里は、俄然やる気になった。

137 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 03:14:09 ID:Umr28GRG0
翌日、夕食後、寮で……。
「瑞穂ちゃーん、お風呂沸いたわよ」
「そう。じゃあみんな先に入って。私はいつも通り最後にするから」
「でも瑞穂ちゃん、エルダーとして疲れてるでしょ?
あたしたちはまだいいから、先に入んなよ(奏ちゃんと由佳里なら心配いらないから)」
まりやは、最後だけ耳打ちで言い、瑞穂に先に入るよう勧めた。
「そう? じゃ、お言葉に甘えて」

「お先に」
そう言って瑞穂が風呂から上がり、部屋に戻ると……。
「由佳里、準備は出来てるわね?」
「はい!」
まりやと由佳里は大量の紙コップを持って、風呂場に向かった。

翌日の昼休み……。
「ふぁあ……すごくおいしい……」
「憧れのこれが、まさか手に入るなんて……」
食堂で、2人の女生徒が、紙コップに入った飲み物を飲みながら、恍惚の表情でそう話している。
「何? そんなにおいしいの、それ?」
興味を覚えた瑞穂は、その2人に話しかける。
「きゃあっ!! お、お姉さま!!」
「お姉さま!! ど、どうして!?」
だが、話しかけられた2人は、驚いて過敏に反応した。
「どうしてって、通りがかっただけだけど……それより、随分おいしそうね。それ、どこで売ってるの?」
「い、いえ、これ、限定販売ですから……」
「今からじゃ、とても手に入らないと思います!」
2人は冷や汗をかいて慌てふためいたままそう返す。
「じゃ、お姉さま、失礼しますっ!!」
2人の生徒は、そう言うと紙コップを持って、一目散に逃げていった。
「……なんなのかしら? 盗ったりなんてしないのに……」
瑞穂は、呆然として2人を見送っていた……。

138 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 03:17:31 ID:Umr28GRG0
放課後、裸電球の部屋で……。
「えー、諸君、ご足労ありがたく思います。では、昼休みの続きで販売を再開したいと思います!」
聖央の制服に身を包み、仮面をつけた2人の少女は紙コップを並べて、そう言う。
「まりやさん、またそんないかがわしいものを発売する気ですの? しかも妹の由佳里さんをも巻き込んで」
「私の名は必殺密売人X! こっちは同じく必殺密売人Hだと自己紹介したばかりであろう! まりやでも由佳里でもない!」
「……お姉さま、なんで私が密売人Hなんですか?」
「密売人Xだと言っておろうが……キミの出席番号が8番だから8番目のHにしたと説明したはずだが……
それともこれを販売するに至った経緯を説明してほしいのかね?」
「い、いえ、出席番号でいいです……」
集まったうち何人かは密売人Hに白い目を向けたが……。
「コホン、ともかく、これより宮小路瑞穂嬢の入った風呂の湯の販売を再開する!」
「必殺密売人なんて……F田ま○とさんが聞いたら泣きそうですわね」
「ほう……I島氏は売ってほしくないとお見受けするが……」
「い、いえ……申し訳ありません……どうか私にもお売りください……」
必殺密売人たちは、販売を再開する。
「では、のこり50杯! 1杯5千円でなくなり次第終了とする!」
生徒たちは、我こそはともみくちゃになりながら金を払っていく。そしてあっという間に売り切れた。

139 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 03:20:12 ID:Umr28GRG0
翌日のお昼休み、生徒会室で……。
「……貴子さん?」
生徒会の手伝いに来ていた瑞穂は、ふらふらしてうわの空な貴子を心配して声をかけた。
「いったいどうしたんですか?」
「ほくひのなふぁ……ほねえふぁーへひっふぁい……(お口の中、お姉さまでいっぱい)」
「えっ!? お口の中に骨が刺さって痛い!?」
瑞穂は驚いた顔で言う。
「大変! 早くなんとかしないと……」
瑞穂は辺りを見回すと、紙コップに入った飲み物を見つけた。
「そうだ! 貴子さん、これで刺さった骨を流しましょう」
瑞穂はそう言って、紙コップの中身を貴子の口に流し込んだ。
「ほねえふぁあもお……ふぉえーふぁーのふぇえ……(お姉さまのを、お姉さまの手で)」
「え……?」
「ひうぉーおふぁいあふ……ほおうぉーおふわふ……(至上の快楽、この世の極楽)ふぁぶーっ!!」
貴子は、クジラの潮吹きのように鼻血を噴出して倒れてしまった。
「ああっ!! 貴子さん!!」
瑞穂は倒れた貴子を抱きかかえる。
「ああ、会長!」
そこへ、仕事から戻ってきた君枝が倒れた貴子を見て驚愕した。
「お姉さま、会長に何を!?」
「わからないわ。ただ、お口の中に骨が刺さったって言うから、これを飲ませたんだけど、そうしたら鼻血を噴いて倒れてしまって……」
「え……?」
「君枝さん、落ち着いて。状況から判断して、おそらくこの中には、劇薬が含まれているはず。
となると、この見事な手口、外部のものの仕業とは思えないわ」
「お、お姉さま、聖央にそんな生徒は……」
瑞穂は猛然と抗議する君枝の気持ちを察して続ける。
「ええ。私もそう思いたいわ。でも、生徒自身が知らなくても、親とか友達に騙されて持ってきてしまった可能性も捨てきれないし……」
「なるほど……」
「とにかく君枝さん、このことは他言無用よ。私たちで犯人を見つけて、対処しましょう」
「はい! 会長をこんな目にあわせるなんて許せません!」
激しい憤りを見せてそういう君枝だが、すぐ困ったような顔つきになる。

140 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 03:24:18 ID:Umr28GRG0
「でも、手がかりは……」
「……貴子さんは、倒れる前こう言ってたわ『庇護の甲斐なく、このごろ極悪』って」
「……それが犯人の正体につながると……」
「多分ね」
瑞穂はそう言いながらも、考えていた。貴子さんが庇護するような相手で、貴子さんを恨んでそうな相手……
それは自分の知る限り、紫苑さんしかいない……と。
「そんな……バカなこと……」
瑞穂は自分の恐ろしい考えに汗でびっしょりになりながらも、懸命にそれを打ち消そうとした。

その日の夜、風呂場で……。
「さあ、今日も精一杯金づるをすくうとするか!!」
「……お姉さま、いったいいつまで続けるつもりですか?」
今日も先に瑞穂を風呂に入れ、あがったところでまりやと由佳里が風呂の湯を回収しにかかる。
「もちろん卒業するまでずっとよ!」
「……いくらなんでも、それは」
由佳里は少し不安になった。
「そういうこと言うなら、もう瑞穂ちゃんの入った風呂の湯、分けてあげないわよ?」
「わ、わかりました……もう反対しませんから……」
罪悪感を感じながらも、瑞穂の入ったお湯の誘惑にはどうしても勝てない由佳里であった。
「お姉さま……これ……」
「由佳里、どったの?」
「もしかして、瑞穂お姉さまの髪の毛じゃありませんか?」
由佳里は、お湯を紙コップに入れているときに見つけた髪の毛をまりやに見せる。
「うん、確かに瑞穂ちゃんのだわ。でかした由佳里、これで明日の儲けはぐーんとアップよ!」

141 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 03:28:14 ID:Umr28GRG0
翌日、下駄箱で……。
「うわっ、また大量のラブレターが……」
瑞穂は靴箱を開けると、大量の手紙の山……。
「気持ちは嬉しいけど、変な内容のは正直勘弁してほしいな……」
そう言いながらも、こっそり人気のないところで読みにかかった。

「ふう……なんか手紙の内容の卑猥さがどんどんグレードアップしてるな……特に神尾ゆりかちゃんからの……」
手紙のほとんどを読み終えた瑞穂は、疲れた顔でぼやく。
「そういえば神尾ゆりかちゃん、まりやお姉さまには絶対に見せないでくださいって書いてあったっけ」
よっぽど恥ずかしい思いをさせられたんだな……と思っていると、1つ雰囲気の違う内容の手紙に気づいた。
手紙には、こう書かれていた。

瑞穂さんへ

私は、貴子さんに劇薬入りの飲み物を仕込んだものです。
黙っていようかと思っていましたが、やはり罪悪感に耐えられず、懺悔することにいたしました。
どうかお聞きくださるというなら、1時限目の後、屋上までおいでください。そして、どうか罪深い私をお叱りください。
お待ちしています。

とっても悪い人より

「来た……ついに……」
瑞穂はそう思った。とうとう犯人が名乗り出てくれた。
でも、懺悔しているんだから、許そう。責めないでおこう。そして、貴子さんに2人で謝ってあげよう。と。

142 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 03:30:34 ID:Umr28GRG0
(いや待て、まだ紫苑さんだと決まったわけじゃない。そうだ。話してみればわかる)
瑞穂は屋上に踏み出す。
「……紫苑さん」
「あら、瑞穂さん」
「こんなところで何してるんですか?」
「瑞穂さんを待っていたんです」
瑞穂の顔がますます蒼ざめる。
「貴子さんの飲み物に劇薬を入れたことを告白するために……」
「そ……そんな……」
「瑞穂さんもご存知でしょう。私の未来は、厳島家によって閉ざされています。ですから……」
紫苑は、沈鬱な表情で続ける。
「もちろん理不尽な恨みであることはわかっています。
でも、それでも、どうしても私の未来を不幸に閉ざしてしまった厳島の血を引く貴子さんが許せなくて……」
「そ、そんな……紫苑さんだけは違うって思いたかったのに……」
瑞穂は涙を浮かべながら、強い口調で言う。
「どうか夢なら覚めてください! 夢じゃないなら紫苑さん、ウソだと言ってください!!」
「ウソです」
一変してお嬢さまスマイルを浮かべながら言う紫苑に、瑞穂はずっこけてしまった。
「し、紫苑さーん……」
「確かに貴子さんにはつい辛く当たってしまうこともありますけど、
いくら私でも、関係のない貴子さんを計画的に陥れるほど、落ちぶれてはいませんわ」
「ホントに冗談はやめてくださいよ! 一瞬本気にしちゃったじゃないですか!」
「まあ、瑞穂さんは私がそんなことできる人だと思っていらっしゃいましたの? ショックですわ」
紫苑は悲しげに言う。

143 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 03:35:20 ID:Umr28GRG0
申し訳ありません。ミスしてしまいました。142は飛ばしてください。

そして、約束の時間、屋上……。
「一体誰なんだろう……」
そう思いながらも、瑞穂が屋上のドアを開けてみると、そこにいたのは……。
「紫苑……さん……」
一番信じたくなかった光景だった。
(いや待て、まだ紫苑さんだと決まったわけじゃない。そうだ。話してみればわかる)
瑞穂は屋上に踏み出す。
「……紫苑さん」
「あら、瑞穂さん」
「こんなところで何してるんですか?」
「瑞穂さんを待っていたんです」
瑞穂の顔がますます蒼ざめる。
「貴子さんの飲み物に劇薬を入れたことを告白するために……」
「そ……そんな……」
「瑞穂さんもご存知でしょう。私の未来は、厳島家によって閉ざされています。ですから……」
紫苑は、沈鬱な表情で続ける。
「もちろん理不尽な恨みであることはわかっています。
でも、それでも、どうしても私の未来を不幸に閉ざしてしまった厳島の血を引く貴子さんが許せなくて……」
「そ、そんな……紫苑さんだけは違うって思いたかったのに……」
瑞穂は涙を浮かべながら、強い口調で言う。
「どうか夢なら覚めてください! 夢じゃないなら紫苑さん、ウソだと言ってください!!」
「ウソです」
一変してお嬢さまスマイルを浮かべながら言う紫苑に、瑞穂はずっこけてしまった。
「し、紫苑さーん……」
「確かに貴子さんにはつい辛く当たってしまうこともありますけど、
いくら私でも、関係のない貴子さんを計画的に陥れるほど、落ちぶれてはいませんわ」
「ホントに冗談はやめてくださいよ! 一瞬本気にしちゃったじゃないですか!」
「まあ、瑞穂さんは私がそんなことできる人だと思っていらっしゃいましたの? ショックですわ」
紫苑は悲しげに言う。

144 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 03:38:36 ID:Umr28GRG0
「僕だって信じたくはなかったですけど、貴子さんが口の中に骨が刺さって痛いって言うから紙コップに入ってた水を飲ませたら、
庇護の甲斐なくこのごろ極悪って言って倒れたんですよ。貴子さんが庇護してるのに恨んでそうな人って、どうしても紫苑さん以外には……」
「それは悪いことをしてしまいましたわね」
紫苑はそう言って続ける。
「でも瑞穂さん、それだけで水が原因だと考えるのは早計ですわよ? 
貴子さんが病気で倒れたときにたまたま瑞穂さんが水を飲ませた可能性も捨て切れませんし……」
「そっか。そうですよね! 紫苑さん、ありがとうございます!」
瑞穂は意気揚々と屋上を後にした。
「うふふふ……瑞穂さん、楽しすぎですわ……うふふふふふふふふふ……」
その現場を目撃しており、真相を知っている紫苑は、笑いをこらえることができなくなっていた。

昼休み、密談専用の場所(?)で……。
「さて諸君、今日も瑞穂ちゃ……宮小路瑞穂嬢の入った風呂の湯を販売するのだが……」
2人の必殺密売人は、紙コップを並べた後、集まったメンバーに言う。
「由佳里、あれ持ってきて」
「……私は必殺密売人Hじゃなかったんですか?」
「ああもう、うるさい! 早く持って来る!」
「は、はい!」
密売人HはXに言われたものを持ってきた。
「ここに取り出しましたるは、なんと、それに瑞穂嬢の髪の毛が入っているものなのであります! 1個限り! 値段は3万円とする!」
「きゃあーっ!!」
メンバーから歓喜の声が上がった。そして、いっせいに髪の毛入りのを手に入れようともみくちゃになった。
「これは私のですわ!」
「何をおっしゃいますの! 私が先につかんだんですから、私のものです!」
「5万円出しますわ! ですから私がいただいて然るべきもの……」
2人の密売人もおしくらまんじゅうの中に巻き添えになっていた。そこへ……。

145 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 03:41:12 ID:Umr28GRG0
「おやめなさい!」
「紫苑さま!!」
紫苑が凛とした表情でみんなを見据えている。
「あなたたち、欲望をむき出しにして、取り合いで醜い争いを繰り広げるなど、それでも聖央の生徒ですか!?」
「申し訳ありません……」
メンバー全員がしゅんとなって謝る。すると……。
「というわけで、これは私がいただいていきますわ」
紫苑は穏やかな表情になり、ひっさらって瑞穂の髪の毛入り風呂の湯を持っていった。
「し、紫苑さま……」

次の日の朝、瑞穂の部屋で……。
「ん? なんだろ?」
瑞穂が目覚めると、よだれの後と思われるものがカピカピに乾いた後があった。

「やっ。おはよ、瑞穂ちゃん」
「おはようまりや。ちょっと聞きたいんだけど、僕の部屋、なんかよだれが乾いた痕跡みたいなのがあったんだけど、
どういうことだと思う?」
ドアの前でまりやに出くわした瑞穂は、そう聞いてみる。
「そんなの知らないわよ。だらしない寝方してたんじゃないの?」
「でも、なんか寝てる間に猛烈にくすぐられたような気がするし……」
「気のせいよ、気のせい。瑞穂ちゃんは心配性だなあ」
「そっかな……」
瑞穂はまだ納得できない、という感じで食堂に下りていった。

146 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 03:49:15 ID:Umr28GRG0
そして、その日の夕方……。
「お先に」
「ごゆっくり、瑞穂ちゃん」
「じゃあ、次は奏が入りますのですよ」
一番風呂を瑞穂が上がった後、奏が後に入ろうとする。
「奏ちゃん、まだダメ! あんたが入ると、価値が下がる!」
「……まりや、奏ちゃん、今日は演劇部の練習がハードだったんだから、入らせてあげればいいじゃない。
それに価値が下がるってどういう意味?」
ふと瑞穂が疑念を感じて聞いてみた。
「それは……そうそう、人間としてって意味よ。少しは我慢することを覚えた方が、人間として鍛えられるでしょ?」
まりやが冷や汗を流しながら答える。
「……それが一番足りないのはまりやじゃない?」
「はやや、ケンカはやめてくださいなのですよ……奏、もう少し我慢しますのですよ」
「奏ちゃん、話がわかるいい娘ね。もうちょっとしたら入れるからそんなに心配しないで」
「はいなのですよ」
笑顔で言うまりやに、瑞穂は腑に落ちないものを感じていた。

翌日の朝……。
「う……なんだろ? 身体に力が入らないな……」
なんか股間のあたりにむずがゆさを覚える瑞穂。後でまりやに話すと、「夢精したんじゃないの? 年頃だからね」とのことだった。

そして昼休み、いつもの密談場所……。
「さて諸君、我々必殺密売人が入手したレアもの『瑞穂嬢の入った風呂の湯』は、なんと、瑞穂嬢の股間から出るねばっこい液体入りだあ!」
「きゃあーっ!!」
顧客たちから、今までで最高の歓声とどよめきがあがった。
「お姉さ……密売人X……昨日の唾液入りでもまずいと思ったのに、それはいくらなんでもやばいですよ……もしバレたら……」
密売人Hはさすがに引き気味になる。
「ああもう君は心配しすぎだ! 瑞穂ちゃんは鈍感だから、絶対バレっこないって」
「も、もうそろそろやめた方が……瑞穂お姉さま、怪しんでましたよ……手遅れになる前に……」
「生憎だけど、もう手遅れよ」
そこに、ぞっとするほど低い声が響いた。

147 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 04:03:04 ID:Umr28GRG0
「お姉さま!」
「み、瑞穂ちゃん、どうしてここが……」
全員の顔が一気に蒼白になる。
「昨日奏ちゃんに入るなっていうから、おかしいと思ったのよ。だからまりやの髪に、発信機をつけさせてもらったの」
黒い感情に溢れた声で、瑞穂は続ける。
「今まで一番風呂を勧めたのは、こういうわけだったのね。人のプライバシーを勝手に踏みにじって……」
このあとこの部屋にいたものは、全員瑞穂に1時間かけて死ぬほどきつく絞られることになった……。
「お姉さま、すみません。生徒会長として取り締まらなければならないはずですのに、このようなことに……」
「ごめんなさい! 私もいけないってわかってたんですけど、誘惑に負けてしまって、
以後どんどんなりゆき任せにエスカレートしていってしまったんです……」
貴子と由佳里を皮切りに、みんな口々に瑞穂に謝った。
「もう、みんなしょうがないわね。私を慕ってくれるのは嬉しいけど、その気持ちを出す方法を間違えちゃダメよ」

瑞穂は、まりやと由佳里を残してみんなを帰らせた。
「それにしても、プライバシーの侵害にもほどがあるわよ。それにこれが1杯5千円? ごうつくもいいとこだわ」
「瑞穂ちゃん、人聞きが悪いわね。あたしは極めて良心的な値段で販売してたわよ」
「こんなものコップ1杯で5千円もするののどこが良心的なの!?」
「お姉さま、これ以上値段は下げられなかったんですよ」
「どうして?」
「これ以上下げると、買い手の皆さんから文句が来るんです。お姉さまの価値がそんなに低いと思ってるのかって」
「ウソでしょ?」
由佳里の説明に、瑞穂も唖然となる。
「ウソじゃないよ。だいたい瑞穂ちゃん、最初にどれくらいの値段にしたらいいかお客のみんなに聞いたとき、
コップ1杯でどれくらいの値段がついたと思う?」
「さ、さあ……」
戸惑う瑞穂に、まりやはだまって親指と小指を折った手を瑞穂に突き出す。
「さ、3万? そんな高い値段がついたの?」
「うんにゃ、30万」
「………」
瑞穂はあまりのことに声も出なかった。

148 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 04:07:33 ID:Umr28GRG0
その夜……。
「まりや、そんなに金を集めて、一体どうしようとしてたんだよ?」
「いやあ、瑞穂ちゃんも1年間ずっと女のフリをしてしかもエルダーまで務めてたわけだからさ。
パーッとお疲れ様ってことで、ねぎらいの接待をしたげたかったのよ。お金もかけた、盛大なヤツをね」
まりやはあまり悪びれた様子もなく言った。
「……気持ちは嬉しいけどさ」
瑞穂は、まりやに対し、呆れたため息をついた。
「瑞穂ちゃんを驚かせようと思ったし、そういうためのイベントだから、費用は瑞穂ちゃんの力を借りずに用意したかったからさ」
自分のやった方法が瑞穂の力を借りている、しかも最悪の方法で、ということに気づいていないまりやに、
瑞穂は恐ろしさを感じずにいられなかった。

それから、数年後……。
「瑞穂様、お疲れ様です」
「楓さん、社長になってから忙しい毎日だけど、その言葉を聞くと疲れもとれるよ」
「ありがとうございます。でも、その言葉は奥様に言ってあげた方がよろしいのでは?」
「あはは、そうだね。でも、楓さんの言葉も聞きたいのも本当だから」
「ふふっ、今お風呂が沸き立てですわよ。入ってくださいな」
「い、いや、いいよ、後で」
「疲れてらっしゃるでしょうから、そうおっしゃらずに……」
「イヤだーっ! 一番風呂はイヤだーっ!!」
瑞穂はこのことがトラウマになって、一生一番風呂には入れなくなりましたとさ。

Fin

149 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/05(月) 04:11:50 ID:Umr28GRG0
以上です。
お気づきかもしれませんが、タイトルは「銭湯」と「戦闘」をかけてあります。

それにしても、今回の作品はL鍋さんの作品を元に考えたのですが、ミスはしてしまうわ、L鍋さんのようにうまくいかないわと、
非常に落ち込んでしまいました。
あれだけの作品を短期間で書き上げられるL鍋さんがうらやましいです。

最後に瑞穂くんの奥さんですが、それは皆さんのお好きなキャラ、とお考えください。
それでは、今回はこれにて失礼します。

150 :名無しさん@初回限定:2007/03/05(月) 09:34:30 ID:VU6PDoXz0
密売人まりやシリーズきたー!!

151 :名無しさん@初回限定:2007/03/05(月) 11:46:28 ID:YkZUVGhj0
面白かったのですよ〜

152 :名無しさん@初回限定:2007/03/05(月) 18:54:04 ID:wA6cBuJq0
まりやも由佳里も

ま さ に 外 道 !

153 :名無しさん@初回限定:2007/03/05(月) 19:38:55 ID:r69LZ9iC0
紫苑様の誕生日まで約15日と4時間と20分


154 :名無しさん@初回限定:2007/03/05(月) 23:29:48 ID:caRJZ9Lk0
>>134-148
面白かった。

以下、無責任なコメント。
・人を選ぶ設定かも。>>133あたりでなんらかの警告が欲しかった。
・元気が出るものを無理やり食べさせてもよかった。
 (スッポンハンバーグ?)
・「顧客たち」には男バレしてるの?
・「せんとう」繋がりは分かるが、「銭湯」じゃなくて「お風呂」だし…。
 お風呂ーどバトル?残り湯には福がある?…つまんなくてスマソ。

155 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/06(火) 10:30:55 ID:lomNhB9S0
東の扉です。

>>154
コメント&ご指摘、ありがとうございます。
警告……そうですね。これから気をつけようと思います。
「顧客に男バレ」はしてません。だからまりやも男のか女のかわからないように
細工をした、という設定のつもりだったのですが、説明不足でしたね。
「お風呂の湯」でも、金の受け渡しがあるわけですから、「銭湯」でもいいかと思いました。

以上です。それでは失礼します。

156 :名無しさん@初回限定:2007/03/06(火) 19:37:41 ID:GHnwvelv0
紫苑様の誕生日まで約14日と4時間と20分

157 :名無しさん@初回限定:2007/03/07(水) 21:00:50 ID:1rJwF7U70
紫苑様の誕生日まで約13日と3時間

158 :名無しさん@初回限定:2007/03/08(木) 19:41:59 ID:BtoJdrkj0
紫苑様の誕生日まで約12日と4時間と20分

159 :サヴ◇y60vr5MSyP:2007/03/09(金) 15:26:24 ID:yzIBYlrk0
「Lovin` Touchin` Squeezin`」

今日は大学へ初めて登校する日。
紫苑は急に目が覚めてしまった。
ベッドから身を起こしカーテンの隙間から外をうかがう。
すぐ目の先にはすずめが餌をついばみながら歩き回っていた。

「おはよう、すずめさん……」

空は明るみ始めていた。だが、起きるには些か早すぎたかもしれない。
身動ぎする気配を感じ紫苑は脇を見る。
男性にしては長い髪。将来を約束した鏑木瑞穂、その人である。

「うん……。」

何やらぼそぼそと寝言を言っているように聞こえるが、紫苑にとっては今はどうでもよかった。
瑞穂の幸せそうな寝顔、そして自分の心に満ち溢れる喜びで一杯だからだった。
明日への道を示してくれた未来の旦那様に感謝しつつ、紫苑は跳ねている瑞穂の前髪を撫でた。

「…さま……。」

はっきりと聞こえた訳ではなかったけど、瑞穂の寝言聞いて紫苑は少し顔を曇らせる。
瑞穂は亡き母親の事をほとんど覚えていない。
その母との夢を見ているのかと思うと少し心が痛んだ。
親子関係で決して恵まれた環境ではなかった瑞穂。今でもその寂しさがあるのだろう。

160 :サヴ◇y60vr5MSyP:2007/03/09(金) 15:27:15 ID:yzIBYlrk0
瑞穂さん……私は一生あなたと共にあります。だから……」

最後は消え行くような小さい声になっていたが、瑞穂を安心させようとしたに違いない。
紫苑はゆっくり瑞穂の顔を撫でると顔を近づけていく。
そして小さな「ちゅっ」という音と共に顔が離れていく。

「ん……。」

瑞穂はまた身動ぎする。だが、起きる気配はない。
紫苑は布団からはみ出た瑞穂の手を握るとゆっくり身を瑞穂に預けた。


「ん……。おはよう、紫苑。」
「おはようございます、あなた。」

しばらくして瑞穂が目を覚ました。
瑞穂が起きるまで紫苑はずっと瑞穂の寝顔を見ていた。

「あなた、いい夢でも見たのですか?嬉しそうにいろいろ動いていましたよ?」
「あはは、そうだったの?よくは覚えていないんだけど、母様や紫苑と一緒にお茶を飲んでいたような夢だったかも。」

嬉しそうに言う瑞穂を見て紫苑も釣られて笑顔になる

161 :サヴ◇y60vr5MSyP:2007/03/09(金) 15:28:11 ID:yzIBYlrk0
「いよいよ、ですね。」
「うん、そうだね。今日からまた学校だ。」

瑞穂はそういうと背伸びしてベッドから這い出ようとする。

「あなた……」

紫苑に呼び止められて瑞穂は振り向く。
紫苑はベッドの上ながらも正座していた。

「紫苑?どうしたの、改まって……」
「瑞穂さん、今後もまたよろしくお願いします。」
「え、ええ。こちらこそよろしくお願いします。」

あわてて正座して挨拶する瑞穂。
その様子に紫苑はくすりと笑う。
釣られて瑞穂も笑い声を漏らす。

「いい日に、なりそうだね。」
「ええ、そうですね。」

後で高校時代の友人に出くわすことになるがそれはまた別の話である。

Fin

162 :サヴ◇y60vr5MSyP:2007/03/09(金) 15:36:23 ID:yzIBYlrk0
サヴです。初めての投稿です。よろしくお願いします。
紫苑様の誕生日が近いので思い切って投稿してみました。
しかもフライングです。
出来る限り見直してみましたが漏れがありましたらなにとぞご容赦下さい。
しかし、投稿してみて名前のところがおかしいなぁと思っています。
何で白抜きなんだい?
ネタで某ナチ残党の少佐やどこぞの宗教組織の首切り判事の演説原稿を
紫苑様でパロッてみようかなぁとは思っていたんですけど、やめました。
ありきたりなネタだと思いますし、皆さんから礫があられの様に飛んで
きそうなので。
命欲しいです。
何か降臨したらまた投稿してみようかなと思います。
それでは失礼します。

163 :名無しさん@初回限定:2007/03/09(金) 16:01:07 ID:sV1V3RU40
>>162 トリップの付け方
コテの後に半角#+半角英数字を付けると◆〜に変換される
試すならここで
トリップテストスレ
http://etc6.2ch.net/test/read.cgi/qa/1173326282/l50

164 :163:2007/03/09(金) 16:03:17 ID:sV1V3RU40
すまん、半角#+全角半角どちらでも可だった

165 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/09(金) 16:16:30 ID:yzIBYlrk0
>163
すいません、ありがとうございます。
……試しにやってみましたけど、慣れるまで時間がかかりそうです。
でっかい感謝です。

166 :名無しさん@初回限定:2007/03/09(金) 16:26:19 ID:dBEQ3jL10
>>162
とても良かった。きれいで読みやすい。
こういうの好きなので、これからもよろしく〜


167 :名無しさん@初回限定:2007/03/09(金) 20:29:25 ID:x5x1i5bQ0
紫苑様の誕生日まで約11日と3時間と30分


168 :サヴ ◆16KBdbBdjE :2007/03/10(土) 01:09:06 ID:KW0mbnLy0
>>166
どうもありがとうございます。
短い時間でさっさとやってしまったので粗さが否めないと思っていたんですけど
いい評価を戴けたのでありがたいです。
近いうちにもう一本投下する予定でいます。
その時にもまた読んで頂けたらありがたいと思います。

169 :サヴ ◆16KBdbBdjE :2007/03/10(土) 01:12:00 ID:KW0mbnLy0
……なーんか弩素人丸出し。
コテハン使うの初めてだしなぁ。
なんかへこむ……orz

170 :名無しさん@初回限定:2007/03/10(土) 09:19:11 ID:82Nos/2h0
というか、ここは騙り(かたり)がほとんど出ないからトリップつける必要性を感じません。

171 :名無しさん@初回限定:2007/03/10(土) 10:45:10 ID:+rXHxstI0
以前出てただろ
騙りが出てから鳥つけても遅いのよ

172 :名無しさん@初回限定:2007/03/10(土) 11:57:40 ID:fHDXWu/Z0
>>169
職人さんはみんな素人。
上手下手は慣れの問題。
読む側としてはそんなの気にせず、どんどん投下してもらえたら嬉しい。
がんばってくれ。

あと、騙りでるからトリいるよ。

173 :名無しさん@初回限定:2007/03/10(土) 13:18:00 ID:BBow5V8X0
いつの間にか新しい作品が投下されてるね
>>169
GJ

174 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/10(土) 13:27:18 ID:3puWXNe30
「ネコ」

瑞穂は今日も寮から学校へ登校だ。
もうそろそろ卒業だけれども。
まりや達と連なって歩いていく。

「今日もいい天気ね。」
「そうねー。ピクニックにはもってこいの日だわ。」

ちょっと遅れたのか奏、由佳里が後から慌ててトコトコとついてくる。

「お姉さま、ふきのとうが出ているのですよー。」
「もうそんな季節なのね。早いものだわ。」

季節のめぐりが早くなったような気がして感慨深くなる。
遺言やらまりやの暗躍やらで恵泉に放り込まれた瑞穂ではあったが時間が立つにつれて学校に愛着が湧いてくる。
だが、慣れたと思ったらもう卒業。
仲間達と心から楽しめる時間がだんだん少なくなっていることを認識し始めて一種の寂しさを感じている。

ガサゴソッ

175 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/10(土) 13:28:01 ID:3puWXNe30
「あら、何かしら?」
「瑞穂ちゃん、どうしたの?」
「そこの植え込みで……」

瑞穂が指差したところから猫が飛び出してきた。

「あら。」
「ネコなのですよー。」
「でも、かなり大きい……」

毛むくじゃらで体格ががっしりした猫だった。

「なんかふてぶてしい感じのニャンコだわ。」
「首輪つけているわね。近所から迷い込んだのかしら?」
「それに、人懐っこいネコですね。」

由佳里の足元で猫がまとわりついている。
ゴロゴロのどを鳴らし擦り寄っている。

「あはは、くすぐったい。」
「ふかふかで可愛いのですよー。」

奏が触ろうとしても猫はぜんぜん逃げようとしない。
瑞穂はかがみ込んで首輪の名札を手に取る。

176 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/10(土) 13:28:32 ID:3puWXNe30
「えっと……ためごろう?」
「……飼い主さんの時代を感じるわね。」

まりやも触ろうと近寄るがためごろうは後ずさりする。
あまつさえ先ほどまでゴロゴロいっていたのども止まっている。

「何であたしだけ警戒されるの……」
「さぁ?弄りたいオーラでも出ていたんじゃないの?」
「心外だなぁ、瑞穂ちゃん。あたしはただ抱きしめてためごろうの気持ちよさを堪能しようと思っただけですにゃ〜?」

う〜。

さらに警戒したのだろう、ためごろうはうなり声を上げるようになってしまった。

「ほら、行きましょう。学校に遅れてしまうわよ。」
「フカフカのためごろう〜。」
「もう。後で触らせてくれるわよ。」
「バイバイなのですよ、ためごろうさん。」
「あー、可愛かったですね。」

未練たらたらにためごろうを見つめるまりやを連れて瑞穂は登校して行った。


177 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/10(土) 13:35:10 ID:3puWXNe30
−放課後

瑞穂はまりや、紫苑と共に下校している。
他愛もない話で花を咲かせては三人そろって笑う。その毎日である。

「あら、瑞穂さん。あれは……」
「おやおや、あれは今朝のためごろうですにゃ〜。」

瑞穂を見つけるなりシッポをぱったんぱったん動かし始めたためごろう。
うれしそうに『な〜』と鳴く。

「あらあら、瑞穂さんに懐いているのですね。」
「みたいですね。」

瑞穂が背中を撫でてやるとのどをゴロゴロ言わせて瑞穂の手をなめてくる。
終いには寝っ転がって欠伸までする。

「うふふ、可愛いですね。」
「紫苑さんも触ってみます?」

紫苑がゆっくり手を伸ばしていくとためごろうは前足でその手をつかむ。もちろん爪は出していない。
お腹を触ってやるとためごろうはさらにシッポをぱったんぱったん振り回し紫苑の手を甘噛みし始める。

「うふふ、甘えん坊さんですね。」
「うー、いいなーいいなー。」

紫苑に甘えるためごろうを見てまりやは羨ましそうな声を上げる。

178 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/10(土) 13:36:34 ID:3puWXNe30

「まりやさんは触っていないんですか?」
「触らせてもらえないんです、警戒しちゃって。」

ちょっと離れたところでためごろうを見つめるまりや。

「落ち着いているから来てもいいんじゃないかしら?」
「う、うん。」

瑞穂に誘われてゆっくりと近づくまりや。
すんでの所までためごろうは紫苑に甘えている。
そして、まりやを確認すると身を翻して逃げる体制に入った。
顔を見ると『しまった、逃げ遅れちゃったよ。』とでも言いたげな感じである。

「……呻ってるわよ。」
「どうしてかしらね……。」

気を取り直してまりやはためごろうに手を伸ばす。

ぱしっぱししししっ

「ネコパンチ……」
「爪が出ていなくてよかったね、まりや……」

179 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/10(土) 13:37:50 ID:3puWXNe30
ちょっとショック受けたまりやであったが、気を取り直してためごろうに触る。
しばらく動きもしなかったためごろうであったが、慣れてきたのだろう、ゴロゴロ言うようになった。

「やっと慣れてくれた……」
「しかし、何でまりやを警戒したんでしょうね……」
「……あら?」

紫苑がためごろうの名札を弄っていると何か見つけたようだ。

「男嫌いです、飼い主より……」
「「……」」

瑞穂とまりやはがっくりと両手を地面につける。

「男と認識されなかったんだ、僕は……」
「瑞穂ちゃんの気持ち、今わかったわ……」
「あらあら。」


その後、ためごろうはまりやにも慣れ、毎朝通学路で出くわしては愛想を振りまくようになった。
しかしながら、一向に男として認識してくれないためごろうに瑞穂はショックを受けると共に一種の諦めを感じていた。

Fin

180 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/10(土) 13:53:04 ID:3puWXNe30
連続投下になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
猫を題材にしたくて書いたのですが、最後のあたりちょっと無理があったような気もしないでもないです。
もうちょっと練らないといけないかも。

>>172
ありがとうございます。
いいネタがあれば投下していきます。
がんばりまする。

>>173
ありがとうございます。

181 :名無しさん@初回限定:2007/03/10(土) 19:59:17 ID:vPb8q7PY0
紫苑様の誕生日まで約10日と4時間

182 :名無しさん@初回限定:2007/03/10(土) 23:19:45 ID:BBow5V8X0
面白いよ
その調子で頑張ってw

183 :名無しさん@初回限定:2007/03/11(日) 11:23:40 ID:5K1gXzbL0
>>180 良作! 乙!

184 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/11(日) 15:19:50 ID:ECfGkASQ0
>>182
>>183
ありがとうございます。
もうひとつ投下しようと思っていますのでそれもよろしくお願いします。

185 :名無しさん@初回限定:2007/03/11(日) 15:21:54 ID:cgSYyC+v0
>>184
キャラのポジションをよく解ってると思うw
もっと頑張って〜

186 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/11(日) 18:33:56 ID:gywlQeDm0
東の扉です。

もし由佳里ちゃん以外のキャラにあだ名をつけたらどうなるか、を考えてみました。
よろしければお読みください。

187 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/11(日) 18:37:40 ID:gywlQeDm0
いつもの昼休み、僕たち寮生+紫苑さん、貴子さん、美智子さん、圭さんの8人で食堂に集まって食事していた時のこと……。
「はむっ……はむはむ……んーっ♪」
今日も由佳里ちゃんは、おいしそうにハンバーグランチを食べている。
「やあ、相変わらずバカの1つ覚えみたいにおいしそうに食べてますな、ゆかりん」
そんな由佳里ちゃんにまりやがからかい半分に言う。
「なんですかバカの1つ覚えって! それにいい加減そのゆかりんって呼び方やめてください!」
「………」
そんな光景を見ながら、僕はあることを考えていた。

〜もうひとつの名前〜

「……そういえばさ」
「ん? どったの、瑞穂ちゃん」
「まりやって、いつも由佳里ちゃんのことゆかりんって呼ぶけど、他の人にあだ名をつけるとこって見たことないなって」
「そういえばそうなのですよ」
「では、今から考えてみる、というのはいかがでしょう?」
ふと、紫苑さんがお嬢さまスマイルでそう言う。
「……紫苑さん、楽しんでますね」
「ええ」
「でも、まりやさんがつけると、ろくなあだ名ができなさそうですわね」
「ちょっと待てや、貴子、何を根拠にそう言うかね」
「まりやさんは人をいじめるのが趣味の方ですから、ご本人が恥ずかしがるようなあだ名ばかりつけて楽しむに決まってますから」
「何よ! あたしのネーミングセンスをそんな思い込みで否定しようっての? 冗談じゃないわよ!」
……またいつものケンカモードだ。
「でも、会長さんの言ったことは事実ですよ。まりやお姉さま、いつも私に恥ずかしい思いをさせて喜んでいますから……」
「由佳里! あんた、姉のあたしを裏切って悪の生徒会長の味方をしようっての?」
「あ、いや、その……」
まりやの怒りが自分に向きそうな気配になった由佳里ちゃんは、ちょっと引き気味になる。
「そんな悪い子にはおしおきじゃあ!!」
「ひえー……!」

188 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/11(日) 18:41:30 ID:gywlQeDm0
まりやが由佳里ちゃんをいじめる体制にかかったとき、貴子さんが間に入る。
「ほーら、早速まりやさんの人をいじめて楽しむ下衆な性格がここに現れていますわ」
「うっ……こ、これはだな……」
「だいたい、いつも裏切られても仕方のないことばかりしているまりやさんの方がお仕置きされるべきではないのですか?」
「ぐううう……」
「2人とも、落ち着いて……そうだ、みんなのあだ名を決めるんだったわよね?」
このままでは言い争いに発展すると思った僕は、急遽話題を戻す。
「そうね。まず紫苑さまは……」
「………」
考えたけど、紫苑さんをあだ名で呼ぶなんて考えられないな……。
「えっと……」
「うーんと……」
ほかのみんなも一緒だったようだ。
「私って、あだ名も考えられないほど可愛げがないですか? 寂しいですわ」
そんな光景に、紫苑さんがすねてしまった。
「ま、まあ、紫苑さんのあだ名は後で考えるとして、次は誰のを考える?」
「ズバリ、瑞穂さんですわ」
「お姉さまですか……確かにお姉さまなら、そんなに難しくはなさそうですわね」
「お姉さまになら、可愛いあだ名もお似合いだと思うのですよ」
こ、この違いは何?
「ううう……」
そう思っていたら、まりやが両手とひざを地面につけて落ち込んでいた……。
「どうしたの、まりや?」
「い、今まで誰よりもずっと長い間瑞穂ちゃんといるのに……あだ名の1つも考えてなかったのかって気づいたら……
自分が、とてつもなく情けなく思えて……」
いや、そんなことで落ち込まれても困るんだけど……。

189 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/11(日) 18:44:41 ID:gywlQeDm0
「圭さんは、瑞穂さんのこと瑞穂っちと呼んだことがありましたね」
「呼んだ……」
「私のあだ名は、考えてくれないんですか?」
美智子さんが寂しそうに言う。
「美智子にはそんなもの必要ない。私が呼び捨てにするのは、家族以外では美智子だけだから……」
「そうですか。ならいいです」
「では、みーちゃんはどうでしょう?」
「可愛らしくていいですわね」
「みずっぴってのは? 結構いいと思うけど?」
「それならみずぽんというのも、いいと思うのですよ」
……なんか、由佳里ちゃんの気持ちがわかったような気がする。
「圭さんは何か他にはありませんか?」
「みずにゃん」
「……み、みずにゃんって、どこから出てくるんですか?」
「某恋愛ゲームのシリーズに出てくる、『しおん』という名前の娘のあだ名がしおにゃん。『ゆかり』がゆかにゃん。
それには『みずほ』もいるから」
「……ほんとなんですか、それ?」
圭さんの言葉を聞いてると、にわかには信じがたい。そんな偶然……。
「しおにゃんですか。なかなか可愛らしくていいですわね」
一方、それを聞いた紫苑さんが満面の笑顔で言う。
「由佳里はさあ、ゆかりんとゆかにゃんとどっちがいい?」
「どっちもイヤですよ!」
……なんか、僕のあだ名を決めてるのに、意外なところから反応が来てるな。

190 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/11(日) 18:47:43 ID:gywlQeDm0
「じゃあ、次はまりやね」
まりや自身のあだ名を決めるってのも面白いかもね。
「まりやお姉さまは私のことゆかりんって呼ぶから、同じようにまりりん、とか……」
「由佳里、もうちょっと考えなよ。あたしがまりりんってガラか?」
……違うな、どう考えても。
「レドナーリン」
「……部長さん、そのあだ名はどこから出てくるのですか?」
「まりやの苗字は『みかど』だから音楽の『ミ』か『ド』。どっちもレの隣にあるからレのとなりでレドナーリンじゃないの?」
「ふ……正解」
……なかなかいいかも。
「ねえねえ、瑞穂ちゃんは何かある?」
「そうね。シンプルにまりやんってのはどう?」
「……それもなんか気に入らないわね。男の子みたいじゃない」
僕の考えたあだ名にもまりやは不満そう。
「……まりやお姉さまはもともと男みたいなんだから、それでいいと思うけど……」
由佳里ちゃんが小声でつぶやくと、しっかり反応があった。
「由佳里、聞こえてるわよ」
「あわわ、ごめんなさい!」
僕は由佳里ちゃんがいじめられそうだと思って助けに入ることにした。
「……まあまりやは聖央の生徒の中で一番男っぽいんじゃない?」
「そうよねえ。少なくとも瑞穂ちゃんよりはね」
ガーン!!
「っていうかさ、瑞穂ちゃんと比べたら、誰でも男っぽく見えるんじゃない?」
「まったく同感ですわね」
紫苑さんもまりやの意見に賛同する。
「ううう……」
「あ、あの、お姉さま、どうしてそこで落ち込んでしまわれるのですか?」

191 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/11(日) 18:51:53 ID:gywlQeDm0
「じゃあ、次は奏ちゃんの番かしら?」
「はややっ、奏なのですか?」
「奏さんでしたら、名前自体が可愛いですから、必要ないようにも感じますわね」
「ええ。本当に。奏ちゃんは、存在自体が可愛すぎますから……」
貴子さんと紫苑さんがそう感想を述べた。奏ちゃんの顔が赤くなる。
「はうー……お姉さま方、恥ずかしいのですよ」
「それで、あだ名だけど、繰り返してかなかなとかどうかしら?」
「……ひねりがないわね、瑞穂ちゃん。奏って名前からなんか連想しなよ」
「うーん……じゃあメロディーとか。並べてメロメロってのはどうかな?」
由佳里ちゃん、メロメロって……。
「私、奏ちゃんの魅力にもうメロメロですわ」
紫苑さんはそう言って、いつものごとく奏ちゃんに近づいて抱きしめる。

「貴子さんはどんなのがいいかな……」
「お、お姉さま……」
貴子さんが赤面する。貴子さんのことだから、今まであだ名で呼ばれたことはないんだろうな。
「貴子ね……貴ビーってのがいいんじゃない?」
「まりやさん、それじゃ、まるで私が高飛車みたいではないですか!」
……まりや、絶対わざとでしょ。
「みたいじゃなくって、実際そうじゃない。っていうか、なんにも言ってないのに怒ってるのが自覚している証拠じゃないの?」
「あなたの考えてることなど、言わなくてもわかりますわ!
そういうセリフは、少しはまともな言動をできるようになってからおっしゃいなさい!」
「2人とも、落ち着いて! そうね、『貴』を音読みして、きこっちとか、きこりんなんてどうかしら?」
「お、お姉さまが……私のことを……きこっち……きこりん」
貴子さんがふらふらしている……と思ったら、バッタリ。
「きゅうううう……」
「ああっ、貴子さん!」
「……瑞穂ちゃんが自分のことをあだ名で呼ぶ想像だけで、のぼせちゃったのね」

192 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/11(日) 18:55:31 ID:gywlQeDm0
貴子さんが起き上がってしばらくしてから……。
「ねえ、一子ちゃんにはどういうのがいいかしら?」
「一子さん、ですか……」
「一子さんでしたら、イッチー、とか……ちょっと変かな?」
「一子ちゃんならさ、やっぱポチでしょ?」
「な……なんでポチ?」
まりや命名のあだ名に、僕が疑問をはさむ。どっから出て来るの、ポチなんて?
「だって一子ちゃんの『一』を英語でワン、ついでに一子ちゃんって犬のように瑞穂ちゃんのこと慕ってるでしょ?」
……なるほど。
「あの……一子さんって、どなたのことですか?」
紫苑さんと貴子さんの声がハモる。
「まあ、それは後で説明しますよ。で、結局どのあだ名にしますか?」
「あーら、楽しそうね、皆さん」
最終決定しようと思っていると、緋紗子先生が食堂に来た。
「あっ、緋紗子先生、緋紗子先生はどのあだ名が……」
「あだ名も結構だけど、もう5時限目、とっくに始まってるんだけど?」
緋紗子先生は、笑顔の裏に怒りの十字路を浮かべながら言う。
「えっ!?」
「やばっ!」
「急がなきゃ!」
僕もみんなも、あだ名を最終決定する暇もなく、慌てて教室に戻った。

Fin

193 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/11(日) 18:58:44 ID:gywlQeDm0
以上です。お粗末さまでした。

なんかキャラによって比較的考えていたり、いい加減だったり……
キャラの使いまわしもいい加減で、まだまだ未熟さを痛感させられました。

194 :名無しさん@初回限定:2007/03/11(日) 20:01:28 ID:IcQdSFUF0
紫苑様の誕生日まで約9日と4時間

195 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/11(日) 23:44:00 ID:CklvZbmW0
「The show must go on」

「だから貴子、これじゃ瑞穂ちゃんに似合わないって言っているでしょ?」
「とは言え、瑞穂さんは男の方です。むしろこういった物をお贈りした方が宜しいのではと思いますが。」

瑞穂は紫苑との挙式を上げることになった。
入籍を済ませてから5年。鏑木財閥の後継者としてのお披露目を兼ねる事になったが、本人の強い希望で質素に行われることになった。
だが、まりやの提案で身内でちょっとしたパーティーをやろうかという話になっていた。
まりやと貴子は瑞穂と紫苑への贈り物を買うためにデパートの時計売り場に来ていた。
紫苑への贈り物はすんなりと決まったが、瑞穂に贈る物が決まらない。
まりやは女性物に似たシンプルな腕時計を送ろうと思っていたのだが、貴子はクロノグラフにすることを頑固に主張した。

「だからさ、機械巻きとかごついのは大きくなっちゃって瑞穂ちゃんの腕とのバランスが取れないのよ。」
「ええ、それは判りますわ。だからこちらのクォーツにするべきではありませんか?」

落とし所が中々見つからないようだ。
応対している哀れな店員さんは困ったような顔をしている。
さらに1時間店員さんも交えて突き詰めた結果、タグ・ミューラーのF1モデルに落ち着いた。

「疲れたわ……。久しぶりに言い合ったからのどが渇いちゃった……。」
「そうですわね……。お茶飲みに行きますか?」
「うん、行こ行こ。」


196 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/11(日) 23:44:52 ID:CklvZbmW0
とある抹茶専門の甘味処に入った二人は奥のテーブルに陣取りデザートを食べていた。

「このほのかな苦味がいいわぁ。貴子、それ少しちょーだい。」
「ああっ?!まりやさん、私の分が無くなってしまうではありませんか。少しは遠慮というものを……。」
「まーまー、気にするなって。あたしの食べたらいいじゃない。」
「では……」

貴子は遠慮気味にスプーンをまりやのデザートへ伸ばす。
もう少しで掬えるというところでまりやは皿を引いた。
スプーンの先がかすりもしなかった貴子はジト目でまりやを睨みつける。

「あっはっは、冗談よ。」
「まったくもう……。ん、この苦味がちょうどいいですね。」

他愛もない話をするうちにデザートはなくなっていき、飲み物だけが残った。
抹茶ラテを飲みつつまりやはふとつぶやく。

「紫苑様、幸せそうでいいわね。」
「え?ええ。そうですわね。」
「貴子さ、あんた瑞穂ちゃんが好きだったんでしょ?」

貴子は秘めていた思いを見透かされ、ドキリとする。

「……ええ。そうですわね。」
「あたしもね、……瑞穂ちゃんが好きだった。」

まりやはそこでラテを少し飲む。

「幼馴染だから、という理由じゃない。純粋に瑞穂ちゃんが好きだった。」
「まりやさん……」
「でもね、もう吹っ切れた。瑞穂ちゃんと紫苑様の顔を見ていたら……私が入り込む余地はもうないんだなぁって。」
「……私も、同じ思いでしたわ。何より、お二人のお膳立てをしてしまった以上、私がしゃしゃり出る余地など……」

197 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/11(日) 23:45:42 ID:CklvZbmW0
貴子が黙ると二人の間にちょっと重い空気が流れる。
高校時代、みんな瑞穂に惹かれていった。
ある者は理想のお姉さまとして。
ある者は最高の友人として。
そして、瑞穂の正体を知る者は将来の伴侶であることを望んで。
まりや、貴子もその例に漏れなかった。
だが、瑞穂は紫苑を選んだ。
とてもお似合いのカップルだったけれども、内心複雑だった。
もちろん嫉妬した。

「でもさ、貴子。あたしたちさ、友達だよね。」
「……ええ。紫苑様も、瑞穂さんも、奏さんも、由佳里さんも。そして、あなたも。」
「精一杯の笑顔で精一杯の気持ちをこめてさ、祝おうよ……。」
「そうですわね。……まりやさん、あなた泣いて……」
「ち、違うわよっ!ちょっとゴミが入っただけなんだから……」

貴子に指摘されて潤んでいた眼をこするまりや。
内心貴子もちょっと泣きそうであったのだけれども。

198 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/11(日) 23:46:40 ID:CklvZbmW0
「さてと。今夜は暇?」
「明日も休みですから……。」

予定を確認するとまりやはにやりと笑う。

「今日も飲み比べよ。」
「……明日は二日酔いになりますわね。」

さもうんざりだというフリをして苦笑する貴子。

「瑞穂ちゃんと紫苑様、いい夫婦になるわね。」
「当たり前じゃないですか。あのお二人なんですから。」
「そうねー。さぁ、今日は飲むぞー。」

翌日、貴子の部屋で二人そろって撃沈していたのは言うまでもない。
貴子はテーブルの上に置かれた二人への贈り物を見てふっと笑うと、痛む頭を押さえつつ呻いているまりやの介抱をするのだった。

Fin

199 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/11(日) 23:53:28 ID:CklvZbmW0
ま、間に合った……。
3日連続投下してみました、サヴです。
流石に明日の投下はないと思いますが降臨したら突撃するかもです。
今回は瑞穂、紫苑様の結婚式直前のお話です。
一気に書いてしまったので齟齬が出ているとは思うんですが……。

あ、ちなみに瑞穂ちゃんへ送る腕時計はタグ・ホイヤーのF1モデルを想定しています。
なんかいいなーと思ったので使ってみました。
それでは失礼します。

200 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/11(日) 23:56:50 ID:CklvZbmW0
>>185
ありがとうございます。
励みになります。

201 :名無しさん@初回限定:2007/03/12(月) 00:12:19 ID:eO66a7IU0
結構リアルタイムで見れたわ
二人ともGJ 最近ちょっとこのスレ活気づいて来たね

202 :名無しさん@初回限定:2007/03/12(月) 11:53:28 ID:XrCbYR6S0
GJ!
飛ばしているようだけど紫苑さまの誕生日に合わせて
何かをしようとしてるのでしょうか?
無理せずに頑張ってください

203 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/12(月) 13:08:38 ID:rbLetX190
>>202
いえ、飛ばしているわけではないんですけど、降臨してくるものですから。
私は紫苑様フリークなので連投は苦ではないです。
三千世界の鴉を殺すほどの紫苑様を所望します(ォィ
あと2つぐらいは投下してみたいですけど、ネタさえ合致すれば。
さすがに苦しくなってきましたが……(笑)

204 :名無しさん@初回限定:2007/03/12(月) 19:22:10 ID:DWksIGyg0
紫苑様の誕生日まで約8日と4時間と40分

205 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/12(月) 20:54:22 ID:rbLetX190
「パーティー準備」

『八兵衛、何か動きあったかい?』
『青山様。駄目です、あいつら全然動きやしません。』

休日の午前中。
瑞穂はぼーっとテレビを見ている。
時代劇は性じゃないのだが、この「青山様」がなかなかいい演技をしている。
別の時間帯では隻眼の剣士の役をやっていて殺陣がすごくよかったのを瑞穂は覚えている。

「あなた、まりやさんがいらっしゃいましたわよ。」
「え?今日は何の用事だろう?」

紫苑に呼ばれて瑞穂はまりやを迎えに玄関に向かう。

「瑞穂ちゃん、お願い。早くあけて。」
「はいはい、今あけるよ。」

まりやの焦った声とカリカリと地面を爪で引っかくような音が聞こえてくる。
不審に思いつつもドアを開けた瞬間、目の前に真っ白な毛玉と牙がが迫ってきた。

「わあっ?!」

あっという間に地面に組み伏された瑞穂。
闖入者は瑞穂の上に乗っかると顔を嘗め回し始めた

206 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/12(月) 20:56:04 ID:rbLetX190
「こ、こら、チョッパー!お座り!」

ウォンッ!
べろべろべろべろべろ

嬉しそうにひと吠えするとチョッパーはまた瑞穂の顔を嘗め回した。
まりやが連れて来たのはチョッパーという名前のハスキー犬。
それはそれは嬉しそうにシッポをばたばた振り回している。

「うっぷ、くすぐったいってば……あん♪」

くすぐったそうに身をよじる瑞穂であったが妙な声を上げてしまった。

「チョッパー!こっちに来なさいってば……うんしょっと。」

まりやは首輪を捕まえてチョッパーを引きずり下ろす。
未練たらたらに瑞穂を見つめるがチョッパーはやっと大人しくお座りする。
しばらく呆然としていた瑞穂であったがゆっくりと自分で立ち上がる。
前髪から首まで顔全体がチョッパーのヨダレだらけになっていた。

207 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/12(月) 20:56:57 ID:rbLetX190
「……どうしたの、この犬。」
「うちの親戚が旅行に行くからって預けてきたのよ。散歩しに出かけたら引きずり回されて……」

疲労困憊といった表情のまりや。
元陸上部のまりやがこの有様である。
聞けばチョッパーは犬ぞりに出場するとかで結構訓練をつんでいるらしい。
一度風呂に入りなおした瑞穂はジト目でチョッパーを見つめる。

「で、どうしてうちに来たの?」
「い、いやぁ、瑞穂ちゃんちで預かってもらおうかなぁと思って……」
「それは困るね。」
「にゃはははは……、だよね。」

まりやにしては珍しく引き下がるのが早い。
瑞穂は不思議がるが、紫苑がチョッパーを構おうとしているのを見てあわてる。

「……あれ?妙に大人しいね?」
「紫苑様にちょっかいを出さないね……って、うそ。降参のポーズしてる……。」

どうした事だろうか、誰にも飛びつくはずのチョッパーが大人しい。
その上、紫苑に対して服従の態度を示したのだ。

「紫苑、大丈夫なの?」
「ええ。目を合わせて微笑んだだけですが、どうしてでしょうね?」

そこで瑞穂とまりやは納得した顔をする。

(悪人顔で笑ったんだね、紫苑は。)
(さすが紫苑様だわ。チョッパーをメンチだけで服従させるとは……)

紫苑は事情が飲み込めず首を傾げるだけであった。

208 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/12(月) 21:01:42 ID:rbLetX190
さすがに家の中に入れるのはまずいのでチョッパーに玄関で大人しくしてもらうことにした。
楓が使わなくなった毛布を用意してそこにチョッパーを座らせる。

「今日は別の目的があってうちに来たんでしょう?」
「そうよ。挙式前のパーティーの打ち合わせよ。」
「え?ここで簡単に済ませればいいんじゃ?」
「そうもいかないわ。小父さまから『せっかく身内だけでやるんだからパーッとやりたい』ってね。」

父親、慶行のご所望で都内のホテルの宴会場を借りることになったらしい。
瑞穂は眉を寄せてあからさまに困った顔をする。

「まぁ、そんな顔をなさんな。親孝行だと思ってさ。」
「僕の性に合わないんだよなぁ。」

紫苑にも相談する瑞穂であったが、紫苑は「あなたが決める事ですから」と言って口出ししなかった。
最終的に瑞穂は渋々まりやの案を了承するのであった。

「そういえば今日、貴子さんも来るんだよね?」
「うん。もうそろそろ来るはずよ。」

月に1度ぐらいみんなで集まって騒いだりするのが恒例行事になっていた。
今日はその日である。
暫くするとインターフォンが鳴る。


209 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/12(月) 21:02:12 ID:rbLetX190
「はい。貴子さん?」
<<今日もお邪魔しますわ。>>
「玄関空いていますよ。」
<<それでは失礼します。>>

貴子が来た事を確認すると紫苑は台所に向かってお茶の準備をする。
門扉から玄関まではちょっとした距離があるが、そろそろ玄関に着く頃だと瑞穂は認識していた。

「……そういえば、玄関にチョッパーがいたよね。」
「うん、すっかり忘れてた……」

そこで突然貴子の悲鳴が上がる。
そしてチョッパーの嬉しそうな吠える声まで聞こえてくる。

「遅かった……。」
「救出しましょ……。」

玄関先ではやはりチョッパーに押し倒され顔をヨダレまみれにされた貴子がいた。

「な、なんですか、この犬はっ!く、くすぐったい……あん♪」

首を丹念に舐められくすぐったそうに声を上げる貴子。
そしてお尻まで振り回すが如くしっぽを振っているチョッパー。

「面白いから暫くほうっておく?」
「ま、まりやさん、楽しむ暇があったら助けてくださいっ!」

結局、救出された貴子も即風呂へ直行した。
流石に外で縄につながれる事になったチョッパー。
さも満足したと言いたげな表情で欠伸をするのだった。

210 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/12(月) 21:03:46 ID:rbLetX190
「まりやさんの親戚の犬と言うことでしたら、あの莫迦さ加減は理解できますわ。」
「あら、言ってくれるじゃない。あたしだってチョッパーに振り回されたんだから。」

服までヨダレだらけにされた貴子は紫苑から服を借りている。
体格の差が多少あるためぶかぶかである。

「で、プランは決まったのですか?」
「僕は豪華すぎるのは好きじゃないんだけどね……」

ジャズバンドまで呼ぶそうだ。
ちょっとしたパブみたいなところでやるという。
出てくるビールはもちろんギネスだそうだ。

「いいじゃないですか、雰囲気が出て。」
「あまり父様にはしゃしゃり出て欲しくはなかったんだけどね……。」

ボヤキばかりだった瑞穂であるが、それはそれで楽しそうだ。

「瑞穂ちゃん、このプランはあたしや貴子と突き詰めて考えたんだから。」
「そうですよ。詳しくは教えられない所はありますけど、瑞穂さんと紫苑様には楽しんでいただきたいんですから。」
「そうですか……。本当にありがとう。」

瑞穂はそこで二人に深々と頭を下げる。
目尻には光るものがあった。

「お茶のお替り、用意しますね。」
「すいません、紫苑様。」
「恐れ入ります。」

そこでみんなはそろって笑うのだった。

Fin

211 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/12(月) 21:09:40 ID:rbLetX190
カッとなってやった。
後悔はしていない。

結局4連投しました。
苦しかったです、本当に。
明らかに雑だと思います……。
瑞穂と貴子さんに「あん♪」を言わせたくて無理矢理ぶちこんだ感じです。
紫苑様にも「あん♪」言わせたかったんですが、私の技量では無理だと思いました。
どなたか紫苑様に「あん♪」を言わせてください……
もしかしたら明日も投下するかもしれません。多分、連投はそれで最後になると思います。
お目汚し失礼しました。

212 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/12(月) 21:12:49 ID:rbLetX190
今気がついた……。
パーティー会場の設定で齟齬が発生。
ホテルの中のイギリス風パブでやるという脳内設定でお願いします……

吊ってきますorz

213 :名無しさん@初回限定:2007/03/12(月) 22:30:05 ID:TPeqr2ss0
>>212
お疲れさんです〜
ミスに気づかなかった漏れは
文章読解力皆無です(´・ω・`)

214 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/13(火) 17:50:17 ID:94K9FqwG0
「Till The End」

披露宴前日の東京シャムロックホテルにて。
瑞穂と紫苑の夫婦はお祝いを受けた。
飲みすぎて顔が火照っている状態の瑞穂であったが、パーティーの内容を思い出すとクスリと笑い出す。
今日は身内のみのパーティーだったためか、みんな大いに騒いで大いに飲んだ。
瑞穂は慶行とスコッチでサシの勝負をする羽目になり、撃沈した。
後に復活したものの慶行に「未熟者だな」と言われた。
まりやはまりやで貴子とこれまたサシで勝負。今頃は第5ラウンドに突入している頃であろう。
紫苑の両親も出席し、慶行に感謝すると共に親父殿はジャズバンドと共に学生時代に培ったサックスを披露した。
由佳里はパブのキッチンを借りて自慢の料理を振るってくれた。
紫苑も奏と一緒に飲み、一足早く眠ってしまった奏をぬいぐるみのように介抱していた。
酔った貴子が感極まって紫苑の胸元でおいおい泣き叫ぶハプニングもあったが、紫苑は嬉しそうに貴子を抱きしめていた。
瑞穂はふと手元を見るとまりやと貴子からのプレゼントがあった。中身はタグ・ミューラーの腕時計だった。
飾りっ気のないシンプル、且つ機能的な腕時計を手にとっては玩ぶ。
よっぽど嬉しいのだろう。左手に着けてみるとまたクスリと笑い出す

215 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/13(火) 17:51:17 ID:94K9FqwG0
「あなた、うれしいのですね?」
「うん。こんな腕時計したことなかったから嬉しくて。お酒残っているからかもしれないけどね。」

今はホテルの一室にいる。
とうとう翌日は披露宴となり、朝から忙しくなる。
主役が二日酔いとなっては元も子もないと楓が気を利かせて宴会場から脱出させてくれた。

「まりやたち、大丈夫かなぁ。父様まで普段以上に飲んでいるから明日が心配だよ。」
「それもそれで一つの思い出ではありませんか?」
「笑い話で済ませられたらの話だけどね。」

瑞穂のボヤキを聞いて紫苑はくすくすと笑う。
瑞穂は苦笑いする他なかったが。

「明日早いからもう寝ようか?」
「そうですわね。でも、その前に……。」

紫苑はいきなり瑞穂に正面から抱きつく。
そして体を密着させて背中に手を回す。

「本当にあなたに出会えてよかった……。」
「紫苑……。」
「私、幸せで一杯なんです。瑞穂さんのような優しい方と出会えて。」

いつの間にか瑞穂も紫苑を抱きしめ、頭を撫でている。

「この幸せを手放したくなくて……でも、ちょっと不安で……」
「紫苑、僕はいつも傍にいますよ。」
「えっ……。」
「僕だって不安なんですよ。紫苑がいない生活なんて考えられませんから。」

そこまで言うと瑞穂は紫苑を優しく、しかし手放したくないと言わんばかりに抱きしめる。

216 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/13(火) 17:52:21 ID:94K9FqwG0
「命を粗末にしないこと。それだけでも守って下さい。」
「……はい。共に瑞穂さんとあることを誓ったのですから。」

そこで二人の唇は自然と重なっていく。


瑞穂は夢を見た。
庭で椅子に座り本を読む瑞穂。目の前では3人の子供が元気に駆けずり回ってる。
そこに紫苑が冷たい飲み物を持ってくると子供達は嬉々として駆け寄っていく。
「お母さん」と呼んで。
紫苑は瑞穂に飲み物を渡す。見つめ合って微笑みあう。
幸せなひと時だった。

翌日。
正午頃から始まった結婚式にはみんなしっかりと集まっていた。
まりやと貴子は顔色悪かったけれども。
つつがなく式は進行し、瑞穂の社交界デビューを兼ねた披露宴は成功裏に終わった。

約十年後、小学校に入るまでになった子供達を見て瑞穂はとある場面を思い出す。
夢で見たあの光景。目の前でそっくりそのまま映し出されている。
正夢だったのかと思いつつ、子供達の名前を呼ぶ瑞穂であった。

END

217 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/13(火) 18:01:30 ID:94K9FqwG0
きつかった……サヴです。
5連投、これで終了です。
2投目は過去に遡っていますけど、一連の流れにあると見ていただけたら幸いです。
無理矢理ネタ仕込んでコケてしまった所もありましたが、無難なく仕上げたつもりです。
暫く充電して新たなネタが浮かび上がりましたらまた投稿しようと思います。
その時は相手してやって下さい。
それでは失礼します。

218 :名無しさん@初回限定:2007/03/13(火) 20:30:17 ID:7Dq5dgAi0
紫苑様の誕生日まで約7日と3時間と30分

219 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:00:28 ID:KkpS8YiP0
日付が変わってから投下しようと思ってたのですが、強烈な睡魔が襲ってきました
ので、今から投下します。ちなみにホワイトデーネタ思いつきませんでした。

220 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:01:30 ID:KkpS8YiP0
『瑞穂とバザー』

「お姉さま、来週のバザーの出し物なのですが、お決まりになりましたでしょうか?」
貴子に問いかけられ、瑞穂はまだ決めていないと謝った。
「今晩、寮で考えてきます」
「よろしくお願いいたします。本当にいらないもので結構ですので」

その晩、寮の自室でメモを片手に出品するものを考える瑞穂。
毎年、この季節に地域の自治会や婦人会と協力して、チャリティーバザーを行っている。
恵泉の生徒会からも出店することになっており、瑞穂は貴子から応援を求められていた。
「う〜ん、使ってないバインダーでしょ、バッグも要らない、この太宰治の選集も要らない」
チェックしたものをメモに書き留めていく。
「ぶぇっくしゅん」
誰かが廊下で派手なくしゃみをしているのが聞こえた。
ドアを開けて覗いてみると、まりやが自分の部屋に戻るところだった。
「今のくしゃみ、まりや?」
「うん。なんだか寒気がして」
そう云えば、夕方雨が降っていたとき、まりやは傘を忘れてずぶ濡れで帰ってきた。
「もしかして風邪をひいたんじゃないの」
瑞穂がまりやの額に手を当ててみる。
「ちょっと熱いみたい。まりや、風邪薬飲んですぐに寝なさい」
「大丈夫、大丈夫。これくらいどってことないわよ。にゃはは」
見た目、豪快に笑い飛ばすまりやだった。

翌日、まりやの容態は悪化していた。
「びずぼちゃーん、ごめーん」
「もういいから。今日はゆっくり寝てなさい。絶対に外に出ちゃだめよ」
まりやをベッドに寝かせて、上から布団を掛けてあげる。
「うん。わがっだ。…おねがいがあるんだげどいいがな?」

221 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:04:18 ID:KkpS8YiP0
「なに?」
「ぎょう、買い物じだがっだんだげど」
「判ったわ。買い物リストを下駄箱の横にでも置いといて頂戴。昼休みにでも取りに来て、
そのまま放課後に買いにいって来るから」
「ありがど〜」

午前中、薬を飲んで暖かくして寝ていたまりやが、昼前に目を覚ましたときには大分と体が楽になっていた。
「う〜ん。思ったより早く熱が下がってきたみたいね。どれ、ちょっと買い物にでもいってくるか」
と、ここで瑞穂が云っていた事を思い出す。
「そう云えば瑞穂ちゃんが買い物行ってくれるんだっけ」
早速、買い物リストを書き始める。
「身の回り品だけど、瑞穂ちゃん、女の子の格好だから大丈夫よね。あ〜なんだか豚マン食べたくなってきちゃった」
まりやはリストをメモ用紙に書くと、玄関に行って下駄箱の横に置いた。
「なんか退屈ね。本でも読もうかしら」
自室の本棚にはあんまり数が無い。ハーレクィーンがあるが、こんなのは読み飽きた。
「なんかモヤモヤ〜っとするのよね〜。エロッちぃのないかしら」
とりあえず、由佳里の部屋に行ってみる。
「ちっ、鍵を掛けてるわ。生意気な」
諦めて部屋に戻るが、益々もやもや感が増すばかり。
「そうだ。瑞穂ちゃんに買ってきてもらおう。男だからいいよね」
玄関に行って、先ほどの紙に書き足した。


瑞穂は午前中、貴子から放課後に生徒会室に来てくれるように云われた。
「判りました。あっ、いけない。バザーの出品物のリスト、寮に忘れて来てしまいました」
「部屋にお忘れになったのですか?」
「いいえ、玄関の下駄箱のところだと思います。朝、まりやさんが熱を出してバタバタしてたものですから」

222 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:07:15 ID:KkpS8YiP0
それを横で聞いていた君枝が瑞穂に、
「お姉さま、私、昼休みに外出する用事がありますから、そのついでに寮に寄ってきます」
「えっ、君枝さん。そんなこと…」
「いいえ、これ位どうってことありません。お気になさらないでください」

昼休み、食堂で由佳里、奏と一緒に昼食をとっている瑞穂。
「奏ちゃん、ごめんね。放課後、生徒会室に行かないといけなくなっちゃったから」
「本当ならあたしが、すべきなんだけど部活が抜けられなくて」
瑞穂と由佳里が奏に謝っている。
「いいのですよ〜。まりやお姉さまのお買い物はお任せくださいなのです」
昼食後、奏は寮に買い物メモを取りに戻った。
下駄箱の上においてあるメモ用紙を見つける。


放課後、生徒会室。
瑞穂はまだ来ていない。
君枝がメモ用紙を貴子に渡した。折りたたまれたメモ用紙を広げてみる。

・・・濡れティッシュ、生理用ナプキン(多い日用)、豚マン、川○宗薫の本

「…君枝さん、これは何ですか?」
「お姉さまのメモです」
君枝も中を確認していないので、書かれている内容を知らない。
(お姉さま…バザーをご存じないのかしら…いえ、私が要らないものと云ったので、本当に要らない物なのかも。
ナプキン……お姉さまはナプキン派なのですね、買い溜めなさってたのかしら。豚マン?一体何?)
メモを見つめたまま、深く考え込む貴子。
その様子を不審気に見ている君枝、葉子、可奈子の3人組。
「あのう、会長?どうかなさいましたか?」

223 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:10:16 ID:KkpS8YiP0
「い、いいえ。何でもありません。ところで豚マンとは何でしょうか?」
「は?豚マンですか、何といいますか、蒸し饅頭の類で中の具が豚ひき肉になっている食べ物です。
コンビニなどで売られています」
「食べ物ですか…なにやら文房具のような気がしたのですが」
「それはお姉さまのメモに書いてあったのでしょうか?」
バザーの売り物に豚マン…。
君枝たち三人は顔を見合わせる。
「ええ、まあ。それと川○宗薫という人はどんな人でしょうか?」
「○上宗薫ですか」
3人とも首をかしげる。
「なんとなく格調高そうな名前ですね。昔の純文学作家でしょうか?」
「さあ、でもお姉さまが呼んでいらっしゃる本ですから、多分そうでしょう」
君枝がパソコンのキーを叩き始めた。
「ちょっと調べてみますね……えっ!?」

224 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:13:15 ID:KkpS8YiP0
君枝がディスプレイの前で固まってしまった。葉子と可奈子が顔を見合わせて、画面を覗き込む。

画面に映っている文字・・・・・・『官能小説家』

「………」
「まあ〜」
絶句するふたりに貴子が尋ねる。
「どうしました、判ったのですか?」
「……官能小説家だそうです」
葉子が答えた。君枝と可奈子は呆けている。
「かんのう…小説?聞き覚えが無いのですが、それは一体なんですか?」
貴子の問いに三人とも一斉に顔を赤くする。
「え〜と、説明するのが難しいのですが…」
そう云いながら葉子がキーボードを叩いた。
そして官能小説のHPを開けると、貴子に見せた。
「こういう風な小説のことを云います」
自分に向けられた画面を、黙々と読んでいく貴子。
……ポタッ…
貴子の鼻から鼻血が垂れ落ちた…。
「おおお姉さまが、お姉さまが、ここここれは!ここれを!ええっ!!」
たちまちパニックになる貴子。
「か、会長、落ち着いてください」
貴子の手からメモ用紙が落ちた。それを葉子が拾って中を見た。
「ええっ!生理用ナプキン!?」
驚いて君枝と可奈子もメモを覗き込む。
「こ、これは…」
カチャ!
そこへ瑞穂がやって来た。

225 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:16:16 ID:KkpS8YiP0
「遅くなりました、皆さん」
慌てふためく4人。
とりあえず、君枝は画面を消し、葉子はメモをポケットの中に突っ込み、貴子はティッシュを丸めて鼻に詰めた。
「ん?どうしたんですか、皆さん」
「い、いえ、何でもありません」
「君枝さん。お昼休みはどうもすいませんでした」
「と、と、とんでもありません」
「それで貴子さん、出品物はあれで良かったでしょうか?」
「……えっ、ええ!?」
言葉に詰まる貴子。
「そ、そうですわね」
瑞穂に恥をかかせるわけにはいかない。どう云ったら良いものか思案していると、横から葉子が助け舟を出した。
「それが、お姉さまの出品物は他の人のと結構ダブってまして」
「そ、そうなんです。別のものだと有難いのですが」
慌てて、貴子も話を合わす。
「あ〜やっぱりそうですか。ありふれた物ばかりでしたからね」
「・・・・・・・・・」
「本もやっぱり、作家がかぶってましたか」
四人の脳裏に浮かぶ官能作家…
「……はい。かぶってました」
絶句している貴子に代わり、きっぱりと答える葉子。
「判りました。今晩、また別のものを見繕ってきますね」
「あの、お姉さま。できれば、老若男女が使えるものでお願いします」


瑞穂が寮に着くと、既にリビングに奏と由佳里が帰ってきていた。
「奏ちゃん、どうもありがとう」
「どう致しましてなのですよ〜」
二階に上り、まりやの部屋に行くとまりやが怒った顔して待っていた。
「瑞穂ちゃん、買い物の中身間違ってたわよ」

226 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:19:17 ID:KkpS8YiP0
部屋の隅においてある買い物袋に、ルーズリーフ、小さなポシェット、太宰治の文庫本数冊が入っていた。
「えっ、なんで?」
「これ」
そう云ってまりやが瑞穂に見せたメモは、昨日、瑞穂が書いたものだった。
「奏ちゃんが悪いわけじゃないから、礼を云って受け取ったけど…誰が悪いか判ってるわね?」
「うん。僕のせいだ。ごめん、まりや」
「そうよ、ごほっごほっ」
咳き込むまりや。
「さっき、近所のコンビニに自分で買いにいってきたのよ。おかげでまた微熱気味よ」
「ほんとにゴメン…えっ!?」
しょげて俯いた瑞穂をまりやがぎゅっと抱きしめた。
「罰としてこうやって、瑞穂ちゃんにあたしの風邪がうつるまで抱いていたい所だけど、今回は許してあげるわ。今回だけよ!」

部屋に戻った瑞穂。
「あれ、君枝さんが持って帰ったメモは一体なんだったんだろ?」
なんにしろ、バザーの出品物は選び直しだからいいかとあまり気にしないことにする。
「えっと、男女使えるものだったっけ。ジーンズは駄目かな、未使用のスニーカーは…。そうそう、台所に
使ってない圧力鍋があったっけ」
改めてバザーの出品物を選びなおしてメモに書き留めていく。

翌日の朝、まりやはまだ微熱が続いていた。
「今日も一日、寝ていたほうがいいわね」
「うん、そうする。だけど瑞穂ちゃん、こうなったのは瑞穂ちゃんのせいだからね」
「わかってるよ」
「だから、罰として今日、買い物にいって来て頂戴」
「何を?」
「う〜んとね…」
にひひと笑うまりや。
「後で紙に書いてもっていくわ」

227 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:22:16 ID:KkpS8YiP0
「じゃあ、食堂で朝食を食べてるわね」
瑞穂が部屋を出て行くと、すぐにメモ用紙を取り出すまりや。
昨日、身の回り品はコンビニで自分で買ってきたが、エロ小説はさすがに買えなかった。
一日たって、昨日読むつもりでいたものが読めなかっためか、モヤモヤ感が益々大きくなっていた。
「こりゃ、小説なんかじゃ駄目ね。まあ、瑞穂ちゃんに対する罰でもあるんだし…」
そう云ってなにやらカリカリと書き込む。
「あ、見ながら食べるものも欲しいわね。そう云えば、体に悪いって評判のあの飲み物、
いっぺん飲んでみたかったのよね」

そのころ、食堂では由佳里と奏が早めに食事を取っていた。
「おはよう、由佳里ちゃん、奏ちゃん」
「お姉さま。おはようございます」
「おはようございます。お姉さま」
「ふたりとも、早いわね」
「ええ、私も奏ちゃんも部活の用事があるもので」
「そう云えば由佳里ちゃん。明日の調理実習の買い物はしましたか〜」
奏が由佳里に尋ねる。
「あ、いけない。今日買いに行かないと」
「じゃあ、今日、奏が自分の分と一緒に買ってくるのですよ〜」
「ううん、今日、部活が早く終わるから、あたしが買ってくる。奏ちゃんの分も一緒にね」
「はやや〜。それは申し訳ないのですよ〜」
「いいって。いつも奏ちゃんに助けてもらってるし。で、買ってくるものは何だっけ?」
「じゃあ、紙に書いておきますのですよ」
奏がメモ用紙に材料を書き始める。
「ちょっと、お金をとってくるわね」
由佳里が一旦、自分の部屋に戻っていく。
瑞穂は朝食をとりながらまだ、バザーの出品物を考えてメモに書き込んでいたが、書き終えると以前、
まりやから貰ったコアラ柄の便箋に入れて、それをテーブルに置いてお手洗いに行った。

228 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:25:15 ID:KkpS8YiP0
奏は買い物メモを書いていたが、ふと、由佳里にお金を渡さないといけないと思いついて、
メモを持ったまま自分の部屋に戻っていった。
そこに戻ってきた由佳里。
テーブルの上においてあるメモの入った便箋に目を留める。
「これね」
その便箋を手に取り、かばんに入れると玄関に向かった。
次に食堂に来たのはまりや。
メモの中身を由佳里や奏に見られないように、コアラ柄の便箋にいれて持ってきている。
「あら、瑞穂ちゃん、どこに行ったのかしら」
かばんが置いてあるところを見ると、まだ寮内にいるはず。
まりやは便箋をテーブルに置くと瑞穂を捜しに出て行った。
次に入ってきたのは奏。
テーブルの上に買い物メモを置くと、お手洗いに出て行った。
途中の廊下で瑞穂とすれ違う。
最後に瑞穂が食堂に入ってきた。
テーブルの上を見ると、コアラ柄の便箋が一通とメモ用紙が一枚。
メモ用紙を見てみると、そこには買い物リストが書かれている。
「これね」
瑞穂は便箋とメモをかばんの中に入れる。
そこにまりやが入ってきた。
「瑞穂ちゃん、あたしの買い物リストだけど…」
「うん、持ったよ。ここに置いてあったやつでしょ」
「そう。じゃ、お願いね。楽しみにしてるわよ」
きししといやらしい笑いを浮かべながら、まりやは自分の部屋に戻っていった。
由佳里が食堂に入ってきた。
「お姉さま、奏ちゃんはどこにいますか?」
「奏ちゃんはいま、お手洗いよ。もう戻ってくるから」
そう云っていると、奏が食堂に入ってきた。
「由佳里ちゃん、お待たせなのですよ〜。由佳里ちゃん、メモは持ちましたか〜」

229 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:28:15 ID:KkpS8YiP0
「うん。じゃ、行きましょうか」
バタバタと出て行く下級生二人組。
残った瑞穂はひとり、お茶を飲んでから食堂を出て行った。


その日の放課後、生徒会室。
貴子たち4人が瑞穂がやってくるのを待っていた。
全員、言葉少な目。説明不能の不思議な感情に全員、胸の鼓動を高ぶらせていた。
…ガチャ…
ドアが開いて瑞穂が入ってきた。
「ごきげんよう、皆さん」
「お姉さま、いらっしゃいませ」
感情を面に出さずに、葉子が応対する。
他の三人は顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。
「…?貴子さんたち、どうかしましたか?」
「いえ、気にしないでください。会長たちは先ほど健康のため校庭10周走って来たものですから」
「じ、10周!?」
「ところでお姉さま、バザーの出品は決まりましたでしょうか」
「あ、ええ。数がなかったのですが、できるだけ誰でも使えるものを選んでみました」
そう云って、便箋を葉子に渡した。
「すいません。ちょっと、用事があるもので今日はこれで失礼させていただいて宜しいでしょうか?」
「はい。どうも有難うございました。お姉さま」
瑞穂が生徒会室を出て行き、葉子が便箋を貴子に渡した。

230 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:31:18 ID:KkpS8YiP0
……ごくり…
メモを便箋から取り出す貴子の指が、緊張で震えている。
メモを開いて、四人が一斉に覗き込む。
『・・・ひっ!』



・・・・・・魚肉ソーセージ、ポーション、ハードコアエロDVD



ブボボボッッ
貴子が激しく鼻血を噴出させた。

「ああ、会長。気を確かに。それ以上出血すると危険です!」
貴子が見たことも聞いたこともない、名詞の羅列。
ただその文字に低俗で淫猥なものを感じ取った。決して貴子の知っている瑞穂に似つかわしくない。
それが却って、貴子を興奮させる。
貴子は慌てて、ティッシュを丸めて鼻に詰めた。すぐに先端まで真っ赤に染まる。
「え、ええ。大丈夫…大丈夫です。皆さん。…それでは順番に行きましょうか。まず、魚肉ソーセージですか。これは?」
「文字通り、豚肉ではなく、魚肉で出来たソーセージです。一般的に安価で味は普通のソーセージに劣りますが、
お酒を飲まれる方には好まれる場合もあります」
「そうですか。あまり一般的ではないのですね。あなた方は召し上がったことがありますか」
3人揃って首を横に振った。
「そういうものが、売っていると知ってはいますが食べたことはありません。あまり、夕食のおかずとして食べるものでは
ありませんし、葉子さんのおっしゃったようにお酒のつまみとして食べることが多いようです」
君枝が答えた。
「そう…そのようなものをお姉さまが…。普段、召し上がっていらっしゃるのでしょうか…」
瑞穂が食しているなら是非、試してみなければ…と考えている貴子。

231 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:34:15 ID:KkpS8YiP0
「次のポーション、何でしょうか?化粧品でしょうか?」
可奈子がカタカタとキーボードを叩く。
「たぶん、これだと思います〜」
画面に現れたのは、異様に青い小瓶の飲み物。
「前に雑誌で見たことがあるんですが〜、テレビゲームから生まれた飲み物らしいです〜」
「これは凄い色ね」
葉子がぼそりと呟く。
「ここれ…体に悪影響はないのでしょうか」
君枝が尋ねた。
「えっとお、飲むと元気になるらしいですよ〜」
『嘘っ!!』
三人同時に突込みがはいる。
「こんな不気味な蛍光色の飲み物、体にいいはずがありませんっ!!」
貴子が体を震わせる。
「まあまあ会長、落ち着いてください。現実に売っているんですし、あまり云うと問題ですよ」
葉子がなだめる。
「それに私たちが飲むわけじゃないんですし」
「そ、そうですわね。お姉さま、こんなのを飲んでらっしゃるのかしら」
瑞穂が飲んでいるなら…死ぬ気で飲んでみようと覚悟を決める貴子。
「それで最後の…ここここれ、コレ、コココレレレレレレぇ…」
壊れたように言葉を振るわせる貴子。
名詞の中央に書かれている『エロ』という言葉に反応しているらしい。
「ななな何ですの。コレッ!」
顔を真っ赤にして口ごもる葉子たち。
雑誌などで聞いたことがある言葉であるが、貴子にどう云えば良いのか判らない。
ネットの画像など恐ろしくて、見せられない。

232 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:37:21 ID:KkpS8YiP0
「………」
「ハ、ハードコアとは一体…?」
「…そのう、濃いのだと思います…」
君枝が真っ赤になりながらぼそぼそと答えた。
「濃い?な何が?」
「…そそそれは…いいやらしいところが…」
「そそそっそれは、この『エロ』というところガデスカ!?」
「はい」
「……おお姉さまが…こんなものを……」
ぼお〜っとなる貴子。
「君枝さん!さささ参考までにおおおききしますが…どどどれくらい『エロ』なのでしょうか?」
「・・・・・・物凄く強力に『エロエロ』だとおもいます」


ぼひゅっっ!!


鼻に詰めていたティッシュが吹き飛び、鼻血を大量に撒き散らす貴子。
そしてそのまま、血の海の中に卒倒した。
「か、会長!?会長ォォ!!」

その日、買い物を終えて寮に帰ってきた瑞穂。
上機嫌でまりやが出迎える。
「おかえりなさ〜い、瑞穂ちゃん」
「はい、これ。頼まれていたもの」
渡された買い物袋を覗き込み、まりやの笑顔が固まった。
「ど、どうしたの、まりや。怖い顔しちゃって…」

233 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:40:13 ID:KkpS8YiP0
「瑞穂ちゃん。なにこれ」
…もち米、小豆、きなこ
「えっ、頼まれてたモノ…」
「アンタはあたしにあんころ餅を作れって云うのか〜!」
がっしゃ〜ん!!

2階でまりやが暴れている頃、1階の食堂では由佳里と奏が…
「うええっ、うええっ。無理だよ。買えなかったよ。高すぎるもん。うええ〜ん」
…マイセンティーカップセット、圧力鍋
「あああ、由佳里ちゃん。泣きやんでくださいなのですよ〜。これは何かの間違いなのですよ〜
明日作るのはあんころ餅なんですよ〜」

瑞穂が今回の騒動に気付くのは1時間後のことであった。


〜えぴろーぐ〜

翌日の放課後
「貴子さんに謝らないと…」
ガチャ…
生徒会室に入ると、葉子たち三人が瑞穂を見て慌てて、顔を赤くしながら目をそらす。
「あの、貴子さんは?」
「はあ、会長はその、体調不良で本日お休みです」
「・・・・・・・・・」


 Fin

234 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/13(火) 22:43:20 ID:KkpS8YiP0
お粗末さまでした。

では、まだお子様タイムですが寝ます。
オヤスミなさい。

235 :名無しさん@初回限定:2007/03/13(火) 23:52:38 ID:bFam4d5L0
GJ面白かったぜ


236 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/03/14(水) 00:10:31 ID:j39h4D1u0
>>234GJです。
奇しくもこちらも生徒会が舞台の話です。かる〜く読み流していただければ幸いです…

237 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/03/14(水) 00:13:56 ID:j39h4D1u0
『 眠り姫の枕 その1 』

「会長、そろそろ時間です。今日はこのくらいにしませんか?」
ここは生徒会室。窓の外はもう薄暗くなっています。
「そうですね…続きは明日にしましょう」
貴子さんの一声で、役員が一斉に席を立ちます。
「では、生徒会室の鍵は私が返却します」
「お願いします、君枝さん。ではみなさん、ご苦労さまでした」
「お疲れ様でした、会長」
生徒会室のドアを開けて、貴子さんは昇降口に向かいます。

「あら?おかしいですわ…各部の報告ファイルが無いですわね」
廊下でカバンの中身を確かめていた貴子さん、どうやら忘れ物のようです。
「私としたことが…今日中に目を通しておかないといけないのに…」
しばし逡巡していましたが、やがて…
「仕方ないですね…生徒会室に戻りましょう」
今来た道を逆戻りです。

「会長が忘れ物なんてしていてはいけませんね…え?」
会長用のスペアキーを差し込んだ時、その微妙な手応えに違和感を覚えます。
「鍵が…掛かっていませんわ。まさか君枝さんが忘れたわけでは…」
部屋の中を窺うと、カーテンが引かれた暗い室内に人の気配はありません。
「しっかり者の君枝さんらしくありませんね…それよりファイルですわ」
廊下から差し込む光を頼りに、貴子さんは自分の机に近付きます。
と――その時!!
ゆらり、と机の下から後ろ向きの人影が立ち上がります!
「ひいいいっ!だだだ誰ですかっ!」
ざんばら髪の女生徒がゆっくりと振り返りながら…
「見〜た〜な〜」
「!?★$▽¢£%#&*☆●きゅう〜〜〜」

―続く―

238 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/03/14(水) 00:16:31 ID:j39h4D1u0
『 眠り姫の枕 その2 』

「…ちょう!会長!」
ぼんやりとした意識の向こうで、誰かが呼んでいます。
「……え、き、君枝…さん?」
「良かった、気が付かれましたか!一体どうなさったのですか?」
「あ、あの私…忘れ物を取りにここに戻って…その時…あああっ!」
「うわっ!な、何かあったのですか!?」
(い、言えませんわ…おおおばけが出ただなんて)
「いえ…ちょっと眩暈がして…軽い貧血かもしれませんわ」
思わずごまかす貴子さん。
「そ、そうでしたか…あの、倒れた時にお怪我はありませんか?」
「ええ…大丈夫です。でも、君枝さんはどうしてここに?」
「わっ、私は…不覚にも鍵を掛け忘れたのに気付いて、引き返してきたのですが…」
怒られるのを覚悟してか、恐る恐る答える君枝さん。
「ああ、誰にでも間違いはありますから。でも次からは気を付けてください」
「もっ、申し訳ありませんでした!」
「すみませんが…手を貸していただけませんか?まだ足元が…」
君枝さんの手を借りて、貴子さんはゆっくり立ち上がります。

翌日――世界史の時間です。
(それにしても…よりによって生徒会室にお化けだなんて…)
授業そっちのけで、昨日のことを考える貴子さん。
(もし…これからもあんなことが続いたりしたら…たっ耐えられませんわっ!)
思わず自分で体を抱きかかえて身震いしてしまいます。
「ど、どうしました?貴子さん。悪寒でもするのですか?無理は良くありませんよ?」
「あ…お、お姉さま!失礼いたしました。な、何でもありませんわ」
「そうですか…気のせいか、顔色が青ざめているようですが…」
「いえあの、お気遣い無用ですから…」
(筋違いかもしれませんが、お姉さまに相談してみましょう…)

―続く―

239 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/03/14(水) 00:19:20 ID:j39h4D1u0
『 眠り姫の枕 その3 』

昼休み、踊り場で意外な人が瑞穂ちゃんを待ち受けています。
「お姉さま、お時間よろしいでしょうか?少々相談したいことがあるのですが…」
「貴子さんがわたしに相談とは珍しいですね…お伺いします」
「実は…」
貴子さんは、昨日の顛末を瑞穂ちゃんに話します。
「それで、今日はわたしもお手伝いという名目で同行して欲しいと?」
「べっ別にももも物の怪が怖いとかではなくて…そ、その不審者だったら困りますから」
「わかりました。では放課後、わたしも生徒会室にお邪魔します」
「ありがとうございます!お手数をお掛けしますが、よろしくお願いしますわ」
ほっとした表情で貴子さんは教室に戻ります。

放課後――生徒会室では瑞穂ちゃんを交えて、生徒会業務が進められています。
「お姉さまに手伝っていただいて助かりましたわ」
「いえ、たいしたお手伝いはできませんから…」
(貴子さん、そろそろ終わりですか?)
(は、はい、問題はこの後ですわ)
「会長、今日はもう終わりにしませんか?」
((来た―――!!))
「そ、そうですわね。では、君枝さん、鍵の返却をお願いできますか?」
「わかりました、お姉さまも今日はありがとうございました」
「ではみなさん、ご苦労さまでした」
「お疲れさまでした、会長、お姉さま」
貴子さんと瑞穂ちゃんは連れ立って生徒会室を離れます。

「それで、少し時間を置いて生徒会室に戻ると…いたんですね?」
「はははい!ちょうど今くらいではなかったかと…」
「では…行ってみましょうか」
二人で生徒会室を目指して廊下を進みます…。

―続く―

240 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/03/14(水) 00:22:35 ID:j39h4D1u0
『 眠り姫の枕 その4 』

問題の生徒会室のドアの前です。
「いいい一応私が当事者ですから、先にはははひりますわ」
「大丈夫ですか?あまり無理しないでくださいね」
静かにドアを開け、足音を忍ばせて自分の机に進む貴子さん。
すると――!
「見〜た〜な〜」
「………きゅう」
あっさり倒れる貴子さんを見て、瑞穂ちゃんが飛び込みます!
「あなたは何者ですかっ!話があるならわたしが聞きます!!」
ざんばら生徒に向かって瑞穂ちゃんが詰問すると…
「うわわわ〜〜〜っ!なななぜお姉さまがここにっ!?」
「…え?その声は…もしかして君枝さん!?」

「これは…どういうことなのか、聞かせてもらえるわね?」
「は…はい。ですが、会長には秘密にすると約束して下さい」
未だにのびている貴子さんを横目に、君枝さんが話し始めます。
「最初は…いつも会長がお座りになる椅子を…すーはーしたり、机の角で…ゴニョゴニョ」
「はあ?!」
思わず仰け反る瑞穂ちゃん。
「不潔な女だとお思いになるでしょうが…会長は私の憧れです!唯一無二の絶対神です!!」
「そ…そうなの」
「昨日もいつも通り、会長がお帰りになった後で思いを果たそうとしたら…」
「いきなり貴子さんが戻ってきた、と」
無言でうなずく君枝さん。
「とっさに隠れたものの、私の痴態を会長が知ったら会計は罷免、学院は退学です…」
「いくらなんでもそこまでは…」
「いいえ!恥ずかしくて学院には残れません!とにかく会長を部屋から遠ざけようと…」
「髪をほどいて、幽霊のマネをしたわけね…」

―続く―

241 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/03/14(水) 00:25:59 ID:j39h4D1u0
『 眠り姫の枕 その5 』

「事情はわかったけど…さすがに本人には話せないわね…あら?」
瑞穂ちゃんがふと見ると、膨大な量の紙束が置かれています。
「これは…何かしら?」
「あああーっ!それはいけません!!み、見ないで下さいーっ!!」
「ああ、洋裁に使う型紙ね…え?『リアル抱き枕 会長1号』って…?」
「会長の形代を崇め奉るのは…罪なのでしょうか?」
「罪とまでは言わないけれど…本気で作るつもりだったの?」
瑞穂ちゃんに見据えられて、ボソボソと君枝さんが話します。
「昨日も途中まで寸法を採ったのですが…下半身は一人では測りにくくて…」
「指の一本一本まで測ってある…すごい抱き枕になりそうね…」
「そうだ!お姉さまも採寸を手伝っていただけませんか!」
いきなり瑞穂ちゃんの手を取り、必死に訴える君枝さん。
「ええ〜っ!それって…貴子さんの体を触りまくるってこと!?」
「女同士ですし、会長は気絶なさっていますから!黙っていれば絶対バレません!」
メジャーを取り出す君枝さんの目は、眼鏡の奥で異様な輝きを帯びています。
「お…女同士って…とほほ〜」

「…ウェストはこれで良しっと。お姉さま、次はヒップです♪」
嬉々として貴子さんの体を測りまくる君枝さん。
「ああああの、ここは服の上からでも良いんじゃない?」
「ダメです!真の求道者たる者、安易な妥協はしません!早くスカートを捲って下さい!」
「うう…ごめんなさい貴子さん…し、失礼します…」
貴子さんの太腿が露わになり、続いてストッキングに覆われた下着までもが現れます。
「さすが会長…やはり品の良い下着をお召しになっています…」
うっとりと見惚れる君枝さん。
「ききき君枝さん!早く済ませないと貴子さんが目を覚ましますよ!!」
瑞穂ちゃんは目を逸らしながら君枝さんを急かしますが…
「あぁ…麗しい…私の…会長…」

―続く―

242 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/03/14(水) 00:29:16 ID:j39h4D1u0
『 眠り姫の枕 その6 』

その後も、しばしば作業が中断したものの、メジャーがつま先に達して…
「お姉さま!無事採寸が済みました!ご協力感謝いたします!」
喜色満面の君枝さん。
「そ…そう。良かったわね…」
疲れ切った表情の瑞穂ちゃん。
「では、私は退散します。お姉さま、後のことはお願いします!」
君枝さんは型紙を大事そうに抱えて、風のように生徒会室を退出します。
「あ、君枝さん!す、素早い…それよりも貴子さんを起こさないと…」
瑞穂ちゃんが貴子さんの軽く肩を揺らすと、弱々しい反応が返ってきます。
「う、う〜ん…あ…お姉さま…」

「…そうですか。ではもうあの生徒はここには来ない、と」
「え、ええ。二度と現れないように誠心誠意、説得しましたから…」
貴子さんと通学路を歩きながら、瑞穂ちゃんはウソの説明をします。
「ご迷惑をお掛けしました、お姉さま…おまけにあのような醜態まで晒して…」
「いえ…あれなら誰でも驚きますよ。お気になさらないで下さい…」
「ええ…色々とありがとうございました、お姉さま。では…ごきげんよう」
「お疲れさまでした、貴子さん」
足取りも軽く去っていく貴子さんを見て、瑞穂ちゃんがふとつぶやきます。
(君枝さんのことは黙っていたけど…大丈夫かなぁ?)

――それから3日後、君枝さんの部屋です。
「つっ、ついに完成です!リアル抱き枕 会長1号っ!!」
君枝さんの目が血走っているのは、連日の徹夜のせいだけではないようです。
「あぁ…私だけの会長…これからは毎晩ご一緒できますね…んはぁ…はぁっ…んんっ」

「あううっ!ななな何だか物凄い寒気がしますわっ!風邪…でしょうか?」
知らぬは本人ばかりなり…。

―完―

243 :451 ◆GtN0Plfghk :2007/03/14(水) 00:33:08 ID:j39h4D1u0
やるきばこを再プレイした結果、こんな話が出来ました…

244 :名無しさん@初回限定:2007/03/14(水) 00:46:55 ID:BR0GsQTF0
>>234
お疲れ様でした〜
うまい具合に間違えますね〜貴子さん出血多量で入院でしょうか?


245 :名無しさん@初回限定:2007/03/14(水) 00:53:00 ID:BR0GsQTF0
>243
お疲れ様です〜
君枝さん、逝ってますね^^

246 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/14(水) 04:19:45 ID:oIa58c7z0
東の扉です。

L鍋さん、451さん、GJです!
今日はホワイトデーのほかに、忠臣蔵の浅野が吉良に刃傷を起こした日、ということで、
もしおとボクメンバーのケースならどうなっていたかを考えてみました。
おひまでしたら、ネタとしてご覧ください。

247 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/14(水) 04:23:39 ID:oIa58c7z0
〜聖央松の廊下刃傷事件〜

浅野=瑞穂 吉良=まりやの場合
「吉良様、次の勅使接待の衣装は、何を着ていけばよろしいのですか?」
「十二単衣じゃ」
「えっ……それって、平安時代の女流貴族が着ていた……」
「そのとおりじゃ。よいな、十二単衣じゃぞ」
吉良に言われて、浅野は……。
「ううう……そんなバカな……」

そして勅使接待の日、十二単衣を着て来た浅野に……。
(大層キレイなお方様じゃな。ぜひ側室に迎えたい)
(いや、あれは浅野殿らしいですぞ)
(以前から男のなりをしたおなごではないかとは思うておったが、まさに確信に変わりましたぞ)
「ううっ……なんでこんなこと言われなきゃ……」
自分の女装に対する周りの絶賛に、浅野は泣きたい気持ちを必死でこらえていました。

「吉良様、浅野殿をだまして女装させたのはあなたの差し金とか……なかなかよいことをなされましたな」
「なに、わしは浅野の魅力を最大限に引き出してやっただけじゃ。あやつはおなごの格好をしてこそ価値があるからのう」
「ええ。まさに。ところで、そのうち町娘やら、芸者、遊女などもやらせるおつもりでございますか?」
「無論じゃ。やらぬともったいないからのう」
それを聞いた浅野は……。
(お、おのれ吉良め! 人に女装させて笑いものにしおって!)
刀を抜き、一気に吉良に迫る。
「うわあっ!」
「き、吉良様!」
「女装させられてそれを絶賛された恨み、思い知ったか!」
吉良は、怒り爆発の浅野にそう言って斬りつけられました。

248 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/14(水) 04:27:39 ID:oIa58c7z0
浅野=由佳里 吉良=まりやの場合
「吉良様、話が違うではありませんか!」
「何の話じゃ?」
「勅使接待の方へのお料理、最高の料理を用意しろと言われたから、用意してきたのに、大恥かいたじゃありませんか!」
浅野は、吉良に最高の料理を出せと言われて自分の思うものを用意したが、それを笑いものにされ、泣きながら帰ってきたのだった。
「……何を用意したのじゃ?」
「最高の料理って言ったら、ハンバーグに決まってるじゃないですか!」
「アホかーっ! この時代の日本にハンバーグなんぞあるかあっ!!」
吉良も、それを聞いて呆れるしかありませんでした。

249 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/14(水) 04:47:19 ID:oIa58c7z0
そして、勅使接待当日……。
「うっ、じ、持病のつかえが……」
浅野は、持病のつかえに襲われて、気分が悪くなっていました。
「浅野殿、実は少し聞きたいことが……」
浅野は接待役の梶川に相談されましたが、持病のせいでそれどころではありませんでした。
「さて、わかりませぬが、他の方に聞いたほうがよろしいかと……」
浅野がそう言うと、梶川は吉良に相談することにしました。
「いや、助かりました吉良様。浅野殿に聞いたらわからぬと言われて」
「なっはっは、梶川殿。浅野はどうせ頭の中エロエロなことでいっぱいで、慰めるためにかわやでも探しておったのであろう」
(なっ……!)
それを聞いた浅野はびっくり。
「最近浅野はご勅使の宮小路様の春画本に大層熱中しておったからのう。毎晩それで慰めておったのであろうからのう」
(お、おのれ吉良め! よくも人の恥ずかしい秘密を……)
そう思って刀を抜き、吉良に斬りかかります。
「吉良! 人の秘密を暴露された恨み、思い知れーっ!!」
が……。
「ふっふっふ、甘いわよ、ゆかりん」
吉良にあっさりとかわされ、逆に羽交い絞めにされてしまいました。
「わあっ! ちょ、ゆかりんってなんですか! 私は浅野内匠頭長矩です!」
「わしがそなたを満足させてやろう。どうせ今まで頭の中エロエロであったのであろう。ぬっふっふっふ……」
「ち、違いますよ! つかえに襲われて気分が悪くなっていただけです!」
「さようか。ならわしが気分を良くしてやろう。とびっきりな」
「いりません! っていうか、なんで私はこんな展開になるんですか! あーれーっ!?」
それから浅野は、思う存分吉良にいじられてしまいましたとさ。

250 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/14(水) 04:50:51 ID:oIa58c7z0
浅野=まりや 吉良=貴子の場合
「浅野殿、あなたはこの程度の決まりごとも守れないのですか!? それでも勅使接待を仰せつかった身ですか! もう少し自覚をお持ちなさい!」
吉良はまじめ一辺倒で、細かいこともチェックして浅野に口を出してきます。
(ああもうやかましい! わしは決まりごとというものが大っ嫌いなんじゃあ!)
そんな吉良に、浅野の不満は募る一方でした。

そして、勅使接待当日……。
「吉良様、浅野殿はいかがですか?」
「最悪です。今まで高家として勅使接待の指導をしてきましたが、あれほど身勝手で出来の悪い方、見たことがありません!」
吉良は、浅野に教える苦労のことで勅使接待役の梶川に愚痴をもらしていました。
(な、なんだと!)
「まったく、少しは学習能力というものを身につけてほしいですわね」
「吉良ーっ!!」
それを聞いた浅野は刀を抜き、吉良に斬りかかります!
「きゃーっ!」
「何が出来が悪いじゃーっ!! あんたがいちいちうるさすぎるんじゃーっ!! むっきーっ!!」
吉良は額と背中に大きな傷を負います。
「な、なぜ私がこんなことでこのような目に……」
涙を流して理不尽な刃傷を嘆く吉良。
浅野は即日切腹の上に家名断絶となりました。

「わ、私、こんな殿のために、あだ討ちしなきゃいけないんですか?」
由佳里ちゃん演じる家老の大石は、そう自問自答していました。

251 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/14(水) 04:54:04 ID:oIa58c7z0
浅野=奏 吉良=紫苑の場合
浅野は吉良に勅使接待の指導の挨拶にうかがいます。
「吉良様、勅使接待のご指導、よろしくお願いいたしますのですよ!」
「まあ、かわいいお殿様ね。わかりましてよ?」
吉良は、満面の笑顔でそれに応じました。
浅野のお礼の品物の中には、賄賂の金は入ってませんでしたが……。
「かつおぶしだけ、ですの? でも、あんな可愛い浅野さんをいじめるなんて、できませんわ」
吉良は気にするでもなく、親切丁寧に浅野に指導していきます。
「はうう……この吉良様はお優しすぎるのですよ……これでは、浅野は吉良様に斬りつけるなんて、とてもできないのですよ……
これではお話が進まないのですよ……困りましたのですよ……」
こうして浅野は、吉良に斬りつけることもなく、無事に勅使接待のお役目を終えることが出来ましたとさ。

252 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/14(水) 05:11:45 ID:oIa58c7z0
以上です。

もっと考えれば他にもいろんなケースがあるとは思いますが、私の考えられたのはこれだけです。
それでは、今回はこれで失礼いたします。

253 :名無しさん@初回限定:2007/03/14(水) 09:44:50 ID:i3A+11CQ0
GJ!
瑞穂お姉さまの十二単姿…あああああ!!!

254 :名無しさん@初回限定:2007/03/14(水) 19:41:11 ID:EC1wBdM80
紫苑様の誕生日まで約6日と4時間と20分

255 :名無しさん@初回限定:2007/03/15(木) 00:44:15 ID:qEwSw8Kn0
>>252
面白かったよ

俺も書いてみようかなぁ・・・

256 :名無しさん@初回限定:2007/03/15(木) 14:37:06 ID:TgeDcrba0
14日のホワイトデーは大量投下でしたね。
色んなSS読めて面白かったです。
作家の皆さん、GJでした。

257 :名無しさん@初回限定:2007/03/15(木) 20:10:10 ID:gGlBqFg00
紫苑様の誕生日まで約5日と3時間と50分

258 ::2007/03/16(金) 16:14:33 ID:+HwfMGuA0
『Which Baby 』

設定は一子ED (つまり誰ともくっついてない状態)

ぴちゃ…ぴちゃ……
深夜の寮という閉鎖的な空間に淫媚な音が響く
恋が叶わなかった乙女達が奏でる悲しい協奏曲

それはある意味必然だったのかもしれない

二人は同じ人を愛してしまった
そしてそれは許されることの無い禁断の恋
それ故に少女達は想いを告げることも出来ず ただ側に居るだけで満足した
だがその人が目の前から居なくなってしまえば……
その時が遅からず必ず来ることを二人は知ってた
だが一体何が出来たと言うのだろうか?
出来たことは愛しい人と限りある時間を笑って過ごすだけだった
そしてそれだけで充分だと思ってた
時が経てばもしかしたら忘れられるかもしれないと甘い考えを抱いていた

「あうっ…由佳里ちゃん…ちょっと痛いのですよ」
「ごめんね…奏ちゃん」

しかし現実に別れが来ると
思っていた以上に「お姉さま」に恋焦がれていた事実に愕然とした
憧れの人が卒業してしばらく経ったある夜
自然と話題は「完璧」を体言したお姉さまのことになり
そしていくつか言葉を重ねていくうちに
二人の少女はお互いに同じ気持ちを持っていることを知った


259 ::2007/03/16(金) 16:16:21 ID:+HwfMGuA0

「あ、あ…、そんな所ばっかり吸っちゃ嫌…」
「由佳里ちゃんは奏より大きいから羨ましいのですよ〜」

最初はただの傷の舐め合いだった
部屋で二人きりになると自然と体を重ねた
寮に新たに新入生が入らなかったことも幸いした
回数を重ねて行くうちに自分達が行っている行為が
友情によるものなのか 愛情によるものなのか
はたまた、ただのお互いへの哀れみから来るものなのかわからなくなり
ある種の倒錯感が芽生え、行為に拍車をかけていった

「奏ちゃん…」
「あ、そ、そんな所舐めたらキタナイのですよ…」
「んーん、そんなこと無いよ。綺麗だよ」
「由佳里ちゃん…」



260 ::2007/03/16(金) 16:17:11 ID:+HwfMGuA0

ただ、暗黙の了解はあった

一つ、学校ではただの親しい友達
一つ、学校でも寮でもこのことを話題に出さない
一つ、破瓜だけはさせない


「はぁ、はぁ…私…そろそろ…」
「奏も…もう…」

二人の処女の息遣いが段々と荒くなっていく
時折漏れるあえぎ声は絶頂が近い証だ
だがそのかすれた声には切なさや悲しみの色が濃い
だがやめることは出来ない
まるで魔法にかかったように…
まるで麻薬をむさぼるように…
少女達はお互いの体を求めあった
今は居ないお姉さまを思い浮かべながら……




261 ::2007/03/16(金) 16:25:21 ID:+HwfMGuA0


「だからーそろそろ言っても大丈夫だって!」
電話の向こうに居る根拠の無い自信満々の人物は 御門 まりや
僕の幼なじみであり、高校の時の同級生である
「でもなー…今更言っても許してくれるかな?」
気弱な僕の発言に電話先はちょっと怒ったように
「あのね〜だいたいちゃんと話したいって言ったのは瑞穂ちゃんだよ?これからも友達関係を続けるのに女装まで続ける気?」

「いやまぁそうなんだけどね…」
(まりやに言ったら殴られるだろうけど)
まりやの言うことは珍しく正論だ
普通なら僕が女装して通った学校の友達を忘れたらいい話なんだけど
そんなことをするにはあの子達はいい子過ぎた
だが友人関係を続けるには問題がある
僕はまだ正体を話して居ない そして二人は僕が男だと言うことに気付いてる様子も無い
つまり騙していたことを話すか、女装したまま会うかの選択を迫られてる訳なんだけど…
「私は別にいいわよ。瑞穂ちゃんの女装がまた見れるんなら」
冗談混じりでまりやが言う


262 ::2007/03/16(金) 16:27:17 ID:+HwfMGuA0

……いや、これは本気で言ってるな。長年の勘がそう告げる
「いやそれもねぇ…うーん。さすがに大学生にもなったらバレるでしょ」
すかさず反論するが
「いやいや、瑞穂ちゃん相変わらず女の子だよ。実際、大学でも親しい人以外には女の子と間違われるっしょ?」
orz
そうなのだ。町を歩いているとナンパされるし、トイレに入ると奇異の視線で見られる
もう慣れたとは言え未だに少し凹む
「それに、由佳里はともかく、奏ちゃんが瑞穂ちゃんと同じ大学を目指さないとも限らないし いきなり大学で男の瑞穂ちゃんを見たらショックだろうなー」
「うーん…たしかに」
「それにね、あの子達には聞く権利が充分にあると私は思うな」
長年の幼なじみの助言のおかげで僕は考えをまとめた
「うん、そうだね。言うことにするよ 奏ちゃん達なら分かってくれるだろうし…」
僕の決心にまりやは
「にゃははーじゃ、瑞穂ちゃん頑張ってね〜」
なんだかうまくまりやに乗せられたような気もする…

とは言え決めたのは僕だ
近いうちに寮に行って直接話すことにしよう
うう……今から胃が痛いなぁ…

「お膳立ては私に任せておいて。日にちが決まったら連絡するわ」
最後にまりやはそう締め括った



263 ::2007/03/16(金) 16:31:50 ID:+HwfMGuA0

(まりや 心の中の独り言)

にゃははー 最高の遊び道具が出来たかも
やっぱりここは
「急に瑞穂ちゃんが訪れてドッキリ☆更に正体を知って二重にドッキリ★作戦」
しか無いわね うん 決定
瑞穂ちゃんが由佳里達に正体を明かすって聞いた時はどうしようかと思ったけど
よく考えたらこれ以上の遊び道具は無いわね
端から見れば、由佳里も、奏ちゃんも
普通に「お姉さま」に抱く感情以上のものを持ち合わせているのは明白なのに
肝心の瑞穂ちゃんが超絶鈍感王子(姫?)だからねぇ…
さてと、そうと決まったら瑞穂ちゃんに連絡しますか
寮生が寮に居ないってことはまず無いから
連絡したふりをして瑞穂ちゃんを明日にでも寮に行かせよっと


264 ::2007/03/16(金) 16:36:36 ID:+HwfMGuA0
ここに書き込むのは初めてです 魔と申します
よろしく

トリ付けるほど上手に書けるわけでは無いので
当分はこのままで行こうと思います

拙いところが多いと思いますが
なにとぞ生暖かい眼で見守って頂けたら幸いです




265 :名無しさん@初回限定:2007/03/16(金) 17:01:06 ID:X8z+KeBT0
>>264
GJ!このテのネタは続きが気になってしょうがない自分ガイル。


あとこれからも投下して頂けるんだったらトリはつけた方がいいと思う



266 :名無しさん@初回限定:2007/03/16(金) 19:20:12 ID:GGhMLkQw0
紫苑様の誕生日まで約4日と4時間と40分

267 ::2007/03/17(土) 03:28:41 ID:+f3ixue30
「うう……今更だけど心細いなぁ…」
夜の寮に向かう道で制服姿瑞穂は独り言を呟く
時刻は九時をまわったころだろうか
「やっぱり無理を言ってでも誰かに付いて来てもらうべきだったな…」
その歩く姿は憂いをおびた可憐な少女のようである
足取りはどこか重そうで、出来ることなら今すぐ帰りたい様子だ



制服を着ているのはまりやが
『万一、警備員に見咎められたら事でしょ?ほら、諦めて化粧しなさい!』
と言って着せたからだ
仕方なく化粧をする瑞穂とそれを横で見ているまりや
『ねぇ、まりや…実は僕で遊んで無いよね?』
にやけ顔になるのを必死で押さえていたのに気付かない瑞穂では無かったが
『そんな訳無いっしょ?私なりに瑞穂ちゃんの手伝いをしてるのに…』
そう言って泣き崩れる(明らかに嘘泣きなのだが)幼なじみを見て瑞穂は
『ごめん…そうだよね。まりやだって僕のことを心配して言ってるんだよね…』
と、素直に謝る
若干の罪の意識が芽生えたのであろうか
『い、いやいいよ瑞穂ちゃん。それより…今日は私、付いて行かないから一人で行ってね』
と話題を変える、まりやであった

268 ::2007/03/17(土) 03:30:16 ID:+f3ixue30

『え!?まりや一緒に行ってくれないの?』
いきなりの発言にうろたうる瑞穂
『うん。今日はこれからちょっと用事が有ってね…だから瑞穂ちゃん、一人で頑張ってね』
と、もっともらしく言うまりや
『それなら急だけど紫苑さんに来てもらおうかな』
事情を知ってる数少ない人物に助けを請おうとしたが
『あ!紫苑さまも今日はお忙しいみたいよ。何だか色々あるみたいで…』
前半は嘘だけど後半は真実である
嘘をつくには少し真実を混ぜることが有効であることを
長年の経験でまりやは知ったいた
『そう…なら私一人で行くしか無いようね…』
いつの間にか一人称が私になってお姉さまモードに入った瑞穂が気落ちしたように言った
『うんうん。もう連絡入れちゃったし、あの子達も楽しみにしてると思うよ』
これも前半が嘘で後半が真実である

準備を終わり、制服に身を包んだ瑞穂を見て
『うわ…瑞穂ちゃん本当に男なの…?ってこれ何回も聞いたね。
にゃはははは〜。うん!大丈夫!どっからどうみても女の子だから』
と言うのを聞いて少し凹んだ瑞穂が
『…うん、まぁ他の人に気付かないに越したことは無いしね。
じゃあそろそろ行ってくるよ』
『行ってらっしゃ〜い 頑張ってね〜』
出ていった瑞穂を見送ったまりやの
『うしししし…作戦は順調ね。あとは瑞穂ちゃん次第ね』
という独り言を聞いた人は誰もいなかった


269 ::2007/03/17(土) 03:46:18 ID:+f3ixue30
どうも 魔 です
まずはレス
>>265
ありがとうございます
出来る限り早く投下していくので良ければお付き合い下さい
トリの方はもうちょっとして付けるべきだと判断したら付けさせて頂きます

それなりに長い話になりそうなので
みなさん、どうぞよろしくお願いします

気に入らなければスルーしてください



270 :名無しさん@初回限定:2007/03/17(土) 09:05:58 ID:PDtpC1ew0
>>252
GJ!すばらしい。
おとボクイベント(浜松町)のあと、その足で泉岳寺に行こうかと思ったくらいだ。

こんなのも考えてみた。よければSSに使ってやってください…

浅野=貴子さん 吉良=紫苑さま

貴子さんは両家の事情を知らない。
通常であれば、エルダーは、卒業前に次期エルダー候補たち全員に、
エルダーとしての心得指導を行うことになっている。
今年は紫苑さまが留年されていたので、あせっていた貴子。
エルダー選挙直前に、紫苑さまがようやく学院に復帰。
しかし、紫苑さまはなぜか貴子を避けるばかりか、
瑞穂ちゃん擁立に動く。
ついに貴子は…
うぅむ、欝だなぁ。

浅野=貴子さん 吉良=瑞穂ちゃん

瑞穂ちゃんは誠心誠意指導するが、なぜかことごとく裏目に。
しかも、なぜか指導中に接吻してしまうことに。
貴子さんは疑心暗鬼に陥る。
ついに、瑞穂ちゃんの真相を知った貴子さんは、
厳島家として鏑木家に頭を下げに行くが、門前払い。

貴子さん「私のことを貶めて、もてあそんで……きゅう〜」
あれ?刃傷にならない…

271 :名無しさん@初回限定:2007/03/17(土) 09:11:01 ID:PDtpC1ew0
>>269
wktk!
次は修羅場?
百合設定の生かし方も楽しみ。

272 :名無しさん@初回限定:2007/03/17(土) 19:22:14 ID:9PMM829A0
紫苑様の誕生日まで約3日と4時間と40分


273 :名無しさん@初回限定:2007/03/18(日) 00:45:42 ID:CTLQ/1GI0
下がりすぎage

274 :名無しさん@初回限定:2007/03/18(日) 19:40:08 ID:Vl39VAnX0
紫苑様の誕生日まで約2日と4時間と20分

275 :ゆかりいぢり:2007/03/18(日) 21:22:52 ID:rh1RkQ6U0
過去2回もゆかりんをオチに使ってしまったので、(11-471,12-49)
その埋め合わせでゆかりんSSを書いてみました。

---------------------------

「……でもさ、瑞穂ちゃんと由佳里、上手くいってよかったよね。一時はどうなることかと思ったもん」
「……あの時はご迷惑をお掛けしましたぁ……」
「まりやにも心配させちゃったよね……」
「あー、いいっていいって。瑞穂ちゃんも由佳里も、どっちもあたしにとっては大切な妹分だもん」
「まりやお姉さま……」
「……って、ちょっと待ってまりや、僕も『妹分』なの!?」
「にゃっはっは。男の子がそんな細かいこと気にしちゃだめよーん?」
「……な、なんか……すごく理不尽な扱いをされてる気分……」

「…ま、これでめでたくあたしも失恋ってとこか」
「えっ……まりやお姉さまも瑞穂さんのことを!?」
「実を言うとね……寝ても醒めても、頭の中に顔が浮かんでくるのよ。天使のような微笑みをうかべて……。もしこれが夢じゃなくて本当のことならって何度も思ったわ……」
「ま、まりやお姉さま……。わ、わたし……」

「ああっ、あたしはこんなにもゆかりんのことを愛しているのに!
 ゆかりんはどうしてあたしに振り向いてくれないの!!!!!?」

「ええぇぇぇ〜〜〜〜っ!?」


276 :ゆかりいぢり:2007/03/18(日) 21:23:56 ID:rh1RkQ6U0
「……なぁに由佳里、その嫌そうな顔は……」
「あ、いえ、その、嫌というわけではないんですが……」
「じゃあ、愛してる?」
「ま、まりやお姉さまにはお世話になってますし、お姉さまとして尊敬してますが……」
「やったぁ! ゆかりん愛してるわーーー! あたしの愛を受け止めてーーーーっ!」
「きゃあああああっ!?」
「まりや、ダメだよ!」
「あーん、瑞穂ちゃんのケチー。ちょっとぐらいいーじゃんー」
「駄目です。由佳里は僕の恋人なんだから」
「瑞穂さん……」

「……ありゃりゃ。あたしの入り込む隙間は無いってことね」
「そ、そうですっ。わたしと瑞穂さんは、その……愛し合っているんですから」
「そう……。えろえろなゆかりんはxxxのついてないあたしでは満足できず、xxxのついている瑞穂ちゃんを選ぶのね……。ああっ、あたしにもxxxがついてれば……もがっ!? ぐももぐっ……!?」
「まりやっ、それ以上は言っちゃ駄目っ!?」
「もごー!? もごごふんが、むぐぐー!?(じたばた)」
「瑞穂さん、このままじゃまりやお姉さまが!!」
「ぐぐぐ………。……ぷはぁっ! ……はぁ、はぁ……こ、殺されるかと思ったわ……」
「まりやはこれぐらいでは死なないよ……」
「……瑞穂さん、やけに実感がこもってるんですけど」


277 :ゆかりいぢり:2007/03/18(日) 21:25:14 ID:rh1RkQ6U0
「はぁ……でも由佳里もさ、瑞穂ちゃんのことが好きなら好きで最初から、『瑞穂さんのこと愛してますぅっ! わたしのこと、めちゃくちゃにしてくださぁいっ!』って言っちゃえばよかったのに……まったく二人ともうぶなんだから」
「わ、私そんな事言いませんっ! 言いませんったら!」
「そう……由佳里は僕のこと愛してくれてないの……僕は由佳里のこと、こんなにも愛してるのに……」
「そ、そんなことありませんっ、わ、わたしは、瑞穂さんのこと大好きですっ! 愛してますっ!」

 ………………。

「おーおー、のろけちゃってぇ。すっかりえろえろねぇゆかりん?」
「えっ……あっ!? い、今のは……み、瑞穂さんもなに笑ってるんですかっ! ……い、意地悪ですよぉ……もぉ……」
「ごめんごめん。でも、僕が由佳里のことを愛してるのは本当だから……許してね?」
「あ……は、はい、許しちゃいます……」


278 :ゆかりいぢり:2007/03/18(日) 21:26:32 ID:uQzYmaRZ0
「あっはっは。ほんっとらぶらぶのえろえろね、二人とも。うんうん、いいこといいこと!」
「まりやお姉さま、その……そんなにえろえろじゃありません!」
「へぇ、『そんなに』っていうことは少しは自覚あるんだ? よっ、えろ娘!」
「だから、えろえろじゃないですってば! 瑞穂さんも何とか言ってください!」
「えっと……。由佳里は可愛いと思うよ。とっても。昨日とかも……」
「ちょ、ちょっと瑞穂さんっ! なんてこというんですかぁっ!」
「あ、ごめん、つい……」
「つい、じゃありません〜〜〜〜〜っ!」
「あっはっは、瑞穂ちゃん最高っ!
 ……それじゃ、そんな瑞穂ちゃんにどっきどきな情報を教えてあげようかにゃ〜?」
「な、なんかとてもいやな予感がするんですが……ひゃぁああぁっ?!」

「どっきどきゆかりんのひ・み・つ、そのいちぃっ!
 ゆかりんは耳に息を吹きかけられると、もうあっというまにめろんめろんになっちゃうのだ!」
「い、いきなりなにをするんですかぁ……ふぁ、ふぁああっ!?」
「さ・ら・にぃ……こうして……こんな風に耳の後ろをなめてあげると……ほぉら。立っていられなくなっちゃったりするのだぁ!」
「や、やぁっ……だ、だめぇ……」
「ちょ、ちょっと、まりや……」
「あら〜、瑞穂ちゃんも立てなくなっちゃった? ……それともたっちゃったのかしら?」
「……っ、ま、まりや、怒るよ!?」
「にゃはは〜。んじゃ、瑞穂ちゃんが本気で怒らないうちに、あたしは逃げるとしますか。じゃ〜あねぇ〜〜」


279 :ゆかりいぢり:2007/03/18(日) 21:30:01 ID:rh1RkQ6U0
「……まったく、まりやったら……由佳里、大丈夫? 立てそう?」
「うぅっ、瑞穂さぁん……。……だめです、足に力が入らなくて……」
「まりやもひどいことするよね……」
「瑞穂さん……」
「なに? 由佳里?」
「…瑞穂さんは、あんなことしないですよね?」
「………………」
「…………瑞穂、さん?」
「……由佳里、大好きだよ」
「みみみみ瑞穂さん!? なんでそんな不自然なくらい優しい顔するんですかぁっ!?」
「部屋まで運んであげるね?(ひょいっ」
「ちょ、ちょっと……答えになってませんよ、……ってひゃあっ? おお、降ろしてください〜っ!?」
「由・佳・里」
「ふやああっ……み、瑞穂さん……」




280 :ゆかりいぢり:2007/03/18(日) 21:32:42 ID:rh1RkQ6U0
 次の日。

「ゆかりんおっはよう! 今日もいい天気ね」
「…………」
「あら。由佳里どうしたの? 顔が真っ赤で……熱でもあるの?」
「…………」
「え、何? どうかした? 聞こえなかったんだけど……」

 「…………瑞穂さん、すごく……激しくて……もう……癖になっちゃうかも……」

「……由佳里?」
「ひゃあっ!? まりやお姉さまっ!?」
「どうしたのよ、いったい……」
「な、なななななななんでもないですっ、なんでもっ……」
「……どうしたってのよ、いったい……」

「おはようまりや。いい天気だね」
「あ。瑞穂ちゃん、おはよう。由佳里がなんか変なんだけど……瑞穂ちゃん何か知ってる?」
「え? 特に心当たりは無いけど……由佳里、大丈夫?」
「ひゃあっ、瑞穂さん……あの、その……」
「ふふ……由佳里ったら」


「………………」
「あれ、まりや? どうしたの?」


「瑞穂ちゃんの、むっつりスケベーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

----------------------------

281 :名無しさん@初回限定:2007/03/18(日) 21:34:36 ID:rh1RkQ6U0
以上です。
……ゆかりんもよろこんでくれたとおもう。うん。きっと。

282 :名無しさん@初回限定:2007/03/19(月) 03:40:02 ID:eLd2WY5E0
卒業式で在校生代表として送辞を述べた菅原君枝。
聖鷹ではその任を行った者が、次期生徒会長と成るのが通例だった。
寝耳に水の出来事、そして生徒会長という責の重さに不安が否応無く胸の奥に積もってゆく。
生徒会室で独り胸の痛みに耐えていた君枝を意外な人物が訪ねて来た。
前生徒会長、厳島貴子だった。
卒業式が終わって数時間、まだ残っていた事に驚く君枝を、貴子は教会へと誘う。
学園にある教会は、外の光をふんだんに取り入れるように設計されている。
ステンドグラスから光が差し込み、くっきりと表される光の筋は天の啓示を思わせた。
その差し込む光によって一層濃くなった陰から、二人の人物が姿を現す。
その顔を見て君枝は小さく声を上げた。
宮小路瑞穂と十条紫苑。
全生徒の尊敬と思慕の念を一身に集めるエルダーを務めた人物。
驚きで頭が混乱している君枝に、瑞穂は口を開く。
この学園を去る前に、貴方に渡さなければならないモノがあります。と・・・
それは一体どんな物なのか。身構える君枝に、瑞穂は先程の科白とは大よそ掛け離れた事を語りだす。
突然の転入生がエルダーという重責に付いてしまい、十分にその役目を果たせなかった事。
色々な事があって大変だったが、楽しかった事。
紫苑、貴子、奏、由香里、クラスメイト。そしてこの学園にいる全ての妹達。その出会いに感謝している事。
一年にも満たない学園生活だったが、聖應を妹達を誰よりも愛している事。
その妹達を残し去らなければらない事が、とても心残りである事。
瑞穂は君枝の手を取り、自身の胸へ、心臓の上へと押し当てる。
驚く君枝に、瑞穂は言葉を続ける。
私達卒業生のこの想いを、この学園が出来たときから受け継がれてきた諸先輩方の想いと共に、貴方に託します。
思わず視線を向けてきた君枝に、貴子は静かに頷くだけ。
紫苑も同じく。そして、どうか妹達をより良き道へと導いてあげてください。そう付け加えた。


283 :名無しさん@初回限定:2007/03/19(月) 03:40:39 ID:eLd2WY5E0
>>282のつづき
君枝は自分自身に問う。
受け取った想いは余りにも重い。しかし、先程までの不安が一掃されたこの気持ちは一体何か。
伝統とは単に歳月を積み重ねたものではない。
そのときの歴史と人の想い、それが受け継がれてこその伝統なのだろう。その想いのなんと心強い事か。
自分には何百、何千という味方が付いているのだ、恐れる事は無い。
そしてその想いに甘えるばかりではなく、立派に責務を果たし次代へと受け継いで行かなければならない。
それが解ったとき、君枝の心には一抹の不安も迷いも無かった。
託す者と受け継ぐ者。そんな四人を聖母マリアが静かに見守っていた。

「畏まりましたお姉様。この菅原君枝。生徒会長としてこの学園と妹達を、必ずより良い道へと導いて参ります。」




突発思いつきネタ
反省も後悔も推敲もしていない

284 :名無しさん@初回限定:2007/03/19(月) 09:14:04 ID:EoyneiCP0
>>275
>>282
         / ̄ ̄ ̄フ\               _       ノ^)
       // ̄フ /   \            .//\     ./ /
      //  ∠/  ___\___  __//   \   / (___
    // ̄ ̄ ̄フ /_ .//_  //_  /      \./ (_(__)
   // ̄フ / ̄////////////         |  (_(__)
 /∠_/./ ./∠///∠///∠//      ∧ ∧ /) (_(__)
∠___,,,__/ .∠__/∠__/∠__/       (´ー` ( ( (_(___)
\    \ \/ ̄ ̄ ̄フ\ \ \_ \  _   /⌒ `´  人___ソ
  \    \ \フ / ̄\ \ .//\  //\ / 人 l  彡ノ     \
   \ _  \//___\/∠_  //   < Y ヽ ヽ (.       \
    //\///_  //_  ///     人├'"    ヽ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   //  //.////////∠/      ヽ-i ヽ__  ヽ
 /∠_//./∠///∠// .\\       `リノ ヽ |\  ヽ
∠____/.∠__/∠__/∠フ\.\\      c;_,;....ノ ヾノヽ__ノ





285 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/19(月) 12:38:40 ID:pE1VbMTW0
>>270

アイデアありがとうございます。
私はそのアイデアを十分に生かせる頭はないのですが、とりあえず浅野と吉良の配役だけ使わせていただいて
「聖央松の廊下刃傷事件」の続きを書かせていただこうと思います。
よろしくお願いします。

286 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/19(月) 12:42:08 ID:pE1VbMTW0
浅野=貴子 吉良=紫苑の場合

「はーっ……吉良様に謀られ続けて、もう気が狂いそうですわ」
浅野は、勅使接待の指導で吉良に騙され続けてノーローゼ気味だった。
「でも、色気違いで有名な浅野本家の姫を妻に迎えねばならない吉良様のお気持ちを思うと……」
しかし、吉良が弱みを握られ、それを盾に政略結婚を強要されていることを知っており、しかも吉良の名君ぶりを尊敬している浅野は、
吉良に抗議する気にもなれなかった。
「吉良様、この件についてはどうすれば……」
「ああ、それでしたら……」
今日も吉良は浅野にウソを教えます。そして浅野が帰った後……。
「内匠頭さん、ごめんなさいね。あなたに非がないのはわかってますけど、
政略結婚の相手のことを思うと、あなたに八つ当たりせずにはいられませんの」
今日も吉良はひとり浅野に謝るのでした。

そんなある日……。
「私は勅使の宮小路慶行と申しますが、浅野殿にご相談が……」
勅使の1人が、浅野に相談事を持ちかけてきました。
「なんでしょうか?」
「実は私の娘の瑞穂が吉良殿のことを大層好いておりまして、ですが吉良殿は許婚もおられる身。
そこでその親類の浅野殿に、なんとか説得して婚約を破談にしていただけないかと……」
吉良の身を憂い、本家を良く思っていなかった浅野は、無論それに応じます。
「喜んで!」
こうして浅野は配下の忍びを使い、本家の弱みを握って婚約破棄に成功したのでした。
「浅野さん、今までごめんなさい。そして瑞穂さんのような素敵な方との結婚まで取り持っていただいて、本当にありがとうございました!」
「いいえ、当然のことをしたまでですから……」
こうして吉良は浅野に謝罪し、それからは誠意をこめて指導に当たり、刃傷沙汰は回避されましたとさ。

287 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/19(月) 12:46:42 ID:pE1VbMTW0
浅野=貴子 吉良=瑞穂の場合

「吉良様、この前の勅使接待のご指導の件、話が違うではありませんか!」
「えっ? あ、すみません! 他の件と間違えていました!」
吉良は勅使接待のことを浅野に指導しますが、そそっかしい性格のため、たびたび指導を間違えてしまいます。
「まったく、もう少し高家という責任ある立場だという自覚をお持ちください!」
「すみません……」

そして、勅使接待当日……。
「吉良様、何やら落ち込んでらっしゃるようですが、どうかなさいましたか?」
「梶川殿……私、今度で高家をやめようと思ってるんです……
浅野殿にも、間違えて教えてばかりですし、やはり私には荷が重いですから……」
それを聞いた浅野は、不満が爆発しました。
(あれだけ私に間違いばかり教えていて、荷が重すぎたですって!? 教わっていたのがそんな方だったなんて……)
刀を抜き、一気に吉良に迫ります。と……。
「きゃあっ!!」
途中で滑り、刀が宙に舞います。そして、刀は浅野の衣装を切り裂いて地面に刺さりました。
浅野の衣装が音もなく切れ、素肌が晒されそうに……。
「きゃ……んっ!?」
それに気づいた吉良は、悲鳴を唇で塞ぎました。
「いやー浅野殿、ごみが目に入ったようで、大変ですな」
(衣装が私が教えた裃と違うことに気づいて、替えの大紋を頼んでおいたんです。近くでそれに着替えてください)
そしてとっさに自分の行動をごまかし、小声でそう浅野に話します。
「吉良様……」
浅野は、頬を桃色に染めてつぶやきました。
それから、吉良が彼なりに一生懸命仕事に望んでいることを知り、次第に魅かれるようになっていきました。

288 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/19(月) 12:55:37 ID:pE1VbMTW0
浅野=瑞穂 吉良=由佳里の場合

「吉良様、勅使接待のご指導、よろしくお願いします」
頼みに来た浅野を見た吉良は、しばし彼に見とれていました。
「すっごいかっこいい……あ、はい、わかりました」
そして、浅野からの謝礼の品を確認する時……。
「かつおぶし……だけ? 謝礼の金子は入ってないのかな?」
確認しても、どこにもありません。
「そうだ! お金がないなら、身体ではらってもらおっと。あのキレイな身体に、いろーんなことを……あん♪」
吉良は、浅野にいろんなことをする様子を思い浮かべ、妄想モード全開になっていました。

ピチュ、ピチュ、ピチュ……。
「あ……う……く……」
今日も吉良邸では、淫靡な音が発せられていました。
「吉良様、もう……やめてください……」
「でも、財政難で金子が払えないっていうから、浅野様の身体で手を打ってあげてるんですよ?」
吉良は、指導1回ごとに1回エッチをすることで賄賂の金がないことに目をつぶる、と浅野に提案していたのでした。
浅野は仕方ない、とそれを受け入れたのですが……。
「それはそうですけど……」
浅野は、吉良の尽きることのない欲情に、身体が持たなくなってきていました。
「あ……やだ……恥じらいの表情を見てたら、また感じてきちゃったあ……」
「ちょ、ちょっと、吉良様……!」

「ううう……もう限界かも……」
浅野は、吉良に対してどうすればいいかスランプ状態になっていました。
「最悪の場合……吉良様を斬るしかないかも……でも、吉良様に悪気はなさそうだし……」

289 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/19(月) 12:59:18 ID:pE1VbMTW0
「吉良様、本日はお土産を持って参りました」
「これは浅野御門守殿。土産とは?」
「ええ、これです」
そう言って、浅野内匠頭長矩の親戚である御門守は箱を取り出しました。
「それで、この土産物の真意は?」
吉良が聞くと、御門守は単刀直入に言いました。
「ええ。わが親戚の内匠頭にエッチを強要するのを、おやめいただけないかと……」
「………!!」
それを聞いた吉良の身体は凍りつきました。
「な……なんで……それを……」
「よく私の前で愚痴をもらしてましたよ。吉良様のエッチにはもう身体が持ちそうにないって」
吉良は顔を真っ赤にして、唖然としていました。
「代わりに長矩の春画本と大人のおもちゃを差し上げますから、これを見てするってことで、我慢してください。
このことをばらされたくなければね」
「ううう……わかりましたあ……」
吉良は赤い顔のまま、滝のように涙を流してしぶしぶ承諾します。
「そんな絶望的な顔しなさんな。斬るしかない、って思いつめてたぐらいですから、
その危険性を考えれば、それでできるって思えば、安いもんでしょ?」
御門守はそう言って吉良邸を後にしました。
「ううう……」
吉良は、いろんな意味でショックのあまり、しばらくそのまま動けませんでした。
……と、こうして、御門守の英断により、刃傷沙汰は回避されました。

「御門守殿、ありがとうございました。おかげで吉良様がもう身体を差し出さなくてもいいって」
「なっちゃん、気にしないの。親戚なんだから、困ったときはお互い様でしょ?」
「な、なっちゃん?」
「あんたのこと。かわいいでしょ?」
「う……と、とにかくありがとう」
浅野内匠頭はまだ自分が吉良のオナペットにされているとは露ほども思わず、
のーてんきに自分を救ってくれた親戚に晴れ晴れとした顔で礼を言うのでした。

290 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/19(月) 13:07:18 ID:pE1VbMTW0
以上です。

やっぱり貴子さんに紫苑さんを斬らせることは出来なかったな……。
足りない脳みそを使って考えましたが、私にはこれが限界でした。2つともこんな形になってしまってすみません。

それと、「浅野御門守」というのは実在しませんが、「御門守」というのは実際にあったらしいです。
某時代劇にも出てきましたし。
ちなみに、その時代劇の悪家老の名前に、「鏑○采女」なんてのもありました。

291 :名無しさん@初回限定:2007/03/19(月) 19:49:53 ID:uHUwKhLo0
紫苑様の誕生日まで約1日と4時間と10分

292 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/19(月) 23:42:32 ID:xoW2cllK0
紫苑ルート後、ハーレムエンドです。



今年で大学卒業という初夏の6月、十条紫苑は夫とともに幾たびか産婦人科を訪れていた。

鏑木瑞穂と入籍してはや3年。だが、子供ができない。

知らされた結果は不妊。子供を授かる可能性は無いに等しいとの悲しい告知だった。
「瑞穂さん。私、それでも子供が欲しいです。瑞穂さんの子が・・・」
「でも、卵子が採れないんじゃ体外受精もできないんだよ。養子は嫌かい?」
「少しでも瑞穂さんの血が流れている方が・・・・・代理…出産」
「日本じゃ…認められないな…」

そのとき一人の女性が長椅子の前に立った。
「瑞穂さん、やはりここにいらっしゃいましたのね。携帯電話も繋がらないから探しましたわ」
秘書室長、厳島貴子そのひとだった。


「そうでしたの・・・お二人にはなにかお考えがおありですか」
「海外で卵子バンクで卵子をもらって代理出産を・・・」
「そ、そうですわね。でも最近は代理母の親権問題とかもありますし・・・」
「貴子さん、その口ぶりですと、なにか良いお考えがおありなのではありませんか?」
真剣なまなざしに取りすがられ、貴子はうつむき加減に口を開いた。

「たとえば、ひ、秘密裏に日本で信用できる人物に出産させます。さいわいこの病院は鏑木グループの系列です」
「信用できる人物って・・・それに日本に卵子バンクは」
「瑞穂さんから、せ、精子を採取して胎内で受精させます」

「じゃあ、信用できる人物というのは・・・」
「まりあさんとか由佳里さんとか・・・あ、あの私でもっ!」
みるみる貴子の顔が紅くなっていった。深くうつむいているので耳しか見えないが。

293 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/19(月) 23:43:18 ID:xoW2cllK0
「貴子さん・・・あなたまだ瑞穂さんのことがお好きなのね」
紫苑はさらにきつい視線を送った。詰問するように沈黙が続く。

「わかりました。貴子さん、あなたに産んで頂きます」
「紫苑・・・君は本当にそれでいいのかい」
「ええ。もう決めましたの。瑞穂さん、あなたの子は貴子さんにお願いします」
「ほ、ほんとうによろしいのですか、紫苑さん」

先ほどとはうってかわってにっこりと微笑んだ紫苑はとんでもないことを言い出した。
「ただし、注射器ではい受精なんて味気ないですから、自然な子作りでお願いします」
「し、紫苑っ!それはできないよ!」
「そ、そうですわ。わたくしが瑞穂さんに、だ、だ、抱かれるなんて!」

しかし、紫苑の微笑みはさらに悪戯っぽく、悪企みするように口元を手で覆った。
「私、これでも敬虔な信者ですから、生命を操るような医学は嫌いなんです」
「さ、さっきまで、代理出産考えてたクセにっ・・・」
もう、貴子は妄想に舞い上がって、なにも口にできなかった。

「ただし、ひとつだけお願いです。
 瑞穂さん、貴子さんを抱くときは私も一緒に抱いてください
 一人だけ仲間はずれなんて悲しいです」
「え・・・一緒にって・・・」
「俗に言う乱交と言うことです」

※わかりやすくいうと、3Pです。

これ以上ないという笑顔の紫苑とは対照に、立ち上がりかけて固まる瑞穂と目が宙をさまよっている貴子。
それを遠くからまりあが見ていた。

294 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/19(月) 23:44:33 ID:xoW2cllK0
貴子と来月に開催される新作水着の発表会の打ち合わせに鏑木の本社に行ったものの、
当の貴子は留守。
秘書の一人に行き先が病院と聞かされた御門まりやはそこで衝撃の会話を耳にした。

「な、なんて・・・・・・これ以上にないくらい瑞穂ちゃんをおもちゃにできるネタゲット!!」

さっそくその場を離れて駐車場の茂みに隠れてケータイを取りだした。
通話先は『瑞穂ちゃんち』。鏑木家の方である。彼女がいればいいが。

「はい、お待たせいたしました。宮小路なのですよ〜」
ラッキー! 今日はとってもツいている。
「ハ〜イ、奏ちゃん。おひさ〜!」
「はい。お久しぶりなのですよ〜。奏、まりやお姉さまのお声が聞けてうれしいです」
「私もよ。奏ちゃん、メイド振りが板に付いてきたね」
「いえ、まだまだ先輩方にご迷惑をおかけしてるばかりなのですよ〜」

周防院奏は卒業後、鏑木の家でお手伝いとして働くことになった。
ちょうど1年ほど経験をつんだ彼女は、鏑木紫苑の意志で若夫婦の身の回りの世話担当となった。
瑞穂が男だと打ち明けられたときこそ、びっくりしたものだが、
いまでは『宮小路』と『鏑木』を使い分けられるようになっている。

「でね、ちょっと頼みたいことがあって・・・」

「夜に貴子さまがいらっしゃったら、まりやお姉さまにお電話すればよろしいのですか」
「うん、誰にも気づかれないようにね。うっしっし」
「はい、奏、がんばるのですよ〜」
「ん。じゃあね〜!」

295 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/19(月) 23:45:23 ID:xoW2cllK0
通話を切ったまりやは、さらに別のところに電話をかける。
顔はさらにニヤリと歪んだ。こんな顔は先月、貴子を完全にやり込めたとき以来だ。
「はい、上岡です。ただいま、留守にしております。ご用の方は・・・」
「いるんでしょ、由佳里。10秒以内に出なかったら、あの写真ネットに」
「・・・は、はい。こんにちはです。お姉さま」
焦りを隠せない、由佳里。やっと、あの写真とやらを思い出した。

「な、なんのご用でしょうか」
「あんた、当分大学休んでうちに来なさい。まだ恋人はいなかったわよね?」
「え? え?」
「所持品は着替えと・・・あと、あのときのおみやげ〜 にひひ」
おみやげ。写真とワンセットになっている忘れたい思い出。
しかしまだそれは捨てられずに机の奥に仕舞われている。
「忘れたら、写真だぞ〜」
通話はまりやの意地悪い声を伝えて切れた。
絶望的な目で、上岡由佳里は宙を向いて立ちつくしていた。

296 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/19(月) 23:51:06 ID:xoW2cllK0
瑞穂は今年卒業なので、仕事に慣れる意味で父親の補佐として事務処理をしていた。
しかし病院の提案の後、数日は仕事が手につかなかった。いや、日に日にやっぱり紫苑を説得し直そうという気持ちが湧き上がる。

それは貴子さんも同じようで、ときどき天井を見つめては動かなくなり、声をかけるとあわてて手元の書類を必死に読むフリをする。
二人を狂わしているのは応接セットに鎮座した若妻紫苑である。
あれ以後、毎日来ては二人の様子を楽しそうに見つめて一日を過ごす。

「と、とりあえずおとなしく家で待っていてくれないか、紫苑」
「嫌ですわ。秘書室長と二人きりだとなにするか分かりませんもの。ふふ」
「ぶはぁっ! だから・・・」
「だから私もここにいますの。三人だったら私結構ですわ」

そのとき、社長室の扉が開いた。この部屋の主、父親の慶行だ。
「みんな楽しそうだな。何を話してたんだ?」
「あ、社長!」
「い・・・いえ、なんでもありません。・・・えっと、今度遊園地に行こうかって」
慌てて取り繕う瑞穂。
「ええ、貴子さんも一緒に三人で行くんです。とても楽しみですわ。」
あくまで三人を強調する紫苑。その意志は頑固。病気や親に決められた結婚に耐えてきた彼女は、貫く決意も強かった。

「私は連れて行ってくれないのかい?」
「ええ。お父様はお母様とご一緒にいってらしてください。見ているこちらが恥ずかしくなりますから。ふふ」
織倉楓は念願叶って、メイド服を脱いで鏑木楓となった。
かわってメイドになった周防院奏を思う存分抱きしめることが朝と晩の日課になっている。

「なんだ、全然仕事が進んでないじゃないか」
慶行は瑞穂の手元の書類を手に取るとそう評した。
「貴子君も心ここにあらずという感じだし、何か困ったことでもあるのか?」
「い、いえ・・・遊園地の件で話し込んでしまって・・・」
正直に答えられるわけもなく、瑞穂は目の前の我が妻を拗ねた目で見た。
相変わらずの微笑みで受け流す紫苑。
そうして幾日も二人にとって身悶えるようにつらい日々が続いた。

297 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/19(月) 23:51:36 ID:xoW2cllK0
およそ2週間後、6月も終わりに近づいた頃が始まりだった。
夕方、西岡の運転するリムジンは邸宅の門をくぐり抜けた。
停車したドアから立ち上がったのは、会長家族と秘書室長厳島貴子。
会長には三人で飲みながら思い出話を語りあいたいと説明してある。

「あなたお帰りなさい。それとお二人・・・あら厳島さんも?」
夫の帰宅を待ちわびていた楓が四人を出迎えた。メイドたちも荷物を受け取りに来る。
「瑞穂たちと飲み明かすそうだ。秘蔵のウィスキーでも出してやるか。ははは」

「そう・・・なんですか。でも厳島さん・・・」
わずかに不審な空気を感じ取ったのか、楓が貴子を見据える。
「あなた、彼女美人だからといって、会社で浮気しちゃイヤですよ。うふふ」
慶行に指を立てて注意する楓を、両手で抱きしめて接吻する。
「今の俺には君が最高だよ」
「そ、そんな・・・ぁん。・・・もう・・・ああ、いや〜ん」
日課のような夫婦の抱擁も今の瑞穂には重かった。
自分は不妊を口実に浮気したいんじゃないのか。耐える紫苑だからといって無理させてはいないか。
紫苑の様子が気になってその晩の夕食はまったく覚えていなかった。


客としてもてなされている厳島貴子は緊張のあまり逃げ出したかった。手が震えてお箸を落とした。
反対側に座る瑞穂と紫苑を見るたびに今夜のことが頭に浮かんでくる。
どうしましょう・・・厳島家の男性に嫌悪していた自分がその相手の境遇になる。

本当に紫苑は産んだ子供を祝福してくれるだろうか。
自分のあさましい欲望のために紫苑さまを追いつめているのではないか。
自分は、妻のいる男性と不倫をすることを許せるだろうか。
考えればますます悩みは泥水の如くわき出してくるのだった。

298 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/19(月) 23:55:37 ID:xoW2cllK0
紫苑は隣に座る瑞穂の様子を見て、微かに溜息をついた。
瑞穂さんたら、なんでこう・・・・いじめたくなるのかしら。ふふっ。

ときおり、様子見してくる瑞穂に微笑みで返すと、ばつが悪そうにご飯に目をそらす。
でもやっぱり食事が進んでいない。この期に及んでまだ気持ちの整理が着かないのね。

瑞穂とは対照に紫苑の胸は高鳴っていた。夢に見た瑞穂の赤子。
自分の子ではなくても愛する夫の子供と言うだけで愛せる自信がある。
そして彼女は夫に愛されていることも深く確信していた。それだけで満ち足りていた。

慶行は瑞穂と厳島嬢の不自然ぶりにわずかに眉をひそめたが、すぐに気にしないことにした。
「そうだ。周防院君、あとで酒を応接間に届けてくれ。大友、最高のものを用意しろ」
脇に控えていた大友と呼ばれた男性が一礼する。奏もそれにならって主人に頭を下げた。
(そうだったのです。まりやお姉さまにお電話するのですよ〜)

静かな夕食が終わり、三人の旧友は応接間へ歩いていった。
へたり込みそうな瑞穂を見送りながら、奏はさっそく電話をかけに行った。
「奏ちゃん、ぐっど・いーぶにんっ! 貴子が来たのね?」
「はいなのですよ。ただ、瑞穂様も貴子様もお元気がなくって・・・」
受話器の向こうでまりやが親指を立てた。

「うん、それはわかってるから。それよりも警備の人にあたしと由佳里が行くから門を開けるように云っておいて。
 たーだーし。絶対に三人に気づかれないように、内密にね」
「ええっ。そうなのですか〜 でも・・・」
「今日はパーティーでしょ? 急に現れて驚かせたいのよぅ。あ、泊まるから部屋も用意しておいてね」
「でも旦那様に相談いたしませんと無理なのですよ〜」

うーん。と、考えるような沈黙のあと、まりやがひらめいた。
「じゃあ、御門まりや一生のお願いですって云っておいて。それで通じるはずだから。しし。」
「わかりましたのですよ〜 すぐに旦那様に伝えます。まりやお姉さま」
「お願いね〜 じゃあ、またあとで〜」
御門まりやの一世一代の悪だくみの火蓋がついに切って落とされた。

299 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:00:54 ID:xoW2cllK0
場所が応接間に移っても、三人の様子はそのままだった。
いつにもなく上機嫌な紫苑と激しく自己嫌悪に陥る二人。
たいした会話もなく、いつしかグラスの氷がからんと崩れた。

一方、御門まりやと上岡由佳里はひそかに屋敷に上がり込んでいた。
今まで何度繰り返されたであろう、『御門まりや一生のお願い』は慶行おじさまを苦笑させたに違いない。
門を入ったら奏が出迎えてくれた。他のメイドはいない。計画は順調に進んでいる。くくっ。

出るときに「おみやげ」はポケットに入れてきた。携帯電話は音を立てないようにマナーモードに設定する。
不穏な気配を感じ取っている由佳里は激しくイヤがっていたが、「コロシ文句」で黙らせる。

「奏ちゃん、じつはね、・・・私たちはパーティーに参加しないの。
 パーティーが終わったらそっと教えて。それまでは部屋にいるから。
 ・・・ところで先に確認しておきたいんだけど、瑞穂ちゃんの寝室はどこ?」
「ええっ。パーティーにご参加されないのですか。おいしいお酒をたくさん用意してあるのですよ?」
「もっとおいしいお酒があるからね。うっしっし。」
「そうなのですか・・・え、えっと、瑞穂さまのご寝室はこちらなのですよ〜」


時はすでに1時を回っている。頃合い良しとみて、紫苑がついに切り出した。
「時間も良いようですね・・・
 それでは今日から、貴子さん。こんなことをお願いできるのは貴女だけなの」
両手でグラスを挟み持ったまま、貴子の肩がびくっと震えた。うつむく彼女の耳が紅潮している。
「紫苑、ほんとうに・・・そ、その・・・いいのかい?」
悲痛な顔で訊ねる夫に紫苑はそっと唇を重ねた。

300 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:01:27 ID:xoW2cllK0
「私は瑞穂さんを愛しています。本当はあなたの子供を自分で産みたいのですけれど、それは無理です。
 さいわい、あなたの子を、代わりに産んでくれる貴子さんがいる。
 瑞穂さんと貴子さんは私に気を遣ってくれていますが、私は本心から貴子さんに
 瑞穂さんの子供を産んで欲しいと願っています」
「あ、あの、紫苑さま・・・本当に、よろしいのですね・・・」
そろそろと視線をあげて紫苑の顔を伺った。
「ええ。貴子さん。あなたは私たちの希望なのです。お願いですから、そんな顔をしないで」
「紫苑・・・」
彼女は夫に振り返って微笑んだ。

「そうでしたわ。契約と感謝の証しに、瑞穂さん・・・いまここで、私の目の前で、貴子さんとキスしてください」
「そ、そんなこと・・・」
「誓ってください。私と貴子さんをともに愛する、と。
 彼女も瑞穂さん、あなたのことが好きなのですよ。大事にしてあげてください」

やさしい微笑みに見つめられ、瑞穂は貴子に向き直った。
「貴子さん・・・よろしいですか」
紫苑の悲しみを取り除けるのなら、不倫の汚名はあえて被ろう。
それが彼女の望みなら、二人ともを同時に愛そう。・・・あまり自信はないけど。
できる限りの努力は惜しまない。
瑞穂の決心は固まった。

「・・・・・は、はい。瑞穂さん・・・あ、あのっ」
瑞穂に問われて、貴子は反射的に立ち上がった。
「こちらへいらして、貴子さん」
紫苑にうながされ、テーブルを回り込んで瑞穂の前に立つ。瑞穂も立ち上がっていた。

「貴子さん、しますよ」
逡巡する彼女を抱きしめて、瑞穂は強引に唇を奪った。

301 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:02:46 ID:xoW2cllK0
「・・・ぅ・・うん・・・くはっ、・・・はぁはぁ」
動悸がする。酸欠で考えがまとまらない。
私は瑞穂さんとキスをしてうれしい・・・でもそれはなにか背徳めいたことではなかったか・・・
頭の片隅で考えつつも、視界すべてが瑞穂さんで、他になにも見えない。なにも考えられない。
貴子の両手は自然と瑞穂の首筋にからみついた。

「ふふ。キスだけでそんなになるなんて・・・それとも酔っていらっしゃったのかしら」
寄りかかられて胸元に熱い吐息を浴びる瑞穂は、貴子を抱きしめて支えた。
「それでは、寝室へ参りましょう。瑞穂さん、貴子さんを連れていらして」
ドアを開けて紫苑が退出を促した。
瑞穂はうなずいて貴子の腕に手を絡ませて廊下に出た。
もう一方の手は紫苑の腕をつかんでいる。
「瑞穂さん、わたくし、新婚初夜のように昂ぶっておりますわ。わくわくします」
「っ! し、紫苑〜っ」

廊下を進んでいく三人を、大きなリボンをした少女がのぞき見ていた。
奏はさっそくまりやの元へ報告しに向かった。

302 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:06:31 ID:0KdI7NEW0
「まりやお姉さま、瑞穂さま方が応接間を出たのですよ〜」
「よし来た! さあ、由佳里行くわよ。ちゃんと勝負下着つけてるでしょうね」
指をぱちんと鳴らしてまりやがベッドから立ち上がる。

「奏ちゃんは、悪いけど30分ほどしたらカートでお水とグラスを持ってきてくれるかしら。瑞穂ちゃんの寝室に」
「ええっ。瑞穂さま方はもうお休みなのではありませんか?」
「違うよ。場所を変えただけよ。だって、貴子も一緒に行ったでしょ?」
「そうですね。はいなのですよ〜」

「よろしくね〜。はい由佳里。いつまでも駄々をこねない!」
「駄々じゃありませ〜ん。なんで下着にこだわらないといけないんですか〜」
「文句を言う口はこの口か〜! さっ、行くわよ」
「お姉ひゃま、いひゃいです〜」
「いってらっしゃいです〜」

奏に見送られて、まりやと由佳里は廊下を進んでいった。
まりやは由佳里の手を引きながら、ポケットの中のケータイを確かめた。
慶行おじさまの携帯のメールアドレスも待っている間に確認しておいた。
準備万端、しすてむ・おーる・ぐりーん。
あとは突入のタイミングだ。
まりやの体が悪戯の快感にふるえた。

303 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:08:55 ID:0KdI7NEW0
ぱちん、と音がして部屋の明かりがともる。瑞穂夫妻の寝室だ。
キングサイズとまではいかないものの、かなり大きなベッドが置いてある。

「貴子さん、大丈夫ですか」
体中が紅潮してうつむく彼女をベッドの縁へ座らせる。
「え、ええ。だいぶ治まって参りましたから・・・」
そんなにお酒を飲んだつもりはないのに、顔が熱く火照っている。

「貴子さん、失礼ですけど・・・」
紫苑がそばに座って肩を抱いた。
「あなた、・・・初めてかしら」
問われて貴子はうなずいたのか、さらに深くうつむいた。
紅くなったうなじが現れる。

「では僭越ですが、気持ちよくなれるように手伝って差し上げますわ」
こくんと微かにうなずいた。
「気を楽にしてくださいね。さ、上着を・・・」
緊張で固くなった貴子から紫苑が白いスーツを脱がせて、しわにならないように大事にクローゼットにしまう。

白いシャツと黒いタイトスカートが対照的だった。
ストッキングを履いた両脚がまぢかに見えて瑞穂はどきっとする。
こんな調子では、今晩何回気が遠くなるだろうか。決意を新たに、こぶしをギュッと握る。

「瑞穂さん、脱いでください。私たちが先に脱がないと貴子さんが恥ずかしがりますわ」
紫苑はスカートを足から抜いてサイドテーブルの椅子に掛ける。
白いブラウスがボタンを外され、衣擦れの音を残して折りたたまれた。
純白の下着がたわわな胸とふくよかなヒップラインを覆っている。

瑞穂が脱ぐ間に貴子の着衣にも手をつける。
「貴子さん、腰を上げてください」
・・・瞬く間に貴子は下着姿になった。

304 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:10:08 ID:0KdI7NEW0
「さ、もっと真ん中にお座りになって」
脇の下に手を通してやさしく引き摺る。
膝枕になっていた頭をそっと下ろして、紫苑はベッドの上を膝立ちで、ずり動いた。
真っ赤になった顔を両手で隠し膝を立てる貴子の横に、つま先立ちで膝を置く。

「恥ずかしがることはありませんわ。それにいくら声を上げてもここには誰も来ませんから。ふふ」
四つんばいで上から覆い被さるように貴子の両サイドに手をつく。

「貴子さん、一緒に気持ちよくなりましょう」
両手をやさしくのけ、顔をちかづけて軽く唇を奪う。手はなだらかな丘をなぜる。
「ゃ・・・あ、・・・」
そのまま唇は紅い耳たぶに移動する。甘噛み。
手は丘からウェーブする亜麻色の髪に移りやさしく撫でつける。
唇は耳と首筋を行き来しつつ、かるく吸い付きもした。

ふたたび、右手は丘をやさしく包みこんだ。その中央はかすかに固さを帯びてきていた。
大きさを確かめるように手のひらで包みながら突起を親指で擦ると、貴子が小さくあえいだ。
息がすでにはげしくなってきている。

紫苑は自らの下着を外した。たわわな果実が弾け出る。
つづけて、貴子の背中に手を回して下着をはぎ取った。なだらかな丘の真ん中に赤い小さな実がなっていた。

「ちょっと重いですけど・・・我慢してくださいね」
紫苑は貴子の上に身を重ねた。
ふたたびキス。今度はより深く悦楽を探るための長い接吻。その間も右手は休むことなく、丘全体を愛した。
ときにやさしく揉みし抱き、あるいは中央の実を可愛がる。

そのうち、紫苑の実も固くなり突き出した。
丘と丘を擦り合わせる動作は二人ともに快感をもたらした。
「ぅうんっ。・・・は。あ・・・ああっ」
紫苑の唇は貴子の赤い果実に寄せ、吸い付き、噛み、舌で愛してよりいっそう昂ぶらせた。
貴子は声が出そうになるのをこらえて指を噛むが、それでも喘ぎがもれ出てしまう。

305 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:10:39 ID:0KdI7NEW0
「ひぁっ! ああ・・・ふぅんっ」
紫苑の右手は両脚のつけねに移り、下着にもぐり込んだ。かすかに湿り気を帯びている。
貴子の両脚が淫らにのたうち回るが、そのまま下着の中をまさぐった。
「はぁ・・・貴子さん、可愛い・・・瑞穂さん・・は果報もの・・です・わ。」
紫苑の言葉もねっとりと熱を含んでいた。

紫苑の唇は胸だけにとどまらず、胸の谷間、鎖骨、へそへと次々に移動していく。
指は線をなぞるように往復し、貴子を激しく昂ぶらせた。

「あっ・・・いやぁ・・・」
紫苑の手が貴子の下着を脱がせようとする。いつのまにか、紫苑の下着は脱がれていた。
紫苑は貴子の下着を足から抜き、もう片方も抜こうとして直前で思い留める。
縮んだ下着は片方の足首にからみついた。

恥情に両脚を折り曲げて隠そうとする貴子をいなして、その間に顔をちかづける。
貴子のふとももが紫苑の顔をはさみこむが、かまわずにそこにある新しい丘に唇をつける。
紫苑の口はいろいろな手管を用いて、貴子に喘ぎ声を強制する。
「っ・・・はあっ!  うう・・・くはぁ」
貴子の両手はすでに喘ぎを抑えることを放棄し、ふとももの間にある紫苑の頭を抱き込んでいた。
丘は湿り気を増し、胸の先端ははっきりとその存在を主張していた。

貴子の昂ぶりがかなり高いところまでのぼりつめていることを感じとった紫苑はようやくふとももの間から顔を離した


「お待たせいたしました・・・瑞穂さん。さ、準備できましたわ」
ベッドの端で女性同士の痴態をのぞき見ていた瑞穂も、紫苑に言われてはっと気が付いた。
顔はたぶん火照っている。紫苑がこんなに・・・床上手だとは思わなかった。
いつもはあえて自分を立てるために主導権を握らせてくれていたのか。

「ぅ、うん・・・」
目でうながされて、瑞穂は貴子の両脚の間に膝を割り込ませた。

306 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:11:46 ID:0KdI7NEW0
「貴子さん・・・愛してます。こんなことになっちゃったけど、それは本当だから」
瑞穂は貴子に重なった。瑞穂の首にふたたび腕が絡まる。
「私も瑞穂さんが好きです。ふふ・・・
 ふつつかものですが、おねがいします」
今度は貴子の方から唇を交わした。いつもの彼女からは想像できないような・・・はしたない、深いキス。

「瑞穂さんのが・・・はぁっ。そ、その・・・当たってますわ」
「うん・・・入れるね」

「ッ、痛いっ!・・ああっ・・・だ、だめっ」
「ごめん。最後まで通さないとずっと痛いだけだから・・・ごめん」
「はぁはあ・・・くはぁ。いえ・・・でも・・もうしばらく・・・待ってください」
「うん、わかった」
やさしく貴子を抱きしめた。もう一人の愛する人。そばにいてくれる人。

「貴子さん、痛かったでしょう。私もそうでしたわ・・・」
二人の横で見守っていた紫苑が不意に声を掛けた。
「痛いと云っているのにむりやり瑞穂さんが・・・」
「ちょ、ちょっと待ってよ紫苑。むりやりって!」

「今だって、そうでしたわ。貴子さんかわいそう・・・
 女性だけ痛いなんて、不公平ですわ・・・」
「そ、そうです・・・こんなに痛いなんて・・・」
「ごめん・・・そんなに大きいとは思わないんだけど」
「「知りません!」」
失言だった。

307 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:12:53 ID:0KdI7NEW0
「瑞穂さん、そろそろ・・・・良いです」
「え?」
「聞き返さないでください!」
「ご、ごめん」
涙目の貴子に叱られて瑞穂はゆっくりと体を動かした。

「く・・・あっ!」
貴子さんには悪いけど、身悶える声が体中をぞくぞくさせる。
ボクって悪い奴なのかな。
そう思いながら、貴子の首筋に吸いついてみたりする。
「やぁ・・・は、瑞穂さん・・・そ、そんな」
「気持ちいい? じゃあこれなんかどうかな」
耳に口づけしたり、息を吹きかけたり。手は胸の丘を緩やかに愛し始める。
「あああっ! だめぇ・・・やあああっ」

可愛い。一緒に学校へ行ってたときとは全然違うかわいさが腕の中にあった。
つぎつぎに貴子さんの可愛い反応をためすように、いろんなことをやってみる。
「ふはああうぅぅぅっ!・・・くはあっ。ああっ、そ、そんな・・・っ!」
おへそが弱いみたいだ。重点的にせめてみよう。
「ダメッダメです瑞穂さん。そこだけは」
貴子の必死に押さえる手を払いのけながら、手で愛撫する。
「だーめ。僕には貴子さんを気持ちよくさせる義務があるから」
しかたないんだーなんて言い訳して貴子さんの反応で遊ぶ。

308 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:13:34 ID:0KdI7NEW0
「はぁはぁ・・・あ・・・はぁ」
息も絶え絶えな貴子さんを見てボクももうのぼりつめようとしていた。
「あ・・・貴子さん。僕もう限界です」
耳元でささやくと貴子さんはボクの頭を抱き寄せた。
「はい」
小さな声で返事があった。

貴子さんを抱きかかえて動きに集中した。
まだ痛みがあるみたいだけど、だいぶましになったみたいだ。
「瑞穂さ、ん・・・」
「もうすぐ、だから」
「ぅん・・・はい」

数分も経たないうちにがまんできなくなった。
「は、ふ・・・貴子さん・・・良いですか」
「・・・は、はい・・・瑞穂、さん・・・なかへ・・ああっ」
瞬間。貴子さんを強く抱きしめる。
貫きながら、脈動が貴子さんへほとばしるのが感じられた。
「あ・・・あ、あ・・・瑞穂さん・・・」
ボクは返事をする代わりに貴子さんにキスをした。

309 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:18:26 ID:0KdI7NEW0
「きししし。瑞穂ちゃん貴子でイっちゃたか」
扉越しに盗み聞きしていたまりやはそろそろとポケットに手を伸ばす。
「ねえ、由佳里・・・どうだった?」

振り向いたまりやは目を瞑っている由佳里を見てしまった。
両手がスカートの中に入っている。息も荒い。
「あちゃあ・・・もう始めちゃったか」
扉一枚向こうの瑞穂と貴子の情事を聴いて、たまらなくなってしまったらしい。


「・・・貴子さん、落ち着きましたか」
紫苑さまの声がする。
「え、ええ。なんとか・・・」
「じゃあ、二回目を始めましょうか。ふふ。さっきよりも気持ちいいはずですよ」
「し、紫苑!まだするの〜?」
「あたりまえです。今日は待ちに待った危険日ですから、朝までたっぷりとして頂きます」
瑞穂ちゃんの情けないヘタリこみが目に見えるようだわ。裸のはずだから、いっそう情けないわね・・・

「では、貴子さん私の上に来てくださいな」
「きゃ、きゃあっ!」
「はいはい。大きなベッドはこういうとき便利ですわね。抱きついてごろんとなれますから」
「あ、あの・・・紫苑? これはどういう・・・」
「私は貴子さんと抱き合って愛し合いますから、瑞穂さんはお尻から貴子さんを愛してあげてください」
「こ、こんな・・・恥ずかしい格好で・・・」
「貴子さん、三人一緒にって決めたでしょう。だったら、この体勢が一番ですわ。くす」

310 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:20:44 ID:0KdI7NEW0
「じゃ、じゃあいきます」
「え、あ、あああっ」
「貴子さん、キスしましょう。手はお互いの胸に」
肉のぶつかる鈍い音が聞こえてきた。また始まったようだ。しかも今度は正真正銘の3P!?
この機を逃してはならない。
まりやはポケットからケータイを出してメール画面にして、アドレスを設定する。
由佳里のことはあとでいいや。
まりやはドアのノブを握った。

ラッキー!!
ドアのカギを閉め忘れている。ゆっくりと開く。
深呼吸。深呼吸。位置について、よーい・・・

ぎぃ。ぱしゃり。

ベッドの上の三人が扉の方を見るが、時すでに遅し。
まりやがケータイを持っている。その上、撮影音?
驚くより先にまりやの声が制する。
「動かないで。騒いでも無駄よ。あなた達の痴態はケータイに撮らせてもらったわ」
「まりや!」
「動かないでって云ったはずよ。この画像はメールに添付されているわ・・・
 送信先は慶行おじさま。瑞穂ちゃんのお父さんよ・・・ ボタン一つで、送信されちゃうわよ?」

「な、・・・いったい何が望みなんだ。まりや」
「初めは貴子のはっずかしい姿を見てやろうと思ったんだけど・・・由佳里がね」
由佳里は扉が開いたときに居ずまいを正していたが、それでも体中の紅潮は隠せない。
「三人のエッチを見ながら、慰めてみたいようなのよ」
「・・・お、おねえさま・・・っ!」
「だから、ここで眺めさせてもらうわ。あなた達の子作りを・・・ね」
「ど、どこでそれをっ!」
「み〜ずほちゃん、あまいな〜。病院で大声は出さない方が良いわよ〜」
ニヤリ。

311 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:21:57 ID:0KdI7NEW0
「さ、由佳里、入ってらっしゃい」
「い、いやです・・・」
「あんなによがってたクセに。バレやしないかとびくびくしたわよ」
「そ、そ、そ、そんなっ!」
「さあ、思う存分、瑞穂ちゃんの3Pを見てイっちゃいなさい!」
いやがる由佳里を引っ張って部屋に入れ、扉を閉める。カギは・・・奏ちゃんのために開けておいてあげないとね。にししし。

「さ、つづけて続けて」
「まりやさん、あなたこんな破廉恥な真似をして」
「ハレンチなのは、貴子。あなたの方でしょう。秘書室長が会長の息子とご乱交?」
「まりや。これにはわけがあって・・・」
「知ってるわよ。聴いてたもの。でもそれはそれ。これはこれ。
 今夜は十分に楽しませてもらうわ。由佳里と一緒にね」

「まあ、見られても減るものでもありませんし・・・」
沈黙を破ったのは紫苑だった。
「で、でも・・・恥ずかしいよっ!」
「そ、そ、そうですわっ! よりによってまりやさんの前で・・・」
「じゃあ・・・あたしも脱ごうかしら。さあ、由佳里。あなたも脱ぐのよ」
「ひ、ひぃーーーー」


一糸まとわぬ姿になった二人を前に瑞穂はさらに混乱する。
な、なんでこんなことに・・・

「あ、紫苑さま・・・・」
紫苑がふたたび貴子さんを愛撫し始めたらしい。
「さあ、瑞穂さん、まりやさんたちは気になさらずにお続けになって」
まりやは横でニヤニヤ笑っている。ケータイを持って。
なんでこんなことになっちゃったんだろう・・・
瑞穂は深く落ち込んだ。

312 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:27:05 ID:0KdI7NEW0
「わ、私は嫌ですっ! まりやさんに見られながらなんてっ!」
貴子さんはまりやを見据えて言い放った。
「どうしてー? もうじっくり見られてるんだからいいじゃない。」
まりやは相変わらずニヤニヤ笑っている。ちょっと・・・目のやり場に困るなぁ。

「どうしてもですっ! わ、わたくしと瑞穂さんの・・・するところを観察するなんて悪趣味ですわ!」
「私たちも脱いだんだからフィフティーフィフティーよ」
「どこがですか! あなた達はただ眺めているだけじゃありませんか」
二人の意見は平行線でらちがあかない。

「それでは、こういうのはどうでしょう」
貴子の下で事態を見守っていた紫苑が口を挟んだ。
こ、この笑顔は・・・イヤな予感がする。

「まりやさんにも瑞穂さんと子作りしてもらえばいいのではありませんか」
やっぱり。
事態がますます悪化する・・・
「この計画が決まってからというもの、ずっと思っていたんです。赤ちゃんにお友達がいたらいいなって」
「・・・う〜ん。『天才デザイナー、未婚の母へ』か・・・まあ悪くはないわね」
まりやもなんだか変な方向に思考が傾いている。

紫苑の妄想はさらにヒートアップしていく。
「十条家にも跡継ぎが必要ですから、最低でも4人は瑞穂さんの子供が欲しいですわ
 みんなでお茶を飲んだり温泉に行ったり・・・ああ、夢のよう・・・」
「よ、4人!?」
えっと、貴子さんとまりやで2人ずつ・・・かな。
いや、まてまて。本当にそんなことしていいのー?

313 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:31:43 ID:0KdI7NEW0
そのとき、扉がノックされた。
え? 誰? っていうか、ちょっと待ってー!
「おねえ・・・瑞穂さま。お水をお持ちしましたのですよ〜」
「か、奏ちゃん!? ちょっとま・・・」
「奏ちゃん。入っておいで〜」
静止するまもなく、まりやにうながされて奏ちゃんが入ってきた。・・・入ってきて凍り付いている。
いままで由佳里ちゃんをもてあそんでいたまりやが立ち上がって奏ちゃんの手を引いた。
「これで4人ね。紫苑さまこれでいかが?」
「へ?」「え?」
事態が上手く飲み込めない由佳里ちゃんと奏ちゃん。まりや、それは強引だろう・・・

「ねえ由佳里? さっきの瑞穂ちゃん、激しかったでしょう? 瑞穂ちゃんに愛して欲しいと思わない? きっと毎晩満足させてくれるわよ〜」
まりやがふたたび由佳里ちゃんに覆い被さった。
「あ・・・え・・・でも」
「いつも瑞穂ちゃんを想って一人で慰めるなんて、精神衛生上も悪いわよ。ねぇ由佳里。」
「ぃ・・・ゃ・・・でも」
「いつまでもこんなおもちゃでオナニーしてるよりも、もっと気持ちいいことにチャレンジしてみない?」
「・・・・・・はぃ・・・」

「奏ちゃん、瑞穂さんの子供を産んで頂けないかしら」
紫苑が凍り付いている奏ちゃんを説得し始めた。
「じつは、ここにいるみんな、瑞穂さんの赤ちゃんを産んでくれるの。
 昔みたいにみんなで仲良く暮らせたらいいと思うんだけど、あなたはどうかしら」
「か、奏が瑞穂さまの赤ちゃんを産むのですか〜!」
奏ちゃんも困っている。それは困るだろう。僕も困る。あああ・・・・
「でも、瑞穂さまがお父さんなら赤ちゃんもきっと喜ぶと思うのですよ〜」

「だけど、そんなっ! 4人も代理母を作るなんて」
「みんな妻だと思ってくださいな。それに瑞穂さんが気になさることはありませんわ。 わたくしたちが瑞穂さんを共有すると思ってくだされば・・・」
「瑞穂ちゃんというおいしい料理をみんなでシェアするってわけですね」
まりやはもうノリノリだ。
なんてことだ・・・母様、いったい僕はどうすればいいのでしょうか。

314 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:33:27 ID:0KdI7NEW0
「じゃあ、きまりね。貴子は2回戦ヤっといて。私は由佳里といけないことしながら見てるから。ししっ。」
「では、私は奏ちゃんをぎゅーっと・・・」

「瑞穂さん、まだ飲んでらっしゃるの?」
しまった。扉開いたままだった・・・それにこの声は・・・・ああああっ!
「み・・・瑞穂さん?」
楓さんだ・・・
異常な状況を見て声が出ないらしい。部屋の時間が止まった。

「あ、あの・・・いったい・・・」
「みなさんに瑞穂さんの赤ちゃんを産んで頂くことに決まりましたの」
「ああ・・・そうなの・・・」
おざなりな返事だ。きっと理解できてないに違いない。

かちゃ。
後ろずさりした楓さんがなにか踏んづけた。あれはまりやのケータイ? 茫洋としながらも手に取る楓さん。
「ぁ・・・きゃあ!」

ぽち。

あのケータイには3人でしてるところが写っていたはずだ。踏んづけた拍子にスタンバイ状態だった画面が再表示されたのだろう。
そのあと、なにかボタンを触らなかった・・・?

まりやが急に立ち上がってケータイをひったくる。
「あ! あああああ・・・・」
まりやがへたり込んだ。こんなまりやを見るのは久しぶりだ。久しぶりなんだが、イヤな予感が・・・
「送信完了・・・」
どこへ?と聞きかけて思い出す。あて先は父さまだ・・・
いつも会社の大事に備えてケータイを枕元のテーブルに置いていたはずだ。まさかこんな時に楓さんの大失敗グセがでるなんて・・・

「えっと・・・みなさん、お休みなさい」
混乱していた上になにか悪いことをしてしまった雰囲気を感じとった楓さんはそそくさと出て行った。

315 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:34:56 ID:0KdI7NEW0
次の朝。
食事の前に父さまに呼ばれた。

「楓に聞いた。証拠のメールも届いた。おまえはいったい何を考えている?」
「そ、それは・・・」
口ごもる。
「言い訳もできんか。歯を食いしばれ、瑞穂」
「お待ちください、お父様」
拳を固めた父さまを止めたのは紫苑だった。
「話すと長くなるのですが・・・」

紫苑の話を聞いた父さまは深い溜息をついた。
「そういうことか・・・紫苑さんはそれでいいのかね?」
「はい。聖應のころに戻ったみたいで楽しいです。
 みなさんとみなさんの赤ちゃんで仲良くできたらもっと楽しいと思いますわ」
「ふぅむ。瑞穂、分かっていると思うが、外に漏れたら鏑木グループは崩壊するかもしれん。
 それだけは忘れるな。いっそ上岡さんにもうちの手伝いに来てもらおうか」
「由佳里さんは奏ちゃんと仲がよろしいから、ちょうどいいですわ。後でわたくしから話してみます」
「お願いしよう。では細かいことは後で決めるとして、食事にするか」
父さまが扉を開けるとそこにみんながいた。
貴子さん、まりや、由佳里ちゃん、奏ちゃん、楓さん・・・
みんな心配そうに見ている。

「だいたいのことは分かった。心配しなくて良い・・・みなさん息子をよろしく頼む」
ホッとするみんな。
「ただし!」
大声を出して父さまが振り返った。どきっとする。

316 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:35:39 ID:0KdI7NEW0
「楓はやらんぞ。これは俺のものだ」
そう言うなり、楓さんを抱きしめて熱い口づけを交わす。楓さんはいきなりのキスに顔が紅くなっている。
「愛してるぞ、楓」
「あん。・・・もうっ・・・いやぁんっ」
恥ずかしがる楓さんの腰に手を回して食堂へ歩いていった。

「さ、瑞穂さん。わたくしたちも食堂へ参りましょう」
「あたしもお腹減ったー」
「まりやさん、下品ですわよ」
「ハンバーグは朝ご飯にないかなぁ・・・」
「奏、料理長さんにハンバーグを作ってもらうように頼んでみるのですよ〜」
「とりあえず朝ご飯はハンバーグなしで我慢しなさい、由佳里」
「はーい。お姉さま」

「奏ちゃん、料理長さんに瑞穂さんのメニューを特別にしてもらうように頼んでおいてくださいな」
「はい、どんなメニューでしょうか」
「これから瑞穂さんはがんばらないといけないから、精力の出るものを、ね」
「はい、分かりましたのですよ〜」

「今日から、毎日がんばってくださいね。瑞穂さん」
さっきの父さまのように熱い口づけをしてくる紫苑。
抱きしめて唇を重ねる僕の頭に一つ疑問が浮かんだ。
「毎日?」
「ええ、毎日ですわ。昼夜のべつまくなく。みなさん、危険日を貴子さんにお知らせしておいてくださいね」
「ぶはぁっ! し、紫苑っ!」
「私たちの未来のためにがんばってくださいね。あ・な・た・・・」

僕は廊下にへたり込んだ。
母さま・・・たすけてください。たすけて・・・

317 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/20(火) 00:47:22 ID:0KdI7NEW0
長々と失礼いたしました。m(_ _)m

以前ギャルゲー板に投稿していたのですが、エロ要素が多くなったのでこちらに引っ越しさせて頂きました。
今、読み返すとまりやから由佳里への「おみやげ」が引っ張った割に出番がなくてこまりました。
ちょこっとだしてお茶を濁すより、いっそ書かない方が良いかと思って割り切りました。

楓さんに見つかって以降の省略したエロシーン中に、
貴子さんが瑞穂の責めにせり上がる、その胸を紫苑さんが愛撫する。
由佳里と奏が始めると余ったまりやは貴子のお尻の穴を「おみやげ」で弄ぶナンテコトを妄想してください。

ちなみにおまけシナリオの題名は「まりやとかが見てる」でした。ちょっと変えてあります。

318 :名無しさん@初回限定:2007/03/20(火) 00:59:00 ID:knH+A/zj0
激しく乙でした。

>『天才デザイナー、未婚の母へ』
>外に漏れたら鏑木グループは崩壊するかもしれん。

まりやが一番のネックですなw

319 :兎月 ◆Rk2bYVPTTQ :2007/03/20(火) 01:06:00 ID:8mz8H9fB0
えーこちらではお初になる兎月と申す者です
とりあえずなんか一本書いてみたんで上げてみますね
設定は特になし、三人称です
…三人称っておとボクだと書いてて違和感ありすぎ

320 :名無しさん@初回限定:2007/03/20(火) 01:07:12 ID:8mz8H9fB0
『題を付けるほどでもない、そんないつもの日常』
      
「まあ、お姉さまですわ」
その声で振り向いた由佳里は廊下の向こうからこちらに歩いてくる瑞穂を見つけた。
「すてきですわ」
「本当ですわ。凛としたお顔がとてもお美しいです」
一緒に歩く友人が賞賛の声を上げる。その声がなんだかうれしくて、はずかしくて、又そのとおりだと由佳里が思っていると、瑞穂が声をかけてきた。
「あら、由佳里ちゃんどうしたのかしら」
「はい、移動教室だったので、その帰りなんです」
「そう、そちらの方たちはお友達かしら」
瑞穂が二人の女生徒を見やる。視線があった瞬間二人の顔が赤く染まった。
「は、はい。天野恭子です」
「す、須藤郁美と申します。お姉さま」
耳までどころか全身を赤く染め、しどろもどろに答える二人がおかしいのか瑞穂がほほえみを返す。
「あっ、お姉さま。今日の夕食のことなんですけれど、何がよろしいでしょうか?」
 由佳里の質問に瑞穂は少し考え込んだが、すぐに言葉を返す。
「そうね、私は何でも良いわ。由佳里ちゃんの料理はどれも美味しいからね」
「じゃあ、お姉さまのお好きな物をお作りしますね」
「ありがとう。ふふっ、なんだか催促したみたいで悪いわね」
「そんなぁ」
「それじゃあね、由佳里ちゃん。楽しみに待ってるわよ」
「はい」
 軽く手を振って瑞穂が歩き出す。その後ろ姿は心なしか嬉しそうに見えた。
「ゆぅ〜かぁ〜りぃ〜っ!!」
 地の底から響いてくるようなうめき声に由佳里が振り向くと、そこには血走った目をした恭子の姿があった。
「なぁんで、お姉さまの夕食をあなたが作るのかなぁ」
「そ、それは…今日は寮母さんがお休みだからで…」
「問答無用―っ!」
 いきり立った恭子が由佳里に襲いかかる。


321 :兎月 ◆Rk2bYVPTTQ :2007/03/20(火) 01:08:14 ID:8mz8H9fB0
「ぐ、ぐるしいよ、恭子さん」
恭子に首を絞められた由佳里がもがく
「知るかぁっ!由佳里、あんたを殺して私も死ぬぅ!!」
「はう…た、助けて郁美さん」
由佳里が郁美に助けを求める。が、
「ああ、お二人の死は無駄にはしません。お姉さまの夕食は私が作りますわ」
 聞いていない。
「あ…ぐ…も、もうだめ……」
 由佳里の意識はゆっくりと沈んでいった。
       
「で、なんでこんなにたくさんあるのかなぁ、由佳里」
「厨房の方にもまだいっぱいあるのですよ〜」
 食堂の大きなテーブルにはまりやが言うとおり台に乗りきれないほどの皿で埋まっている。さらにまだ厨房にも同じ量の皿があった。
「それが、なんだかみんなで盛り上がっちゃって、クラス中のみんなで作ることになってしまって…」
「にゃっはっは。それじゃあしょうがないね。瑞穂ちゃん、ちゃんと全部食べてあげなきゃダメだよ〜」
「ええ〜っ。これ全部食べるのぉ」
「えっと…クラスのみんなに食べた感想を聞いてくるように言われているので…」
申し訳なさそうに言う由佳里の手元にはなにやらメモらしき物がある。
「そっかー。じゃあちゃんと食べないとね。さ、私たちはちょっとづつお裾分けしてもらうとしようか」
 まりやが食前の祈りを唱えた後、みんなで食べ始めた。
「で、どう?瑞穂ちゃん」
「ううっ、食べても食べても無くならないよう…」

         
                             END


322 :兎月 ◆Rk2bYVPTTQ :2007/03/20(火) 01:13:34 ID:8mz8H9fB0
以上です
いきなりコテ付けるの忘れてるし…
なんかつたない部分がいろいろあると思うのですが今後ともよろしくお願いしますね

323 :270:2007/03/20(火) 09:30:12 ID:I8IcK63P0
>>285-290
は、はやや、本当に使ってくださるとは思わなかったのですよ〜(汗)
ありがとうございます、なのですよ。

>>286
ハッピーエンドになってよかった!

>>287
そそっかしい吉良ワロタ。
梶川殿は紫苑さまかな?
せっかくだから「おまちなさい!」も欲しかったが、
そうすると「ビリッ」が入らないな…

この時代って、結構普通に男色趣味があったらしいから、
二人の関係もそのように見られたのでしょうw。

>>288
「な、『なっちゃんの春』?そ、そ、そのような
いかがわしい書物は不届き千万。
御門守殿、これは拙者がお預かり申す…きゅう」

このシリーズ大好き。
だれかイラストをつけてくれないかな。

324 :名無しさん@初回限定:2007/03/20(火) 17:54:01 ID:ucJTOHN+0
皆様GJです
ここ最近また活気付いてきて嬉しい限りです

325 :名無しさん@初回限定:2007/03/20(火) 19:30:27 ID:FLIH22Rp0
紫苑様の誕生日まで約4時間と30分

326 :103:2007/03/20(火) 20:31:02 ID:ZkXkKwL80
>>292-317

ついに新たな神が降臨された。
>>103以来の祈りが通じたのじゃ。

いあ いあ(ry

327 ::2007/03/21(水) 00:28:47 ID:iV8Jufkq0
>>267-268 の続き 先にこっちを読むとちょっと幸せになれるかも


「奏ちゃん、今日後で部屋に行っていい?」
二人きりには少し広いテーブルに向かい合って私は尋ねます。
「は、はいなのですよ〜」
少しだけ顔を赤くした少女が恥ずかしそうにそう返事します。
赤くなったのは『部屋に行く』の意味がわかっているからでしょう。
時刻は七時を少し過ぎた頃
テーブルの上には粗方空っぽになったお皿が並んでます。
いつもの二人きりの寂しい食事
一人よりかはましだけど、それでも四人で食べていた頃を懐かしんでしまいます。
その理由の大部分は『お姉さま』のせいでしょう。
今ならはっきりと言えます。
私はあの聡明で、綺麗で、優しくて、少し鈍感なお姉さまに恋してました。
いえ、してました では無く しています。
もちろん、女の私がこんな感情を持ってることは異質だと分かってます。
だけど……



328 ::2007/03/21(水) 00:30:30 ID:iV8Jufkq0

「奏ちゃん、今日後で部屋に行っていい?」
夕食が一段落付いた時に不意に友達が言ったのです。
「は、はいなのですよ〜」
自分でも顔が赤くなってるのがわかるのです。
由佳里ちゃんと奏はただの友達関係でしたが……
今から少し前…お姉さま方が卒業してから、由佳里ちゃんは元気がありませんでした。
表明上はいつもと同じようでしたが、奏には分かってしまうのです。
そしてその理由も…
だから…由佳里ちゃんを元気付けようと色々な話をしたのです。
だけど話しているうちに奏は気付いてしまったのです。
本当に慰めたかったのは奏自身だと
そして奏はどれほど『お姉さま』のことを慕っているのか。
気が付いたら奏は子供のように泣いてました。
まるであの夏の日のように。

由佳里ちゃんも泣きながら奏を抱き締めてくれたのです。
そして、まるで決まっていたかのようにくちづけを交しました。
その後はどちらが言い出した訳でもないのですが
お互いの体を重ね合わせたのです。
まるで少しでもお互いの傷を癒し合うように…



329 ::2007/03/21(水) 00:43:51 ID:iV8Jufkq0
こんばんは 魔 です
最近、素晴らしい作品が投下されまくってますね
これも紫苑様の誕生日効果でしょうか?
それに便乗して続きを投下してる訳ですが・・・
うーん・・・みなさんのような文才が欲しい





330 :名無しさん@初回限定:2007/03/21(水) 19:20:23 ID:0k0V7ISA0
気が早すぎだけど・・・
瑞穂お姉さまの誕生日まで約51日と4時間と40分位です。

331 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:13:11 ID:lM+YloLm0
誕生日SS色々と考えてみたのですが、いいネタが思いつかず、結局いつもの
モテ話にしました。6時間の突貫工事でなんとか本日中に書きあがりましたので
投下します。ちょっと長めですが(30KB)いつもよりバカ200%増量です。

332 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:13:50 ID:lM+YloLm0
『エルダーデート』


舞台は3学期、紫苑ルート

2月のとある日曜日、駅前のロータリーにふたりの少女の姿が、互いの腕を組んで寄り添いながら歩いていた。
長身、美貌のそのふたりの姿に、通りすがりの人々が足を止め、目を釘付けにする。
「さあ、どちらに行きましょうか、お姫様」
「ふふ、私はどこだっていいんです。瑞穂さんと一緒なら」
「そんなこと云ってるとラーメン屋にでも行っちゃいますよ?」
紫苑は嬉しそうに瑞穂の顔を覗き込んだ。
「それもいいですわね。初デートがラーメン屋さんだなんて、それもまた素敵な思い出になりますわ」
「…冗談ですよ。もう。紫苑には冗談も通じないんですから…。
だけど遊園地とかは止めておきましょう。紫苑は退院して間もないんですから」
「そんなお気遣い無用ですのに」
このふたりを遠巻きに見ている通行人の中には、ナンパ目的でこの近辺をうろついている若い男も多数いたが、
誰もあえて声をかけようとしない。レベルが高すぎる。
軽装のハイキングの格好でエベレストに挑むバカは世の中にいない。

「はあい。どこいくのぉ」
瑞穂たちが声の主を振り返ると、そこにいたのはバカではなく制服を着た圭だった。
「あら、圭さん。こんにちは」
「こんにちは。瑞穂さん、紫苑さま。お二人揃ってこんなところでナニなさってるのかしら」
「今日は瑞穂さんとデートですの」
瑞穂が止める間もなく紫苑が嬉しそうにいった。
「いや、紫苑…さんの退院祝いにどこかに遊びにいこうってことで…」
「もう、瑞穂さんったら」
紫苑がいたずらっぽく笑う。
「ふうん。退院祝いねえ。他には誰もいないみたいね。ふたりっきりで?」

333 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:17:17 ID:lM+YloLm0
「いや、それは……そ、そう云えば圭さんは一体なにを?」
「ふっ、まあいいわ。あたしは映画を見に行くところ。今日封切映画で出演者の舞台挨拶があるの」
「ひとりでですか?しかも制服」
「いつも美智子と一緒にいるわけじゃないわ。制服は映画を見に行く時の正装よ」
「映画もいいですわね、瑞穂さん」
紫苑が瑞穂に云う。
「そうですか、紫苑さんがそういうなら映画に行きましょうか」
「じゃ、あたしと一緒に行きましょうか。心配しなくてもデートの邪魔はしないわよ」
そう云って三人は街中へと歩き出した。
「いや、あのね、デートじゃなくて…」
「それにしてもたいしたものね、瑞穂っち」
「えっ?」
圭は瑞穂の言い訳など相手にしていない。
「あたしがあなた達を見つけたとき、まるでバリアが張っているみたいに周りに誰も近寄ってなかったわよ。
あなた達のレベルが高すぎるのね、きっと」
「まあ、そうでしたか。気がつきませんでしたわ、ねっ瑞穂さん」
紫苑は嬉しそうだ。
「でも、それはきっと瑞穂さんがいらっしゃるからですわ」
「ふたり一緒だったからだと思うけど。でも紫苑さまの云うこともあながち外れてもいないかもね。
私服の瑞穂さんはあたしでもちょっと見惚れてしまうくらいだから」
瑞穂はジーンズにラフなシャツをきて、細身の体型からスーパーモデルのようにみえる。
「でしょう、でも瑞穂さんは私のですから」
「ちょっと紫苑さん」
「大丈夫。あたしは手を出したりしません」
「そうですわね。圭さんには美智子さんがいらっしゃいますし」
「………」
紫苑のからかうような言葉に圭は口をつぐむ。




334 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:20:06 ID:lM+YloLm0
「やめてください。放してください」
なにやら揉めているような声がしてきたのでそちらの方をみてみると、
女の子が若い男に腕をつかまれてなにやら云われているようだった。
「あら、あれはうちの生徒のようですわね」
「知っているんですか、紫苑さん」
「はい。華道部の二年生だったとおもいます」
「ナンパ男に捕まって放してもらえないといったところかしら」
「…それじゃ」
瑞穂はつかつかと男に近寄っていった。
「お願いですから構わないでください」
女の子がいう言葉をろくに聞きもしないで男はニヤニヤ笑っていた。
「だから〜ちょっとでいいっていってる……イテテッ!」
男の腕がひねり上げられた。
女の子が驚いてそちらを見ると、瑞穂が男の腕をひねり上げていた。
「その子が嫌がっている言葉が聞こえないのですか?」
「いててっ、ななんだ!お前っ」
腕を極められたまま、男がかみつく。
「その子の知り合いですの。知人の窮状を見過ごすことは出来ませんので!」
そう云って腕をさらに深く極める。
「痛い、いたたたっ」
「それでは構わないでいただけますわね?」
「わかった、わかったから」
瑞穂が腕をほどいて突き放すと、男はそのまま何も言わずに走り去ってしまった。
「まったく…」
「あ、ありがとうございます」
去っていく男を睨みつけていた瑞穂に、顔を真っ赤にして女の子が礼を云った。
「大丈夫だった?もしかして余計なことだったかしら」
「いいえ、とんでもありません。本当に助かりました」

335 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:23:06 ID:lM+YloLm0
ちょっと離れたところで見ていた紫苑たちも寄ってきた。
「よかったわね、うふふ」
「し紫苑おねえさま!それに圭さままで!」
「それじゃあね」
瑞穂はふわりと女の子の頭を撫でると、女の子は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「まあ、かわいい!」
ぎゅ!
紫苑が奏にいつもしているように女の子を抱きしめた。
「………!」
そのまま瑞穂たちは立ち去ったが、その後姿を女の子は熱い眼差しで見送っていた。



「大丈夫かしら、あの子。なんかボーッとしてたけど」
「きっと平気よ、それより今のやり取り、大勢のうちの生徒が見てたわよ」
「えっ、本当ですか」
休日の駅周辺は、恵泉の生徒が沢山いるらしい。
「月曜日、派手な噂になってることを覚悟するのね。…あら」
圭が立ち止まった。
「圭さん、どうしました?」
「ほら、あそこにいる子」
圭の指差したところに蹲った女の子とその横でおろおろとしている女の子がふたりいる。
「ほら、出番よ。瑞穂っち」
「なんの出番ですか?」
「行けばわかるわ。ともかくあの子のところに行ってきなさい」
圭にどんと突き飛ばされてよろよろと瑞穂がその子に近づいた。
「あの、どうかしたのかしら」
「ああお姉さま」
「えっ、私を知っているということは…」

336 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:26:04 ID:lM+YloLm0
「私、恵泉の1-Aで吉永といいます」
「…あ、ええ…」
「じつは私の姉が足を挫いてしまいまして…」
蹲っている女の子がくるぶしの辺りを押さえて俯いている。
「まあ、大変」
紫苑が女の子のくるぶしを撫でた。
「し紫苑様…」
「どちらまで行かれるつもりでしたの」
「道路の向こう側のタクシー乗り場へ。ですが、歩道橋の階段を上り下りしないといけませんので」
そう云って、涙目になる女の子の頭を紫苑がぎゅっと抱きしめた。
「大丈夫ですよ。心配要りません」
紫苑は瑞穂の顔を見た。
「瑞穂さん。お願いします」
「えっ?」
「瑞穂さんが抱いていってあげてください」
「ああ、そうですね」
瑞穂がひょいと女の子をお姫様抱っこで抱えあげた。抱えられた女の子は顔を真っ赤にして声もでない。
カシャッ、カシャッ!
「ん?」
音に気がついて瑞穂が後ろを振り返ると、遠巻きに見ていた2、3人の女の子が携帯を振りかざしていた。
「あれは」
「気にしない、気にしない。早く渡りましょう」
圭が手を振って、瑞穂に早く行くように促した。
ぞろぞろと歩道橋を渡る一行。
抱きかかえられた女の子は真っ赤な顔で俯いて、瑞穂の首に手を回している。もう一人の女の子はうれしそうな顔で
紫苑と腕を組んで前を歩いている。
その一行の後ろから数人の女の子がひそひそ話をしながらついてくる。メールを打っている子もいる。
「なにかしら?あの子たち」
「ふふん。面白いことになりそうな予感がするわね」


337 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:29:09 ID:lM+YloLm0
タクシー乗り場まで送ってくると、ふたりの姉妹は礼を云って名残惜しそうにタクシーに乗って帰っていった。
「さあ、シネコンに向かいましょう」
3人が歩き始めると、ぞろぞろとその後ろからついてくる女の子たち。
「………」
圭や紫苑は気にするそぶりを見せないが、瑞穂は気になって仕方ない。



50mほど歩くと前方で若い男女がなにやら揉めているのが見えた。
「瑞穂さん、どうしたんですか?」
「…いえ、なんでも」
紫苑の笑顔を見て、せっかくのデートをこんなことで台無しにするわけにはいかないと考える瑞穂。
どうにも変な感じがする。
「ねえ、紫苑さん、圭さん。向こうの道から行きませんか?」
「急にどうしたのですか、瑞穂さん」
「こっちのほうが近道よ」
紫苑はともかく、圭の目はとっくに瑞穂と同じく前方のふたり組みを捉えていた。
「あら、あんなところで何か…」
わざとらしく圭が指差す。
「圭さん、演劇部長がそのわざとらしさはいかがかと思いますが」
「何か揉め事が起こってるようよ」
「ただの痴話げんかかも知れないじゃないですか」
「それはないわね」
「何でそう云いきれるんです?」
そのとき、まるで計ったように前方にいた女の子がこちらに駆け寄ってきた。
「もうやめて下さい!」
「ちょっと待てよ」
男がその後を追ってきて、娘の腕を掴む。

338 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:32:03 ID:lM+YloLm0
「いやっ!離してください!さっきから云ってるじゃありませんか」
「はあ?なに云ってるかさっぱりワカンネー」
痴話喧嘩かと思ったがどうも違うようだ。
「ほらね」
「お待ちなさい!」
紫苑が声を上げた。
「そこのお方。その子が嫌がっているではありませんか。その手をお離しください」
「ああ、もう紫苑…さん…」
突っ走ってしまった紫苑を不安げになだめる瑞穂。
「あら、瑞穂さんは難儀をしている女の子を見捨てていかれるのですか?」
「いや、そんなことは…」
いぶかしげに紫苑たちを見た男の表情が一瞬、呆けた。このような美少女がふたりで並んでいるところは
テレビのドラマの中でしかみた事がない。
「…え、あ、いや。あんたらには関係ないだろ。引っ込んでてくれ」
男はハッと我に返ると、虚勢を張って紫苑に云い返した。
「そうは参りませんわ」
「紫苑さま!」
女の子が声をあげた。
「あら、私をご存知なのですか。ということは貴方は恵泉の生徒ですか?」
女の子は男の手を強引に振り払うと紫苑の胸に飛び込んだ。
「はい、紫苑さま。2年の葵と申します」
カシャッ!カシャッ!
「あの男の人がしつこく言い寄ってきて、断ると手荒な真似を…」
紫苑に抱きかかえられ、言ってる内容とそぐわない嬉しそうな表情で話す女の子。
それを聞いて、男が顔色を変えて詰め寄ってきた。
「おい、なに云ってやがる。お前がさっきOKって…付き合ってやるからこっちに来いって…」
ゴンッ!!
振り返った女の子が思い切り、男の向こう脛を蹴った。
「!!痛ってえー!テメェ」
振り上げた男の手首を瑞穂が掴んだ。

339 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:35:08 ID:lM+YloLm0
カシャッ!カシャッ!
呆気にとられて傍観していた瑞穂も、紫苑や女の子に向かって暴力が振るわれそうなのを黙ってみているはずがない。
つかんだ手首にグイッと力を込める。
「この手は何ですか?女性に暴力を振るおうとするのですか、貴方は」
男が瑞穂の顔を見て、信じられないという風に目をむいた。
振り上げた腕を止めた筋力、手首を掴んでいる握力、目の前の美少女とはどう考えても一致しない。
「は、離せ」
「いいえ、貴方が暴力を振るわないと云わない限り離しません」
カシャッ!カシャッ!
先ほどからのこの音。ふと、男は気がついた。この美少女たちの後ろにいる、10人ほど女の子の集団。
この娘たちがさっきから、携帯を取り出して撮影している。
(……何故?)
「あんたたちはなんだ」
カシャッ、カシャッ、カシャッ!
返事は無く、ただシャッター音が返ってくる。
「さっさとそこを…」
カシャッ、カシャッ、カシャッ!
「あ〜……」
カシャッ、カシャッ、カシャッ!
ただ黙々と切られるシャッター。

(……駄目。なにを云っても携帯でとられる。写真をとられる。おそらくこの娘たちの中では俺は悪。
しかも、殴りかかろうとしたところを女の子に腕をつかまれた所も何十枚も写真に撮られてる)

「あ、あのさ、俺は別に手荒なことをするつもりは…」
出来るだけやさしく静かに話しかけてみる。

340 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:38:08 ID:lM+YloLm0

カシャッ、カシャッ、カシャッ!カシャッ、カシャッ、カシャッ!カシャッ、カシャッ、カシャッ!

「………あの…ほんとに……」

カシャッ、カシャッ、カシャッ!カシャッ、カシャッ、カシャッ!カシャッ、カシャッ、カシャッ!

ぶるぶるぶる……
男の体が小刻みに震えている。

「・・・・・・・・・」

カシャッ、カシャッ、カシャッ!カシャッ、カシャッ、カシャッ!カシャッ、カシャッ、カシャッ!

「うわああぁ〜〜」
男はがむしゃらに腕を振り回して、瑞穂の手を強引に振り解くと、大声で叫びながら駆け去っていった。
それを呆気にとられて見送る瑞穂。何故こうなったのかよくわからない。
「………」
カシャッ、カシャッ、カシャッ!
シャッター音に瑞穂が後ろを振り返った。
「って圭さん!なにやってんですか!」
圭が女の子たちと同じように携帯を構えていた。
「気にしないで。…それにしても、あの男性、もう一生ナンパなんてしようと思わないでしょうね」
「さすが、瑞穂さんですわ。惚れぼれします」
嬉しそうに紫苑が声をかける。
「いいえ、私は何にもしてませんよ。なぜか勝手に逃げていきましたけど」
「どうも有難うございました。お姉さま方」
紫苑に抱きかかえられていた女の子が礼を云う。
「お姉さま方はどちらに行かれるのですか?」

341 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:41:02 ID:lM+YloLm0
「私たちは映画館にいくところなの」
「まあ、そうですか。奇遇ですわ。私もそちらに向かうところでした。映画館までご一緒させていただいてもよろしいですか?」
「ええ、結構ですよ」



瑞穂たち3人が歩いている。その後方から多数の女の子たちがついてきている。
カッ、カッ、カッ……
ザッ、ザッ、ザッ…
揃えた足音高く歩道を移動する集団。道行く人々が道をあけて、瑞穂たちを見送る。
「・・・・・・」
ザッ、ザッ、ザッ…
「…おかしい…おかしいです、こんなの」
「どうしたの、瑞穂っち」
「圭さん、なんですか?これ」
瑞穂は後ろをちらりと振り返った。女の子たちがみんな、なにやら必死にメールを打っているらしい。
「Wエルダーと瑞穂軍団よ」
「なに?それなに?軍団ってなに?なんで紫苑さんとのデートがこんなことになってるんですか」
「あら、デートじゃないって云ってたのに、もう撤回?それにね、瑞穂っちはどう思おうと、紫苑様をごらんなさい」
紫苑はにこにこと笑っている。心の底から楽しそうだ。
「………」
「紫苑様が楽しんでいるんだから。あきらめなさい」
「何でこんなことに…。どこで間違えてしまったのか…」
「最初の女の子を助けたとき格好良過ぎたこと、それを多数の恵泉の子に見られたこと」
「・・・・・・・・・」
圭が前方を指差しながら云った。
「そんなことより、ほら!次の任務が始まったわよ。瑞穂っち」
見るからにチンピラ風の男に腕をつかまれて脅されている女の子。足元には小銭が散乱していた。
なにが行われているか想像に難くない。

342 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:43:06 ID:lM+YloLm0
「任務って何のことですか!?」
「ふっ、少しずつ難易度が上がって行ってるわね。この子達もまったくよくやるわ。とにかく行ってらっしゃい」
圭にドンと押された瑞穂が飛び出す前に、紫苑がチンピラの前に立ちふさがった。
「そこのかた、そのような振る舞いは男性として見苦しく思うのですが」
「うわっ、また!?紫苑さ〜ん」
チンピラは紫苑の顔を見て相好を崩す。紫苑の美貌をみてカモだと思ったのかもしれない。
その紫苑の前に慌てて瑞穂が立ちふさがった。
「もう、突っ走らないで。紫苑さん」
「なんだ、お前ら。お前らが代わりに落とし前つけてくれるのか」
チンピラがうれしそうに凄んでくる。
「お姉さま〜、紫苑さま〜。たすけて〜」
嬉しそうに助けをよぶ女の子。とても楽しそうな表情。
「・・・・・・なんで楽しそうなの?」
「この人がいきなり『金をだせ』といって…」
「それは強盗ね。通報しなくては」
圭がぼそりと云う。
「ななに云ってやがる。違うだろ!お前がいきなり近寄ってきて『今だ!』つって俺の顔面に小銭を叩きつけて……痛っ!」
女の子がチンピラの向こう脛を思い切り蹴り上げた。
「なにしやがる」
怒ったチンピラが振り上げたこぶしを瑞穂が掴んで止めた。
カシャッ!カシャッ!
果てしなく胡散臭い三文芝居だが、女の子が殴られようとしているのを見過ごすことは出来ない。
「その子を離してください」
瑞穂を睨みつけるチンピラがふと気づいた。自分たちの周りを取り囲んでいる大勢の女の子。30人くらいいる。
「な、なんだ!お前ら」

カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!

みんな、手に携帯やデジカメを持っている。ICレコーダーを振りかざしている娘もいる。
「何のつもりだ!ふざけるな!」

343 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:46:37 ID:lM+YloLm0

カシャッ、カシャッ、カシャッ!カシャッ、カシャッ、カシャッ!

「調子こきやがって!おまえら!ぶっ飛ばされたいか!!」
大声でドスを利かせて脅した。

カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
キュイーン!パシャ!パシャ!ピカッ!!パシャ!カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
キュイーン!パシャ!パシャ!ピカッ!!パシャ!カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!

物凄い数のシャッター音。フラッシュも焚かれた。おそらく録音もされている。
ふと気がつくと、歩道橋の上から、望遠で撮っているのもいるようだ。

「……あ〜、おい!これはなんだ?」
チンピラが瑞穂に尋ねた。瑞穂はただ、困ったような表情で首を振るだけ。
瑞穂にしても答えようがない。
チンピラもさすがにマズイと考えて、声の調子を落として周りに話しかける。
「あんたら、見せもんじゃねえからちょっと、向こうへ行ってくれねえか?」


344 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:49:49 ID:lM+YloLm0
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
キュイーン!パシャ!パシャ!ピカッ!!パシャ!カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!

返事の代わりのシャッターの嵐。
・・・・・掴んでいた女の子を離してみた。

カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
キュイーン!パシャ!パシャ!ピカッ!!パシャ!カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!

「・・・・・・・・・おい、あんたら」

カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
キュイーン!パシャ!パシャ!ピカッ!!パシャ!カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!

・・・・・・瑞穂が掴んでいたチンピラの腕を離す。
チンピラが黙って瑞穂の顔を見た。
瑞穂は悲しそうに首を振るばかり。
「・・・・・・・・・」
その間も鳴り響き続けるシャッターの音。

カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!


345 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:52:38 ID:lM+YloLm0
これに対抗しうる人類は恐らく皆無。それはこの男にもわかった様だ。
チンピラは何も云わず、なんとなくさびしそうに静かに立ち去っていった。

カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
キュイーン!パシャ!パシャ!ピカッ!!パシャ!カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!
カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ!

立ち去るチンピラの背に向かって容赦なく切られるシャッター音の嵐。
おそらくあのチンピラは一生、カメラが嫌いになっただろう。
女の子は紫苑に抱きかかえられて幸せそうな笑顔。
満面の笑みで紫苑が瑞穂をほめる。
「さすがは瑞穂さん!女の子救出完了ですわ」
「・・・・・・・・・紫苑さん・・・」
「ミッションクリア。瑞穂っち、いい仕事だったわよ」
「…私はなにもしてませんよ。周りの子たちが…。これって数の暴力じゃないのかしら。
さっきの人といい、今の人といい、もしかしてはめられたんじゃないのかしら。一体、この子達はなにを考えて…。」
カチカチ、一所懸命メールしながらついてくる女の子たち。
「他に娯楽がないんでしょ。でも相手は道徳的な悪人だしいいんじゃないの。全ては貴方たちを慕ってのことだと思って…」
そういう圭自身が一番楽しそうである。
「はあぁ〜〜」
再び、映画館に向かう瑞穂たち。
その後ろからついてくる30人を超える女の子たち。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ…
集団は足音高く移動を始めた。




346 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:56:04 ID:lM+YloLm0
映画館の前は大勢の人数でごった返していた。本日封切のラブストーリー映画で、出演の男性アイドルグループの舞台挨拶が行われる
予定になっていた。
そこにやって来た3人と軍団。わずか50メートルほど移動する間に人数がさらに倍近くに膨れていた。
上映タイトルを調べる瑞穂。
「今やってるのは、サスペンス、ラブストーリー、アドベンチャー、アクションですね。圭さんは何を見るんですか?」
「あたしは三流役者の舞台挨拶を見物に来たのだけれど。でも、何でもいいわ。
そんなのより、瑞穂さんたちと一緒のほうが遥かに面白いから」
邪魔するつもりは無いと云ったが、今では最後までついていく気満々の圭。
「…面白いって…。紫苑さんは何を見たいですか?」
「そうですわね、ラブストーリーが面白そうではありませんか?舞台挨拶も見てみたいですし」
「そうですか」
瑞穂としては、面白そうではなく何故か嫌な予感がするのだが、紫苑がそういうのであれば否応はない。
映画館に入ろうとしたところで、周りの女の子たちの間でなにやら揉め事が起こったらしく云い合う声が聞こえてきた。
「圭さん、何でしょうか?」
「さあ?どうせつまんないことよ。気にせず入りましょう」

映画館前でアイドルたちの到着を待っていた追っかけと恵泉の子たちとの間で軽い衝突が起こっていた。
早くから場所取りをしていた追っかけの子が恵泉の娘を新しいファンだと勘違いして、向こうに行くように指図したのに、
鼻でくくったような態度で応じたからだった。

(私たちはあなた方の追いかけていらっしゃる芸能人に、なんら興味もありません)
(じゃあ、あんたたちなんで舞台挨拶を見に来たの!)
(私たちはお姉さまについてきたのであって舞台挨拶なんか関係ありません)
(お姉さま?なにソレ)
見渡して集団の中心に、遠目ながら一般人とは明らかに異なった雰囲気のふたりの美少女を確認する。
(なんだ、地方アイドルの追っかけなのね。あんたたち)
(芸能人ごときと一緒にしないでください)
自分たちの崇めるアイドルを『ごとき』呼ばわりされては黙っていられない。
たちまち取り留めのない云い合いに発展する。


347 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 21:59:04 ID:lM+YloLm0
瑞穂の姿に目を留めたのは、追っかけの子ばかりでなく、取材に来ていた雑誌記者の目にも留まった。
明らかに抜きん出た存在感や威圧感のある雰囲気は、大スターや女優に近いものがある。
断じて一般人ではないはずだが、芸能界でこんな少女を見たことがない。
皆が首をかしげる中、一人の芸能プロダクションの男が映画館の中に入ろうとしていた瑞穂に近寄って声をかけた。
「はあ、芸能事務所の方ですか」
瑞穂は渡された名刺に目を落とした。そこには『○×芸能事務所』と書かれていた。
芸能界屈指の大手でアイドルを夢見る少年少女たちの憧れ。そこに所属することが出来れば、トップアイドルに間違いなく
なれるともっぱらの評判の事務所だった。
しかしながら、芸能人に興味がない瑞穂はそこまでのことはよく知らない。
「どうでしょうか?お話だけでもさせて頂けませんでしょうか」
言葉遣いは丁寧ではあるが、この男の態度にはやや不遜な感じがでている。
これまで、事務所の名前をだしてスカウトして断られることはほとんどなく、逆に入れて欲しいと詰め掛ける少女は山のようにいる。
だからこの少女も、地方アイドルをやっているくらいなら(そもそもこれが勘違いなのだが)二つ返事で承諾するだろうと予想していた。
周りの女の子たちが一斉に注視するなか、返ってきた返事は男の予想を裏切るものだった。

348 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 22:02:07 ID:lM+YloLm0

「申し訳ありませんが、そのようなことに興味はありませんので遠慮させていただきます」

迷惑気な表情ではっきりとした拒絶の言葉とともに渡された名刺を返そうとする瑞穂。
紫苑が楽しそうに、圭が興味深そうにその様子を傍から見ている。
予想外の返事に慌てる男。
何か勘違いをしているのではないか?自分を怪しいプロダクションと思っているのではないか?
業界大手のプロダクションであること、アイドルへの近道であることを強調して、早口で説明するが、瑞穂の態度は変わらず。
男の手に名刺を強引に押し付けると、そのまま背を向けて映画館に入ろうとする。
そう云われても男はまだ、納得できなかった。少女なら誰でも憧れる職業、アイドル。
それに対して瑞穂の態度はあまりにもそっけない。絶対に何か思い違いをしている筈だ。
男が強引に引きとめようと、瑞穂の背中に手を伸ばしかけたところに紫苑が立ちはだかった。

「申し訳ありませんが、お諦めください」
柔らかな笑みの表情のまましっかりとした口調で話す。
「瑞穂さんが迷惑しております。なにより、瑞穂さんがそのような世界に進まれることはありえませんし、私も望みません」
その大人びた口調に男が驚いて紫苑の顔を見る。
そして、瑞穂に目が奪われていたが、この少女も傑出した器量の持ち主であることに気がついた。
こちらの少女も素晴らしい逸材。
そこで、矛先を変えて、紫苑に改めてアプローチをかけてみるが、紫苑もやはり首を横に振る。

「私は瑞穂さんと一心同体です。瑞穂さんと離れた道に進むことは絶対にありません」
終始毅然とした姿勢を崩さず。

349 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 22:05:36 ID:lM+YloLm0

キャアァァ〜〜
凛々しい紫苑の姿に、大いに沸き立つ瑞穂軍団の女の子たち。
(さすがは紫苑さま…)
逆にあっけにとられている、事務所の男、記者たち。
……このふたりは一体……
地方アイドルとその取り巻きかと思っていたが、どうもそうではないらしい。芸能界にもちょっと疎いようでもある。
それでも、気を取り直した男が、近くのカメラマンに瑞穂と紫苑の写真を撮る様に指示をした。
しかし、近くの記者が周りを見回してそれを中止させる。
いつの間にか、数十人の女の子たちにぐるりと取り囲まれて睨みつけられているのに気付いたからだった。
(おい、どうもこの娘たち恵泉女学院らしい。あんまり強引にやると圧力がくるぞ)
恵泉女学院に財界の有力者たちの子女が多く通っていることは有名である。その中には、新聞社、テレビ局などのメディア関係の
スポンサーも多くいる。
そのことに気付いた芸能事務所の男も、そこでやっと諦めた。
瑞穂たち3人が映画館の中に消えると、周りの女の子たちもぞくぞくと映画館の中に入っていく。
恵泉の女の子たちが、芸能人の取り巻きの娘たちに勝ち誇った目を向ける。

・・・・・・判りましたか?私たちのお姉さま方は貴方たちの芸能人如きとは違うのです!

それまでの一連のやり取りをみていた、追っかけの娘たちはただ呆然と見送るだけだった。
そこに、高級ハイヤーが到着した。中から降りてきたのは、最近人気上昇中の男性アイドル3人組。
移動のたびにファンにもみくちゃにされる為、いつも周りをマネージャーやガードマンに守らせながら入り口のほうへ向かう。
しかし、今日はいつもと違い詰め寄ってくるファンの数が何故だか少ない。
もちろん、彼らは今のやり取りを知る由もない。到着したのが最悪のタイミングだった。
今のやり取りを見ていた人にとっては、彼らの芸能人オーラは無いに等しかったし、マネージャーたちに周りを囲ませる
行為も目立ちたがりの自意識過剰にしか見えなかった。
そんなことは知らない彼らは常連の追っかけの娘数人しかいないことに、なんだか拍子抜けをしていた。

350 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 22:08:10 ID:lM+YloLm0
映画館に来ている客が少ないのか?定員割れをしている会場で舞台挨拶なんて耐えられない。あんまりひどいようなら
やらずに帰ってしまうか、などと思っているところで、入り口に数十人の集団を発見する。
さては…と身構えるアイドルたち。しかし…
「・・・・・・・・・」
女の子たちが彼らを見ても、まるで無反応。
その瞳はただの通行人を見ているのと同じ類、そこにはアイドルに出会ったときの興奮も欲望も感じられない。
(…えっ、何故?)
女の子たちは何をするでもなく、そのまま映画館の中に入っていってしまった。
そう云えば、周りの取材記者たちの目もなんとなく白けたような雰囲気。
何故だかさっぱり判らない…。


映画館の中は大入り満員、立ち見まで溢れていた。
「今日、街中に遊びに来ている恵泉の生徒、全員が集まっているみたいね」
圭が云うとおり、女の子たちがメールを打つたびに人数がどんどんと膨れ上がった。
その館内のど真ん中の席に瑞穂たち3人は座っている。
今もカシャカシャと携帯で写真を撮られている。
瑞穂と紫苑がデートしている、それは女の子たちにとっては見逃すことが出来ない重大事なのだった。
しかしながら、当の瑞穂は今日の紫苑とのふたりっきりのデートを既に諦めていた。
せめて紫苑が本当に楽しげにしてくれているのが、唯一の救い。
「皆さん、上演が始まったら、カメラはやめて静かにしてくださいね」
『は〜〜い』
周りの女の子たちが声をそろえて返事をした。

やがて、上演前の舞台挨拶が始まった。
出演者たちは挨拶と映画の宣伝トークを始めたが、何故かいつものような皆からの熱心な視線を感じない。
そう云えば、登場したときの声援や拍手も少なかったようだ。こんなにも会場は大入り満員なのに…。
いつもならもっと、激しい歓声が上がっているはず。
彼らは舞台で会話しながら、それとなく客席を探ってみる。
観客たちの関心はどうも、舞台でなく別の方向に向いているらしい。
どうやら、会場の真ん中辺りにいる何者かが、自分たちの舞台挨拶を邪魔しているらしいと考えた。

351 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 22:11:06 ID:lM+YloLm0
挨拶を終わったあと、控え室にマネージャーと映画館の支配人を呼びつける。
…中央の客席にいる連中を出て行かせるように…
客を追い出すという暴挙に支配人が難色を示すが、そうしなければ上映後の挨拶はしないという恫喝じみた指示に
しぶしぶ屈した。

「えっ、何故ですか!?」
始まりの舞台挨拶から上映開始までの短時間、瑞穂たちのもとへ劇場の支配人がやってきて退場して欲しいと懇願してきた。
お金を払って、映画を見に来たのにまったく見ずに出て行かされるのは納得できない。
「入館料はお返しさせていただきますので」
瑞穂たちのところにやってきて、支配人は恵泉女学院の生徒たちらしいことに気がついた。
恵泉の生徒は地元の商店にとっては上御得意様。出来ることならこのようなことはしたくは無い。
瑞穂に詰め寄られても、理由が言えず、ただ深々と頭を下げるだけである。
「くっくっくっ…」
変わらない表情のまま、肩を小刻みに震わせている圭。どうやら笑っているらしい。
「…圭さん?」
「薄っぺらなプライドを守るために自ら墓穴を掘る愚か者。こんな面白い見世物が見られるなんて」
「どういうことでしょう?」
「瑞穂さん、紫苑様、出ましょう。そのほうがきっと面白いことになる」
「どうしましょう、紫苑さん」
瑞穂が紫苑に尋ねる。少し残念そうな表情の紫苑。
「映画を見られないのは残念ですけど、圭さんがそうおっしゃるなら出ましょうか」
そういって紫苑も了承したので、瑞穂たちは映画館を出ることにして席を立ち上がった。

(どうしたのかしら、お姉さま方)
(出て行くらしいですわ)
(どうして!?)
(私、横で聞いていたのですが…)


352 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 22:14:06 ID:lM+YloLm0
映画館を出た瑞穂は、圭に云われて少し歩いたところで立ち止まって建物を振り返った。
おそらく上映はもう始まっているはずなのに、観客がぞろぞろと出てきている。
「……!?これは…」
「自業自得。同情なんてする必要ないわよ」
取材記者が大勢来ているときにこんなことが起こったのでは、あのアイドルグループもどうなることやら。
圭が瑞穂に云う。
「こんなに楽しかったのは、初めてのことじゃないかしら。思ったとおり、瑞穂さんたちについて来て正解だったわ。
ほんと、いい仕事だったわ。これからも、おふたりのデートのときはぜひ、あたしも誘って頂戴」
「こんなことが毎回起こって堪りますか。それに、圭さんに楽しんでもらえても仕方ないでしょ」
「あら、次回はこんなこと起こらないのですか。つまりませんわ」
「……し紫苑さん…もしかして、楽しかったんですか?」
結局、どこに行ったわけでもなく、駅周辺をぐるぐる歩き回って、映画館にちょっと入ってすぐに追い出されただけ。
これだけ見ると、かなり悲惨で初デートは大失敗。
「とっても楽しかったですわ。こんな初デートはおそらく世界中で私と瑞穂さんだけ。ふふふ」
そう云って微笑む紫苑の姿に、ちょっと救われた気になる瑞穂。
「さあ、瑞穂さん、紫苑さま。早く移動しましょうか。あの子達がこっちにやってくるわよ」

このあと瑞穂たちは大勢の女の子たちを引き連れて学院に帰り、学食でお茶を飲んで皆でわいわいがやがやとその日を過ごした。
ついてきた女の子たちも、休日を瑞穂、紫苑、圭と過ごせて満足な1日だった。

上映後、ガラガラになった映画館。残っていたのは少数の関係者と追っかけの女の子たちだけ。
取材に来ていた記者達はスクープとばかりに写真を撮りまくった。
上映後の挨拶は行わずにアイドルグループは帰ってしまい、怒った支配人はことの経過を取材陣にぶちまけた。
その内容が後日発売された週刊誌などで一斉に書き立てられ、このアイドルグループの人気は大暴落。
ちなみに、記事に瑞穂たちのことは書かれていない。



353 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 22:17:27 ID:lM+YloLm0
〜えぴろーぐ〜

数日後、3-Aの教室で雑談しているいつものメンバー。
「それは私もみたかったですわ。圭さん、どうして私も誘ってくれなかったんですか」
美智子が残念そうに云った。
「じゃあ、今度は4人で行きましょう」
「冗談じゃありません。あんなことは二度とごめんです」
もうコリゴリという風に首を振る瑞穂。
「でもこれではっきり判ったわ」
圭が確信したように云う。
「瑞穂さんと紫苑様。ふたりのオーラはそこいらの芸能人を凌駕してるってこと。今後も似たようなこと、きっと起こるわ」
「え〜っ、それじゃあ、紫苑…さんとふたりで出かけられないじゃないですか」
「今度からは帽子とサングラスをして出かけることね」
「それじゃあまるで芸能人ですよ」
「でも、紫苑様と瑞穂さん、おふたりが帽子とサングラスをして連れ立って歩いているところもなかなか面白そうですわね」
美智子がその光景を想像して笑った。
「ふふ、それも良いですね」
紫苑は面白そうであれば、なんでもいいらしい。
皆が楽しそうにしている中、瑞穂だけが、何故まともなデートが出来ないのか、と盛大に落ち込んでいた。

  Fin

354 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/21(水) 22:20:45 ID:lM+YloLm0
お粗末さまでした。

もっとシリアスな話が書きたかったのに
ああ、こんなバカ話しか思いつかない・・・
せっかくの誕生日なのに。



355 :名無しさん@初回限定:2007/03/21(水) 22:52:38 ID:p8ZcNKJ50
>L鍋さん
 このくらいの肩肘張らないお話の方が私は好きなので、毎回作品を楽しみにさせていただいておりますよ。


356 :名無しさん@初回限定:2007/03/21(水) 23:13:09 ID:E90KYC1t0
>>317
スゲー!!!GJ!!!
楓さんにメロメロの瑞穂親父は初めて見た。
途中乱入のまりやとゆかりんのなかなか良い味出してたと思う。

ただ、『天才デザイナー、未婚の母へ』が
笑えない冗談に感じるのは気の所為かな?

357 :名無しさん@初回限定:2007/03/21(水) 23:40:26 ID:8w7nY5xx0
L鍋さん、GJです!
とても6時間で書き上げたとは思えません。
ぜひこの「勢い」を持続してください!
(大変かも知れませんが)


358 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/21(水) 23:46:21 ID:sgou3hfh0
>>356
拙作をご覧頂きありがとうございます。m(_ _)m

当初はギャルゲー板に1日、3スレくらいで投稿していたのですが、
右の肩胛骨が痛み出して最後はなんとか紫苑さまの誕生日に間に合わせるべく
整骨院から帰ってすぐ文章打ちしてましたw

本当はもっとまりやと由佳里の絡みを書きたかったのですが、
テンポが悪くなるので割愛となりました。
はじめの構想ではまりやが由佳里をおみやげで弄んだあげく
頭がぽーっとした由佳里を瑞穂が抱くというエロ展開でした。

>天才デザイナー、未婚の母へ
最近芸能ニュース見てないんですが、似たようなことがありましたか?
まりやなら結婚してるかどうかなんて気にしないような気もする・・・と考えました。
というか箔が付くくらいに思ってそうだw

359 :名無しさん@初回限定:2007/03/21(水) 23:51:13 ID:B95sRYvM0
面白かったけど、山田語は勘弁して欲しい。
せめて推敲を・・・。勢いは大事だと思うけどね。

360 :名無しさん@初回限定:2007/03/22(木) 00:50:24 ID:qFTQJ98w0
こんばんはみなさま、初めまして
紫苑様の降誕祭に間に合あえば思いつたネタを書いてみたのですが、
間に合いませんでした。

勢いにまかせ初書、初投稿
お目汚しにしかならないとは思いますが、
しばしお目こぼしいただければ幸いです。


361 :名無しさん@初回限定:2007/03/22(木) 00:51:25 ID:qFTQJ98w0
穏やかな日差しがふりそそぎ桜の花もほころび始めた3月も末、大学生ともなれば花見の計画などでも立てていようこの時期
鏑木瑞穂は廊下にある長椅子で落ちつきなく待ち続けている。
今朝早く、紫苑の入院先から連絡を受けてここに来てからどれだけ経ったのだろうか?
4時間位か?いや半日位か?気分的には数日待ったような感じさえする。
ここでじっとただ待つだけというのは辛い、一番辛いのは当事者の紫苑だと解っているのだが…

「…ずほさん、瑞穂さん!」
カクカクと揺さぶられて初めて気がつく
目の前には楓さんが心配そうにしながらも、あきれ顔で瑞穂を揺さぶっていた。
「瑞穂さんこんなところで何をやっているのですか?ちゃんと紫苑さまに付いていてあげないとダメでじゃないですか!」
「いや、でも僕オトコだし…」
「はぁ〜、何を云われるのですか、きょうび出産に旦那さんの付き添いは可能ですよ?ドクターの話ちゃんと聞いてませんでしたね?」
「あはは、はい…」
うなだれる瑞穂を冷めた目で見ながら溜息混じりに
「慶行さまといい瑞穂さんといい仕事とかは必要以上にきっちりこなすのにこんな時だけはお間抜けさんなのかしら?」
「「面目ないです…」」
なぜか、後からも聞こえた反省の言葉に楓が振り向くと其処には照れ顔の慶行の姿があった。
「楓さん、瑞穂の初めての子供なんだ、そういじめるな。」
「ほんと、そっくりな親子なんですよね慶行さまと瑞穂さん、フフッ」
楓のセリフで慶行の照れがいっそう増した。
「み、瑞穂、何時までもこんなところにいないで、さっさと紫苑さんに付き添え!さっさとしないとまりやちゃんを呼ぶそ!!」
「ハ、ハイ!」
慶行と楓に尻をたたかれ分娩室に入ろうと看護師に声をかけたとき、目の前の扉から新しい命の声が聞こえてきた。
「あ、あうう…間に合わなかった。」 OTL
ガックリと落ち込む瑞穂、その瑞穂を見ながら盛大な溜息を漏らす慶行、そんな二人を見ながら楓はポツリと
「はぁ、出産の付き添いに間に合わないところまで似なくてもねぇ〜」
楽しそうに微笑んでいた。


362 :名無しさん@初回限定:2007/03/22(木) 00:53:04 ID:qFTQJ98w0
瑞穂は、看護士さんに案内され病室に入る。
慶行と楓はまずは親子水入らずでと云って席を外してくれた。

「あなた」
紫苑は疲れの残る顔に笑顔を浮かべ瑞穂を迎えた。
「紫苑、お疲れ様。」
解れた紫苑の髪を指で整えながらキスをする瑞穂
「…んっ、本当に疲れましたわ。」
離れる瑞穂の唇を名残惜しそうに見つめながら素直な感想を漏らす紫苑
だが瞳には悪戯の色が浮かんでいた。
「本当ならここまで疲れないはずでしたのに…」
「へ?何で?」
思いの外の紫苑の言葉に間抜けな声で瑞穂は聞き返した。
「だって、あなたが横に付き添って私の手をギュッと握りしめながらオタオタしているのを見たらきっと疲れなんて感じないでしょうから…」
ガックリと崩れ落ちる様に膝を付く瑞穂
「あううっ…、 ぼ、僕は…僕は…」
「あ・な・た、座り込まないで私の顔を見てください。」
凛とした声に瑞穂は立ち上がった。
きっと怒気をはらんでいるであろう紫苑に勇気を出して顔を向けるが、予想に反し紫苑は困った顔をしていた。
「ちょっと拗ねてみたかっただけですのに…、私の思慮が足りなかったようですわ。ごめんなさい。あなたの顔を見ればどれだけ心配してくれたか判るのに…」
「いいえ、紫苑が謝ることはないから、本当なら紫苑の横に付き添っていなければならないのにそんなことも忘れるほど慌てふためいていたのだから…」
「では、おあいこと云うことでこの事はお終いにしましょう。それよりも早く私たちの子供達に挨拶をしてあげてください。」
「うん」
紫苑に促されわが子達と対面する瑞穂
「はじめまして、僕があなた達のお父さんの鏑木瑞穂です。」
二人仲良く並んで眠る姿を愛おしそうに見ている瑞穂
その様子を横目で見ながら紫苑は思う。
(う〜んこの図はどう見てもお母さんとの対面としか見えないですわね。)
瑞穂が聞いたら落ち込むようなことをチラリと思う紫苑

363 :名無しさん@初回限定:2007/03/22(木) 00:55:26 ID:qFTQJ98w0
「髪の色は紫苑と僕それぞれの色なんだね。」
「ええ、あなたの髪の色の子がお姉さんで私の髪の色の子が妹なんです。」
「ああ、そうなんだ。」
紫苑の言葉に耳を傾けながら我が子を見つめていた瑞穂。
「お姉さんの方はおっとりした感じで、妹の方はちょっとお転婆な感じがするのはどうしてだろう?双子なのにね。」
「まあ、それは私がお転婆だと言いたいのですか?あなた。」
拗ねた目で見上げる紫苑
「い、いえ、ちがいます!ちがいますからそんな目で見ないでください。」
「ふふふ、あなたが意地悪なことを言うからですよ。」
「…あのね、紫苑。この子達の無邪気な笑顔を見ていたらあの子のことをちょっと思い出しちゃってね… ご、ごめん、この場で言うことではないよね。」
視線をはずし俯く瑞穂
「一子さん、のことですね?以前話してくれた。」
紫苑はベッドから手を伸ばし瑞穂の手をそっと握る。
「紫苑…… うん、母様と一子ちゃんこの子達みたいに寄り添ってすごしているのかなぁって…」
「そうですね、きっとあなたのことを二人してずっと見守ってくれていますよ。」
「退院したら4人で挨拶に行こうね、紫苑。」
「はい、きっとお二人とも喜んでくださるでしょう。」
「そうだよね、母様にとっては孫が、それも二人も生まれたんだものね… あっ!」
話していた瑞穂が何事かに気付き満面の笑顔を浮かべる。
そんな瑞穂を訝しみ、首を傾げる紫苑
「どうされたのですか?あなた?」
「あまりにも慌てすぎてて今、気がついた。お目出たい事は続くと云うけれど本当にそうなんだね。」
「それはどういう事ですか?」
未だ気付けない紫苑に瑞穂はちょっと悪戯っぽく微笑み、そして自慢げに
「今日は僕の最愛の妻の紫苑の誕生日だった、ハッピーバースデー紫苑」
そう云うと紫苑に甘く長いキスをした。



終わり


364 :名無しさん@初回限定:2007/03/22(木) 07:17:39 ID:wsz8XyFPO
>>363
GJ!穏やかな家族の風景、すごく良いです

365 :名無しさん@初回限定 :2007/03/22(木) 19:22:59 ID:3T8IutMM0
 紫苑と共に学んだ4年があっという間に過ぎた卒業式を今日迎えた。
紫苑が着付けをするというので鏑木家から卒業式の会場の大学講堂に行くことにした。
今日の紫苑の格好は女袴(卒業袴)姿で、楓さんに手伝ってもらっている。
あ、物音の雰囲気が変わった、終わったみたいだ。
「あなた、終わりました。どうでしょう似合ってます?」
紫苑が顔を赤らめて瑞穂に尋ねる。
「か・・・」
「か?」
言えない。言えない。紫苑にかわいいだなんて
「階段には気をつけてくださいね。折角きれいに着れてるんだから。」
(上手くごまかせたかな)
「そうですか。よかった」
紫苑がにっこり笑う。脇で控えてる楓さんも満面の笑顔だ。
「じゃ、早速出かけ・・・。」
紫苑に促すが、
「さ、あなたの番ですよ。楓さん手伝ってくださいますか?」
紫苑はさらりと当然のごとく瑞穂にとって悪夢の一言が告げられた。
床をよく見ると紫苑と同じようなものがもう一着用意されたいた。
「はい、畏まりました。瑞穂様どうぞ。」
楓のほうも嬉しそうにてきぱき進めていく。
瑞穂は、あっという間にすでに着ていたスーツを脱がされた。
「スーツなんてこれからイヤというほど着れますからー」
と紫苑達は楽しそうに着せていく。
「うぅぅ・・・なんで卒業式まで・・。」
落ち込む瑞穂

そしてしばらくして女装したらキャンパスでも最終兵器だった瑞穂が化粧も終えそこにいた。

*いや今日街で卒業袴を見たからなんとなく


366 :名無しさん@初回限定:2007/03/22(木) 19:30:11 ID:kfnycS2u0
気が早すぎだけど・・・
瑞穂お姉さまの誕生日まで約50日と4時間と30分位です。


367 :名無しさん@初回限定:2007/03/22(木) 22:04:13 ID:wz4DFcGY0
>>365
いいね!GJ!
俺的にはもうちょっと長く、細かい描写が好きだが。
次回作に期待。

368 :名無しさん@初回限定:2007/03/22(木) 22:45:30 ID:TbsKf16q0
>>360
あの瑞穂ちゃんがそばにいる事を失念するなど正直想像できない、ゆえに違和感あったが、
終わりが綺麗にまとまってて良かった。

>>365
吹いた!さすが紫苑さん。ばっちりなシーズンネタだ。

369 :名無しさん@初回限定:2007/03/23(金) 19:10:08 ID:f37JtqXH0
気が早すぎだけど・・・
瑞穂お姉さまの誕生日まで約49日と4時間と50分位です。



370 :名無しさん@初回限定:2007/03/23(金) 21:42:51 ID:wwe7KFI80
誕生日まで何日って書いてるヤツいいかげん辞めてくれないかな。ウザイよ!

371 :名無しさん@初回限定:2007/03/23(金) 22:43:33 ID:b26Qnqhh0
>>370
そうやって、SS職人をせき立てるのさ。

つぎのお題はお姉さまだぜ。SS職人のみんな!
良いお話ぷりーず。

372 :名無しさん@初回限定:2007/03/23(金) 22:47:03 ID:FL32l+sK0
その悪い意味での他力本願ぶりがウゼーんだよ

373 :名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 00:24:57 ID:sxh4WI7+0
>>370 >>372
云いたいことは分かるけど
本当に相手にわかって欲しいなら
もうちょっと考えてから書き込んで欲しいのですよ〜

>>371
良いお話ぷりーず。
と云うのなら職人さんを焦らせるような言動は
やめたほうがいいのですよ〜
他に仕事があるのです

374 :名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 00:40:53 ID:QT5EjGqt0
>>373に同意
焦らすことに意味があったのかというとサテ?
紫苑様誕生日の投下は確かにあったけど、その前のゆかりん誕生日と
比べて量的には?という数だし、常駐の職人さんにいたっては、
大急ぎで書いてくれた人一人だけだったし。
やっぱり、おとなしく待っているのが一番だと思うのですよ〜

375 :まりやとかがみてた ◆0XucCTxAGU :2007/03/24(土) 02:08:47 ID:lVzuNJ5B0
すまん。>>371だ。

俺は、カウントダウンにやるき(ねこ人形にあらず)をもらって、何とか書き終えたから
他の人もそうかな〜と思ってた。
やっぱり焦っちゃダメだよな。俺も最後の方は推敲不足だったし・・・

376 :名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 06:42:36 ID:tL2subR+0
>>330 >>366 >>369
まさに>>370さんと同じことを書き込もうと思っていたのですよ。
仏の顔、もとい、マリア様の慈悲も3度までなのですよ。
>>370-375
カウントダウンに背中を押される職人さんも、
そうでない職人さんもいると思いますが、
さすがに50日も前から、ひねりも何もないカウントダウンをされても
職人さんにも逆効果だし、周りも迷惑すると思いますわ。

377 :名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 08:23:36 ID:blZp5fLX0
それよりいくら感想を強要しないとはいえ、毎回毎回無言でカウントダウンをポンポン入れるのは
無償でSS投下してくれてる人に対してちょっと…と思うのは俺だけだろうか。
いやなんかうまく言い表せないんだけれども。

378 :名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 10:18:35 ID:mW+C7evf0
では、10日前からカウントダウンはじめ。
なんていかがでしょう?皆様方。



379 :名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 10:28:51 ID:UV0MTJnz0
3日前でいいよ

380 :名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 10:52:45 ID:+UFKtDfK0
書く側にとっても、ココに挙げるのはただのオナニー。

放出したザーメンの感想を貰えるのはイイけど、
モチベーションの心配までされる必要はないよ。

カウントダウンとかどーでもいい

381 :名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 11:10:23 ID:goHcxbit0
恥を…恥を知りなさいっ!

382 :名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 16:33:53 ID:g3KnK41J0
>>381
オマエガナー(`∀´)

383 :名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 16:38:32 ID:odvEiMmN0
360です。
初カキコの拙い文に感想を書いてくれたお二方、ありがとうございます。

>>364
GJ!なんて云っていただき、大変うれしいです。

>>368
確かに「完璧超人&パーフェクトお姉さま」の瑞穂お姉さまが、
紫苑さまの傍にいる事を失念する事はあり得ないと思います。
でも、「出産=パパはオロオロ」の図式は私の中ではお約束…
と言うことでこんな風になってしまいました。

しかし、頭に思い浮かんだモノを文章にして伝えるのって難しいですね。


384 :名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 17:15:53 ID:we+Yb+gM0
>>383
完璧超人な瑞穂ちゃんには選択の場面では迷わないってな公式設定もありますからね。
オロオロをテーマにするのは難しかったと思いますが、まぁそれはそれ、これはこれということで
良かったんじゃないでしょうか。


385 :名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 17:21:35 ID:Du7HaRGA0
>377 同意
SS投下直後とか本当に最悪だと思う、空気読めなさすぎだろ
荒れる元になってんのに平気で)378のような事言うし。

386 :名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 18:33:10 ID:sxh4WI7+0
>>385
恵泉・聖應の生徒なら慈悲と寛容を忘れずに



コレの意味が分からない人は外部の方なので
皆さんスルーをよろしくお願いします

387 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/25(日) 15:41:29 ID:AZ6sC+eW0
新しく出来上がったSSを投下させていただきます。
試合ですが、本格的なものは期待しないでください。

それでは、どうかよろしくお願いします。

388 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/25(日) 15:46:00 ID:AZ6sC+eW0
〜エルダーは誰のもの?〜

今日も平和な女子寮であったが……。
「ねえ、みんな、これ見てこれ」
まりやが一枚のチラシを持ってきた。
「聖央一武道会? 何これ?」
僕は首をかしげてまりやに聞いてみた。
「うん、あたしも詳しくは知らないんだけどさ。1対1のアルティメット系の試合をして、優勝者を決めるらしいのよ。
優勝者には、豪華な賞品が贈られるんだって」
「ふーん……まりやも出るのよね?」
僕は、そこそこの興味を覚えて聞いてみた。
「もっちろんよ。ついでに由佳里と奏ちゃんのエントリーも、しといてあげたから」
「は、はややっ、奏、体力に自信がないのですよ」
「わ、私、遠慮します! どうせ出ても勝てるわけありませんから」
奏ちゃんと由佳里ちゃんは引き気味だ。
「そうね。でもね2人とも、勝ち負けにこだわってるから、逃げ腰になるのよ」
まりやがそう2人を説得する。
「勝てなくてもいいじゃない。自分のどれだけのことが出来るのか試してみれば、そこから新しい何かが見つかるかもしれない。
それは優勝より、ずっと意義のあることだと思うわよ?」
「そうね。最初から逃げていたら何も始まらないわ。負けは恥ずかしいことじゃないんだから、
どんな結果でも、やっただけ何か得るものがあるのは間違いないわよ」
まりやにしてはいい事言うな……僕もまりやに賛同し、2人を説得することにした。
「じゃあ、そういうわけで、私も出てみようかしら」
「ああ瑞穂ちゃん、それはダメ……」
「あらどうして?」
僕が聞くと、まりやはばつが悪そうにチラシの下の部分を指差す。
「『エルダーの宮小路瑞穂様は出場することができません』? まりや、これどういうことなの?」
「あたしに聞かれても……とにかくそういうことだから」
「わかったわ……じゃあ私は、みんなの戦いを見守らせてもらうわ。みんな頑張ってね」

389 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/25(日) 15:50:27 ID:AZ6sC+eW0
当日、体育館……この日のために、試合用のリングがその中央に設けられていた。体育館の2階の観覧席は、観客でいっぱいであった。

そして予選も終了し、いよいよベスト8が出揃った。
「さあ、やってまいりました、第1回聖央一武道会! 出場者127名を数える中、見事予選を勝ち抜いたのはこの方々です!」
僕の隣で緋紗子先生がマイクを持って熱くなって解説する。リングの前には、体操服姿の8人の選手が控えている。
「まずは、今年度の生徒会長にして、誰よりも聖央女学院を愛する者、厳島貴子選手!」
呼ばれた貴子さんは、リングに上がり、礼をして退場した。観客席から拍手が上がる。
「続いて、貴子選手の右腕にして、彼女を誰よりも尊敬する菅原君枝選手!」
拍手が飛び交う仲、君枝さんも貴子さんと同じように一礼する。
「続いてエルダー宮小路瑞穂氏の幼なじみにして体育会系のエース、御門まりや選手!」
まりやはリングに走っていき、派手にジャンプしてさらっと髪をかきあげ、僕にウインクする。まりやらしいな……。
「続いてまりや選手の一番弟子にして、聖央の料理のスペシャリスト、上岡由佳里選手!」
まりやの後だからか、由佳里ちゃんは決まり悪そうに上がっていって一礼し、そそくさと持ち場に戻っていった。
「続いて先代のエルダーにして聖央一のカリスマの持ち主、十条紫苑選手!」
紫苑さんはリングに上がると、お嬢さまスマイルを浮かべて一礼する。
「続いてエルダーのクラスメイトにして受付嬢のクイーン、高根美智子選手!」
美智子さんは表情を変えることなく礼をしてすたすたと帰っていく。
「続いて演劇部部長にして寡黙の宝塚系少女、小鳥遊圭選手!」
圭さんはリングに上がると、「ふっ」と微笑を浮かべて退場した。
「最後に十月革命の中心人物にして、演劇部のマスコットガール、周防院奏選手!」
奏ちゃんは照れくさそうにお辞儀をして退場する……時に転んでしまった。

390 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/25(日) 15:54:19 ID:AZ6sC+eW0
「ではこれより本戦を開始いたします! ルールは簡単、目潰しと急所以外の攻撃ならOK、道具は凶器以外なら使用可能、
リングから落ちるか、『まいった』と言うか、10カウントで立ち上がらなければ負けとなります」
「至ってシンプルなルールなんですね」
「はい! そして見事本戦を勝ち抜いた優勝者には、賞品としてこれが贈られます!」
緋紗子先生はそう言って一枚のチケットを取り出す。
「その賞品とは……なんと、『エルダー1日所有券』です!」
「ひ、緋紗子先生、なんですかそれは!」
僕はあまりのことに猛然と抗議した。
「何って、文字通りよ。瑞穂さんはこれを使われた日には、優勝者に無条件で従うこと」
……だから僕は出場できなかったのか。

(あれを使って、瑞穂さんをぎゅーっと……)
(お姉さまに、思いっきり優しくしてもらいたいのですよ)
(よっしゃ! あれで瑞穂ちゃんに、思う存分女装ファッションショーを……!)
(おおおお、お姉さまと、甘い甘いひと時を過ごせ……)
(会長とお姉さまにもっと仲良くなってもらえる)
(あれを使えば、お姉さまにあんなこととか、こんなこととか……)
(あれで瑞穂さんに……)
なんか選手たちからものすごい欲望のオーラがにじみ出ている……
地獄に引きずりこまれそうなほどの殺気を僕に向けてる人も約1名いるみたいだけど……。
「ううう……」
なんか誰が優勝しても、とんでもないことになりそうだよ……。

391 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/25(日) 15:58:09 ID:AZ6sC+eW0
「それでは第1戦、厳島貴子選手対菅原君枝選手!」
観客から完成と応援の声が上がる。
両者が舞台の上に上がる。まりやが「貴子が負けたら思いっきり笑い飛ばしてやろう」って顔してるよ……。
「では、はじめっ!」
「かかか会長! 私は会長に手をあげるなんて……」
「君枝さん、遠慮は無用ですわ。存分に自分の力をご発揮なさい」
がちがちの君枝さんに、貴子さんが優しく言う。やっぱり仲間思いだな、貴子さん……。
「はははは、はい! ではっ!!」
そう言われて君枝さんは貴子さんに攻撃を仕掛けようと近づくが、ためらいがあるためなかなか近づけない。
「会長、行きます!」
意を決した君枝さんは、貴子さんに猛然と近づく……だけど、勢いつけすぎてるような……。
「ひゃうっ!?」
それを貴子さんがよけると、君枝さんは勢い余って転んでしまった。
「1、2、3……9、10!」
「10カウントダウン! 厳島貴子選手の勝ち!」
観客のみんなも唖然としていた。初戦から緊張感ないな……。

「君枝さん、緊張しすぎですわ……」
「ですが会長、こんなところで固くなるなと言う方がムリですよ」
「まあ。これも君枝さんのよいところではあるのですがね……」

「続きまして、御門まりや選手対上岡由佳里選手!」
両者がリングにあがると、会場はまりや派と由佳里ちゃん派に分かれて応援の声が上がる。
「由佳里、わかってると思うけど、手加減は無用よ」
「望むところです! 日ごろの恨み、ここで晴らさせてもらうんですから!」
そう言って2人ともなかなか互角のいい試合を見せてくれる。さすが現在と未来の体育会系マドンナだな……。
「……お姉さま、なかなかやりますね」
「そういう由佳里こそ……」
息が荒くなりながら、2人はそう相手を認めている。と、急にまりやがまじめな顔になった。

392 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/25(日) 16:03:38 ID:AZ6sC+eW0
「正直由佳里がここまでやるとは思わなかったわ。でも残念だけど、この試合、あんたの負けよ」
「そんなのやってみなくちゃわからないじゃないですか!」
まりやの同情するように言うその言葉に、由佳里ちゃんが猛然と抗議した。そりゃそうだろうな……。
「わかるわよ。きっと由佳里は、あたしがこれから出す最終兵器に耐えられない。悪いことは言わないから、降参しなさい」
「しませんよ! するわけないじゃないですか!」
「……あたしにこの切り札を出させたのは見事だわ。でも、これを使えば、由佳里はきっとこの場所から消えてしまう。
みんなの前で、見るに耐えられない姿を晒すことになるわよ。だから素直に降参しなさい。その方が由佳里のためよ」
僕はその最終兵器を想像するのが恐ろしくなった。一体どんなおぞましいものだろう……?
「イヤです!」
「そう……そこまで言うなら仕方ない……最終兵器を出すしかないわね。恨まないでよ」
まりやはそう言って何か布切れのようなものを取り出す。
「最終……兵器……そのタオルがですか?」
「タオルじゃないわよ。瑞穂ちゃんがたった今まではいてたパンティー」
まりやがそう言う。そういえば、なんかスカートの中の感触に違和感を感じる。僕が探ってみると……。
「ああっ! まりや、いつの間に!!」
いつの間にか僕の下着が脱がされていた。
「ポイっとな」
まりやは自分の後ろに僕の下着を放り投げる。
「キャー!!」
と、由佳里ちゃんが目から、全身からハートマークを放出してそれにまっしぐら。
「はあああん……あったかーい……」
しっかりとキャッチし、それに頬ずり……。
「はっ!!」
そこで由佳里ちゃんが我に返り、自分のいる場所を見る。見事にリングの外……。
「場外! 御門まりや選手の勝ち!」

393 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/25(日) 16:07:21 ID:AZ6sC+eW0
僕も呆然としていた。観客のみんなも由佳里ちゃんを唖然として見ている。
「ううう……うわああああん! 私のバカー!! もうお嫁にいけないよお!!」
泣きながらダッシュでその場から逃げる由佳里ちゃん。手にしっかりと僕のパンティーは持って行ったようだけど……。
「この場所から消えてしまう。みんなの前で、見るに耐えられない姿を晒す……か、なるほど……」
由佳里ちゃんもかわいそうに……同じくまりやにいじられている僕は、今の由佳里ちゃんの行動にひき気味になりながらも、
一抹の同情を感じていた。

「ううう……」
由佳里は廊下の隅にうずくまって落ち込んでいる。そこへまりやが声をかけた。
「だから言ったでしょ? 素直に降参した方がいいって」
「まりやお姉さま、あんなのいくらなんでもあんまりです!」
「そんな奈落の底に落ちたように落ち込まないの! 聖央の生徒はほとんど全員、由佳里みたいな気持ちは持ってるんだから、
みんな由佳里の気持ちは理解してくれるわよ」
「で、でも、お姉さまは……お姉さまにだけはあんな姿、見られたくなかったのに……」
「瑞穂ちゃん? 瑞穂ちゃんはあれぐらいで由佳里を軽蔑するような狭量な子じゃないよ。それはあんたもよくわかってるでしょ?」
「ううっ……でも……でも……」
「ってことは、ひょっとして由佳里は毎回たまったものの処理に瑞穂ちゃんを使ってるんだ?」
まりやはまじめな顔から一転悪魔の表情で由佳里を問いつめる。
「そんなことないです! 毎回使ってたらお姉さまに申し訳ないじゃないですか! 
お姉さまのことを想ってするのは、だいたい2回に1回ぐらいの割合ですよ!」
「……それも五十歩百歩だと思うわよ?」

「続いて第3戦、小鳥遊圭選手対周防院奏選手!」
今度は文化部系の方から歓声が上がる。
でも、前の2つの試合もそうだけど、僕に近い人が選手だと、どっちを応援していいかわからないな。
「ああああの、部長さん、お手柔らかにお願いしますのですよ」
奏ちゃんが半泣きになって圭さんにお願いする。
「ふっ」
圭さんはいつものクールな微笑を浮かべる。見ると、美智子さんが圭さんにどす黒い視線を向けていた。

394 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/25(日) 16:11:15 ID:AZ6sC+eW0
「それでは、試合開始!」
「棄権」
「ふぇ?」
圭さんの試合開始直後の試合放棄に、奏ちゃんも呆然としている。
「美智子が危険だから、棄権」
「……えっと、小鳥遊圭選手の試合放棄により、周防院奏選手の不戦勝となりました」
緋紗子先生も唖然としていたが、途端に正気に戻って解説する。
「あの……部長さん、今の、ギャグなのですか?」
「………!! なぜ、ウケないの?」
圭さんの身体が沈没していく。
「やっぱり、星占いの結果が……」
いや、圭さん、星占いは関係ないと思います……。

「それでは、十条紫苑選手対高根美智子選手!」
紫苑さんが先代エルダーだからか、歓声は今までで最高に大きい気がするな……。
「紫苑さま、私も勝ちをお譲りいたしますわ」
「美智子さん、よろしいのですか?」
「ええ。私はもう目的は果たしましたから」
にっこりと笑って退場する美智子さん。
「……ええ、それでは、これより15分の休憩を挟みまして、準決勝に移りたいと思います」
準決勝は、まりやVS貴子さんと、紫苑さんVS奏ちゃんだ。
観客のみんなの話題は、宿命のライバルであるまりやと貴子さんの試合の行方の方に集中していた。

395 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/25(日) 16:14:59 ID:AZ6sC+eW0
「それでは、準決勝第一試合、厳島貴子選手対御門まりや選手!!」
全員から歓声が上がった。応援はまりや派と貴子さん派にはっきりと分かれて、応援者同士で言い争いを始めていた。大丈夫かな……。
2人がリングに上がると、応援の声が今まで以上に大きくなる。
「貴子、今こそ積年の恨み、はらさせてもらうからね! しっかりと首を洗っときなさいよ!」
「それはこっちのセリフですわ! あなたから受けたあの耐えがたい屈辱の数々、今こそ思い知らせて差し上げますわ!」
……僕は外部編入者だから知らないけど、本当にすごい色々あったみたいだな。
2人の間で地獄の黒い炎がリングの外まで広がっていて、その空気を吸っただけで障害をきたしてしまいそうな雰囲気だ。
「はじめ!」
「私が勝ったら、今までの悪逆非道、土下座して謝っていただきますわよ!」
「そういうセリフは勝ってから言いなさいよ! って言っても、貴子には逆立ちしてもムリだろうけどね」
「なんですって!」
「そっちこそあたしが勝ったら今までの理不尽な権力を笠に着た横暴、土下座して謝ってもらうからね!」
「上等ですわ! あることないこと言い続けたこと、死ぬほど後悔させて差し上げますわ!」
「そっちこそ! さんざんノータリン間抜けトンマ言ったこと、死ぬほど後悔させてやる!」
「勝負あり! それまで!」
「え?」
その言葉に、僕とまりやと貴子さんは口を止めた。
「御門まりや選手降参により、厳島貴子選手の勝ち!」
え? なんで? いつまりやが降参したの?
「あの……梶浦先生、いつ御門さんが“まいった”と?」
「言ったじゃない。宮小路さん、直前の御門さんのセリフ、言ってみて?」
「は、はい……『そっちこそさんざんノータリン間抜けトンマ言ったこと、死ぬほど後悔させて……』」
「そこ! 死ぬほど後悔させての前よ」
どういうこと? そう思いながら、もう一度復唱してみる。
「のーたりんまぬけとんまいったこ……と……えっ!?」
ま、まさか……。
「まぬけとん“まいった”こと? もしかして……」
「そう。ね? ちゃんと“まいった”って言ってるでしょ?」
「……そんなのアリですか?」
僕は呆れかえって緋紗子先生を見る。

396 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/25(日) 16:19:40 ID:AZ6sC+eW0
「なんじゃそりゃーっ!? 納得いかーん!! 責任者出て来ーい!!」
まりやも大暴れしている。そりゃそうだろうな。今回ばかりはまりやの気持ちがわかるよ。
貴子さんを見ると、貴子さんも呆然として何の反応もない。
「御門まりや選手ご乱心! 退場!」
……あなたたちの方が乱心してるとしか思えないんですけど。
君枝さんと葉子さんに引っ張られて暴れながら退場するまりやを見て、僕はそう思った。

「続きまして、十条紫苑選手対周防院奏選手!」
両者がリングに上がる。
「あの……紫苑お姉さま……お手柔らかにお願いいたしますのですよ……」
そう頼む奏ちゃんは、圭さんのときよりは緊張してないようだ。
「困りましたわね……」
そういう紫苑さんは困り顔だ。どうなるんだろう……。
「はじめ!」
試合開始の合図と同時に、紫苑さんは奏ちゃんに歩み寄る。
ごくっ……僕はつばを飲み込んだ。一体どんな攻撃を……えっ!?
むぎゅっ。
気がつくと奏ちゃんは、紫苑さんに抱きしめられていた。
「こんな可愛い奏ちゃんを攻撃することなんて、できませんわ」
「はややっ!」
そう言って奏ちゃんはもがいているが、紫苑さんの愛情いっぱいの抱擁からは脱出できないみたいだ。
そうこうしているうちに奏ちゃんの全身からぐったりと力が抜けた。
「……ナイン、テン! 周防院奏選手ノックアウト! 十条紫苑選手の勝利です!」
その声に、紫苑さんははっと我に返る。
「あら……私、いつの間にか奏ちゃんに勝っていたようですわね……」
いや、紫苑さん、そんな素で言われても……。

397 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/25(日) 16:22:54 ID:AZ6sC+eW0
そして、聖央一武道会は、15分の休憩を挟んで、いよいよ決勝戦を迎えた。
「さてみなさん、お待たせしました! 出場者数127名の聖央一武道会も、いよいよ決勝戦を迎えます!
ここまで勝ち抜いてきたのは、先代エルダーの十条紫苑選手!」
紫苑さんがリングに上がると、観客席から大きな拍手が巻き起こった。
「そして、生徒会長の厳島貴子選手です!」
続いて貴子さんがリングに上がると、同じくらい大きな拍手が巻き起こる。
「紫苑さま。あなたのことは尊敬してますが、この試合とは話は別ですわよ! 私、手加減はいたしませんから!」
「ええ。望むところです。かかっていらっしゃい」
やる気を無理やりしぼりとって言う貴子さんに、紫苑さんは余裕の笑みで答えた。
「……余裕ですわね。頭脳戦ならともかく、力と体力がものを言うこの試合で、失礼ながらご病弱な紫苑さまに
そんなに余裕があるとは思えませんが?」
「そうですわね……力と体力だけの勝負でしたら、十中八九貴子さんの勝ちでしょう。でも、ルールに救われましたわ」
「ルール……?」
貴子さんは怪訝そうな顔で紫苑さんを見る。
「貴子さん……私と瑞穂さんが同じクラスになったことが、あなたの不幸ですわ」
「な、なんですかそれは? 紫苑さまとお姉さまがクラスメイトであることと、試合の結果は何の関係もないのではありませんか?」
貴子さんが引き気味に言う。僕も関係あるとは思えないけど……。
「つまり、こういうことですわ」
紫苑さんはそう言って一枚の写真を取り出した。
「そ、そそそ、それは……!!」
貴子さんが興奮気味になった。
「ええ。体育のときの、瑞穂さんの着替えを撮った写真ですわ」
「おおお、お姉さまの……着替え……」
貴子さんがふらふらとなったかと思うと、鼻血を噴いて倒れてしまった。
「ワン、ツー、スリー……」
なるほど……そういうわけだったのか……同じクラスか合同のクラスでないと、こんなマネはできないから……
じゃなくって、いつの間にそんな写真……!!
「紫苑さん!! そんな写真、一体誰が……!!」
「もちろん秘密ですわ」
紫苑さんは満面の笑顔で返す。犯人はまりやだな……。

398 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/25(日) 16:26:08 ID:AZ6sC+eW0
「ナイン、テン!! 貴子選手ノックアウト! 優勝者は、十条紫苑選手に決定いたしました!!」
観客席から、おびただしいまでの拍手と歓声があがった。こんな試合ばかりで、よく盛り上がれるな……。
「十条さん、優勝おめでとうございます!」
緋紗子先生が、紫苑さんの近くに降りていって声をかける。
「ありがとうございます」
「見事優勝したご感想は?」
「正直、まだ夢を見ているようです。どの方も褒め称えられるに値する素晴らしい好勝負を見せてくださって、とても良かったと思います」
……紫苑さん、どこが褒め称えられるに値する素晴らしい好勝負なんですか。全部しまらない試合ばかりだったじゃないですか。
「それでは、優勝賞品の『エルダー1日所有券』です」
「ありがとうございます。有効に使わせていただきますわ」
紫苑さん、有効にって、一体どう使うの?

「それではこれを持ちまして、第1回聖央一武道会を終了いたします!」
緋紗子先生の終了宣言で、武道会は幕を閉じた。
僕は、エルダー1日所有券を使われる日に不安を隠せなかった。

To be continued……

399 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/25(日) 16:30:05 ID:AZ6sC+eW0
試合編は以上です。くだらなくてすみません。

紫苑さんがエルダー1日所有券をどう使うのかは、後に書こうと思います、
それでは、これでいったん失礼いたします。

400 :名無しさん@初回限定:2007/03/25(日) 18:32:48 ID:2zPCcjzf0
>>399
いや〜GJでした!
各人各様の「試合」の進め方にニヤニヤしっぱなし。
ベストマッチは貴子vsまりやかな。
さすが緋紗子先生、詭弁がうまい?

401 :名無しさん@初回限定:2007/03/25(日) 19:49:39 ID:9EMYMUX50
>>399
ご苦労様です。
楽しんで読ませていただきました。
しかし、いつものメンバーが勝ち残って、この組み合わせ
紫苑さまの暗躍を感じずにはいられません(笑)
あとは、エルダー1日所有券を使っての紫苑さまワールドでの
瑞穂ちゃんの不幸っぷりを待つだけだぁ〜

402 :名無しさん@初回限定:2007/03/26(月) 14:56:28 ID:X2Wxb4x60
>399
紫苑…恐ろしい子
所有券がどう有効に利用されるのかワクワクするw


403 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/26(月) 21:34:08 ID:iOiNbwEM0
『貴子さん』
〜瑞穂と貴子3〜

設定は貴子エンド後

恵泉女学院を卒業して2年後。
大学生となった瑞穂と貴子が一緒に住んでいるマンション。
瑞穂が大学に行って留守の部屋に、まりやが遊びに来ていた。
「何ですの?これは…」
まりやが持ってきた不思議な形の鉄板に首をかしげる貴子。
「ん?見てのとおりたこ焼き器よ。今晩はたこ焼きにしましょ」
「たこ焼き…ですか」
「あら、もしかして貴子、たこ焼きも知らないの?」
小莫迦にするようなまりやの口調にムッとする貴子。
「たたこ焼きくらい知ってますわよ」
実際には聞いたことがあるだけで、食べたことがない。
そもそも貴子は立ち喰いをほとんどしたことがなく、屋台系の粉モノは食べたことがない。
「ほんとかにゃ〜」
疑りの眼差しを向けるまりや。
貴子が、こういう食べ物に滅法疎い事はまりやは知っている。
恐らく、たこ焼きも食べたことが無いであろうこともほぼ確信を持って断言できる。
「じゃ、今からたこ焼きを食べに行きましょうか」
「えっ、今から?」
「そうよ。アンタにおいしいたこ焼きを食べさせてあげるわ」
「で、ですが今晩、たこ焼きをするのでしょう?」
「そんなのまた今度でいいわよ。急に今、食べたくなったのよ」
まりやは貴子の腕を引っ張って、強引にたこ焼きを食べに街に繰り出した。


404 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/26(月) 21:35:01 ID:iOiNbwEM0
「ここよ。ちょっとこじんまりした所だけどなかなかいけるから」
おいしい店があるからと、まりやが引っ張ってきたのは、路地裏の小さなたこ焼き屋。
持ち帰りの他に店内で食べるための、小さなカウンターもある。
「こんなお店なのですか…。私はもっと普通のお店かと…」
「コレが普通よ。あんたってほんとにお嬢様ね〜」
店に入り、まりやが適当に注文してカウンターに座る。
しばらくして、たこ焼きが二船出てきた。じっとたこ焼きを見つめる貴子。
「さっ、食べて」
「はあ…」
貴子がきょろきょろと辺りを見回した。
「なにしてんの?」
「あの、お箸を…」
途端にニヤニヤとした笑みを浮かべるまりや。
「はは〜ん。やっぱりたこ焼きは初めてだったわね」
まりやは携帯を取り出すと、なにやらメモを始めた。
「ちょっと、まりやさん。何をしてらっしゃるの?」
「いや、忘れないうちに貴子ネタをメモっとかないと。○月×日貴子初めてたこ焼きと遭遇…と」
「しし失礼な!たこ焼きくらい見たことありますわよ!」
「食べたことは?」
「………」
「今時、ラーメンもたこ焼きも食べたことが無いってどれだけ純粋培養よ。お嬢にも程があるって」
「…私が特別なんじゃありませんわ。貴女が特別なんです。貴女だって御門家の娘でしょう。にも関わらず
野放図にやりたい放題。このような食べ物をホイホイと」
まりやがギロリと貴子を睨んだ。
「あのねえ、このような食べ物と云っている時点でアウト。食べ物に上も下もないの。
それにアンタは家を飛び出しちゃったのよ。そんな事云ってられる御身分じゃないでしょ。
大体、たこ焼きくらいどんなお嬢でも食べたことくらいあるわよ。ないのはアンタだけ」
「わ、私だって」
「たこ焼き、箸で食べようとしたでしょ。ほんとは手づかみで食べるのに」
「て、手づかみ!…もちろんそんなこと知ってましたわ」
貴子は一個、指でつまみあげた。

405 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/26(月) 21:37:49 ID:iOiNbwEM0
「ッチ、あちあちっ」
そのまま口に放り込む。
「はふはふ…」
「・・・・・・・・・」
何も云わないまりや。
「ま、まりやさん?どうしましたの…」
不安げにまりやを見る貴子。
そのまま黙って外を見つめていたまりやが不意に声を出した。
「あら、今、店の前を歩いていったのは…」
そう云って、携帯を取り出すとどこかにダイヤルした。
「……もしもし、紫苑様?今、たこ焼き屋の前を通り過ぎて行かれました?そうです。そこに今いますので戻ってきて
頂けますか?」
そう云って電話を切った。
「紫苑様がいらしたのですか?」
すぐに、紫苑が店内に入ってきた。
「ごきげんよう、まりやさん。あら、貴子さんもいらっしゃったのですか」
「こんにちは、紫苑様。どちらにお出かけでしたか」
「ちょうど、貴子さんのお部屋に行こうと(正しくは瑞穂のお部屋)」
そこへまりやがたこ焼きを一船差し出した。
「紫苑様、お食べになりませんか」
「まあ、有難うございます」
紫苑は端に付いている『爪楊枝』で一個突き刺すと、おいしそうに食べる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
黙って見詰め合うまりやと貴子。
「…お嬢様、何か云うことはある?」
「……イイエ、ナンニモアリマセン…」
そう云って真っ赤な顔で、指に付いたソースをティッシュで拭う貴子だった。

  Fin

406 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/26(月) 21:40:52 ID:iOiNbwEM0
『続・貴子さん』
〜瑞穂と貴子4〜

設定は貴子エンド後

恵泉女学院を卒業して2年後。
大学生となった瑞穂と貴子が一緒に住んでいるマンション。
キッチンで今晩の夕食を貴子が作っていた。
いつもは瑞穂の実家から楓がやって来て用意するのだが、たまに何かの都合で貴子や瑞穂が自炊することもある。
貴子も、瑞穂とここに住み始めて1年以上たち、世間というものを色々と学んできた。
料理もお菓子作り以外に肉じゃがや八宝菜などといったレパートリーも徐々にではあるが増えてきている。
ピンポ〜ン
玄関ベルが鳴り、リビングにいた瑞穂が玄関に向かおうとした時点で、勝手にドアを開けてその来訪者は
ずかずかと部屋に入ってきた。
「やっ!瑞穂ちゃん、ごきげんよう」
「まりや、なんでそう遠慮なしに入ってくるかなあ」
「ひひ、今更そんなこと気にしなさんな。貴子ぉ〜料理できたあ?」
「あら、まりやさん。いらっしゃい。もう出来上がりますわ」
まりやも今日の貴子の手料理を呼ばれることになっていた。
「さて、何をたべさせてくれるのやら」
ふと、まりやが瑞穂の顔をみると、なにやら浮かない表情。
「ん?どうしたの、瑞穂ちゃん。浮かない顔して。さては貴子の料理、何か問題あったりして」
にゃははと冗談めかして云ったまりやの言葉に、瑞穂は肯定も否定もせず何だか複雑な表情。
「え?え?まさか…ほんとに何か問題なの?」
改めて聞きなおそうとしたとき、ダイニングのほうから貴子の声がした。
「さあ、出来上がりましたわ。どうぞ」
瑞穂とまりやがダイニングに向かい、目にしたのはテーブルの上に並んだ中華どんぶり3つ。
「…なるほど、ラーメンね」
瑞穂の表情の訳を納得するまりや。
テーブルにつきながら貴子に尋ねる。

407 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/26(月) 21:43:56 ID:iOiNbwEM0
「これ、貴子が出汁から作ったわけじゃないわよね。どこからか買ってきたの?」
「ええ。近所の『天将』さんから麺とスープを買ってきましたの」
「…アンタはそれを湯掻いて丼に盛り付けただけってことね」
3人揃って、いただきますの後ラーメンをすすり始めた。
ズルズルズル…
「おいしいわね」
「でしょう。『天将』のラーメンは出汁にとんこつ以外、20種類の野菜を使用しているそうですわよ」
嬉しそうに解説する貴子。瑞穂はその横で何も云わずにずるずるとラーメンを啜っている。
「ねえ、昨日も貴子が炊事したんでしょ。なに作ったの?」
「昨日は『ホームラン軒』の味噌ラーメンでしたわ。あれも絶品でしたの」
「・・・・・・はあ!?」
再び、まりやは瑞穂の顔を見た。瑞穂は何も云わずにずるずるとラーメンを啜っている。
「アンタ、どんな手料理振舞っているかと思ったら瑞穂ちゃんに二日続けてラーメン食べさせてたの!?」
「ううん、一昨日もだったから三日目だよ」
ズルズルすすりながら瑞穂が云った。
「み三日っ!?」
「まりやさん、失礼ですわね。私が料理していないみたいな言い草はどうかと思いますが」
「ラーメン湯掻くだけでなに偉そうに云ってるかっ!瑞穂ちゃんに三日もこんなの食べさせてどうするつもりよ!」
「ちゃんとメニューは考えておりますわ。一昨日は『一清堂』の塩ラーメンを」
「そんなの料理じゃねえぇぇぇ!!」
まりやがテーブルを両手でバンッと叩きつけた。すると貴子も負けじとテーブルを右手でゴンッと叩いた。
「まりやさん、今の発言、謝りなさい。『天将』に『ホームラン軒』に『一清堂』に『天下泰平』に『青葉』に『小次郎』に
『大関』に『トントン亭』に、全国のラーメン屋さんに謝りなさいっ!!!」
「・・・・・・・・・」
ずるずるずる〜〜
ふたりの言い合いに関わらず、黙々とラーメンを啜っている瑞穂。
「…アンタ、どれだけラーメン屋めぐりをしてるのよ…」
「瑞穂さんも何も不満はおっしゃっていませんわ」
ねっ?と貴子が瑞穂の方を振り向くと、瑞穂が何も云わずにコックリと頷いた。

408 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/26(月) 21:46:55 ID:iOiNbwEM0
「そりゃ貴子に気兼ねして何も云えないだけよ。瑞穂ちゃんもハッキリ口に出さないと貴子はどこまでも行っちゃうわよ」
「まりやさん、何ですか貴女はさっきからグチグチと。それとも何ですか、ラーメンは下品な食べ物だとでも?
瑞穂さんが食べるのには相応しくないと?このラーメンが不味いと?」
「いや、そんなことは云ってないんだけどね。ただいくら美味しくても毎日続けてはどうかなあと思って…」
そう云って、まりやはラーメンを啜った。
ずるずるずる〜
「瑞穂さんは私の手料理をいつも美味しいと褒めてくださいますわ。部外者の貴女に云われる筋合いはございません」
何だかいつもと違い、雄弁になった貴子にまりやが押されてしまっている。
「食べ物に上も下もないとおっしゃったのはまりやさんではありませんでしたか?」
「こりゃ云えないわね、瑞穂ちゃん…ごめんね。貴子のラーメン好きは面白がって色んなトコに連れてったあたしのせいかも」
「…なにやら失礼なおっしゃりようですわね」
麺を食べ終わった瑞穂の丼を見て、貴子が声を掛けた。
「瑞穂さん、それだけでは足りませんでしょう。いつもの用意しますね」
「…うん」
頷いた瑞穂の丼を持ってキッチンに向かう貴子。
「えっ?なに?なに?まさか……替え玉?」
プルプルと首を振るだけで瑞穂は何も云わない。
貴子が丼を持って戻ってきた。
「お待たせしました、瑞穂さん」
瑞穂の前に置かれた丼の中は、ラーメンスープに白いご飯。
「かかか替え飯かいっ!!」
「スープを吸ったご飯がまた格別。私的にはインディカ米を使ったサラサラ感も良いのですが」
衝撃で言葉を失くしたまりやを前に、得々として語る貴子。
瑞穂はただ無表情にレンゲでご飯を掬っている。

409 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/26(月) 21:49:52 ID:iOiNbwEM0
「ご飯が一番合うのは何といっても豚骨スープだと思うのですが…あら、まりやさん、どうしました?」
体をぶるぶる震わせているまりやを怪訝に思って貴子が声を掛けた。
「・・・・・・て」
「て?」
「手料理かぁぁ!これがぁぁ!」
テーブル越しに両手を伸ばして貴子の胸倉を掴む。
鬼の形相のまりやに度肝を抜かれる貴子。
「ひぃぃ!!なな何…」
「主婦をなめるなぁぁぁ!謝れ!全国の奥様に謝れぇぇ!」
「あう…ででも…食べ物に上も下もありませ…」
まりやは両手に力を込めて、ギリギリと貴子を締め上げた。
「よく聞きなさい。今後、家でラーメンを夕食に出すことは禁止。いいわね」
「あうあう」

この光景を温かい目で見守りながら、今日はまりやを夕食に呼んで本当に良かったと思う瑞穂だった。

  Fin

410 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/26(月) 21:53:00 ID:iOiNbwEM0
『続々・貴子さん』
〜瑞穂と貴子5〜

設定は貴子エンド後

恵泉女学院を卒業して2年後。
大学生となった瑞穂と貴子が一緒に住んでいるマンション。
貴子が大学から部屋に戻ってきた。
瑞穂はまだ受講中で、あと一時間経たないと帰ってこない。
貴子は片づけを済ませると、リビングでノートパソコンを開き、
現在作成中のレポートの資料をネットから探し出す作業を始めた。
約30分ほども作業をしてから、ふと思い立って、覗いた事の無い未知のサイトを見てみようかと思い立った。

…アダルトサイト

瑞穂がいるときには到底見ることなどありえない。
今も別に絶対に見たいと思っているわけではなく、ちょっとした好奇心で見てみようかなという感じだった。
カタカタカタッ…
検索サイトから適当なのを調べて入ってみる。
「こ、これは…!?」
たちまち釘付け。はじめて知る情報の数々。レベルアップの予感。
鼻の奥がなんだか熱くなってきた。
「い、いけません。ティッシュを…」
ティッシュを丸めて鼻に突っ込む。
「なんでこんなに無意味なリンクが多いんでしょうか…。しかもスラングばっかし…」
熱中してしまう貴子。
そんなことをしている内に30分ほどが過ぎようとしていた。
「と、そろそろ瑞穂さんが戻られる時間ですわね」
サイトを閉じようとブラウザーのXボタンを押す。

411 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/26(月) 21:55:56 ID:iOiNbwEM0
すると、すぐに別のブラウザーが立ち上がって別のアダルトサイトを表示した。
「あら、なんでしょう、これは」
そのブラウザーも閉じる。するとまた、別のブラウザーが立ち上がってアダルトサイトを表示した。
閉じても閉じても開き続けるブラウザー。
「な、なんですか!?これは」
あせる貴子。
そのとき、玄関ドアのノブをガチャガチャと回す音が!
「ひっ!!」
恐らく瑞穂が帰ってきたのだろう。玄関の鍵は閉めておいたので、少しは時間が稼げる。
大慌てでマウスを連打し続ける貴子。
ガリガリ…
鍵穴に鍵を差し込む音!!
ガチャガチャ…
続いて鍵を開錠する音!!
「あああああああぁぁ」
(なぜ私はドアチェーンをしておかなかったのでしょう!)
やっとのことで、ブラウザーが閉じ終わった。
貴子の顔が喜びに溢れかけたが、次の瞬間、あることに気付いて絶望に凍りついた。
「なに!?この画像!」
背景にエロ画像が張り付いていた。
「ひぃぃぃ変な写真が張り付いてるますわぁぁぁ」
ガチャン…
玄関ドアの鍵が開錠された音に続いて、鍵穴から鍵が引き抜かれる音が聞こえた。
おそらく、このときの貴子はアドレナリンの超分泌により人間の限界を超えた動きが可能であったろう。
貴子はノートパソコンを持ち上げると、配線を力ずくで引きちぎって部屋を飛び出した。


412 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/26(月) 21:58:56 ID:iOiNbwEM0
玄関ドアを開けて入ってくる瑞穂。
「貴子さん、ただいま」
「お帰りなさい。瑞穂さん」
今さっきまでの修羅場が嘘のような笑みの貴子。
「…貴子さん、鼻血…ですか?」
貴子が鼻に突っ込んでいたティッシュが、先端まで真っ赤に染まっていた。
「あ、そうなんです。なんか壁に顔をぶつけてしまいまして…」
「そうですか。気をつけてくださいね」
そう云いながら、手洗いに洗面所に向かう瑞穂。そして…
「あああ!!!た、貴子さん、洗面所にパソコンが!」
慌てて洗面所から飛び出してくる瑞穂。
洗面シンクに溜めてあった水の中にノートパソコンが沈んでいた。
「あ、あら、そ、それは…先ほど手を滑らしまして、落としてしまいましたの。すいません、瑞穂さん」
「…て、手を?滑らせた?洗面所で?」
「…はい…」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

  Fin


413 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/03/26(月) 22:02:45 ID:iOiNbwEM0
まとめて投下してすいません。
ちょこちょこと書いてましたへっぽこ貴子さんが溜まってきたので投下してみました。

お粗末さまでした。

>>東の扉さん
エルダー所有券編、私も楽しみにしてますですよ〜

414 :名無しさん@初回限定:2007/03/26(月) 22:12:08 ID:WHxJWcg40
L鍋さん、楽しい話をありがとう! GJ!

じつは鏑木グループ開発の生活防水ノーパソでした。なんて後日譚が読んでみたい。
そこへまりやと由佳里が乱入。
いろんなエロ知識を教えられて知ったかぶりの貴子さんは、その夜・・・

415 :名無しさん@初回限定:2007/03/27(火) 18:29:37 ID:CefVIBMw0
L鍋さんgjです。
瑞穂ちゃんの論文が入っていて、HDDをサルベージしたりしてw
乾燥させれば意外にも、復旧したりする。
珈琲ぶっかけられて、起動出来なくなったノートパソコンを分解水洗いして
ある程度動くようになったからね。
HDDなんかは、制御基盤を交換すれば結構DATAが読めてしまう。



416 :名無しさん@初回限定:2007/03/27(火) 22:11:33 ID:/w7JNjf+O
どうしよう。
奏ちゃん主役で紅の豚風のレシプロ戦闘機物の構想が
頭の中で組み立てられていく。
文書量から考えると長くなりそうなんだが、
書いたら読む人いるかな?


417 :名無しさん@初回限定:2007/03/27(火) 22:37:13 ID:JCi4XLJi0
>>416
ここは飛んできた電波を受信して文章に書き起こして発表する場だ。

存分に書いてくれw
とりあえず、第1話を書いて反応を見たらどうかね?

418 :名無しさん@初回限定:2007/03/27(火) 23:43:39 ID:oPgmFTjd0
「飛べない豚は、ただの豚なのですよ〜」


「……(豚……挽肉……ハンバーグ……)じゅる。」
「はやや、由佳里ちゃんが怖いのですよ〜」

419 :名無しさん@初回限定:2007/03/27(火) 23:45:44 ID:oPgmFTjd0
「あらあら、あまり女の子を泣かせてはダメよ、マルコ」

「僕は男なのに……orz」

等々漏洩電波を受信した私はどうすれば。

420 :名無しさん@初回限定:2007/03/27(火) 23:57:09 ID:UbWV27Di0
>>419
とにかく書く
そして投下
難しく考えちゃダメだ

421 : ◆Kr8qz3AkBw :2007/03/27(火) 23:57:23 ID:DpywlexP0
>416です。
電波を受信したは良いものの、断片しか出来ていない状態です。
もう少し煮詰めて投下してみたいと思います。

一応、トリつけておきます。

422 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:11:54 ID:NyJTDRDG0
久しぶりの投稿です。
ちょっと長いですが投下します。

423 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:12:48 ID:NyJTDRDG0
「雪合戦」

大雪の学校のグラウンド。
降り積もった雪の中でまりやと貴子は雪玉を片手ににらみ合っていた。
両者とも肩で息をしている。

「やりますわね、まりやさん……。」
「貴子こそ。ここまで粘るとは正直思わなかったわ。」
「諦めてたまるもんですか。一矢報いるまで。」

貴子がにやりと笑う。つられてまりやまで頬を綻ばせる。
雪が降りしきる中、二人は身構えたまま動かないでいた。
一体どういう経過でここまでになったか。
時間を少し遡ってみよう。


―前夜の夜―
『明日は丸一日大雪になる見込みです。交通機関の麻痺が予想されます……』
天気予報では大雪を注意するように勧告している。

「明日は土曜日だからさほど心配することもないかな?」
「いやー、陸上部で集まりがあるのよね。どうしようかなー。」
「でも、東京は大雪になることは滅多にないよね。」
「うーん、そうだと思って招集かけたままなんだけど、どうしようかなぁ。」

天気予報を見ていた瑞穂とまりやは翌日の大雪を予想していなかった。
近頃は雪はあまり降らないためかそう思うのも無理はない。
降ったとしてもせいぜい5cmだろうとたかくくっていた。


424 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:14:32 ID:NyJTDRDG0
「寒いね。暖房付けていても足元が冷えちゃうよ……。」
「私が暖めてあげるわよ?」
「ま、まりや〜。」
「冗談よ。」

一瞬ドキッとした瑞穂であったが冗談とわかりほっとする。
その様子を観察していたまりやは意地悪く笑う。

「あーら、期待しちゃった?」
「な、莫迦な事言わないでよ。普通にびっくりしただけなんだから。」
「ま、瑞穂ちゃんには紫苑さまという恋人がいるんだからねぇ?」
「うぐっ……。」

からかわれてグウの音も出ない瑞穂。
さぞ満足したという顔をしているまりやは紅茶を飲み干すとキッチンへ入っていく。

「えっと魔法瓶どこだっけ。」
「お茶の用意?」
「そ。流石に明日は寒そうだからね。」

後輩のためにお茶を用意するまりや。
冷え切った体に温かい飲み物はさぞや染み入ることだろう。

「豚汁も作ろうかな?」
「いいねー。寸胴鍋で作っちゃおうか。ついでだからたくさん作っちゃえ。」

この気配りが翌日、いい結果をもたらすことを誰が予想できたであろうか。

425 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:15:14 ID:NyJTDRDG0
―朝―
「うそ……。」
「膝まで埋まっちゃうぐらいよ……。」
「こんな雪、初めてです……」
「一面真っ白なのですよ〜。」

寮の面々が玄関先にまで出てくるが目の前の雪に圧倒される。
十分といえる積雪量であったが、それでもまだ雪は降り続ける。

「どうしちゃったのかしら、今年は……もう3月なのに……」
「ぼんじょーるの、すぃにょりーな(おはよう、お嬢さん方)」
「「「「ひっ?!」」」」

突然日本語のイントネーションが強いイタリア語で話しかけられびっくりする4人。
声がするほうを向くと圭が立っていた。
圭は制服の上にポンチョを被っている。

「どうしたの、そんなびっくりして。」
「あんた、普通の挨拶できないの……?」
「ふ、甘いわ。隙を見せるから。」

抑揚のない感じだが、いかにも楽しんでいるという雰囲気を感じ取ることができる。
圭の答えを聞いてがっくりと肩を落すまりや。
ふと並木道を見ると遠くから傘を差した紫苑が歩いてくるのが見えた。

「し、紫苑さん?!」
「おはようございます、皆さん。」
「紫苑さま、体のほうは大丈夫なのですか?」
「ええ、大分よくなりましたわ。何か楽しそうな事が起こりそうなので出てまいりました。」

426 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:16:18 ID:NyJTDRDG0
すごく楽しそうな感じでにっこり笑う紫苑。
既に手術を終えていた紫苑であったが、まだ体調が万全とはいえない。
来週からの登校予定だったが、待ちきれず学校へ来てしまったのだという。

「と、とにかく中へ入りましょう。」


6人でお茶をすする。
ほうじ茶の匂いが心地いい。

「圭さんはどうして学校へ?」
「演劇部の2年生を召集したの。まさかこんな大雪になるとは思っていなかったけど。」
「私も陸上部召集かけたままよ。この雪で学校へ来れるのかしら。」
「電車は減便しているけど、バスは数分の遅れが出ているぐらいだわ。いい仕事しているね。」

圭は大雪にもかかわらず健闘している付近の輸送機関に賞賛を送る。
そこへ奏が一つ質問する。

「部長さん、もう一つ目的があるような気がするのですよ。もしかして……?」
「奏、鋭い子は好きだわ。思っていることと同じかもね。」

そこで圭はニヤリとする。
その笑顔を見て奏はガタガタと震えだす。

427 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:17:16 ID:NyJTDRDG0
「あうう、聞いてはいけなかったような気がするのですよ……」
「まさか、占い……」
「瑞穂っち。時として好奇心は身を滅ぼすわ。」
「わ、わかりました。」

口調はやさしいのだが、有無言わせないという圧力をひしひしと感じた瑞穂は黙ることにする。
瑞穂は視線を紫苑に向けるとどきりとする。
視線を瑞穂に向けて幸せそうに笑っている。
雰囲気に飲まれそうになった瑞穂は平静を装いながらも紫苑に問いかける。

「どうかしましたか、紫苑…さん。」
「瑞穂さんの顔が面白くて。まるで二十面相でしたわ。」
「おー、妬けちゃうねー瑞穂ちゃん。」

すかさず茶々を入れるまりや。
いかにも獲物を見つけたような猛禽類の目をしている。
更に瑞穂を弄ろうとしたとき、寮のチャイムが鳴る。

「ちっ、いいところで。」

舌打ちしながらも玄関へと出て行くまりや。

「ごめんください。」
「げ、貴子にデコメガネ……」
「……まりやさん。何ですかその『招かざる客が来た』といわんばかりの顔は。」
「あら、本当のことよ。特に貴子はね。」
「なんですって?」
「あ、あのう、会長……」

428 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:18:20 ID:NyJTDRDG0
おろおろとしている君枝をよそにまりやと貴子の舌戦が始まった。
何事かと瑞穂達は玄関へ出てくる。

「あ、お姉さま……そ、それに紫苑様っ!」
「君枝さん、ごめんなさいね。まりやはああなったら手が付けられないから。」
「いえ、お気になさらずに……。紫苑さまはもう大丈夫なのですか?」
「ええ。ちょっと今日は浮かれてしまいましたが、こういうのもいいと思いまして。」
「今日はどうしたの?」
「3年生の元役員と一緒に追い出しコンパをする予定なんです。」

玄関で舌戦を繰り広げている2人をよそに君枝を上がらせてお茶を振舞う。
他愛もない雑談で花を咲かせる瑞穂達だったが、玄関先では舌戦がエスカレートしていた。
そして、貴子の大声が響いてきた。

「わかりました、まりやさん。どうやら決着付ける時がきたようですね。」
「ほう、私に勝てると思って?」
「もちろんですわ。ぐうの音が出ないほどのしてあげますわ。」
「やる気ね、貴子。二言はないね?」
「ええ、ありませんわ。」

どうやらとんでもないことになっていると察した瑞穂達は慌てて玄関へと出て行く。

「まりやに貴子さん。一体どうしたのですか?」
「瑞穂ちゃんは引っ込んでいて。」
「瑞穂さん、申し訳ありませんが私とまりやさんの話です。お気遣い無用ですわ。」
「まーまー。そんなにいきり立ったら血を見ることになるわ。」
「け、圭さん……。」

429 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:21:56 ID:NyJTDRDG0
取り付く島もなかった2人であったが、圭の発言に注目する。

「お二人さん、外にはたくさんあるものがあるわ。」
「外って……?」
「会長には不利になるかもしれないけど、それ使って恨みっこ無しって事でどう?」

外を指差して仲介案を提示する圭。
まりやと貴子はその真意を測りかねていたが、玄関の外に出て合点する。

「圭、あんたいい案出すわね。」
「体力ではまりやさんには到底太刀打ちできませんが……。これなら対策の立てようもありますわ。」
「圭さん、まさか……」
「そう雪合戦よ。」


どうせなら団体戦でやろうという事になり、学校内にいた生徒達に呼びかけてみたところかなりの人数が集まった。
班分けを行ったところ次のようになった。

・まりやチーム
 まりや、瑞穂、圭、由佳里ほか、演劇部2年生、陸上部 約40人
・貴子チーム
 貴子、君枝、奏ほか生徒会、テニス部、バスケット部有志 約30人
・救護班
 紫苑、美智子ほか、華道部有志 約10人

テニス部、バスケット部が貴子側についたのはは貴子シンパが多かったためと考えてよい。
瑞穂がまりやについたことでショックを受ける者もいたが瑞穂が「遠慮なし」と宣言したため逆に戦意が沸いている。

430 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:23:58 ID:NyJTDRDG0
「かなり集まっちゃったね……」
「大雪で土曜日だっていうのにこんなに学校にいること自体信じられないわ。」

陣地構築も終了し、開戦を待つだけとなった。
それまでにまりや、瑞穂、圭は顔をそろえる。

「総大将はまりやさんだから。無謀な動きはしないで欲しいわ。レギュレーションでは大将が討ち取られたら負けだから。」
「ぐ、戦いたいわ。」
「指揮官先頭で戦ってもいいけど一貫の終わりよ?」
「そうね。前には私が出るわ。数の上では私達のほうが有利よ。」

後に語り継がれる恵泉の雪合戦、「円卓の戦い」が始まる。
円卓といわれたのは両軍の陣地構築の結果である。
紫苑が旗を振り下ろすのと同時に雪玉が飛び交う。

「始まったわね。」
「瑞穂っち、陣地一つ一つ潰していくのが肝心よ。」
「わかったわ。」

陸上部の後輩2人を連れて瑞穂は陣地を出て行く。
雪はまだ降り続いている。加えて、雪玉が凶弾となって瑞穂達の周りに降り注ぐ。
ようやく端っこの陣地に取り付いた瑞穂は一呼吸つくと壁の後ろ側へ回り込む。

「お、お姉さま?!」
「ごめんね、覚悟っ!」

急に現れた瑞穂に狼狽した2人は次々と討ち取られる。

431 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:24:42 ID:NyJTDRDG0
「あー、お姉さまにやられちゃった。」

せめて瑞穂に討ち取られたことが救いなのだろう。
にこやかな顔で陣地を後にして「戦死者」とボードが掲示された一角へ向かう。
そこでは紫苑たち救護班がお茶と昨日瑞穂達が作った豚汁を振舞う。

「会長、お姉さまに陣地が押し込まれています。」
「くじ引きの偶然とはいえ……恨めしいですわ。陣地を後退させなさい。そう、Pポイントへ。」

号令がかかると一斉に前線からPポイントと呼ばれた防衛拠点へ移動する。
そこをまりやは見逃さなかった。

「貴子、口ほどもないわね。攻撃チーム、前へ!」
「まりやさん、危険な感じだわ。」
「大丈夫よ、瑞穂ちゃんがやってくれるわ。」
「だといいけど……」

圭は急に不安になった。

「……私も前に出るわ。ここからじゃ向こうの陣地が見えない。」

432 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:27:35 ID:NyJTDRDG0
瑞穂たちはある陣地で射すくめられていた。
周りに次々と雪玉が着弾する。

「動けないわね、これじゃ。」
「お姉さま、私が突破します。援護して下さい。」
「ま、まちなさいっ!」

血気盛んな陸上部の娘が陣地を急に飛び出していく。
良くも悪くもまりやの精神が受け継がれているようだ。
背をかがめて次の陣地へ向かおうとした時だった。
陣地まであと数歩というところで三方から雪玉に攻められる。
初撃をかわしたが、第二撃をよけきれず、次々と被弾する。
その様子を見た瑞穂は後ろから殺到してくる後輩たちを押し止めようとするが数人が先へ進んでしまった。
案の定、全員が討ち取られていく。

「ヴィットマンも顔負けだわ。」
「圭さん?!えっと、びっとまん?」
「説明は後で。いい仕事したわね、会長。」

陣地を潰すためにまた数人送り込んでみるが結果は同じ。辛うじて一人生還してきた。
が、その一人も貴子軍の陣地に振り向いた瞬間顔面に雪玉を受けて「ぎゃぼーっ!」と叫びながらもんどりうって倒れる。

「……これで人数的有利はなくなったわね。」
「戦線は膠着状態。どう出るかしらね、会長は。」

433 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:29:20 ID:NyJTDRDG0
攻めたくても動けないまりや軍。
逆転したいが兵力に不安がある貴子軍。
雪玉を飛ばすだけで睨み合うだけだ。
合流してきたまりやは瑞穂、圭と最前線の陣地裏で話しこむ。

「うーん。どうしようかなぁ。力攻めする?」
「やめたほうがいいわ。戦力が拮抗しているんだから。」
「やっぱり、あそこの陣地を潰すしかないわ。」
「まりやお姉さま、私にお任せ下さい。」

後ろから陣地に転がり込んできた由佳里が志願する。

「ダメよ。すぐに討ち取られるわ。」
「でも、お姉さま方の役に立ちたいんです。」

真剣な表情でまりやを見つめる由佳里。

「うーん……。わかったわ。援護するからダメだと思ったらすぐに戻りなさい。生きて帰れ。」
「瑞穂っち、私はあそこの陣地から援護するわ。」
「ええ、私は向こうで。」

まりやの発案で真っ白なポンチョと雪玉が数個用意される。
準備を整えた由佳里ら後輩の3人はこっそりと陣地を抜け出し前進していく。


434 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:30:43 ID:NyJTDRDG0
「おかしいですわね、まりやさんたち静まり返っていますわ。」
「会長、まさか……」
「そのまさかかもしれないわ。Pポイントの人達に注意するように伝えて下さい。」

そこへ目を皿のようにして前を見ていた奏から通報が入る。

「会長さん、大変なのですよ。由佳里ちゃんたちが……」
「え?……よく見つけたわね、奏さん。まりやさんったら……」

保護色のポンチョを身を纏った由佳里たちを見つけた貴子はいかにもまりやらしい作戦だと苦笑する。
自らこっそり陣地を抜け出すと前の陣地へ駆け寄っていく。

「葉子さん、由佳里さんたちがキルゾーンに入ったら全力で潰しなさい。多分まりやさんは近くまで来ているわ。」
「まさか、会長。まりやさんと直接……」
「そのつもりよ。まりやさんを引きずり出すために必ず全員『戦死』させなさい。」

由佳里たちが1列になってゆっくりキルゾーンに入ってくるのを確認すると貴子は腕を振り下ろす。
一斉に由佳里たちへ降りかかる雪玉。

「えっ?!」

あっという間の出来事に由佳里たちは混乱し次々と倒れていく。
そして、貴子は由佳里にめがけて雪玉を投げる。
対応できずに被弾し仰向けに崩れ落ちる由佳里。
その様子を見ていたまりやは大声で叫ぶ。

「貴子ぉーっ!」

435 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:32:11 ID:NyJTDRDG0
憤怒の形相で貴子をにらみつけたまりや。
それを平然とした顔で受け流す貴子。
両者は立ち上がるとゆっくり陣地の外へ出て行く。
いつの間にやら飛び交っていた雪玉はなくなりあたりは静まり返っている。

「よくもやってくれたわね。」
「攻撃が単純すぎるからですわ。」

数メートルの距離で睨み合う両者。
手には雪玉が握られている。

「もしかしてマカロニウエスタンみたく決着を付けるつもり?」
「そのほうが張り合いもあるわ。」
「私がジョーでまりやさんがラモンかしら。」
「寝ぼけないで、あたしがイーストウッドよ。」

まりやが発言すると同時に両者は動く。
互いに投げ合うと陣地の中へ隠れる。雪玉を作っては外に出て互いに投げ合う。
それを幾度繰り返しただろうか。貴子は雪玉を作ったはいいが投げる前に地面に取りこぼしてしまう。
それを拾おうとするが数メートル前にまりやが立っているのに気がつく。

「勝負あったわね。」
「どうかしら……。」

しゃがんだ状態から貴子はゆっくりと立ち上がる。
そしてまりやを見つめると不敵な笑いを浮かべる。

436 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:33:50 ID:NyJTDRDG0
「Shoot me coward(ぶつけてごらんなさいな、臆病者)」

内心、貴子は自分の口から挑発の言葉に驚きつつ、更に言葉を続ける。

「さぁ、投げなさいっ!」

挑発されたまりやは目の色を変えて飛び掛ってくる。
後ろへ動こうとする貴子だったが雪に足をとられて尻餅をつく。

「もらったぁっ!」

まりやが叫ぶが、貴子は平然としている。
まりやは貴子に雪玉を投げつけようとするが、貴子も右手を動かしている。
そこでまりやは貴子の意図に気がつく。

「相討ち……。」

まりやが雪玉を投げるのと同時に貴子も雪玉を投げた。


「会長、見事だわ。あの状況から相討ちに持っていくなんて。」
「この勝負は……引き分け?」
「そうね……。大将が両軍とも『死亡』したからね、同時に。」

全員が陣地から出て、まりやと貴子が倒れている場所へゆっくり向かう。

437 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:36:10 ID:NyJTDRDG0
「……貴子。」
「何でしょう、まりやさん。」
「あの時大人気なかったわ。」
「……私もでしたわ。」

貴子は仰向けに、まりやはうつ伏せになって倒れている。
さっきまでの刺々しい雰囲気はもうない。

「今度こそ、仲直りね。」
「そうですわね……。楽しかったですか、まりやさん?」
「え?ええ、楽しかったわ。」
「でも、まりやさん。私のほうがイーストウッドです。」
「いいえ、あたしこそよ。」
「「ふふ、ふふふふ……」」

起き上がると二人は互いに笑いあう。
その様子をみて瑞穂はほっとし、圭は美智子からお茶を受け取って一服し始めた。
これにて「円卓の戦い」は終了するのである。

438 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:38:49 ID:NyJTDRDG0
雪は未だに降り続いていたが、雲の隙間から太陽の光が漏れ出し一時であるがあたりが明るくなる。
寮の周りでは豚汁とお茶の炊き出しがフル回転である。
お互いに激戦を労い身を寄せ合って暖を取る。
作り置きしていた豚汁はあっという間になくなっていたが、紫苑たちが大量の豚汁を寮母さんと協力して作っていた。

「瑞穂っちの豚汁、食べ損ねたわ。」
「あら、圭さん。それは残念なことですわね。」

にこやかに笑う美智子だったが、刺々しいオーラを醸し出しているので怖い。

「純粋に残念だと思って言っただけなのに……。」
「でも、正直私も残念でしたわ。お茶のくみ出しで精一杯だったものですから。」

雪でびしょぬれになってしまったまりやは着替えを済ませて上から降りてきた。
後ろからはまりやの服を借りた貴子が降りてくる、が。
なぜかその衣装は白のフリルが一杯ついているアマロリだった。
貴子の衣装を見て寮に上がっていた生徒達は一瞬動きが止まる。

「まままま、まりやさん。やっぱり恥ずかしいではありませんか。まるで針の筵にされた気分ですわ……。」
「えー?似合っているわよ。それに、反応はあんたが思っているよりも肯定的なはずよ。」
「え……?」

まりやの言葉にいぶかしむ貴子であったが生徒たちの黄色い歓声でその疑念は打ち消される。


439 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:40:29 ID:NyJTDRDG0
「貴子お姉さま、素敵ですわっ!」
「可愛らしくて、お人形さんみたいですわ!」

などなど。

「うーん、ハートをゲットしたわね。貴子ぐっじょぶ。」
「……素直に喜んでよろしいものなのでしょうか。」
「まあまあ、貴子さんったらかわいいっ!」
「紫苑さま?ちょっ、ムギュッ?!」

騒ぎを聞きつけた紫苑が貴子の姿を認めると衝動的に抱きしめてしまう。
貴子は紫苑の胸の中で窒息しつつある。

「紫苑さん、程々にしないと貴子さんが死んでしまいますよ。」
「あら?ごめんなさいね、貴子さん。」
「ぷはっ!……いえ、大丈夫です。」

そういいつつも貴子は紫苑に寄りかかったままズルズルと崩れ落ちてしまう。

「わわっ、貴子さん?!」
「眩暈しただけですので……危うく御婆の下へ行くところでした。」

その後、紫苑がまりやの衣服を借りて楽しんでいたりとか、案の定瑞穂がファッションショーの素材にされたりで
騒がしいこと限りなかったが、みんな心から楽しんだ。

Fin

440 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/28(水) 00:49:36 ID:NyJTDRDG0
カッとなってやった。
後悔はしていない。

時期的にも内容的にも無茶な雪合戦、どうでしたか?
非常に判りやすいパロディを入れています……
判った方は「ニヤリ」とでもしていただければ幸いです。
それにまりやに「右舷、弾幕薄いよ。何やってんの!」と言わせたかったのですがボツ。
もっとコメディにしたかったのですが……
それに、「ちょっと長いの」と言いましたけれども、長すぎたような気も。
次は花見の宴会でいこうかなと思います。
それでわ。

あ、ちなみにのだめはいません(爆)


441 :名無しさん@初回限定:2007/03/28(水) 00:59:33 ID:QqAxvhBI0
私の名前は御門まりや。若いが、これでも恵泉病院の精神科の主任医師をしている。
今日は私の患者の治療について報告しよう。

患者の名前は宮小路瑞穂。性別女性。年齢17歳で身体的には健康体で全く異常なし、ただし解離性人格障害を患っている。
自分は、鏑木瑞穂という男性だと思いこんでいる。
これは、不幸な事件があり、彼女は性犯罪の被害者になってしまった為である。
か弱い女性としては、いかしかたがない反応と見るべきであろう。
病室内で彼女は、恵泉女学院の学生というシチュ工ーションを考えだした様である。
開正学園高等部の女子学生であったわけだから合理的展開であると考えて良いだろう。
主治医である私を、幼なじみで従妹と思っているようで、女装をさせて恵泉に転入させた張本人だと言っていた。
私が女性用衣料をあてがう為なのか、その様な設定になっているらしい。
恵泉には、工ルダーシスターという制度があるそうで、彼女は自分が75%の支持率を以って選ばれたのだと言った。
ある日、自分の病室(彼女にとって、ここは、女子寮における自分の個室であるとの認識があるらしい。)に、幽霊が出ると大騒ぎした。
高島一子という病弱だった女学生が自縛霊になって、部屋に居るというのだ。
そごで私は、あえて箱庭療法を試みた。
エルダーとして女性になりきることで、乖離した精神を統合化するというものである。
半年後、卒業という形で彼女の治療は終了したが、実にユ二ークな事例であった。
現在、彼女は、二児の母である。

参考:wikipedia解離性障害

442 :名無しさん@初回限定:2007/03/28(水) 18:02:44 ID:3idezWjI0
サブさんgjです。
round tableね。
どちらにしても、プレーヤーを選ぶんだよね。

「この先生
きのこれない」
の方も、よろしくw


443 :名無しさん@初回限定:2007/03/28(水) 21:13:03 ID:2M9B/yU00
>>423-440

雪玉に
想いを込めて
ぶつけるわ


444 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/03/30(金) 01:41:32 ID:6sTif+yk0
>>442
ありがとうございます。
そうです、貴子さんにはPixyをやってもらいました(ォィ
……そのゲームのOPでネタを仕込んでいた私はかなり逝ってると思いますorz
>>443
=●)Д`ノ)ノギャボッ?!

445 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/30(金) 05:50:44 ID:JWzLyUaL0
東の扉です。

L鍋さんをはじめ、いろんな方々に期待されているようで、プレッシャーもありますが、
紫苑さんがエルダー1日所有券を使うときの話、一応完成しましたので、投下させていただきます。
ご期待に沿えるかどうかは自信がありませんが、よろしくお願いします。

446 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/30(金) 05:54:00 ID:JWzLyUaL0
ピンポーン!
日曜日の聖央女学院の女子寮。朝早くから、呼び鈴を鳴らす音が聞こえてきた。
「誰だろう?」
僕が玄関まで向かうと、そこにいたのは……。
「し、紫苑さん!」
「あら、瑞穂さん、おはようございます」
「お、おはようございます……」

〜天難女難の来い至難〜

「紫苑さん、どうしたんですか? こんな日曜日の朝早くから、制服姿で……」
「あら、学院に来るのに制服を着てくるのは当然ですわ」
紫苑さん、また天然な発言を……。
「いや、そうじゃなくて、いったいなんの用事があって来たのかと聞いてるんですけど……」
「あら、用事がないと来てはいけませんの?」
紫苑さんがさびしそうに言う。
「いや、別にそんなつもりじゃ……って、ですから、紫苑さんがここに来たのはなんのためかを……」
「やっぱり瑞穂さんは、理由がなければ私なんかとは関わりたくもないんですね……」
「だからそうじゃなくて……って紫苑さん、わざとやってませんか?」
「あら、バレました?」
一転してお嬢さまスマイルで話す紫苑さん。
「し、紫苑さーん。勘弁してください……」
「ごめんなさい。瑞穂さんって、からかうととっても楽しいんですもの。ですからつい……」
笑顔を崩さないで紫苑さんは言う。やっぱり憎めないな……。
「もう……それで紫苑さん、何かご用ですか?」
「ええ。瑞穂さん、今日はおひまですか?」
言われて僕は今日の予定を確認する。うん。特に重要なことはないな……。
「はい……今日は大丈夫ですけど」
「よかったですわ。では、今日は私と一緒に過ごしましょう」
え? それって、デートってこと?

447 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/30(金) 05:57:03 ID:JWzLyUaL0
「はあ……いいですけど、一体どうするんですか?」
「まずは、公園に行きましょう」
「公園、ですか」
「ええ」
そうして、僕たちは最寄りの公園へと向かった。

僕たちは、公園のベンチに隣り合わせに座りながら今日の予定を話し合う。
「それで、どうするんですか、紫苑さん?」
「それです」
え? それですって、何?
「今日一日は、私のこと、『紫苑』って呼んでくださいね」
「え? そんな、恥ずかしいですよ」
いくら親しい友達でも、男と女で呼び捨てにするのはちょっと……。
「仕方ありませんわね」
紫苑さんは、そう言って諦めてくれた……と思っていると、ポケットから一枚の紙を取り出す。
「宮小路瑞穂! このチケットを、なんと心得る!」
紫苑さんは、チケットを僕に見せて、まるで時代劇の主人公が悪代官を断罪するときのような口調で言う。
「え、『エルダー1日所有券』……」
そうだった。紫苑さんは武道会の優勝賞品として、1日だけ無条件で僕を服従させられるんだ。
「そういうことで、本日だけで結構ですから、よろしくお願いしますね」
つまり、僕に拒否権はないってことか……。
「わ、わかりました、紫苑さん……」
「紫苑、でしょう?」
うっ……こ、細かいな……。
「わかりました……紫苑……」
「はい! よくできました♪」
今日1日、どうなるんだろう……ものすごく先行き不安……。

448 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/30(金) 06:05:15 ID:JWzLyUaL0
「ねえ、瑞穂さん」
「なんですか? 紫苑」
「私が『瑞穂さん』って言ったら、『あん♪ 瑞穂って呼んでくれなきゃ、やあ♪』とおっしゃってくださいね」
ぶはっ……そ、そんな……恥ずかしすぎる……っていうか、男としての尊厳が……。
「そんなの、いくらなんでも……」
「こ・れ・は……何でしたかしら?」
紫苑さんはそう言ってエルダー1日所有券を取り出す。くうっ……もう、逆らえないのか……。
「では、試しに1回! 瑞穂さん」
「あ、アン、ミズホッテヨンデクレナキャヤア……」
ガチガチになりながらも僕はなんとかそう発音することができた。でも、顔が思いっきり引きつってるような……。
「完全に棒読みですわね……ダメです、やり直しですわ」
「ううっ……」
その後、僕は2桁ほどやり直しさせられて、なんとか紫苑さんの納得いくのをすることが出来た。

「それで、紫苑さ……紫苑、今日は何をして遊ぶんですか?」
「おままごとですわ♪」
ずっ……紫苑さん……おままごとって……。
「しょ、小学生じゃないんですから……」
「あら? 高校生になったらやってはいけませんの?」
「いえ……そんなことはないですけど……」
僕が冷や汗混じりに言うと、紫苑さんはまじめな顔で語り始めた。
「私、今はそうでもないですけど、小さな頃はお外でみんなと遊ぶのを禁止されていましたの……
ですから、幼等部や小等部にいた頃、みんなでおままごとをしているのを見て、とてもうらやましかったんです。ですから……」
そうだったのか……じゃあ僕も、恥ずかしいのは我慢して、紫苑さんの望みを叶えてあげるとするか……。

449 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/30(金) 06:10:10 ID:JWzLyUaL0
「わかりましたよ、紫苑。私と一緒におままごとして遊びましょう」
僕がそう言うと、紫苑さんは心底喜びに満ちた表情になる。
「嬉しいですわ」
「かっ……!」
かわいい……。
「か?」
「か、過去にやったことなかったんですね」
「ええ……」
うう……やっぱり、紫苑さんにはかわいいなんて言えない……。
「それで、どっちがどっちの役なんですか?」
「もちろん、私が旦那様役で、瑞穂さんが奥さん役ですわ」
……そうですか、紫苑さんには、それが当たり前なんですか。ひどいです……。
「なんでそれが当然なんですか?」
「ねえ、私、『瑞穂さん』って言いましたのよ?」
「え?」
紫苑さん、何が言いたいんですか?
「私が『瑞穂さん』と呼んだら……」
ああ、そっか……。
「あん♪ もう、紫苑ったらあ、『瑞穂』って呼んでくれなきゃ、やだってばあっ♪」
言われてもいないのに、よりかわいく見えるよう、セリフをつけたしてみた。
「まあ、瑞穂さん、私が言ったセリフ以外にも……いっそうかわいらしく見えますわ」
紫苑さんも喜んでくれている。この笑顔を見てると、恥ずかしいけど、まあいいかと思えてくるな。

450 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/30(金) 06:15:32 ID:JWzLyUaL0
そして、おままごとは始まった。
「瑞穂、今帰ったぞ」
「お帰りなさい、あ・な・た♪」
自分で羞恥心が麻痺していってるのがはっきりとわかる。まあ、紫苑さんの笑顔を見れば、そうなってもいいと思えてくるんだけどね。
「ご飯にします? それともお風呂?」
「じゃあ、ご飯を食べようかな、瑞穂の作るご飯は天下一品だからな」
「はあい♪」
そう言って、子供の頃やったみたいに、ご飯とお味噌汁をよそうフリをする。
「はい、召し上がれ」
ふと気がつくと、周りの人たちが僕たちを大丈夫か、とでも言いたそうに見ている。紫苑さんは気にしていないようだけど……。
「ああ、じゃあいただくよ」
紫苑さんはとびっきりの笑顔で言う。よし、今日は何も気にせずに紫苑さんにつきあおう。

そして、ままごとを終えた後……。
「紫苑、初めてのおままごとはどうでした?」
僕は、疲れながらも、興味があって紫苑さんに聞いてみることにした。
「とっても楽しかったですわ」
すると、紫苑さんは幸せそうに目を細めて答える。
「かっ……!」
かわいい……!
「か……?」
やっぱり紫苑さんに“かわいい”なんてとても言えない……。
「か、奏ちゃんも誘いませんか? 今度やるときは」
「奏ちゃんも……まあ、瑞穂さん、それはとってもいいアイデアですわね。是非」
僕のごまかしのセリフを聞いた紫苑さんは、早くも妄想モードにトリップしている。
しまった……セリフをごまかそうとして、とんでもない失言をしてしまったのかも。

451 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/30(金) 06:20:28 ID:JWzLyUaL0
その後、僕たちは遊園地に来ていた。
「キャラメルランド……」
「ええ。私は3年前にクラスの方たちと1回来ただけですので……」
「私は最近まりやたちと一緒に来たことがあります」
あの時は由佳里ちゃんがまりやに泣かされて大変だったっけ。まあ、それも今となっては、いい思い出だけど……。
「そうですわ!」
ふと、紫苑さんが何かをひらめいたように言う。何かイヤな予感が……。
「これから、瑞穂さんは自分のことを名前一人称でお願いしますね」
「あん♪ もう、紫苑の意地悪う……瑞穂って呼んでくれなきゃ、やあって言ってるのに……」
「あらあら、ごめんなさいね」
僕が返すと、紫苑さんは嬉しそうに、楽しそうに笑う。
「あの……紫苑、名前一人称って、つまり、『私はあれがしたい』を『瑞穂はあれがしたい』というふうに言えってことですか?」
「ええ。そういうことですわ」
「ううう……」
またしても恥ずかしいセリフを……もう、僕どうにかなってしまいそう……でも、しばらくしたら、もう完全に適応してる僕がいるんだろうな……。
「じゃあ、何に乗りますか?」
紫苑さんがそう僕に問いかける。
「えーっと、私は……」
紫苑さんの場合、絶叫マシーン系のものは避けた方がいいだろうな……。
「違うでしょう?」
「え? あ……」
そうだった。名前一人称で言わなきゃいけないんだった……何に乗るかを考えながら、僕は気づく。
「じゃあね、瑞穂ね、あれ乗りたーい!」
そう言って、僕はメリーゴーランドを指す。
「まあ、瑞穂さんって、メルヘンチックなんですね」
「あん♪ もう、紫苑ったらあ、瑞穂って呼んでって、ずーっと言ってるのに、もうやあん♪」
さすがにここまで来ると、条件反射が身についてしまってるようで、なんかすごく悲しい……。
「うふふ……もうすごく自然になっていますわね」

452 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/30(金) 06:25:22 ID:JWzLyUaL0
そしてメリーゴーランドを乗り終えた後、僕たちは紫苑さんの作ってきてくれたお弁当を食べることになった。
「……瑞穂さん、今日は私のワガママにつきあってくださって、ありがとうございます」
食べている最中、紫苑さんがまじめな顔でそう切り出した。
「もう、紫苑ったらあ♪ 瑞穂って呼んでよ……あん♪」
僕がそう返すと、紫苑さんは笑いながら返してくる。
「うふふ……まじめなお話なんですから、お昼の間だけは、素で話してくださって結構ですわ」
「はい……」
「私、ずっと妹がほしかったんです」
「妹……ですか」
「ええ。私は一人っ子ですから、そういう私に甘えてきてくださるかわいい妹が……」
「そうですか……」
僕も一人っ子だけど、まりやが姉であり、妹であるような感じだったからな……。
「紫苑さん……それじゃ、妹や弟がお兄さんやお姉さんに甘えるところを見て……」
「ええ。何度も自分にもそういう人がほしいと思いました。学院では、私のことを腫れ物にでも触るように接してきますから……」
そうか……紫苑さんって、一見威厳のある王女様って感じだもんな……中身はすごい気さくだけど……。
「わかりました」
「……瑞穂さん?」
「じゃあ、今日は僕が、紫苑さんの妹として甘えさせていただきます」
「ええ。期待していますわ」
その後、僕たちは「お花鉄道」や「マーメイドの潜水艦」、そして観覧車などに一緒に乗り、僕はその間精一杯甘えん坊の妹を演じていた。

「お買い物? ねえ紫苑、瑞穂と一緒に買いたいものって?」
キャラメルランドを出た後、僕たちは紫苑さんと一緒の買い物につきあうことになった。
「ここにありますわ」
そう言って紫苑さんが僕を連れてきたのは、まったく見慣れない小さな店だった。
「なんなの、この店?」
「入りますわよ」
「ねえ、瑞穂に教えてよ」
僕はそう言いつつも、紫苑さんに続いて中に入る。と、僕の目に飛びこんできたのは……。

453 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/30(金) 06:34:12 ID:JWzLyUaL0
「ぶはっ……! こ、ここは……」
あたり一面女性ものの下着でいっぱい……見てるだけで顔が赤くなってくる。
「ええ。下着専門店。いわゆるランジェリーショップですわ。まりやさんに教えてもらいましたの」
「ま、まさか紫苑……わた……瑞穂に、これを着ろと?」
「ええ。そのまさかですわ」
にっこりと笑顔で恐ろしいことを言う紫苑さん。
「ううう……」

「瑞穂は、どの下着がいいの?」
紫苑さんがそう聞いてくるけど、男の僕にこんなのはまるっきりわからないし、そんなのを楽しんではく趣味もないし……
というか、いつもの普通の下着でさえ恥ずかしいのに……。
「瑞穂、わかんなーい」
僕は引きつった顔のまま、ムリに笑顔を作って答えた。
「そうですか。では、私が選ばせていただきますわね」
で、紫苑さんが選んで試着を勧めてきたのは……。
「こ、これをはけって!?」
僕にはまったく未知の世界のセクシーなデザインの黒の下着。しかもストッキングとガーターベルトつき……
一応パットだとばれないものを選んでくれたみたいだけど……。
「瑞穂、恥ずかしいよお……」
「これをお忘れですか?」
僕が恥ずかしがっていると、紫苑さんは1日所有券を僕に見せる。
「わ、わかりました……」
僕はしぶしぶその下着をはくことにした。

「そ、そんなに見ないでくださいよお……」
僕は真っ赤になりながらも、セクシーな下着姿を紫苑さんに疲労……じゃなくて披露する。
「まあ……抜群のスタイルにお似合いの妖艶な下着姿……そして、それにアンバランスな恥辱に頬を染める端正な顔……
とってもかわいらしいですわ」
「ううう……瑞穂、もう恥ずかしくて死にそうです……」
僕はその後も、赤やら紫やらの数着の下着をはかされてしまった。
紫苑さんはプレゼントしてくれたけど、こんなものあったって、僕には百害あって一利なしだよ……。

454 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/30(金) 06:48:04 ID:JWzLyUaL0
「それでは、ここのサインをお願いしますね」
夕方になって、紫苑さんと別れる際、僕は紫苑さんにエルダー1日所有券の空白部分に「済」のサインをするよう頼まれた。
それが、使ったという証明なんだそうだ。
「はい」
僕がサインをすると、紫苑さんが満面の笑顔で言う。
「瑞穂さん、今日はありがとうございました」
「いいえ、私もあれでけっこう楽しかったですから……どうでした? 
紫苑さんのご希望の“甘えん坊の妹”は、立派につとまりましたか?」
「ええ。ご立派過ぎるくらいに……おかげで私も、今までの人生の中で最高の1日をいただきました」
「そう言っていただけると私も嬉しいです。それでは、紫苑さん」
「ええ。ごきげんよう」
紫苑さんはそう言って帰っていった。
「ふふふ……紫苑さんってば、あんなに嬉しそうに……って、僕、今日一日何してた!?」
ガーン!!
あんな恥ずかしいセリフの数々を言わされた上に、僕までノリノリに使ってたし……。
「ううう……ダメだ……もうまともな人生送れないよ……」
僕は、その場でしばらく落ち込んでいた。

455 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/30(金) 06:53:30 ID:JWzLyUaL0
「やっ、瑞穂ちゃん、お疲れ」
僕が立ち直った頃、後ろから声をかけられた。
「まりや……」
「何落ち込んでるのよ」
「いや、そんなの言えないよ……まりやは、いったい何してるの?」
「んっふっふっふ……瑞穂ちゃん、あたしがこんなおいしすぎるシチュエーション、見逃したりすると思う?」
僕がそう聞くと、まりやは悪魔の笑みを浮かべて答える。
「ま、まさか……」
「ふふーん。そのま・さ・か。今日一日、ずーっと瑞穂ちゃんと紫苑さまをつけさせてもらったわ」
それを聞いた僕の顔がみるみる蒼ざめていく。じゃあ、あの恥ずかしすぎる場面の数々を、まりやに……。
「あとでこのビデオ、由佳里たちに見せてやんなきゃね。すっごく楽しみにしてたから」
まりやはそう言って録画していたビデオカメラを見せる。
「ちょ、まりや、返して!!」
「返せと言われて返す人がいますかっての。ていうか、これはもともとあたしのだって」
僕がテープを処分しようとまりやに掴みかかると、まりやは脱兎のごとく逃げ出した。

その後、僕は奏ちゃんから、そのビデオに関して色々なうわさを聞かされた。
まりやがそのビデオを売った結果、4桁も売れたとか、保存用と観賞用と布教貸し出し用に数本買った人も大勢いたとか、
紫苑さんが毎日夢中になってビデオを見てるとか、
貴子さんがいつも30分も経たないうちに鼻血を噴いて倒れてしまうとか、
由佳里ちゃんがなぜかランジェリーショップの場面が終わったところでいつもトイレが近くなるとか、
正直、僕にはそのうわさが本当なのかどうかはわからない。ただ、1つだけはっきりわかることはというと……。

「ううう……また、あんな恥ずかしいこと言わされるよ……またビデオに恥ずかしいとこ撮られるよ……ううう……怖いよ……怖いよ……」
「いけない、305号室の宮小路さん、また発作が起きたわ! 精神安定剤を!」
「はい! わかりました!」
僕がこの時のことを撮影したビデオを見させられて、その精神的ショックで数週間入院し、
その間ずっとその時の悪夢にうなされ続けた、ということだけである。

Fin

456 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/30(金) 06:58:24 ID:JWzLyUaL0
「エルダーは誰のもの?」の続編、いかがでしたでしょうか?
正直、私はまだ書き足りなかった部分もあるせいか、ご期待を裏切ってしまってたらどうしよう、と思ってしまいます。
最後に、瑞穂くん、いじめ倒しちゃってごめんね。

457 :名無しさん@初回限定:2007/03/30(金) 11:44:06 ID:hdCWywD90
>>456
このドサドの外道が!!(無論褒め言葉)

458 :名無しさん@初回限定:2007/03/30(金) 11:57:20 ID:J3Q0NdQF0
瑞穂たんかわいすぎる(;´Д`)ハァハァ

459 :名無しさん@初回限定:2007/03/30(金) 14:41:41 ID:sBQpUd1p0
いぢめればいぢめるほど味が出てくるわい

460 :名無しさん@初回限定:2007/03/30(金) 20:40:23 ID:GYCp59dQ0
病室でもいじられそうだな、瑞穂ちゃん

461 :名無しさん@初回限定:2007/03/30(金) 23:01:01 ID:SjjpOevp0
この調子で父紫苑様母瑞穂ちゃん娘奏ちゃんのおままごとを是非

462 :名無しさん@初回限定:2007/03/31(土) 10:12:36 ID:1YR9eSxH0
このゲームのストーリーって
少女漫画に使えそうだよな。

463 :名無しさん@初回限定:2007/03/31(土) 11:20:12 ID:w/PQyTV30
このゲームのストーリーが少女漫画に使えそうって言うか、
逆にこのゲームが少女向け小説のインスp(ゲフンゲフン

464 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/03/31(土) 17:51:44 ID:AGPEZ7hy0
>>457-461

たくさんのご感想ありがとうございます。
私の頭の中では、夕方になって紫苑さんが帰る前、「ねえ、チューして」と瑞穂くんに言うよう頼み、
その後、瑞穂くんが「あん♪ チューしてよ。瑞穂をじらさないで」と言ったところで
紫苑さんが不意打ちのキスをする……というのがあったはずなのですが、
いざ書く時となると、頭の中からすっぽりと抜け落ちていました。不覚でした。

>>460
実はこの時のことも頭の中に考えてあったりします。

>>461
そうですね。考えてみることにします。

465 :名無しさん@初回限定:2007/04/03(火) 05:17:07 ID:NANvx3Kp0
休日。貴子は生徒会の仕事を片付けるため朝から登校していた。
秋季行事を控え膨大な量の書類に決裁を下さなければならず、下校できたときには既に空が赤く染まる頃だった。
夜を前に家路を目指す者。これから本番と夜の街に繰り出そうとする者。
街は既に双方の人手でまともに歩けぬ程混雑していた。
雑踏を掻き分け駅を目指す貴子。
途中、聞き覚えのある声に呼ばれ足を止める。
そこに居たのは御門まりや、十条紫苑、周防院奏、上里由香里。そして宮小路瑞穂。
揃って遊びに繰り出していたのだろう、全員めかし込んだ私服を着ていた。
貴重な青春を生徒会の仕事で潰すとはお気の毒。制服姿を見て察したまりやが早速厭味を入れてくる。
四六時中遊び惚け、空白の17年間を過ごしてきた貴方よりはマシでしょう。と、貴子。
いつも通り顔を合わせた端から悪口を叩き合う二人。
その間に瑞穂が仲裁に入る。
まりやを遠ざけ、これから夕食を取る予定だが一緒にどうかと誘ってきたる。
確かに自分はお嬢様だの、純正培養だのと云われ、世間知らずと思われている。
だがこの五人から快く思われていない事くらい察するは事できる。
慇懃に断り、ごきげんようと言い残して早々にこの場を立ち去る。
向かうのは駅とは逆。街の中心。
瑞穂を見た途端、また胸の奥に湧き出した苛立ち。
これを沈めなければ、あの家に帰る事はできそうになかった。

466 :名無しさん@初回限定:2007/04/03(火) 05:17:39 ID:NANvx3Kp0
当ても無く街を彷徨う貴子。頭の中は瑞穂の事で一杯だった。
瑞穂が現れたのは新緑が青く茂る五月。
有名進学校の開正学園からの転入生。
転入試験代わりに受けた中間考査ではトップの成績。
しかも眉目秀麗となれば噂にならないわけが無かった。
校内の話題を一気にさらい、勢いそのままに、学園の象徴たるエルダーの地位に過去最高の支持率を獲得して選出された。
転入して僅か一ヶ月強の人物が、学園の象徴である地位に選ばれる。
学園の伝統と誇りを重んじてきた身にとっては屈辱だった。
だが悔しい事に、ちょっと気弱でなあの方は、優雅で可憐で誰よりもエルダーとして相応しく、そして優しかった。
敵である自分にさえ。
それからだ、胸の奥が常に細波が立ったように落ち着かなくなったのは。
そのとき、物思いに耽る貴子の目の前が急に暗くなる。
気が付いたときには遅く、誰かとぶつかり、後ろによろめく。
前にはカラフルな色で頭を染めた男と、仲間と思しき者が数人。
睨みを利かせて振り返った男は、貴子の顔と制服を見ると表情を一変させた。
馴れ馴れしく名前や予定を尋ねながら近づいてくる。
貴子が最も嫌いで苦手としている類の人物。
突然身に降りかかってきた危機に怯えて身動きが取れない。
そして真横に来た男が肩を抱こうとしたとき、貴子は踵を返し駆け出した。
男達の中からあっと声が上がる。
貴子の後ろ。そこは多くの車が行き交う、付近でも有数の主幹道路。
突如飛び出してきた人影に、タイヤを引き摺る甲高いスリップ音をが響く。
音に振り向いた貴子の目に映ったのは、ゆっくりと迫ってくる二つの強烈な光。
光に触れた次の瞬間景色が一転。ネオンに焼かれる夜空と、そこに突き刺さる幾つものビル群。
味わったことの無い不思議な感覚。
私、浮いているのね。そう理解したとき背中に硬い感触を感じ、意識は途切れた。

467 :名無しさん@初回限定:2007/04/03(火) 05:18:10 ID:NANvx3Kp0
月曜日、学院全体がざわついていた。
不思議に思いながら教室に辿り着いた瑞穂は、直ぐにその理由を知る。
厳島貴子が交通事故にあった。
小鳥遊圭が朝の挨拶もそこそこにそう告げる。
それからは常に心在らず。
元々優しさが災いしてネガティブな思考になり易い性格。
しかも事故に合ったのが自分と別れた直後だと聞けば、最早他人事では無かった。
嫌らっている人から食事に誘われたら。
しかも一日遊び惚けていた相手からだったら。
食事になど誘っていなければ。
せめてもっと気の利いた事を言っていれば。
たらればが頭の中で次々と浮かんでは消えていく。
その日、瑞穂が授業中に受けた注意は両手の指の数どころではなかった。
緋紗子にもそんな様子は伝わり、放課後職員室に呼び出す。
そして叱責を覚悟して体を強張らせている前に、書類を数枚差し出した。
呆気に取られる瑞穂。
貴子の様態は幸い軽症で、直ぐに日常に復帰する事も可能。
そのため今日出されたプリント類を厳島貴子に届けろというのが呼び出した理由だ。
しかし横に首を振る瑞穂。しかも普段と違って何故か聞き分けが悪い。
仕方なく教師の権限を振りかざす事にする。
するとようやく、渋々ながらも頷いた。
それで良い。そうでなければ、態々頼み込んでまで貴子のクラスからこの役目を譲って貰った自分の立場が無い。
病院への地図と薄荷飴を握らせ、背中を押し送り出す。
取り合えず今自分がしてやれる事はこのくらいだろう。
後は本人が直接会って確かめなければどうにもならない。
机の上に置いてある一枚の紙を摘まみ上げる。
それは貴子の様態が書かれた報告書。
緋紗子それを眉間に皺を寄せて見ていたが、やがてぐしゃぐしゃに丸めると、ゴミ箱へと投げ捨てた。

468 :名無しさん@初回限定:2007/04/03(火) 05:24:55 ID:hnZjWsa20
できるだけ時間を掛けて行きたい。
そんな自身の願いとは裏腹に、病院へは迷うことなく辿り着いた。
受付で学生証を提示し、部屋番号を尋ねる。
どんな顔をして合えば良いのか、一歩一歩近づくに従って胃が締め付けるような痛みを訴え始める。
目的の場所に近づいて来た時、この場に似つかわしくない派手な色に髪を染めた男が一人。
男は同じ場所を行ったり来たりうろうろしていたが、瑞穂を見るとぎょっとした表情を浮かべ走り去っていった。
不思議に思ったが、今はそれを考えれるだけの余裕は無い。
ドアの前に立ち、早鐘を打つ心臓を深呼吸で落ち着ける。
それからノックを2つ。
少し間を置いて部屋へ招き入れる声の誘うままドアを開いた。
白く無機質な十畳ほどの個室。ベッドの上には上半身を起こした貴子。
検診中だったのか、その脇には白衣を纏った医師とお付の看護士が一人づつ。
近づき口を開こうとした瞬間、先程まで考えていた科白が一気に吹き飛ぶ。
なんとか言葉を探し出し、震える声で様子を尋ねた。
しかし貴子は困った表情を浮かべ、そして発した言葉に瑞穂は耳を疑った。
戸惑う瑞穂。そんな瑞穂に医師が告げる。
記憶喪失。
事故による外傷は大した事は無い、だがその代わり記憶の一部が抜け落ちてしまっている。
ハンマーで頭を打たれたような衝撃。
ふらふらとよろめき、傍のテーブルに体をぶつけその場に崩れ落ちる瑞穂。
慌てて医師と看護士が駆け寄り、大丈夫かと体を揺さぶるが、頭が真っ白になった瑞穂には微塵も届かなかった。
そんな様子を貴子は、先ほどと同じく困った表情を浮かべ、不思議そうに見つめるだけだった。


「あの、失礼ですがどちら様でしょうか」

469 :名無しさん@初回限定:2007/04/03(火) 05:25:57 ID:hnZjWsa20
読み返して修正を加えてたらもうこんな時間・・・
でもやっぱり何度読み返してもダメダメだなぁ
ネタも二次SSではありきたりだし
他にも誤字脱字があるかもしれないけど
そこはなま温い目で見てくれると有り難かったりする

あと、連投で引っ掛かったからID変わってるけど、>>468は>>465->>467の続きです

さて新年度早々遅刻はできん、さっさと寝よ・・・

(一応続きがあるけどそこは反応を見つつ)

470 :名無しさん@初回限定:2007/04/03(火) 16:32:35 ID:1AWtHGNM0
>>469
生温かい目で最後まで見届ける所存であります|∀・)

471 :名無しさん@初回限定:2007/04/03(火) 23:59:15 ID:1XQ6P6ji0
>>469
続きキボン

472 :名無しさん@初回限定:2007/04/04(水) 01:12:02 ID:8zLtufCf0
俺も続きよみたい。なんか妙に雰囲気のある文だな。
ただ、推敲はもっと慎重にお願いしたい。誤字多いよ。

473 :名無しさん@初回限定:2007/04/04(水) 02:19:25 ID:qHbh9YYn0
>>465-468を書いた者です
(証明はできないけど)

>>470-472
感想ありがとうございます。
出禁食らわずにすんで、とりあえずほっとしてます。
続きは今書いてる途中なので、出来上がったらUPします。

>ただ、推敲はもっと慎重にお願いしたい。誤字多いよ。
すません。
誤字が多いとそこで面白くなく感じてしまいますし、
次は気を付けます。

474 :27:2007/04/04(水) 18:23:38 ID:Bbbc+Eqa0
初めての投稿です。
いろいろと不具合もあるでしょうが、ご勘弁を。
まりやEND後





475 :27:2007/04/04(水) 18:26:17 ID:Bbbc+Eqa0

   Nurses June War  (看護士たちの六月戦争)


六月のある日、鏑木テクスタイルプランニング本社ビルの医務室ではただならぬ緊張が走って
いた。
「A班は東、B班は西、C班は北、D班は南、E班とF班は被害者輸送、G班は予備だ。
みんなわかっていると思うが、これからわれわれが立ち向かうのは、史上最強の人物兵器だ。
くれぐれも気を抜かないように・・・・。」
鏑木テクスタイルプランニングの医務室の担当医が神妙な顔つきで辺りを見回した。
「武運を祈る!」
「ハイ!」
そういうと各員はいっせいに自分の持ち場へと駆けだした。

476 :27:2007/04/04(水) 18:29:02 ID:Bbbc+Eqa0
鏑木テクスタイルプランニング本社ビル。その日、本社ビルの12階にあるホールでは、
ファッションデザイナー茉莉花の君こと、御門まりやの夏物の最新ファッションショーが
行われていた。
「イヤー、こんなにたくさんの人が来てくれるとは。あたしも偉くなったもんだねー。」
嬉しそうにいうまりやの横で、この会社の社長、鏑木瑞穂はため息をついていた。
「ねぇまりや、たくさんの人が来てくれるのは嬉しいんだけどさ・・・。」
「けど、なによ」
「プログラムの最後に書いてある、鏑木瑞穂ファッションショーって、なに?」
すごく憂鬱そうな顔で瑞穂が聞く。そんな瑞穂にまりやは当然、と言う顔をしながら答えた。
「なにって、その名のとおり瑞穂ちゃんのファッションショーだよ。」
「だから!なんで僕がファッションショーに出なきゃならないの!」
「ぐずぐずいわない!男なら覚悟を決めなさい!」
男だからいってるんだけど・・・。そんな瑞穂のつぶやきは、周りの雑談に消えた。
「はぁ〜。貴子さんなんて、カメラまで持ち出してるし・・・・」
確かに、秘書室長の厳島貴子は一番いい席に、カメラを持って座っている。
「はぁ〜」
瑞穂はまたため息をつく
「ほらほら、恋人の晴れ舞台にため息なんかつかない。」
ため息の元凶が、瑞穂の背中をバシッ!とたたいた。

477 :27:2007/04/04(水) 18:30:59 ID:Bbbc+Eqa0
「こちらE班。ただいま現場に到着しました。」
「ウム。状況はどうだ。」
「まだあの方は現れていないようです。」
「わかった。だが気をつけるんだぞ。間違って間近で見たら、お前たちも被害を受けかねん。」
「了解」


ファッションショーもいよいよ終わりに近づき、瑞穂はまりやに(無理やり)着替えさせられていた。
「まりや〜。やっぱり恥ずかしいよぅ。」
「大丈夫だって。今の瑞穂ちゃん、さっきのモデルの子達よりずっとかわいいから。」
「そういう問題じゃなくて・・・。」
そんなことを言ってると、舞台のほうから司会者の声が聞こえてきた。
「さぁー皆様お待ちかね。いよいよわが社の社長、鏑木瑞穂様のファッションショーです!!」
うおぉぉぉぉぉ!!!!
それに続く大歓声。ほとんどの人がカメラやケータイを持っている。
「おぉー瑞穂ちゃん、すごい人気だね。うらやましい。」
「ちっとも嬉しくないよ〜」
瑞穂は泣きながら答えた。

478 :27:2007/04/04(水) 18:35:00 ID:Bbbc+Eqa0
「こちらE班!こちらE班!本部、応答願います!!」
「こちら本部。どうした?始まったか!?」
「ハイ、始まりました!」
「あの方はもうでてきたか?」
「いえ、まだ・・・あっ、今現れました!」
「どうだ?」
「普通に夏物を着ています。あっ戻られました。今度は・・・今度も夏服です。ですがかなり
露出が高いです。」
「被害は?被害はどうだ?」
「はい。特等席に座られている女性が出血していますが、まだ大丈夫です。」
「わかった。被害が発生したらまた連絡しろ。」
「了解!」
通信が切れると、担当医は全員に無線をつなぎ、呼びかけた。
「各員戦闘準備!まもなくここは戦場になる!!気を引き締めよ!!!」
「はい!!」
担当医は無線を置いた。


「瑞穂ちゃん、ハイ、次はこれ♪」
「えぇ〜、こんなの着るの〜?」
瑞穂は顔を真っ赤にしながら言う。ちなみに今の格好は、ゴスロリ風のドレスである。
「そだよ。やっぱお客さんのニーズには応えなきゃ。」
「うぅ、もうこれじゃあファッションショーじゃなくて、コスプレ大会だよ・・・。」
そんな瑞穂のつぶやきは、客席の瑞穂コールに消えた。

479 :27:2007/04/04(水) 18:50:21 ID:Bbbc+Eqa0
「本部!E班です!応答してください!!」
「どうした、何かあったのか!?」
「はっ、それが今しがたあの方がセーラー服で出てこられまして・・・」
「それで?」
「それがまたすごいミニスカで、負傷者が続々と・・・。あっ、今特等席の女性が出血多量
で倒れました!」
「その人をC班に運べ!」
「はい!!」
隊員はそういうと、担架を持って走り出した。


C班の病室に女性が運び込まれた。金色の髪を振り乱し鼻にはティッシュが詰め込まれているが、
顔はとても幸せそうにしている。
「室長、しっかりしてください!室長!!」
「うぅ・・・君枝さん、わたしはもうだめですわ・・・。」
「室長!!」
君枝、と呼ばれた女性に、貴子はカメラを託した。
「わたしの代わりに、これで・・・これで瑞穂さんのお姿を・・・。」
そういうと、何かを思い出したような表情をし、噴水のように血が吹き出た。
「マズい、非常に危険だ。輸血用意!」
看護士が二人を引き離し輸血の準備をする。
「君枝さん、どうか・・・。」
「わかりました室長。」
君枝は涙ながらに応えた。
「社長の写真は、わたしが必ず取ってきます。ですからご安心を。」
そういうと、君枝はホールへと走っていった。

480 :27:2007/04/04(水) 19:02:08 ID:Bbbc+Eqa0
「瑞穂ちゃ〜ん、今度はこれだよ〜。にひひ。」
「そ、そんな・・・。こんなの着れないよ〜。」
瑞穂が泣く。ちなみに今の衣装はサンタ服をアレンジした衣装(やはりミニ)である。
「大丈夫だって。絶対に似合うから。」
「そういう問題じゃ・・・。それにさっきからみんな次々と倒れていってるんだけど・・・。」
「大丈夫、大丈夫。」
「全然大丈夫じゃないよ〜」


「こちらF班!!本部、大変です!!!」
「どうした、なにがおきた!?」
「それが今、あの方がナースの格好で出てきまして・・・・」
「なにぃ!?ナースだと!」
「はい。それで、その姿を間近で見たE班班長以下16名とF班の隊員8名が失神して・・・」
「だからあれほど気をつけろといったのに・・・」
「要救助者146名!われわれだけでは手が足りません!応援を!!」
「わかった」
担当医は、後ろで待機しているG班に向け言った。
「総員出動!敵は想像以上に手ごわい。気をつけるように!!」
「了解!!G班、出動します!」
そういうと班員たちは班長以下、担架を持って現場へと向かった。

481 :27:2007/04/04(水) 19:06:48 ID:Bbbc+Eqa0
各班の病室は地獄と化していた。
「B型の血液、早くもってこい!」
「O型の血液、足りないぞ!」
「AB型の血液、早く本部から補充して来い!!」
周りにはあふれんばかりの人が、血にまみれ転がっている。だが、どの顔も非常に満足そうだ。
「要救助者32名追加!!」
「その辺のソファーにでも座らせとけ!!」
「ティッシュが足りません!!」
「近くのコンビにいって買い占めて来い!」
野戦病院さながらである・・・・。


「はぁ、やっと最後だ」
瑞穂は疲れきった表情でいった。ちなみに今はチャイナ服である。
「みーずほちゃん♪最後はこれだよ〜。」
まりやが嬉しそうに最後の衣装を渡す。
「ねぇまりや、もう逃げてもいい?」
「そんなこといわないで。ほら、お客さんが待ってるよ。」
「もうほとんどいないよ〜。」
確かに、ホールには君枝を始めとした十数名しか残っておらず、みなティッシュを鼻に詰めている。
床はもとが何色だったかわからないくらい赤く染まっていた。
「なにいってんの。たとえ一人でもお客さんがいるなら舞台に立たなきゃ。それでもこの社のアイドルかー!」
「アイドルじゃないんだけどな・・・・。」
瑞穂のつぶやきは、まりやのわめきに消えた。

482 :27:2007/04/04(水) 19:10:07 ID:Bbbc+Eqa0
「こっ、こちらG班!本部、応答を!」
「こちら本部。どうしたんだ!?」
「あの方が、あの方がメイド服で・・・!」
「なんだとぉぉぉー!!!」
「F班班長以下11名、およびE班の残存勢力全員失神!わが班も壊滅的な打撃を受けました!」
「ホールの被害は?」
「女性一人を残して、全滅です!」
「そうか。だがショーは今ので最後のはずだ。何とかして、被害者を救出してくれ。」
「了解!」


C班の病室では、相変わらず貴子が横になっていた。
「あぁ・・み、瑞穂さん・・・。」
時折、うめくようにそうつぶやく。そこへ君枝が、這いつくばるようにしながら入ってきた。
「会長・・・やり・・ました・・・。瑞穂さんの・・・写真・・とってきました。」
「君枝さん・・・。」
貴子は、目に涙をためながら、君枝からカメラを受け取る。
「それから・・・わたしは・・いまは室長ですわよ・・君枝さん。」
「す、すいませ・・・」
がくっ。
そういうと、君枝は力尽きた。
「だ、大丈夫ですか?」
看護士があわてて君枝のそばによる。
「君枝さん・・・、あなたの気持ち、無駄にはいたしませんわ。」
貴子はそういってカメラに取られた画像を見た。
「あっふ・・・・」
ぶしゅぅぅぅぅぅ
貴子は再び、血を噴いた。

483 :27:2007/04/04(水) 19:16:30 ID:Bbbc+Eqa0
今年は無事に終わりそうだな・・・・。
女性一人を残して全員が気絶し、半径600M以内のコンビニと薬局のティッシュペーパーをすべて買
占め、C班では被害が再発し、ホールは血の海になって入るが、それでも担当医にとっては無事らしい。
「各員気合を入れろ!!もうすぐ終わるぞ!」
担当医は全員に向け号令した。


「お見苦しいところをお見せしました。」
貴子以下、ショーを見て気絶した人々が担当医たちに頭を下げた。
その数およそ1200名。よくもまあこれだけの人数が気絶したもんだと思う。
「いやぁ、仕方ないですよ。なんせうちの社長ですから。」
輸血用の血液は空になってしまったが、もう心配はないだろう。
「そういえば、わたし、ホールにバックを忘れてしまったわ。」
「あらわたしも」
「わしもそうだ」
みなが口々に言う。
「じゃあ一回ホールに戻りますか。」
誰かの提案で、一行はホールに戻った。

484 :27:2007/04/04(水) 19:22:37 ID:Bbbc+Eqa0
担当医は喫煙席でタバコをふかしていた。一仕事終えた後の一服はうまい。
医者の身分としては辞めなければいけないのだろうが、今回のような大仕事の後は、どうしても吸いたくなる。
そのとき、無線が入った。
「こっ、こちら・・A・・班。おう・・・と・・う・・・ねが・・い・・ます」
「どうした。」
「そっそれが・・・、A〜G班・・・ぜん・・め・・・・つ・・。・・よう・・・きゅうじょ・・しゃ・・せん・・・に・・ひゃくめい」
「なんだと!?なぜだ!」
「す・・すごいものを・・・」
「すごいもの?」
「も・・だめ・・・。」
「もしもし、誰でもいい。応答しろ!」
担当医は全員に無線をつないだ。だが、誰もでない。
担当医はホールへと走った。


ホールは血の海と化していた。
そんななか、瑞穂とまりやが必死に介抱ている。
「ど・・どうしたんですか!?」
「あっ、先生」
瑞穂が助けを求めてくる。
「何があったんですか?」
「え・・えと・・」
瑞穂は急に赤くなる。
「イヤー、瑞穂ちゃんのメイド姿があまりにもかわいかったんで、ちょっと半脱ぎにさせてみたんですよー。」
まりやが頭をかきながら応える。
「で、そこにこの人たちが入ってきたと・・・・。」
「ま、そんなとこですね。」
「・・・・・」
担当医は頭を抱えた。瑞穂がまりやに、なみだ目ながら訴える。
「うぅ・・・・。こんな恥ずかしいとこ見られるなんて・・・。もう外を歩けない・・・・。」
「気にしない、気にしない。」
「気にするよー」

485 :27:2007/04/04(水) 19:26:20 ID:Bbbc+Eqa0
「・・・・・では次に、鏑木テクスタイルプランニング本社ビルでおきた、集団吐血事件についてお伝えします。
昨夜未明、鏑木テクスタイルプランニング本社ビル12階で行われた、新作夏のファッションショーに出席した
1200名が、大量の出血を伴い、病院に運ばれました。このうち、この会社の社長秘書室室長の厳島貴子さんと
一時期は意識不明の重体でしたが、今は意識を取り戻しているとのことです。
医療スタッフの話によると『運ばれてきた人は皆,重体の人も含めて、とても幸せというか・・・満足そうな表情をしていました』
と語っています。これについてこの会社の社長、鏑木瑞穂さんは『何も知りません・・・』と力なく応えていました。
また、この事件により、関東地方一帯の血液が不足するという事態に陥っており・・・・・・」



後日、医務室が大幅に増築されたのと、輸血用の血液が常時大量に保管されるようになったのは、言うまでもない。


486 :27:2007/04/04(水) 19:28:12 ID:Bbbc+Eqa0
お目汚し失礼しました。
ご不満、非難、誤字脱字とうとうありましたら、ご指摘願います。
後悔はしている。でも反省はしない。

487 :名無しさん@初回限定:2007/04/04(水) 21:32:16 ID:61chX6bt0
>>486は病院に運ばれた

488 :名無しさん@初回限定:2007/04/04(水) 21:33:53 ID:61chX6bt0
まちがえたぁぁぁぁぁぁぁ
>>487は病院に運ばれた、の間違いでしたぁぁぁぁぁ

489 :サヴ ◆KrLRciv9M6 :2007/04/04(水) 22:02:18 ID:01ciHSvE0
サヴです。
27さんGJです。
医務室はERに早変わりですかw

「グリーン先生、急患ですっ!」
治療室に駆け込んでくるまりや。
「まりや君かい。今日はどうしたんだい?」
「友人が足くじいちゃって……」
ひったくってきた車椅子に座った瑞穂を診せる。
「や、瑞穂君じゃない……かっ!」
ぶしゅー
鼻から血を噴出して崩れ落ちるグリーン医師。
「グリーン先生?!」
何事かと駆け寄ってくるウィーバー医師。
「あ、ウィーバー先生!この部屋に入っちゃ……」
「何があったのよ。」
ウィーバー先生と目が会う瑞穂。
「はふうぅぅぅぅぅ……」
床に崩れ落ちるウィーバー医師。
「せ、先生?!」
「まりや、いい加減この格好から着替えさせてくれないかな……」

お目汚し失礼しました。
ドラマERからのネタでした。

490 :名無しさん@初回限定:2007/04/05(木) 11:51:32 ID:LXb4VUgr0
>>489
この格好ってどの格好?

491 :名無しさん@初回限定:2007/04/05(木) 15:00:33 ID:C3mAHmW8O
ER見てないからざっぱりわからん。

492 :名無しさん@初回限定:2007/04/05(木) 16:29:58 ID:309as4+q0
手術前に着るアレ(名前知らん)じゃね?

妊婦とか着てそうなゆったりしてる奴

493 :名無しさん@初回限定:2007/04/06(金) 01:35:43 ID:lAC7HV+h0
いや、ナースだろ

494 :名無しさん@初回限定:2007/04/06(金) 23:20:57 ID:71/hywZl0
>>475
>史上最強の人物兵器

「その命、30億ギルダンなり」?

もっと高値をつける方〜?

495 :27:2007/04/07(土) 13:59:21 ID:kXcHfcct0
お姉さまは、どんな値にもかえられません。

496 :名無しさん@初回限定:2007/04/07(土) 16:26:12 ID:H4blHDtM0
「もっとも高価なワンマンアーミー」だったっけ?


497 :名無しさん@初回限定:2007/04/07(土) 19:25:43 ID:AgoEXx+qO
SS書こうと思ってもおとぼくの内容ほとんど忘れちゃったんだよなぁ

498 :名無しさん@初回限定:2007/04/08(日) 06:17:54 ID:dH02Ti1C0
>>494,496
ボトムズ9話の予告ですな。


敵の血潮で濡れた肩。
地獄の部隊と人の言う。
ウドの街に、百年戦争の亡霊が蘇る。
パルミスの高原、ミヨイテの宇宙に、
無敵と謳われたメルキア装甲特殊部隊。
情無用、命無用の鉄騎兵。
この命、30億ギルダン也。
最も高価なワンマンアーミー。

次回「レッドショルダー」。
キリコ、危険に向かうが本能か。


499 :名無しさん@初回限定:2007/04/08(日) 16:03:50 ID:Djpdkdum0
>>465
続きをお願いします。

500 :名無しさん@初回限定:2007/04/10(火) 23:08:22 ID:ot3HLW770
>>498
破瓜の血潮で濡れたモノ。
エルダー・シスターと人の言う。
寮の一室に、一子ちゃんの亡霊が蘇る。


……続きを誰か頼む。

501 :468からの続き:2007/04/11(水) 04:27:49 ID:5rkcx/vw0
夜。消灯時間が近づき、光量が抑えられた薄暗い廊下を進む。
目的の部屋の前でノック。返事を待たずにドアを開けた。
ベットの上では貴子が熱心にノートに目を通していた。
中に入ると気が付き視線を向けてくる。そして表情を綻ばせた。
ごきげんよう御門さん。貴子の挨拶に軽く手を上げて答える。
ベットの傍らに置かれた椅子に座ると、今日一日の様子を尋ねた。
どうやら今日は平穏無事な一日が過ごせたらしい。取り敢えずは一安心というところ。
ただ退屈で困ったと、軽口を叩けるまで回復した我侭なお嬢様には苦笑するしかなかった。
それからは他愛の無い談笑を消灯時間ぎりぎりまで交わす。
授業での事。
部活での事。
寮での事。
病院での事。
etcetc....
貴子は会話の全てをノートへ書き込んでゆく。
昨日乞われて渡したばかりの真新しいノートは、既に数ページに渡り隙間無く文字が書き込まれていた。
それは自分が忘れてしまった記憶の伝聞を書き留めたもの。翌日には全て完璧に暗記されていた。
元々聡明な上に努力家だった貴子だ、その気になりさえすれば容易い事かもしれない。
だが毎晩必死になって覚えている姿を想像すると痛々しく思えた。
やがて消灯時間を告げるアナウンスが流れる。
明日もまた来ると告げ席を立つ。
ドアを開けたところで貴子が呼び止めた。
今日見舞いに来てくれた宮小路さんとはどんな方なのかと。
眉間に皺が寄るのが解った。もし鏡が有ったなら、この上なく不機嫌な顔が写っていただろう。
それはまた明日教えてあげる。
問いには応じず。後ろ手にドアを閉めた。
また一人、薄暗い廊下を進む。
面倒な事になった。そう焦りと憤りを感じながら。

502 :501の続き1:2007/04/11(水) 04:33:07 ID:5rkcx/vw0
対面の郊外へと向かう路線とは対照的にガラガラの車内。
まりやは体を落ち着ける気になれず、ドアの脇にもたれ掛かった。
貴子が交通事故に合い記憶を無くした。その事を知ったのは貴子が交通事故に合った当日。
両親と約束させられた、週に一度の電話での連絡。その時だった。
ただの勘でしかなかった。だが嫌な予感にそのまま従う事にした。
要領を得ない親の尻を叩き、搬入された病院の特定を急がせ、SPを可能な限り用意させる。
名門御門家の娘。自分の価値はソレを含めてのものだと思っている。
家の力に頼る事を嫌がる者もいるが、自分にはそのつもり毛頭無い。
個人情報云々と渋っていた消防庁だったが、消防庁長官に圧力を掛けるとあっさりと落ちた。
用意させたヘリで病院へ急ぐ。すると危惧した通りだった。
病院はこれを機に厳島家と誼を結ぼうとする者が押しかけ、病室はその者達で溢れかえっていた。
病院のスタッフだけで騒ぎを抑制するのは到底不可能。顎をしゃくり、隣の黒服に指示を下す。
一斉に何十人もの大男が襲い掛かり、一人、また一人と引き剥がしては外へ投げ捨ててゆく。
一人残らず部屋の外に放り出すと、入り口で黒服が壁となり立ち塞がった。
険悪な空気が一帯を支配する。だが程なくして到着した機動隊に一斉に確保され、全員留置場へ送くられた。
思ったより早い到着。警視庁長官には、ちょっとした飴を与える必要があるだろう。
病院の院長には前面協力を約束させた。医師としての腕は知らないが、取り立てて何も無い普通の男。
九割の恐怖と一割の飴をちらつかせてやれば、善からぬ考えを起こす事もないだろう。
翌、日曜日にも懲りずに現れた者が居たが、各方面への手配が完了してからは一人も現れる事は無かった。
厳島家は幸いな事に今のところ動きは無し。
実の娘が事故に合ったというのに、動き無しというのが幸いかどうかは判断の分かれるところだが。

503 :501の続き2:2007/04/11(水) 04:33:45 ID:5rkcx/vw0
とは云え厳島の当主と嫡男。その才はかなりのもの。
確かに醜聞の類も耳にするが、彼らの女遊びなど齢七十、八十にもなって半世紀も歳の離れた美男美女を囲い、
毎夜吐き気をもよおすほどの変態行為に興じている高尚な血筋を受け継ぐ名家のご老人方と比べれば大した事は無い。
それにある程度の女遊びは、賞賛こそされ、非難を受けるものではない筈だ。
地位と権力を持つ者が、女一人で国の行く末を左右させる事があってはならないからだ。
兎も角、一人相手でも痛み分けに持っていければ万々歳。二人も向こうに回してやり合える自信は無い。いま暫くは静観していてもらう。
最後に、気の毒な程優し過ぎる幼馴染に、どうやって衝撃の少ない方法で知らせるかだったのだが。
ガラスの向こうで流れる景色を感慨無く眺めていると、隣の車両から移ってきたOLが傍で足を止める。
まりやに聞こえるだけの小さな声で何かを呟くと、また別の車両へと移って行った。
大きく息を吸い、吐く。なるほど、梶浦緋紗子。あの女がね。
どうしたものか。頭の中で、次の一手を次々と繰り出してゆく。
その中から最善の一手を選び出すのは時間が掛かりそうだった。

504 :502-503の続き1:2007/04/11(水) 04:40:46 ID:NeGrca2g0
金曜日。瑞穂にとって気鬱で長い一週間がようやく終わろうとしていた。
あの日、月曜日以降貴子に会いに行く事は無かった。
翌日も緋紗子から書類の受け渡しを依頼されたがそれは固辞した。
あまりに頑なだった為察してくれたのだろう、その後呼び出される事は無かった。
以降、目も耳も塞いでいたつもりだったが、それでも噂は耳に入って来た。
なかでも圭は、休み時間の度にやってきては貴子の様子を逐一報告していく。
自分の所為であんな事になってしまった貴子の事を聞くのは辛かったが、知る事でいくらか救われた面もあった。
元々潜在人気は高かった貴子。ただ自分にも他人にも厳しいその性格から表に表れる事は無かった。
だが記憶を失ってからは角が取れ、人当たりが格段に良くなった。
その事が見舞いに行った者から広がり、次第に見舞いに訪れる人数が増え、病院側からの要望で見舞い者数に制限が掛けられる程だった。
見舞いに訪れる者の中で、意外と思われているのがまりや。
顔を合わせる度に言い争いをしていた者が、毎日見舞いに顔を出している。その事はちょっとした話題になっていた。
だが、まりやらしいと瑞穂は思う。
あの何よりも面白い事が大好きなトラブルメーカーは、自ら災難を振りまくクセに困った人を放って置けない面倒な性格をしている。
そんなまりやと比べて自分は一体何をしているのか。そう落ち込んでいるときに、圭から言われた言葉は衝撃だった。
来週から貴子が復帰する。
外傷は大したことはない。記憶を取り戻す為には早く普段の生活に戻るのが一番との理由からだった。
それは解る。だが貴子が復帰すれば、嫌でも顔を合わせる機会が出てくるだろう。
今の自分には彼女と会うだけの自信は無い。夕日に焼かれながら、トボトボと帰路につく。
ドアを開け、小さくただいまと呟いた。そして中に上がろうとしたところで足が止まる。
玄関に積まれた数個のダンボール。
何だろう。そう思っていると、パタパタとスリッパの音が近づいて来る。
目の前に現れた人物に瑞穂はあっと声を上げた。
お互いの目と目が合い、視線が絡み合う。そして時が止まった。

505 :502-503の続き2:2007/04/11(水) 04:41:31 ID:NeGrca2g0
同刻。学院長室には学院長とまりやが居た。
要望通り手配しておいたと述べる学院長に礼を言うまりや。
しかし一体何を考えているのか。学院長が疑念を口にする。
まりやが裏で派手に立ち回っている事は耳にしている。
そんな学院長に、まりやは微笑んで見せた。邪魔をするならば容赦はしない。
禍々しいその微笑に冷や汗が一つ、背筋を伝って流れ落ちた。


「あたしはただ、二人の友人に元の姿を取り戻して欲しいだけですよ。」

506 :名無しさん@初回限定:2007/04/11(水) 04:44:41 ID:NeGrca2g0
随分遅くなってしまいましたが、なんとかUPする事ができました。

なんと言うか、全てがダメダメですね。
内容は言わずもがなですが、3スレに抑えようとしてたら
制限に引っ掛かって歪な形でのUPになってしまったり。

今度はもうちょっと早く、もうちょっと良いものが出来るよう頑張ります。

507 :名無しさん@初回限定:2007/04/11(水) 08:07:39 ID:BXTEzZ8W0
GJです。
続き、期待してます

508 :名無しさん@初回限定:2007/04/11(水) 18:24:25 ID:wdH2NuDs0
誤字脱字のチェックをもうチョイしたほうがいいとオモイマス。

あと適当にコテや鳥を付けていただけると追っかけやすいのですが……

509 :名無しさん@初回限定:2007/04/11(水) 18:43:32 ID:nPFDh5CD0
前のときも思ったが、どうやったら送り仮名を間違えられるんだ?
折角話自体は面白いのに無駄に評価をおとすよ、誤字脱字は。
だから推敲はもっと慎重にと言ったのに。

510 :名無しさん@初回限定:2007/04/11(水) 20:31:55 ID:tHPZ1ZFY0
たったひとつの遺言のため、生まれ変わった無敵のエルダー
鉄の会長、叩いて墜とす、瑞穂がやらねば誰がやる。

511 :名無しさん@初回限定:2007/04/11(水) 22:55:35 ID:LU1e5Ex90
>>508-509
すいません力不足でした。
何度も見直してはいたんですが、どうやら基本的な国語の
能力に問題アリみたいです。
精進して誤字脱字のない、最低限人前に出せる文章が
書けるようになってからまた来ます。m(_ _)m

512 :名無しさん@初回限定:2007/04/11(水) 23:45:38 ID:6uNm3cXd0
>>511
まあ、気にすんな。
物書きの精進は文章を書くことのみよ。

今度からはゆっくり落ち着いて推敲しようぜ。

513 :1/8 ◆KEl2kizUBk :2007/04/12(木) 01:54:26 ID:s8oxegGD0
「ああ、返す返すも残念だわ…」
校舎と校門を結ぶ並木道で小鳥遊圭はため息を吐き出すように呟く。
そんなクラスメイトの姿を見て、隣を歩く高根美智子は小首をかしげながら問いかけた。
「何が、ですの?」
不思議そうに、しかしその顔に浮かべた笑みはそのままの美智子を横目に圭は短く答える。
「ダンス」
「ああ、なるほど」
得心がいった、という風に小さく頷く美智子。
意味不明の会話にも見えるが、この時期─12月初旬─のここ恵泉女学院で「ダンス」といえば
12月24日の降誕祭で開催されるダンスパーティーを指すことに他ならない。
しかし、今日に限って言えば…
「紫苑さまと瑞穂さんは絵になるお二人ですからね」
そう、今日に限って言えば、休み時間中に前エルダー十条紫苑と現エルダー宮小路瑞穂が見せた
廊下でのダンスを意味していた。
現に、下校中の生徒が居並ぶこの並木道でも口々から漏れ聞こえてくる話題の大半が二人のダンスのことだった。
曰く、地上に降りた最後の天使の舞だ、云々…
「あれでは皆さんしばらく授業に手が付かなかったかもしれませんね」
騒然とした廊下の様子を思い出したのかクスリと声を上げ、口元を覆う美智子。
しかし、そんな美智子の姿を横目で見ていた圭が口を開いた。
「…それは当て付け?」
憮然とした─圭は元々感情を表に出す性質ではないが、付き合いの長い美智子には判る─声に美智子は慌てて取り繕う。
「ごめんなさい、圭さん。そういう訳ではありませんわ」
紫苑と瑞穂のダンスは教室前で行われ─それゆえ衆目を浴びることになったのだが、
折り悪く圭はその場に居合わせることができなかったのだ。
かなり大げさに落胆してみせていたのは演技ではなかったようだ。
…その後、教室内でダンスの再現を依頼していたが、あるいはそれも冗談ではなく本気だったのかもしれない。
机をなぎ倒しながらのダンスを。
美智子は己の失言を悔やむ。
自分はまだ圭の頭の中を把握しきれていないようだ。
(でも、そんなところが圭さんの魅力なんですけど)

514 :2/8 ◆KEl2kizUBk :2007/04/12(木) 01:54:41 ID:S+jfGjgkO
パートナーの振る舞いに惚れ直しながらも、美智子の脳内では並列思考でこの場を切り抜ける言葉を捜していた。
「…ですが、お二人のダンスでしたら降誕祭でも見られるのではないですか?」
そう、今日の廊下での事はアクシデント。
予行演習ともいえないような代物だ。
狭い廊下ではなく、体育館でこそダンスのステップも映えるというものだろう。
しかし、そんな美智子の言葉は圭によって言下に否定された。
「それは無い」
しばしの静寂。
思いのほか強い口調に美智子は次の言葉を捜しあぐねたが、圭が先に言葉を継いだ。
「瑞穂さんはエルダーだから男性役は確定。
紫苑さまは昨年のエルダーだけど、あの方の性格から言って、今年もエルダーの役回りを引き受けるはず。
だから、紫苑さまも男性役。
ゆえに男性役同士の二人が降誕祭で踊ることは無い」
淡々と、しかし力強く述べる圭。
…そう、確かに圭のいうとおり降誕祭では二人とも男役を務める可能性が高い。
女子校である恵泉では慢性的に男役が不足している。
希望を取れば圧倒的にみな女役を望んでおり、例年生徒会役員が男役に引っ張り出されるほどだ。
そういう状況下では、エルダーである宮小路瑞穂は当然として、元エルダーの十条紫苑もまた男役を選ぶだろう。

515 :3/8 ◆/5HFLbqiOo :2007/04/12(木) 01:56:31 ID:s8oxegGD0
「で、でも、男性役でもお二人のダンスが見られることには変わりありませんわよ?」
「…美智子、分かってない。
あの二人のダンスだから価値があるのよ。
歴代最多得票のエルダー宮小路瑞穂。
控えめな自己主張とその物腰の柔らかさから理想の女性像を重ねる生徒も多いが、その内実は男性的で力強い。
体育祭MVP&マラソン大会3位すら実力の70%も出していない。
転入当初こそメンタルな弱さが目立ったが、エルダーとしての学校生活が自信と貫禄を身に付けさせた。
今や恵泉女学院非公式ランキング「お嫁にもらってほしい生徒」不動の第一位となる。
片や影のエルダー十条紫苑。
毅然とした立ち居振る舞いと容姿から男性的な力強さを幻視する生徒も多いが、フィジカル面での弱さ、
そして何より生まれ持った血筋の良さは隠せない。
世が世なら、宮中にお輿入りするお姫さま。入学当時からエルダー候補だったのは伊達ではない。
今や恵泉女学院非公式ランキング「姉になって欲しい生徒」不動の第一位。
伝え聞くところによれば、今日のダンスでは瑞穂っちが男役。
一見”お姫様”十条紫苑となら誰でもステップを踏めそうに思えるが、さにあらず。
身長差からいって、紫苑さまを”女性役”にできる踊り手は今の恵泉において瑞穂たん唯一人。
まさに今日のダンスは千載一遇、一期一会、瓢箪から駒、虎に翼。
ギアスを掛けてでも踊ってもらうべきだったわね…」
すでに途中からは美智子に語りかけるというより独白めいていたが、美智子は圭に気圧されていた。
圭さんってこんなに喋る人だったんだ、とか
恵泉女学院非公式ランキングって何?私も初耳、とか
紫苑さまと瑞穂さんのことをよく見ているんだな、とか
…色々なことが脳裏をよぎったが、最後のところでチクリ、と胸が疼く。
それは愛情とも独占欲とも付かない微妙な想い。
美智子さえカタチの分からないモノだったが、それは圭の次の一言で燃え上がった。
「…まあ、降誕祭で紫苑さまと瑞穂っちにダンスを申し込めばいいかしらね」

516 :4/8 ◆KEl2kizUBk :2007/04/12(木) 01:58:14 ID:s8oxegGD0
小鳥遊圭は本来過去のことにこだわる性質ではない。
しかし、ダブルエルダーダンスの目撃失敗の傷を抉り出すかのような美智子の言動に少し過敏に反応してしまった。
…思わず本音が漏れてしまったし。
そんな己の振る舞いを反省していると。
「……け・い・さ・ん?」
不意に隣からこのンガイの森の夜に響くような声が聞こえてきた。
「…な、なに?」
動揺が口調に現れてしまう。
それは美智子がこの種の声を出すときは大抵圭にとって禄でもないことが起きるから。
まあ、禄でもないことではあるが、嫌なこととも言い切れないのが悩ましいのだが…
「随分とお二人に御執心のようですわね」
「……う」
声の元に目を向けると極上の微笑を湛えた美智子がいた。
切り取って写真にでも収めればさぞかし見栄えのする表情だろう。
しかし、圭の目はその背後に揺らぐ混沌とした陰を捉えていた。
「……Ya na kadishtu nilgh'ri stell'bsna kn'aa……」
咄嗟に魔除けの呪文が口をつく。
もっともそれが美智子とその背後のモノに効果があるかは甚だ疑問ではあったが。
「あら?何か仰ることがありまして?」
「……別に」
己の迂闊さを呪う。
本音がダダ漏れになったのも失態だが、それを美智子に聞かれてしまったのは大失態だった。

517 :5/8 ◆KEl2kizUBk :2007/04/12(木) 01:59:57 ID:S+jfGjgkO
幼稚舎からずっと恵泉にいる生徒が大半というこの学院は、いい意味でも悪い意味でも変化というものに乏しい。
それは内部にいる者には判らない類の感覚だが、外部入学組の圭には一種異様な空間だった。
無論、演劇部部長としての活動は充実しているが、それとて学院生活の半分程度。
概ね退屈な日々は如何ともし難い。
『何かイベント(面白いこと)が起こらないか』
そんな期待に応えてくれる逸材が宮小路瑞穂だった。
圭が宮小路瑞穂に対して興味・関心を持っているのは事実。
しかし、それはアイドル(崇拝される対象)としての「エルダー宮小路瑞穂」に対してのもの。
好感持ってはいるが、好意を持っているわけではない。
もちろん美智子だってそれは承知しているはず。
しかし、頭で理解することと、感情で認めることは別ということか。
こうして話題にすることさえ、避けている節がある。
まあ、それは他の女性全般に関しても言える事だったが。
まったく…圭が瑞穂に告白することも、瑞穂が圭に告白することもあり得ないというのに。
とはいえいずれにせよ、その所為で圭は瑞穂との立ち位置、取り扱いには注意を払ってきたのだが。

518 :6/8 ◆KEl2kizUBk :2007/04/12(木) 02:01:05 ID:s8oxegGD0
「……」
「……」
しばし無言で歩く二人。
これは気まずい。それ以上に、このままではまずい。
ここで何とか美智子の機嫌を取っておかないと自分の身が持たない。
そう判断して口を開こうとした時
「そうだ。いいことを思いつきました♪」
ぽん!と手を打ち合わせて美智子が言う。
その微笑は先ほどから一部の変化もない。
…背後の陰は濃密さを増しているようだったが。
「…何かしら」
しぶしぶ合いの手を入れる圭。
『いいこと』なんて全く聞きたくはないのだが、聞かないと話が進まない。
それに、放置なんかしようものなら、後で何が待っているのやら…
「圭さん。今年の降誕祭は男性役で出てください」
「え…?」
突拍子もない提案に一瞬圭は呆気に取られた。
そんな圭をひたすらにこやかに見つめる美智子。
「ちょっと美智子。それ話がちが…」
『う』と言おうとして、口ごもる。美智子の混沌がより一層力を増したように感じられたからだ。


519 :7/8 ◆KEl2kizUBk :2007/04/12(木) 02:03:17 ID:s8oxegGD0
恵泉入学以来、降誕祭のダンスパーティーに参加する機会は2度あったわけだが、
圭はその2回とも女役で参加していた。
それは主に美智子の意向によるもので、
表向きは『美智子が男性役をやって見たいので、圭がそれに付き合っている』ことになっている。
やってみたいもなにも、普段から男性役じゃないか─などとは口が裂けても言えないが。
しかし、圭もその真意は大体承知している。
それは『圭が男性役をして、他の女性パートナーを相手にするのが気に入らない』だ。
ダンスパーティーは圧倒的に女性役の比率が高い関係で、ダンスは女性役から申し込むのが常だ。
そして、男性役は申し込みは断らないのが不文律。
もっとも、単なる数合わせで踊るのならば美智子もそこまで固執することはない。
圭に男性役をさせないのは一重に圭の人気の所為だった。
一年生にして演劇部部長となった圭。
それは圭が部長に求められる役割─監督・演出・脚本─に対して十分な能力を持っていたことによる。
しかし、その名声の七割方はその役職に対してのものではなく、主演男優としてのものだった。
圭は演劇部において殆ど男役を演じている。
それは別に圭に変身願望があるとか、そういう訳ではない。
単に他の部員より演技が巧いためだ。
女学院である恵泉では、部員は当然女性。男の役も女性が演じざるを得ない。
しかし、異性を演じるというのは存外難しい.
脇役ならともかく主演を張らせられるような演技者は圭のほかにいなかった。
それだけのことだ。
とはいえ、この恵泉で演劇部の看板俳優となれば、生徒は皆期待してしまう。
つまり、仮想の恋人として。

520 :8/8 ◆KEl2kizUBk :2007/04/12(木) 02:03:44 ID:S+jfGjgkO
そんなわけで、圭にはファンクラブまで存在し、皆がそれぞれ─つつましいものから過激なものまで─さまざまなアプローチをしてくるのだ。
そんな中でダンスの男性役をするなど、狼の群れに羊を放すようなもの─と美智子が思ったかどうかはさておき、
圭は美智子にエスコートされる女性役を演じてきたのだった。
それをここで覆すということは…
(そこまでして瑞穂っちと踊らせたくないのかしらね)
美智子が圭や瑞穂を信用していない訳ではないだろうが、それさえ狂わせるのがエルダーパワーというところか。
「…わかったわ。今年は男性役。でも今からステップを覚えるのは大変ね…」
ため息ひとつ。圭は美智子に対する抵抗をあきらめた。
どうせ勝ち目のない戦いだ。
「あら、私、圭さんになら足を踏まれたって構いませんわ」
「冗談。やる以上はそんな無様は晒さないわ」
「そうですわね。それでこそ圭さんですわ」
「……まあね」
上手く乗せられた気がしないでもないが、美智子の機嫌が直ったのなら重畳。
演劇部部長の名に賭けて、ステップを身につけて見せよう。
とりあえず、生徒会の講習会か。
いや、まて。男性のステップを教わるという名目で瑞穂っちと踊るという手が…
「そういえば瑞穂さんは最近はもの思いに耽る事が多いですわね」
一体何を言い出すのか。
「受験に向けて勉強も大変でしょうし、ご迷惑をかけるわけにはいきませんわね」
畳み掛けるような発言に私は美智子の顔をまじまじと見つめる。
まさかとは思うが…
「もっとも、私が人の─瑞穂さんの心を読んだわけではありませんけど?」
最上の笑顔が添えられた一言に私は天を仰ぐ。
「……Ia! Ia! Hastur cv'ayak…」
ああ、もう私を何処か星の彼方に連れ去って欲しい…

521 : ◆KEl2kizUBk :2007/04/12(木) 02:17:07 ID:s8oxegGD0
>>513-520です。
連投規制回避に小細工してたらトリップ間違えました orz

なんとなく「読みにくい」という自覚はあるのですが、どこが悪いかわかりません。
文法、設定等について問題があればご指摘ください。
次を作る気力が出るか判りませんが、謙虚に受け止めさせて頂きます。


522 :名無しさん@初回限定:2007/04/12(木) 08:49:16 ID:RyFIpvIL0
>>521
GJ!
読みやすい短編でした。

>なんとなく「読みにくい」
段落ごとに一行あけるとかどうかな?

523 :名無しさん@初回限定:2007/04/13(金) 12:20:26 ID:jXxLdCc/0
>>521
段落なしに詰め込まれると、それだけで読む気を無くす人もいるくらいだから
>>522のいうように段落は入れた方が良いと思う。
連投規制でかかる時間が気になるなら、前編後編みたいにして続きはまた後日とするのも手かと。
あと、素の文は1文字空けて始めるとか。

「○○○○○○」
 **************
********。
 □□□□□□□□□□□□□。

「△△△△△△」
 *****。

みたいな感じで。


524 :名無しさん@初回限定:2007/04/13(金) 12:33:24 ID:jXxLdCc/0
あと、細かいことを言うと漢字の比率が多いですね。
漢字とひらがなのバランスをとることで印象を変えることも出来ます。

比率は内容や読んでもらいたい対象に寄りますので一概には言えないのですが
あえてひらがなで書いてしまうことも結構効果的です。
これは読んでもらいたい対象が近いプロの方の作品を読んで紙面の白さを感じてください。

内容以前のこういった受ける印象で損をされては大変にもったいないと思いますので
この辺りに気をつけられると良いかと。

525 :名無しさん@初回限定:2007/04/13(金) 17:10:10 ID:bEOHRmW/0
>>395
遅レスですが、GJです。

>ね? ちゃんと“まいった”って言ってるでしょ

この部分を見て幽遊白書の”暑い"と言ってはいけない状況下での
桑原の「あーついでに」を思い出してしまいました。

526 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 02:40:47 ID:Fd3hNfvS0
東の扉です。

>>525
>この部分を見て幽遊白書の”暑い"と言ってはいけない状況下での
>桑原の「あーついでに」を思い出してしまいました。

実はこのネタはそれから思いつきました。

エルダー1日所有券が原因で入院してしまった瑞穂くんの様子が書き終わりましたので、投下させていただきます。
よろしければ、見てやってください。

527 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 02:44:41 ID:Fd3hNfvS0
 僕はあのエルダー1日所有券を使われたときの様子をビデオで見せられて以来、精神的ショックで入院生活を余儀なくされた。
今回は、そんな僕の入院生活を語ってみたいと思う。

〜お姉さま(ボク)を見舞う処女(おとめ)たち〜

 今日も僕のいる305号室には、学院からたくさんの生徒が見舞いに来てくれる。
「お姉さま、お調子はどうですか?」
「ええ、おかげさまで今日はだいぶいいわ」
 僕はお見舞いに来てくれる生徒に安心してほしくて、そう告げる。
「お姉さま、あのビデオ、拝見させていただきました!」
 ……あのビデオって、当然まりやが売りさばいてる、エルダー1日所有券を使われた日の恥ずかしいビデオだよね。
「……そう」
「お姉さま、紫苑さまにおっしゃったあのセリフ、ぜひここで聴かせてください!」
「お願いします!」
 ……ううっ、悪夢がよみがえる。僕はもう2度とやりたくないのに。
「ごめんなさい。今は療養中だから、あなたたちの期待するふうにはできないと思うのよ」
「そんなーっ! それでもいいから拝見したいんです!」
「そうです! お姉さまのかわいらしいお姿、是非生で拝見したいです!」
 ううっ……よりによってこんなときに頼まなくても……。

 と、その時……。
「おやめなさい!」
 扉の向こうから、凛とした声が響いて、声の主が入ってくる。
「紫苑さん!」
「し、紫苑さま!」
 紫苑さんは、2人の僕の見舞い客に向かって言う。
「あなたたちは、瑞穂さんをお見舞いにいらしたの? それとも、芸のお願いにいらしたの?」
「も、もちろんお見舞いにです!」
「でしたら、瑞穂さんのことを第一に考えてさしあげるべきでしょう。聖央の生徒ならなおのこと、ね」
「は、はい……」

528 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 02:49:23 ID:Fd3hNfvS0
「あなたがたのお気持ちはよくわかりますが、それをお願いするのは、瑞穂さんがお元気になられて
退院されてからでも遅くはないはずでしょう。違いまして?」
「はい! お、お姉さま、申し訳ありませんでした!」
 2人は、そそくさと帰ってしまう。

「紫苑さん、ありがとうございます。おかげで助かりました」
「いいえ。お友達なんですから」
 そう言ってくれる紫苑さん。だけど、おおもとの原因が誰にあるか、わかってらっしゃいますか?
「それにしても、あのことで入院しなければならないほどショックを受けるなんて……」
「ビデオで見せられれば、普通そうなりますよ。僕は男なんですから」
「え? ああ……」
 紫苑さんは一瞬固まると、すぐに納得いったように表情を緩める。
「申し訳ありません。そのことは完全に忘れていましたわ」
 ガーン!!
 そ、そんなにこやかに言わなくても……。
「あら、いけない、落ち込ませてしまいました?」
 そりゃあ落ち込みますよ……。
「でも、それだけ女性らしくなっている、ということだと思いますわよ? 
実際まりやさんのビデオを何回も拝見させていただいてますけど、普通の女性よりはるかにかわいらしいですし……」
 し、紫苑さん……励ましているつもりかもしれませんけど、それは逆効果です……。


529 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 02:52:33 ID:Fd3hNfvS0
「こんにちは、瑞穂さん」
「圭さん……」
 次にお見舞いに来てくれたのは、圭さんだった。
「はい、これ」
「これは……」
 圭さんが渡してくれたのは、今日の授業のレポートだった。
「授業のレポート。外部受験する瑞穂さんなら必要かと思って」
「ええ。助かります」
「お礼を言われるほどではないわ。それと、これ、お見舞い」
 圭さんはそう言って、僕への見舞い品の果物を渡してくれた。
「では、失礼」
「ありがとうございます」
「ふ……お大事に」
 そう言って圭さんは帰っていった。

530 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 02:56:24 ID:Fd3hNfvS0
「瑞穂さん、ごきげんよう」
 次に美智子さんが入ってきた。
「美智子さん……」
「圭さんも、お見舞いの品をお渡しになったそうですね。この果物ですね」
 美智子さんは心配そうに僕の様子を見ながらそうたずねる。でも、なんかすごい殺気を感じるんだけど……。
「ええ……」
「いただいてもよろしいかしら?」
「どうぞ」
 僕がそう言うと、美智子さんが圭さんの見舞い品である果物をとる……ってちょっと……。

 ガラガラガラ……ドカッ!
「ぐえっ!」
 美智子さんが果物をとった拍子に近くの見舞い品が崩れだし、僕のおなかに命中した。
「あら、ごめんなさい」
「……美智子さん、まさかわざとじゃないでしょうね?」
「よくわかりましたね」
 ……美智子さん、病人相手に……ひどいです。
「ごめんなさい。でも、圭さんがいけないんですよ。いくら病人とはいえ、私以外の人に断りもなく贈り物をするなんて……」
「……お見舞い品ぐらい、好きかどうかにかかわらず、普通に渡すと思いますけど」
「そうですね。私も瑞穂さんのことは大切に思ってますし、自分のやってることが理不尽な逆恨みだってこともわかってます。
でも、どうしても抑えることができませんの」
「美智子さん……」
 ……なんかお互い、結構大変なんだな。

「本当にごめんなさい。でも、このあとも周防院さんや上岡さんをはじめ、親しい方たちがお見舞いに来てくださいますから、
メインディッシュをよりおいしくするための少々苦いオードブルということで、こらえてくださいね」
「は、はい……」
「では、お大事に」
 そう言って美智子さんは帰っていった。

「お見舞いでまでいじめられるなんて……僕って一体……」

531 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 03:01:17 ID:Fd3hNfvS0
「お姉さま、お見舞いに参りましたのですよ」
「奏ちゃん……いらっしゃい」
 奏ちゃんがお見舞いに来た。それだけで心が軽くなる。

 やっぱり近くにいる僕を慕ってくれている人のお見舞いってのは、なぜか気持ちが落ち着くからいいな。
美智子さんにいじめられた後だから、なおさら……かな。
「お姉さま、お加減はいかがなのですか?」
「そうね。ちょっと色々あって気が滅入ってたところ」
 僕が言うと、奏ちゃんが慌てる。
「はやや、お姉さま、大丈夫なのですか?」
「ええ、もう大丈夫よ」
 僕がそう言って奏ちゃんに椅子を勧めると、奏ちゃんは座ってお見舞いの品を出してくれた。
「ありがとう、奏ちゃん」
「どういたしましてなのですよ」

「そういえば奏ちゃん、寮とかでの様子はどう?」
「寮……ですか?」
「うん、寮では、みんな、何してるの?」
「そうですね。お姉さまのビデオをよく拝見させていただいているのですよ」
「あ、あら……そんなに見てるの?」
「はいなのです。あの時のお姉さま、とってもかわいくて、奏、もう失神寸前だったのですよ」
「そ、そう……ありがとう」
 心の中で苦笑いを浮かべながらも、僕は笑顔で奏ちゃんに言う。

532 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 03:05:52 ID:Fd3hNfvS0
「あのビデオが、4桁も売れたというのもうなずけるのですよ」
「よ、4桁も!?」
 さすがの僕も驚きを隠せない。
「はいなのです」
「で、でも、聖央の生徒は、七百数十人でしょ?」
「なんか、保存用と観賞用と布教貸し出し用に数本買った方も、大勢いらっしゃるようなのですよ」
「そ、そう……」
「紫苑お姉さまも、毎日夢中になって見ていらっしゃるようなのですよ」
「紫苑さん……」
「他にも、会長さんがいつも見始めてから30分も経たないうちに鼻血を噴いて倒れてしまうとも聞きましたのです」
「貴子さんも見てるの……」
「あと、由佳里ちゃんがなぜかランジェリーショップのシーンの後で、お手洗いが近くなるようなのですよ」
「……それはただの偶然でしょ?」
「奏もそう思うのですが、そのことを指摘したまりやお姉さまによると、そうではないそうなのですよ」
 ……トイレに行くのとビデオの場面とは、どう考えても何の関係もないでしょ?

「そういえば、奏と由佳里ちゃん、あの後まりやお姉さまにあのランジェリーショップでお姉さまのはいてらしたのと
同じデザインの下着を買ってもらいましたのですよ」
「そう。よかったわね」
「では、お姉さま、お大事になのですよ」
「ええ、ありがとう」
 奏ちゃんはそう言って帰っていった。

「それにしても……」
 あの恥ずかしいビデオ、全校生徒に見られてるんだ……ううう……。

533 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 03:10:11 ID:Fd3hNfvS0
「へーい、瑞穂ちゃん、お見舞いに来てあげたよーん」
 次にまりやが入ってきた。
「まーりーやー」
 僕は怒りをこめて名前を呼ぶ。
「うわ、いきなりその表情ですかい」
「よくもあんな恥ずかしいビデオ、全校にばらまいてくれたね」
「いいじゃないの。評判もすんごいいいし、売り上げだって、瑞穂ちゃんにも分けたげてるんだし」
「あのね、分け前をくれればいいってもんじゃないでしょ! あんなみっともないとこ、これ以上誰にも見られたくないのに……」
「瑞穂ちゃん、言っとくけど、そんなふうに思ってるのなんて、瑞穂ちゃんだけよ?」
 まりやは、真剣な表情になって言う。
「そう……なのかな?」
「そうよ。みんなますます瑞穂ちゃんのこと魅力的だって思うようになってるからさ」
「………」
「それにあたしたちも責任感じてるから、ここの入院費だって、あたしと紫苑さまで全額出してるんだしさ」
「……わかったよ。ところで、奏ちゃんと由佳里ちゃんにあの時僕がはいてたのと同じ下着、買ってあげたんだって?」
「聞いたの……そうよ。2人ともあのシーンにも興味津々だったみたいだし、もっとも由佳里には付録もつけといてあげたけどね」
「付録?」
 またろくでもないものじゃないだろうな……。

「まあそれはいいけど、あんまり奏ちゃんに変なこと吹き込まないでくれない?」
「変なことって?」
「由佳里ちゃんがランジェリーショップのシーンを見ると必ずトイレが近くなるって。あんなの偶然に決まってるじゃない」
「偶然じゃないよ?」
「あのね、ビデオの流れとトイレに行きたくなるのは、どう考えても関係ないじゃない」
「関係大ありだよ。由佳里はね、瑞穂ちゃんがエロい下着つけてるとこ見て、我慢できなくなってんのよ」
「何を?」
「で、トイレでソリティアしてるわけ」

534 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 03:13:17 ID:Fd3hNfvS0
 ……なんでソリティアしたくなるの? それとトイレとどういう関係があるの? ていうか……。
「……どうやってチェス盤をトイレに持ち込むわけ?」
「あのねえ瑞穂ちゃん、あたしの言ってんのはそれじゃないわよ」
「じゃあトランプの方? どっちにしてもトイレとは関係ないと思うけど?」
「違うわよ! 瑞穂ちゃん、ソリティアって、もともとどういう意味か知ってる?」
「確か一人遊び、でしょ? それぐらい知って……」
 そこまで言われて、僕ははっとした。

「ま、まさか、まりやの言いたいことって……!」
「やっと気づいたかね。そのまさかよ」
 でも、まりやも奏ちゃんと一緒に最後まで見てるだろうから、じかに確かめてるとは思えないし……。
「あのねまりや、妄想するのは勝手だけど、それを事実と決めつけて人を陥れるようなことを言うのは、どうかと思うけど?」
「あたしは確信して言ってんの。瑞穂ちゃんだって、武道会で由佳里の本性見たでしょ?」
 ……僕の下着の話か。
「でも、だからって、そんなこと人に話していいってことにはならないよ」
「にゃはは。もう瑞穂ちゃんにもばれたんだから、今さら言っても言わなくても大して変わんないでしょ?」
 ……何を言ってもムダか。

「じゃ、瑞穂ちゃん、あたしはこれで帰るね」
「あ、まりや、まさか僕が退院したら紫苑さんのプレゼントで寮のみんなに下着ファッションショーとかするつもりじゃないでしょうね?」
「あはは、もちろんするに決まってるじゃない。あたしは一子ちゃんに瑞穂ちゃんのこと話さなきゃいけないからこれで」
「そっか……一子ちゃん、学院から出られないんだったな」
「そ。で、毎日毎日、お姉さまの様子はどうだって、心配しすぎでうるさいんだわ、これが」
 そう言いながらも、まりやは笑っていた。
「そういうわけで、お大事にね!」
 まりやはそう言って帰っていった。

「ううう……退院したら恥ずかしい下着姿を披露しなくちゃならないなんて……」

535 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 03:17:15 ID:Fd3hNfvS0
「お姉さま、具合はどうですか?」
「由佳里ちゃん……今、ちょっとまりやにいじられてたとこ。そのせいでちょっと沈みがち……かな」
 僕がそう言うと、お見舞いに来てくれた由佳里ちゃんは急に泣きそうな顔になった。
「おおおお姉さま、お気を、お気を確かにお持ちください! 今がどんなに辛くても、どんなに苦しくても、
生きてさえいれば、生きてさえいれば、きっといつかいいことにもめぐりあえるんですから!!」
 泣きながらものすごい気迫で、必死になってそう説得する。由佳里ちゃん、普段まりやにどんなことをされてるの?
「……そんなに心配しなくても、別に自殺するつもりはないから大丈夫よ」
「はあ……よかったです」
 由佳里ちゃんはその場にへなへなと崩れ落ちる。

「そういえば、今、まりやから由佳里ちゃんの話を聞いてたわ」
「えっ!? まりやお姉さま、私のこと、なんて?」
「うーん……非常に言いにくいんだけど……聞きたい?」
「……まりやお姉さま、いったい何を言ったんですか!?」
 由佳里ちゃんは顔を蒼白にしながら聞き返してきた。
「えっと……由佳里ちゃんが私のビデオを見ると、下着のシーンの後でいつも1人でしてるって……」
「えっ!? わ……わああああっ!!」
 由佳里ちゃんの顔が真っ赤になったかと思うと、必死に後ずさって壁に背を預けた。
「あら、私はあんまり信じてなかったけど、本当だった?」

「ううう……まりやお姉さま、ひどいです……」
「まりやは武道会の時にエッチなのは私にばれたんだから、今さら言っても変わらないって言ってたけど……
そうよね。そんなことばらされて平気なわけないわよね」
「そうですよ! お姉さまだって、そんな話聞かされたら……」
「そうよね。安静にしてなきゃいけないのに、そんな話聞かされて興奮しちゃったら、どうやって収めろっていうのかしら。
ねえ、由佳里ちゃん?」
「え? お、お姉さま、それって……」
 それを聞いて、絶望的な表情をしていた由佳里ちゃんが、途端に呆然とする。

536 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 03:21:00 ID:Fd3hNfvS0
「あら、どうしたの? ひょっとして由佳里ちゃんが、私の興奮を鎮めてくれるのかしら?」
「え? あの、お姉さま……ええっ!?」
 再び由佳里ちゃんの表情が真っ赤になる。
「あ、ああああの、お、お姉さま、そんな、私がお姉さまのなんて、そんな、恐れ多い……」
 慌てふためきながら、必死で言葉を紡ぐ由佳里ちゃん。それを見て、僕はちょっと愉快になる。
「そうよね。そんなこと言われて『はい』って言う人なんかいないわよね。ごめんなさい、変なこと言ってしまって」
「そ、そんなことないです」
「いいのよ、ムリしなくて。そんなこと言われたら、由佳里ちゃんにしてみても、気持ち悪いし、迷惑だものね」
「あ、あの、本当に迷惑じゃないです、よ? それどころか、お姉さまの欲望の処理なら、是非こっちからお願いしたいくらいですし、
お姉さまが私で欲情してくれるなんて、すっごく嬉しいです……から……ってお姉さま、何言わせるんですか!!」
 僕が途中で笑っていることに気づいた由佳里ちゃんは、顔を真っ赤にしながら抗議してくる。

「ふふふ、ごめんごめん。由佳里ちゃんの反応がかわいいから、つい……まあ、私はまりやと違って誰にも言わないから、安心して」
「当たり前です! そんなことばらされたら、恥ずかしくて表歩けませんよ!」
「だから言わないって。でも、私のほうが由佳里ちゃんを興奮させちゃったかしら?」
「え? あ、あの、お姉さま?」
「もしかして、武道会の時に手に入れた私のパンティー、今はいてる? それとも下着のお店で買ってもらった、
私の着てたのと同じデザインの下着をはいて、私のをはいた気になってる? あるいは大事なとこがほとんど隠れてない下着の方?
そのどれかをはいて、私の前に出て、欲情してるのかしら?」
「あ、あわわっ、お、お姉さま、失礼します!」
 由佳里ちゃんはさらに顔を真っ赤にして、ダッシュで病室を出た。

「ふふっ、由佳里ちゃんったら……って、僕、由佳里ちゃんに何言ってた!?」
 ガーン!!
 せ、せっかくお見舞いに来てくれた由佳里ちゃんに、あんな卑猥な言葉の数々を浴びせて……
あれじゃ、“妹を言葉で辱めて楽しむセクハラお姉さま”じゃないか!!
「な、なんてことしちゃったんだ……うう……僕は……僕は……」

537 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 03:28:04 ID:Fd3hNfvS0
「お姉さま、調子はいかがですか?」
「貴子さん……まあまあです」
 貴子さんはお見舞いの花束を活けてくれる。
「それにしても、お姉さまが精神的ショックで入院とは……エルダーとして、ストレスがたまってらしたのかしら?」
「ええ……まあ、多分そんなところだと思います」
 僕が男だと知らない貴子さんには、さすがに本当の理由は言えないよな。
「まあ、これを機にゆっくり骨休めをすればよろしいですわ。ただでさえお姉さまは、
人のお願いを断れない性格でいらっしゃるようですから、ムリせずここで療養しておいた方が、あとに引っ張らずにすむでしょうから」
「お気遣いありがとうございます、貴子さん」
「い、いえ、私は生徒会長として、お姉さまがエルダーのお役目を果たすのに最良の手段を考えているだけですわ」
 そう言いながらも、貴子さんはあせった表情で顔を赤らめている。

「それでもいいです。ところで貴子さん」
「はい、なんでしょう?」
「貴子さん、その、私と紫苑さんのビデオ、ご覧になったんですよね?」
「え、ええ、あ、あくまで生徒会長として、おおおお姉さまがエルダー1日所有券に従っていらっしゃるかのチェックを……」
「紫苑さんに言われて、私が甘えん坊の妹を演じるシーンでいつも鼻血を噴いて倒れるとうかがっておりますが……」
「おおおお姉さまの……甘えん坊のシーン……」
 貴子さんがうわごとのようにつぶやき始めた。そのシーンを思い出しているのか、顔が見る見る紅潮していく。
「ふぁぶーっ!!」
 と、貴子さんが潮吹きのように鼻血を出す。
「きゅうううう……」
「ああっ、貴子さん!!」

 ミイラ取りがミイラになっちゃったみたい……っていうか。
「せっかくお見舞いに来てくれた人をこんな目に遭わせるなんて……僕は……僕は……」
 貴子さんの手当てにナースを呼んだ後で、僕は自分のしたことに落ち込んでいた。

538 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 04:46:46 ID:Fd3hNfvS0
「おう、瑞穂、どうだ、元気にしてるか?」
「父さま……」
 それから、面会時間終了近くに、父さまがお見舞いに来てくれた。
「どうだ? エルダーとしての生活に、ストレスがたまり過ぎたのか?」
「ええ。見てのとおり」
「まあ、精一杯休んでおけ」
「うん」

「ところでな、瑞穂、ものは相談だが……」
「なんですか?」
「エルダー1日所有券とやらが使われた時のビデオ、一度『瑞穂』を『幸穂』に言い換えて演じてくれんか?」
 ちょ、ちょっと父さま……大事な息子をそんなことに使う気ですか!?
「……そういう趣味あったんですか?」
「いや、気づいたら幸穂との想い出が少ないことに気づいてな。それでおまえを代役に立てて想い出を増やそうと……」
「丁重にお断りします!」
「つれないな……そんな親不孝な息子に育てた覚えはないぞ?」
「僕こそ、息子を身代わりに使うような親を持ってたとは知りませんでしたよ」
 僕は続ける。
「だいたい、僕が本当は女の子のマネをするのが大嫌いなのはご存知でしょう?」
「わかったわかった。あーあ……どこをどう間違って育てれば、父のささやかな願いを踏みにじるような親不孝に育つのか……」
 そんなこと言っても、絶対にやるもんか。
「じゃあな瑞穂。ゆっくり養生しろよ」
「はい……」

 そして、父さまが帰った後……。
「ううう……家族にまであんなこと言われるなんて……」
 それから、落ち込んだ分だけ、見る悪夢の数が増えるのであった。

Fin

539 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/14(土) 04:54:22 ID:Fd3hNfvS0
以上です。

1人タイトルと違う方が来ていますが、気にしないでください。
今回連投規制で、見たことないのまで出てきて、まだまだわからないこともあるんだな、と思い知らされました。

あと24KBでこのスレも終わりですか……もうそろそろ13話立てる準備した方がいいのかも……。
と思いはしても、立て方がわからないので、お願いするしかない私です(涙)

それでは、これで失礼いたします。

540 :名無しさん@初回限定:2007/04/14(土) 10:05:16 ID:mS8Cfyq10
>>539
GJです〜次スレ立ててみます。

541 :540:2007/04/14(土) 10:43:44 ID:mS8Cfyq10
スレたて失敗orz

542 :名無しさん@初回限定:2007/04/14(土) 14:26:54 ID:BAFVRlCO0
処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第13話
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1176527097/

どうぞ。
関連スレ入れ忘れて、連投規制にもひっかかって焦りまくり…orz

前スレリンクはひょっとして改行しても良いものだったのでしょうか?
心残りばかりのスレ立てでございました。

それでは皆様の良きSSが今後とも読めますようお祈りして…



543 :名無しさん@初回限定:2007/04/14(土) 14:29:20 ID:inJIfgeJ0
24KBなら次を用意しても良いか…
ちょっと逝ってくる

544 :名無しさん@初回限定:2007/04/14(土) 14:32:17 ID:inJIfgeJ0
うぉリロードして良かった
>>542

545 :名無しさん@初回限定:2007/04/15(日) 07:57:18 ID:zSt+Vkts0



★過去スレのミラーです★

処女はお姉さまに恋してるSSスレ

第1話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1108774069.html
第2話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1110222716.html
第3話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1110659167.html
第4話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1111234071.html
第5話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1111757700.html
第6話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1112791250.html
第7話 http://2ch.pop.tc/log/05/06/20/0923/1115118638.html
第8話 http://2ch.pop.tc/log/06/03/26/1755/1117971026.html
第9話 http://2ch.pop.tc/log/06/08/21/2319/1143304515.html
第10話 http://2ch.pop.tc/log/06/11/23/1758/1156178671.html
第11話 http://p2.chbox.jp/read.php?host=pie.bbspink.com&bbs=erog&key=1164204810&ls=all
第12話 http://p2.chbox.jp/read.php?host=pie.bbspink.com&bbs=erog&key=1171703000&ls=all




546 :名無しさん@初回限定:2007/04/15(日) 07:58:22 ID:zSt+Vkts0
>>545
誤爆スマソ

547 :名無しさん@初回限定:2007/04/15(日) 08:08:07 ID:f/5o8p2nQ
オマエラ、テンパり杉wwww

548 : ◆KEl2kizUBk :2007/04/15(日) 11:20:57 ID:NxoJCAZc0
>>522-524
ご指摘ありがとうございます。
文章で手一杯で、なかなか見栄えまで気にしていられなかったもので…

確かに改行がされてると印象が違いますね
しかし、そうすると1レス当たりの改行規制が悩ましいところです

もう少し精進してきます



549 :名無しさん@初回限定:2007/04/19(木) 15:49:16 ID:3tR6MhDe0
|`ヽミ   l:.:./|! _l:/|.. :.\/1 /l.  | lイ±リl| iトlム仕ミ|   ト_j||. / 、 .', . ! !',  ',. ',、ヽヽ ' ,
|ィト,/`  lノ  ´/ レ.. :.\..| |  ゝ1!())Vレ:.(()}|   |トーソ/, ', !',、 ',  !! rナ ̄!`T', ヽヽ
|ソ,/         ___  ''' :\:!.  ',: ̄ ..::,:.   ̄ / | |ヽ./! 「! ̄ト',ヽ N ,i! !! !_」_」弋ヽ、
|`............      /,、 ̄`_ヽ|:./\  ヽ:::::::t_ァ  .:/ i | /  ! ル」从、ヽヽ ソl/ フ rソ;;;; !ヾl `
|    :::::::....  ,ト!(:.:rテ'/ ´ /:.:.:.\  | 丶、::_:// /.,! .! .! ',《ヽソ;ヽ        L彡ン "! !ヽ うめなのですよ
|    '   ::::..ヾニ_ /  /'ノl:.:.  \∧∧∧∧/ ! . ! ト .! ',. ゞ┘         !. ! ,l
ヽ ヽ 、_          /_' -‐':: < の .う > .! .! .!  ', ヽ .,,.   '    "" /!  ,! リ
` \  ̄        ィ‐':.:.|:.:.:.:.  <    め >  リ !  リ,  ヽ、   ー‐    イ ..!  ソ
─────────────< 予 .な >────────────────
     .      う         <    の > .:.:! i ィiナ/ 7⌒`   ヾ⌒ヽマ ヾx.:.:.:.:.:.i
   , -‐―‐‐-、  め      .< 感 で >.:.:i.:.i.:.オ' /       リ  ヽ.:iハ、.:.:.:.:.|
  /   ,    ヽ  る      <   .す > .:i.:.i':.:.v,.ォ=ァ丶     r==ァミV}}.:.:.:.:.:.|
  l */_ノ/ヽ)ノ..   \ .  / ∨∨∨∨ \ ::i.:.i;ゞ i :::::: i      i :::::: i ヌ;:':.:.:.:.:.i うめなのです
  | (| | ┰ ┰|l |       /    !::: :::リイ"  V\:.  ヾ_;;;ソ      ヾ_;;ソ/イj:.:.:.:.:.,'
  l ∩、''' - ''ノ∩     /:ハ:! (   )ヾノ (   ) / \   .,,,   '    .,,,. /.://.:./:/
  | ヽ}| {介} |{/..   / :::. k_ヽ││"   "| │ハ::.::: \      ー‐     /〃ソ/
(_ノ_,ノ く_/_|_j_ゞ!し /ノ!:!ヽ:: .:ト::ゝ! rー-‐‐、| !イ7: :/ヽ!:!.\ 、     イフ"/'
     (__八__)         うめなのですよ〜


550 :名無しさん@初回限定:2007/04/19(木) 19:59:21 ID:72GVcCv70
            , ' ´ ⌒V/'' 一_-、
          /  /        `ヽ,` 、
         / / / /  i     ヽヽ ヽ. \
        /  i i ./ / .ハ   i i i .i ヽ`、 ゙ 、
.        l / i  iイハi i i i iリi i  i i ヽヽ i
        l/ i  i斗ェ士Iト;/ //__iリ  i i ハ ',
        l バ|  〈.{゚:::::i}゙ レノ/,ィメミト  i  i i.l.l i
       l i ハ  i.辷ソ  " .{:::ソ〉i / .レ .| i
       l i  ハ  ヽ:::::  _ ' :::゙"/ / レノノi.l
      l i  i ト ヽ \  _ , イ イ ハノノ 埋めますよ
.      l i  i  i  「`゙''ー゙r"T// i/ i i
      l__i_, 斗‐へ ___ ィL/`ー- i_i iヽ
     /  } }  <´  ∧+.ト、`ヽ  } }  ヽi ヽ
   /     } }  _〉 :: :∧゙ヽ 〈  } i   ヽ ヽ
  /       V´ | , イ ハヽ、 ハ`' く     '、ヽ
. /       /  ノイ/ .H ヽ ヽ,〉  ヽ    ヽ \
〈        i   ムr-i^'|ウレ イへi  i     .〉  \
. \      ト、:::::::::::::::::::i「o]i|::::::::::::::...ノ     .人   ヽ
  / に_ >'i. `' -----┴┴-----イ  < イ ヽ \
  /< ̄7" i ハ             |ハ こ イ i\\ \
. /    V  i iハ            ,iハ   .i i ヽヽ  ヽ
/ ⌒ヽ〈  i i i .ト、          ii  { ー イ  iヽ ヽヽ  ヽ
|     V i i 〉ヽ、         | i  i   .i  iヽ ヽ ヽ 
.\    「>、i/ \ ー  ―  イハ i i    }  i ヽ ヽヽ
/ /へ  レ'   〉、_,, --、_ー    /  i i .i    i  i ヽ ヽヽ
.//  i |゙Y   /    ̄、`゙;、       i i i   i  i  ヽ ヽ
./  i i ト、_ ∧_  、ヽ ヽ |        i i i   }  i  ヽ ヽ
i   i i i | レ゙  `''ァヽ.〉ノ'゙   i     i i _i__,,斗ヘ  i




551 :名無しさん@初回限定:2007/04/20(金) 22:48:59 ID:0zci8jrz0
うめね・・・


梅の花は、誰が似合うかな〜

552 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/21(土) 07:12:35 ID:4Fs9qxGw0
東の扉です。

あるコミックから思いついたネタを投下させていただきます。
何があっても驚かないでください。
それでは、よろしくです。

553 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/21(土) 07:17:15 ID:4Fs9qxGw0
〜闇に惑いしゆかりん〜

「由佳里ちゃん……あなただったのですね……今まで奏にいやがらせをしていたのは……」
 聖央女学院の女子寮の廊下、奏は怯えた表情で、由佳里に言う。
「ふん……今頃気づいたんだ……もう手遅れだけどね」
 そんな奏を、由佳里はあざけるように見ながら答えた。
「そ……そんな……どうしてなのですか? 奏は由佳里ちゃんのこと、大切な親友だと思っていましたのに……」
 由佳里の言葉に、奏は泣きそうな表情で抗議するが……。
「大切な親友? ふざけないでよね! 私も瑞穂お姉さまのこと好きなの知ってて、いっつも自分ばっかり瑞穂お姉さまにベタベタして! 
私は陰険で意地悪なまりやお姉さまのいやがらせに必死で耐えてるっていうのに!」
 由佳里は、そんな奏にそう激情をあらわにして言い放った。
「ホントはあんたを孤立させて、私だけしか味方がいないって思ったところで裏切って、
ぬけがらにしてやるつもりだったんだけど、気づかれたからにはしょうがないよね」
 由佳里は、ポケットから銀色の鋭くとがったものを取り出す。
「ま、まさか……そのナイフで、奏を……」
「奏……私の幸せのために、消えてもらうわよ!」
 由佳里はそう言って奏につっこんでいく……と、奏が、後ろの何かに気づいたのか、表情を変化させた。
「………?」
 由佳里が振り返ると、そこにいたのは……。
「な、な、何やってんのよ、由佳里……」
「由佳里ちゃん……あなた、そんな娘だったの……?」
 顔を蒼白にさせたまりやと瑞穂だった。
「お、お姉さま方……その……これは……違っ……」
「言い訳は無用よ! 由佳里、あんたがそんな根性の腐った娘だとは思わなかった! 
今からたっぷり性根を叩きなおしてやるから、覚悟しなさい!」
まりやはそう言って由佳里をつまみあげた。と……。

554 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/21(土) 07:22:27 ID:4Fs9qxGw0
「ぷっ……あはははははは……」
 それを見ていた奏が、何を思ったか突然笑い出した。
「奏ちゃん……?」
 まりやと瑞穂の声がハモる。
「い、今のお姉さま方のお顔……とてもおかしかったのですよ……」
「奏ちゃん……どうしたの? 由佳里ちゃんに裏切られたショックで、おかしくなっちゃったの?」
「ち、違うのですよ……奏たちは、漫画ごっこをして遊んでいただけなのです……ですから、心配はご無用なのですよ」
 奏が、笑いながらそう言う。
「漫画ごっこ……?」
「お姉さま方、食堂においてある漫画をご覧になってください」
 由佳里が、まりやにつまみあげられたまま言うと、みんなでそれを見に食堂に向かった。

「この漫画でいいの?」
 瑞穂がそのコミックを手に取る。
「はい! その一番最後の話を見てください」
「わかったわ。ええと、このあたりね」
 瑞穂がページをめくると、まりやも横からのぞきこんできた。
「ん? 瑞穂ちゃん、この2人の名前……」
「沢崎可南(さわざき かな)と平方優花璃(ひらかた ゆかり)? この2人、親友なのね」
「漢字は違うみたいだけど、なんかすっごい偶然ね」
 瑞穂とまりやは、そうやってその話を読み進めていった。
「ウソ!? 沢崎可南を陥れてた黒幕は、平方優花璃だったの?」
「恋敵を蹴落とすために、親友だと思わせて裏切ってたんだ……あんまりじゃない……」
「待って! ねえまりや、このセリフ……」
「あ……由佳里たちが言ってたセリフそっくり……」
 そこで、瑞穂とまりやは気づく。
「じゃあ、奏ちゃんと由佳里ちゃんがさっきやってたのは……」
「はいなのです。すごい偶然で面白かったから、2人でこのまねごとをして遊んでいましたのですよ」
「……それで、自分たちのケースに当てはめてアレンジしてたんです」
 奏に続いて、由佳里が持ってたとがった刃物をつんつんと押しながら答える。
刃物は柄の中にひっこんだ。どうやらおもちゃのようだ。

555 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/21(土) 07:27:32 ID:4Fs9qxGw0
「もう、2人とも、おどかさないでよ」
「ご、ごめんなさい」
「まさかお姉さま方が帰ってこられるとは思わなかったのですよ」
 瑞穂が安堵の顔でへなへなとなると、奏と由佳里はそう謝る。
「それにしても由佳里、あんたあたしが陰険で意地悪だって言ってたわよねえ?」
 まりやが思いっきり意地悪そうな顔で由佳里に言うと、由佳里の顔が蒼ざめた。
「ま、まりやお姉さま……?」
「あんたがあたしのことそんな目で見ていたとはにゃー?」
「あ、あの、まりやお姉さま、あれは、話を合わせるための言葉の綾ってヤツで……」
 後ずさる由佳里を、まりやは徐々に追い込んでいく。
「シャラーップ! いい度胸だよねえ由佳里ー? 『いっぺん死んでみる?』」
「ひいいいいい……!!」
 由佳里は逃げようとするが、タッチの差でまりやにつかまってしまい、頭ぐりぐり攻撃を容赦なく喰らってしまう。
「ほれほれほれほれ」
「い、痛い! 痛いですまりやお姉さ……あだだだだだ!」
「……お姉さま、ひょっとして、奏たちはやらなければよかったのでしょうか?」
「別にやることには反対しないけど……まりや、もうその辺にしておいたら?」
 結局、まりやが由佳里を解放したのは、それから3分後のことだった。

556 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/21(土) 07:32:15 ID:4Fs9qxGw0
「いだだだだ、ひどいですよまりやお姉さま!」
 由佳里は頭を両手で押さえて涙を浮かべていた。
「うるさい! だいたい、人の悪口を平気で言う方が悪いの!」
「なんでそうなるんですか!? だから、あれは言葉の綾だって言ってるじゃないですか!」
「まりやお姉さま、あんまり由佳里ちゃんをいじめないでほしいのですよ。由佳里ちゃんがかわいそうなのですよ」
「いじめなんてしてないわよ、可愛いいたずらならいっぱいしてるけど?」
「あたた……そう思ってるのは、まりやお姉さまだけですよ」
 由佳里は、まだ頭を押さえている。
「そうよ。だいたいそんなことばっかりしてるから、意地悪で陰険なんて言われるのよ」
「うぐっ……」
 瑞穂の反撃に、まりやは言葉を失う。
「あんまり調子に乗って由佳里ちゃんをおもちゃにしてると、そのうちその漫画みたいに、日付が変わるときに、
地獄への切符を由佳里ちゃんに渡されるはめになるわよ?」
「なはは……そんなオーバーな……そんなことあるわきゃないって」
「……そういう考え方が一番危ないと思うけど?」

557 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/21(土) 07:37:33 ID:4Fs9qxGw0
 そして、その翌日、演劇部でそれを見せてほしいと言ってきた部員がいっぱいいたので、奏は由佳里を呼んで演じることにした。
「……奏ちゃん、それで私を呼んだの?」
「は、はいなのです……どうしてもご覧になりたいという方が多いのですよ」
 決まり悪そうに言う奏。
「参加」
「ぶ、部長さん?」
 突然の圭の発言に、奏は驚く。
「それに参加」
「な、何の役で参加するのですか?」
「もち、主人公」
「E魔Iですか……」
「なんかものすごくハマる気がするのですよ」
 奏と由佳里は、主人公役になった圭を想像してつぶやく。

「では早速開始!」
「は、はい!」
「はいなのです!」
「『今日も由佳里ちゃんのおかげで、瑞穂お姉さまと楽しく過ごせたのですよ。
由佳里ちゃんも、瑞穂お姉さまと一緒にいたいはずなのですのに……』」
「『ううん、気にしないで奏ちゃん。私も2人の幸せそうな顔見るの、嬉しいから』」
 漫画ごっこが始まると、奏と由佳里もなりきって役に入っていく。
話が進むにつれ、観客である演劇部のみんなはそれにのめりこんでいった。

558 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/21(土) 07:42:40 ID:4Fs9qxGw0
 そして、終盤、主人公が裁きを加える場面……。
「『どう? 少しは謝る気になった?』」
「『誰が! 私の邪魔をするヤツは、みんな消えちゃえばいいんだよ!』」
 自分の悪行を自分の身に浴びせられた“由佳里”が、主人公に向かってそう言い返すと……。
「『闇に惑いし哀れな……』」
 主人公が悪にとどめを刺す場面に移り、圭がその決めゼリフを言いに入る。
「『いっぺん死んでみる?』」
「いっぺん死んで……奏、死んじゃうですか!?」
 ふと、そのセリフを聞いた奏が、涙を流し、震えながらそうつぶやいた。
「上岡さん! 何ボーッとしてるの! 断末魔の悲鳴をあげる!」
「いや……ていうか圭お姉さま……なんか、奏ちゃんが壊れちゃったんですけど……」
 役に合わないのも考え物だけど、ハマりすぎるのも考え物だ、と由佳里と部員たちは思うのであった。

Fin

559 :東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2007/04/21(土) 07:51:37 ID:4Fs9qxGw0
以上です。

某コミックに(どのコミックなのかはわかる人にはわかると思います)
「かな」と「ゆかり」の2人がこういう設定だったのがあったので、(漢字は違いますし、苗字は不明ですが)
もしそれを2人が見たら、こういうふうに遊ぶだろうな、と思ってスレ埋めがてら、書いてみました。
それにしても、圭さんのE魔I、私が想像したらものすごくハマってました。

それでは、これで失礼いたします。

560 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/04/21(土) 09:31:47 ID:Z8VIUcI20
>>東の扉さん、エルダー所有権の話おもしろかったですよ!

さて、では私も埋めさせていただきます。

561 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/04/21(土) 09:32:55 ID:Z8VIUcI20
『最初の頃のはなし』
〜瑞穂と貴子6〜

設定は貴子エンド後

恵泉女学院を卒業して1年後。
大学生となり、一人暮らしを始めた瑞穂のマンション。
ここに先日、厳島家を飛び出してきた貴子が転がり込んで今は一緒に住んでいる。
ある日の昼過ぎ、午後からの科目が休講になった貴子は一人部屋に戻ってきていた。
突然の空き時間で、特に予定も無かったので部屋で来週提出のレポートを作成しようと思ったからだ。
ダイニングのテーブルに資料を広げ、いざ取り掛かろうとするが、どうしても気が散って集中できない。
理由はわかっている。

貴子は帰宅の途中、電柱につながれた一匹の犬を見かけた。
安っぽいビニールロープで首輪をくくりつけられて、電柱につながれている、大きな白い犬。
恐らく紀州犬ではないか。薄汚れて灰色がかった毛並みはところどころ毛が抜けて地肌が見えている。
覇気が無く疲れたように電信柱の下に蹲っていて、もしかすると老犬なのかもしれない。
目ヤニの付いた瞼は閉じられていて、人がちかづくと面倒くさそうにたまに開く。
住宅地の道路にはまったく似合わないその犬は、飼い主に捨てられた犬だった。
電柱にぶら下がった紙切れに書かれた文字…
<貰ってください。名前はクマ>
その一行のみ。当然、この犬が住んでいた住所や電話番号などは書かれていない。
この犬を見つけた貴子は、一度は通り過ぎたが少し離れた場所で振り返って、しばらく様子を見ていた。
じっと蹲るこの犬に、たまに近寄る人はいた。しかし、薄汚れた姿はたちまち、興味から嫌悪へと人の感情を変化させた。
老犬であったことも要因だろうし、この犬が愛想が無さ過ぎるのも一因だろう。
眉をしかめて離れていく人間の姿を、ちらりと見る犬。遠くに立っている貴子の方にも視線を向けるが、すぐに目を閉じてしまった。
15分ほどもその場にいた貴子は、マンションに帰ってきてからもその犬のことが頭から離れない。
厳島の家にいたころ、貴子は犬を飼っていたことがあった。
その犬は、貴子が赤ん坊のときから飼われていた犬で、高校に入る前に老衰で死んでしまった。
冷え切った家庭で心許せる存在だったその犬は、貴子のもっとも大切な家族だった。

562 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/04/21(土) 09:35:52 ID:Z8VIUcI20

しばらく考え込んでいた貴子は、冷蔵庫から取り出した牛乳とスープ皿を持って、電信柱の犬のところにやって来た。
犬はさっき見たときとまったく変わらない姿勢のまま、寝そべっている。
貴子は犬の顔の前に皿を置くと、そこに牛乳を注いだ。
「ほら、お飲みなさい」
犬は顔を上げると嬉しそうに尻尾を振りながら牛乳を飲み始めた。
「貴方も愛嬌があるではありませんか」
貴子は、なぜ、この犬はここにいるのだろうと思った。
近くで観察していて気が付いた。
この犬、左の耳に大きな傷がある。血は出ていないが、そんなに古い傷ではない。
「なんですの?この傷」
手を伸ばして耳に触ってみる。ビクッとして犬の動きが止まった。
しかし、貴子は気にせずに耳を撫で、傷を撫でる。
やがて、犬もなれてきたのか、貴子に耳を触らせたまま再び牛乳を飲み始めた。
汚れて傷がある不細工な老犬。
「…きっと誰も貴方を拾ってはくれないでしょうね」
その場合、遠からずきっとこの犬は……。
牛乳を飲ませている貴子の後ろを、何人もの人が通り過ぎて言った。
その内の数人は、露骨に顔をしかめて行った。
捨てられた犬は野犬と一緒。餌を与えることは罪悪だとでも考えているのかもしれない。
犬の頭を撫でながら貴子は犬に語りかける。
「すいませんが、私も家の無い身の上です。貴方と同じ。私を拾ってくださった方に許していただかないと
貴方を引き取ることはできないのですよ」
どちらにしても、その望みは薄そうな気がする。いま、瑞穂と貴子が住んでいるマンションはペット禁止となっている。
マンション内に無断で飼っている人はいるが、それを押して頼み込むことは、貴子にはできない。
犬は牛乳を全て飲み終わると、礼を云うように低く鳴きながら貴子の手を嘗めた。
「とりあえず、話をしてはみます。明日、またお会いしましょう」
皿に牛乳を継ぎ足すと、貴子はマンションへと引き返した。
途中、犬のほうを振り返ると、こちらをじっと見送っている犬と目が合った。

563 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/04/21(土) 09:40:15 ID:Z8VIUcI20

貴子はマンションに戻ってくると、今度こそレポートの作成に取り掛かった。
気が散漫になりかけるが、無理やりに集中させてPCのキーボードを叩き続ける。
二時間ほど経って、貴子は作業を中断した。
「瑞穂さん、遅いですわね」
いつもなら帰ってきている時間。立ち上がって窓に近寄り、薄暗くなった外の風景を眺めた。
……雨!
いつの間にか降り出していた雨の音に貴子は気がつかなかった。
あの犬はどうしているだろう。電信柱に縛られたままでは物陰に隠れることも出来ない。
傘を掴んで貴子は小走りにマンションを飛び出した。
何が出来るわけでもない。行ったところでどうしようもないことは判っている。しかし、気になって仕方が無い。
電信柱に犬はいなかった。
つないであったロープも無かった。
慌てて、周りを見回してみる。電信柱の近くに設置してあったゴミ箱。そこに貰ってくださいのカードと割れた皿が
突っ込まれているのを見つけた。
「………!」
誰かに拾われたか…それならば良い。しかしこの短時間でそんな幸運は…。
顔をしかめて通り過ぎていった通行人たちを思い出す。保健所に連絡したのだろうか。
保健所に確認しよう…急ぎ足でマンションに取って返す。
確認して、それからどうすればいいのか…、数少ない友人の顔が頭に浮かぶ。
老犬を押し付けられたら、きっと迷惑に違いない。嫌な顔をされるかも知れない。それでも頭を下げてみよう。

マンションのドアの鍵が開いていた。
「瑞穂さん…お戻りになっているのですか?」
玄関から廊下にかけて大量の水が滴っている。どうやら濡れて帰ってきたらしい。
貴子の胸に罪悪感が沸いてきた。犬に気を取られて、瑞穂を迎えに行くことに気が付かなかったなんて…。
バスルームから水音が聞こえてくる。
「…瑞穂さん」
「ああ、貴子さん。お帰りなさい」

564 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/04/21(土) 09:44:16 ID:Z8VIUcI20
バスルームの扉を開けて、Tシャツを着た瑞穂が顔を出した。
バスルームの中には白くて大きな犬がいた。驚きで目を見開く貴子。
犬は貴子を見ると嬉しげに尻尾を振りながら、貴子の足元に擦り寄ってきた。
「こら、まだダメだよ」
瑞穂が犬をバスルームの中へ引っ張り戻す。
「…その犬は…どうして…」
そう問いかける貴子の声が微かに震える。
「帰り道で見つけたんです。捨て犬みたいでね。何だか凄く気に入っちゃって、連れてきてしまいました」
楽しげに犬をブラシでゴシゴシこすりながら答える瑞穂。
その光景がじわりと滲んで見える。
「…でも、このマンションはペット禁止では」
「うん。だから明日、実家に連れて行こうと思って…」
そう云って振り返った瑞穂は、貴子の顔を見てぎょっとする。
「なぜ泣いてるんですか、貴子さん。犬、嫌いでしたか?」
ぶるぶる…
おたおたと慌てる瑞穂に首を振って見せる貴子。
何故だか判らないが、貴子は自分が救われたような気分を感じていた。
「ああの、気になるんでしたらすぐに実家に連れて行きますから…」
ぶるぶる…
もう一度首を振って、貴子は瑞穂に抱きつく。
貴子の心の奥底に、いつの頃からかあった『何か』。それが氷解していく。
「た貴子さん。どどうしたんですか、濡れちゃいますよ!」
そんな貴子の心中が判るはずも無く、どう対処してよいのか判らず戸惑う瑞穂。
……瑞穂さんはいつでも私を救ってくれる、拾い上げてくれる…
貴子は胸のうちに湧き出たこの感情をどう云えば良いのか判らない。
「…瑞穂さん、有難うございます」
泣きながら…そう口にするのが精一杯。
そして、ただ力一杯瑞穂に抱きつく貴子だった。

  Fin

565 :L鍋 ◆DYAKFqD80g :2007/04/21(土) 09:47:47 ID:Z8VIUcI20
以上です。
お粗末さまでした。

566 :名無しさん@初回限定:2007/04/21(土) 10:33:27 ID:SSjUVWDq0
東の扉さん、L鍋さん、
お二人とも「埋めネタ」とは思えない面白さ。GJでした!

次スレへのご案内(作品投下も始まっています!)

処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第13話
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1176527097/

そして最後はやっぱり
−−−−−−−−−− 再開 −−−−−−−−−−
         -、                 \ ヽ
    ーー-、   }                  ヽ }
       ヽ /                 ___,!ノ            _
     __∨_   _ -‐   ̄`ー 、 /     ̄ ̄` ヽ,    -ー'  ̄   ` 、
    /  ∠ニニニヽ./ /  ノ\ ,.  / /人/i /}/iノ|) \ ∨ //{ __,ノ 人l  ヽー- 、
.   /  j/≡l/^≡ゝ、{ i/i/|/ ・  j}>‐i/ {/・ ___  ・  l   ∨ / = `  =  i  l ヽ  ヽ
   i   /) ▽  ○ ./⊂)’(_フ  ⊂/ / /  ヽノ    |   / /   ゙‐'-'    l   |/,}' ,   、
   j|. /´        /| /      ノi | /          /ノ  l /         |   |^、! ',  、 
   ! i      ノ/{ {       /ノ{ {        /イ  /i {.        // /_ノ   '  l
   lト.ゝ  ,_   ノノi ゝ ._,    ,_/ノヘ、.ゝ       // \ゝ_,- 、_, ー‐、イ ノ/\_'_ ゝ
   リ "(::! ヽ'" ノ:::::ゞ(::::! ヽ‐'" ノ:::::::::〉.j }::/`:.-‐ '":}:::::::::〉   !{:::i::.  ....::::ノ- ':::ヽ
     |::ト__ヘ__/::、:;;;∧::ト__ハ___)イ::::!、::i ヽi^i>::.. ..:::..ノ_:::::/   | >/__, ____i-':::::::::/
   _ -'--、:::::::、:::::}、::>{:::::::::::::::::::::::::| 、::>┘ヘ/'-‐‐':::i 、::i  /__::::::::::::::::::〈、:::!
  ノ__>_{^^ヽ''_/^、::/-‐ニニニェ、::::::::| {::::/^ー‐' ̄ ̄ヽ:::} 、::i、/ / ハ,ヘ.`^ 、__:l、:l
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 ゞ=゙    iニ!  //.!-!-ハ!-iノ/ 〉/、_/ ノ_/::::::ノ ゞ ヾl::/=l::::!='--- " `^
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